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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Z0305
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z0305
管理番号 1021417 
審判番号 審判1999-1138 
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-18 
確定日 2000-08-09 
事件の表示 平成 9年商標登録願第115350号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第3類「化粧品」、第5類「薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド」を指定商品として、平成9年5月12日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、「シート状あるいはマスク状のパック化粧品」の形状の一形態を表したものと容易に認識させる立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品中「パック用化粧料」について使用しても、単に商品の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。なお、請求人は第3条第2項の適用を主張しているが、同種商品が他にも種々存在し、その形状には多少の差異はあるとしても、いずれも該商品の形状は、目・鼻・口の部分を開け顔面にフィットするように全体として顔型の形状をなしているものであって、本願商標の形状は、該商品の形状としてはとりわけ特異ともいえないものであるから、この立体的形状自体が需要者に強い印象、記憶を与えるものとは認め難く、この立体的形状をもって自他商品の識別機能を発揮しているものと認めることはできない。」旨認定して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、前示したようにそれは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、意匠法等により保護されている形状について重ねて又はその権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲に示すとおり、額から鼻にかかる顔面上部用のシート状「パック化粧料」又は「薬用パック剤」(以下、「パック用化粧料」という。)の形状としてその一形態を表したものとみるべきであって、これを指定商品中「パック用化粧料」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したものと認識するにすぎないと判断するのが相当である。また、これを前記以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
請求人は、本願商標は全体を船底状に表し、その下辺部を谷状に傾斜させて、その中央部に矩形状の凹部を形成し、下辺の左右には短い切り込み線を表し、さらに、餅状の窓状孔部を中央に形成した特徴ある形態であって、本願商標に係る「パック用化粧料」が登録意匠であることから、その外観について同種商品にはない新規な外観上の特徴を有するものとして、取引者又は需要者に印象づけられている旨主張する。
しかしながら、本願指定商品を取り扱う業界においては、顔の凹凸にフィットするように随時切り込みを入れて、又は目及び口等の部分を切り抜いた形状の顔全体、額、目の下、鼻、頬用のシート状パック化粧料が販売されていることが認められるものであり、請求人主張の特徴は、商品の機能(使い易さ等)を効果的に際立たせるための範囲のものというべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって、直ちに自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
また、意匠法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであって、これらに従った登録意匠の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであるから、意匠登録による独占を理由として自他商品の識別力を有するに至ったとは認めることはできないばかりでなく、却って、意匠権消滅後は何人も実施が予定されているものであるから、請求人の主張は採用できない。
したがって、前記特異性をもって、指定商品中の「パック用化粧料」の一形態を表示するものであるとの認定及び本願商標に対する取引者、需要者の認識に係る原審の判断を覆すには足りないというべきである。
(4) また、請求人は、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得しているから、商標法第3条第2項の規定により登録されるべきである旨主張し、甲第3号証乃至同第277号証を提出している。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
また、使用に係る商品が出願に係る指定商品の一部である場合は、使用に係る商品に指定商品が限定されない限り、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできないものである。
そこで検討するに、まず、請求人の提出に係る甲第3号証乃至同第11号証及び同第140号証(商品及び商品パンフレット)をみると、本願商標に係る「パック用化粧料」の形状が明示されていることは認められるとしても、シート状マスクのセパレートタイプとして、顔の下部分の形状とセットの状態で本願商標が掲載され、該パンフレットには「Hisamitsu」のロゴマーク及び「久光製薬」の文字、「ライフセラ」、「Lifecella」の文字よりなる商標が表されてなることが認められる。
そして、甲第12号証乃至同第65号証、同第141号証乃至同第220号証(雑誌等による広告)をみると、雑誌「ViVi」をはじめとする各雑誌の1997年8月号から2000年4月号において、そのシート状マスクの一部として本願商標が掲載されているとしても、「ライフセラ フェイスマスク」、「4セット入り」の文字とともに掲載され、該商品の包装容器(「Lifecella」の文字が表されている)からシート状マスクを取り出し、広げた状態、使用方法、或いは、顔全体に上部と下部の両方のマスクを張り付けて使用している状態を表示されていることが認められる。
次に甲第66号証乃至同第70号証、同第247号証(テレビ広告の画像、テロップ及びナレーション)をみると、本願商標の形状が表示されていることは認められるとしても、それらの画面等には、ライフセラフェイスマスクの使い方、使い心地を視聴者に訴えるものであって、「ライフセラ フェイスマスク」、「ヒサミツ」、或いは、「ライフセラ オレンジマスク」の音声、又は、「ライフセラ フェイスマスク」、或いは、「ライフセラ オレンジマスク」、「Hisamitsu」のロゴマーク及び「久光製薬」の文字とともに放送されているものである。
また、甲第71号証乃至同第139号証、甲第221号証乃至同第246号証及び甲第248号証乃至同第277号証(テレビ広告の放送確認書)をみると、「広告商品名及びCM素材の内容」の欄「ライフセラ・・・」、「ゴワゴワ・シ オレンジマスク」「ライフセラFM」「オレンジM」等の記載より、「ライフセラ フェイスマスク」、或いは「ライフセラ オレンジマスク」の広告と認められる。
以上のことよりすれば、パック用化粧料を1997年から2000年までに継続的に使用し、本願商標に係る「パック用化粧料」の形状が明示されていることは認められるとしても、テレビ放送及び雑誌等における宣伝広告中に表された立体的形状は、シート状マスクのセパレートタイプとして、顔の下部分の形状とセットの一部としての「パック用化粧料」の形状そのものを表したものであって、「ライフセラ フェイスマスク」、「ライフセラ」、「Lifecella」、「Hisamitsu」のロゴマーク及び「久光製薬」の文字等の文字からなる商標、又は音声によって、それぞれ商品の出所が識別されているものとみるのが商取引の実際に照らして自然というべきであり、また、これらの文字部分より立体的形状部分が需要者に強い印象、記憶を与えているとも認め得ず、さらに、請求人の主張を証する公的機関や同業組合等による客観的な証明等もないから、これら甲各号証によって本願商標それ自体が自他商品の識別標識として認識されたとするには十分とはいえないものである。
したがって、本願商標が使用により識別力を有するに至っているものと認定することはできないというべきである。

4 結 論
してみれば、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標

審理終結日 2000-05-29 
結審通知日 2000-06-09 
審決日 2000-06-22 
出願番号 商願平9-115350 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z0305)
T 1 8・ 272- Z (Z0305)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 有三 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 寺光 幸子
宮川 久成
代理人 高尾 裕之 
代理人 矢野 公子 
代理人 光野 文子 
代理人 佐藤 英二 
代理人 長谷川 芳樹 

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