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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Z09
審判 一部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Z09
管理番号 1019141 
異議申立番号 異議1999-90918 
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2001-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-19 
確定日 2000-04-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第4250021号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4250021号商標の指定商品中「電線及びケーブル、電気通信機械器具、液晶ディスプレイ・その他の電子応用機械器具及びその部品」についての登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第4250021号(以下、「本件商標」という。)は、平成9年9月29日に登録出願され、「マルチドロップシステム」の片仮名文字を書してなり、第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成11年3月12日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人(以下、「申立人」という。)の異議理由
本件商標を構成する「マルチドロップシステム」の文字は、『データ回線の接続形態の一つ一つの回線に多数の端末を接続する方式「分岐方式」』を意味するものと認められるとともに、この分岐方式は、配電,監視,物流等の伝送システムに採用され、例えば「マルチドロップ方式」,「光マルチドロップシステム」のように普通に使用されているものと認められる。
また、前記申立に係る指定商品中の商品には、「マルチドロップ」対応型の商品等をみることもできる。
したがって、本件商標は、前記申立に係る指定商品中の商品であって、マルチドロップに対応する商品に使用する場合には、これに接する者に当該商品の品質,機能等を理解させるにすぎず、他方、マルチドロツプ対応商品以外の商品にこれを使用する場合には、当該商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがある。よって、本件商標は、その指定商品中の「電線及びケーブル、電気通信機械器具,液晶ディスプレイ・その他の電子応用機械器具及びその部品」については、商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号の規定に該当し、その指定商品中の「電池,電気磁気測定器」については、商標法第4条第1項第16号の規定に該当するものであって、商標法第15条第1項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
具体的理由
(イ)そこで検討するに、まず、本件商標は「マルチドロップシステム」の文字を書してなるところ、その構成中の「システム」の文字部分については、「方法」、「方式」、「体系」等を意味するものであって、その取消に係る指定商品はもとより、その指定商品全般につき、自他商品識別の機能を有しないものであることが明らかであることから、本件商標は、「マルチドロップシステム」の構成全体が一体的に把握される場合のほか、前記「システム」の文字部分を除く「マルチドロップ」の文字部分のみが抽出的に把握される場合があるものと認められる。
(ロ)そして、この「マルチドロップシステム」ないし「マルチドロップ」の文字は、以下の各甲号証が示すように、コンピュータを利用したデータ通信に関連する用語であって、『データ回線の接続形態の一つ一つの回線に多数の端末を接続する方式「分岐方式」』を意味するものと認められる。例えば、甲第1号証の「パソコン・データ通信 プロトコル ハンドブック」によれば、データ回線の接続形態の一つである「分岐方式」につき、『一つの回線に多数の端末を接続する方式を「分岐方式」といいます。この方式は「マルチポイント方式」とか「マルチドロップ方式」とも呼び、各端末で送受信するデータ量が少ないときに効果的な方法です。』(第35頁)と説明されているほか、その索引欄(第519頁)においては、「マルチドロップ方式ー分岐方式」と記載されている。また、甲第2号証の「コンピュータ・データ通信技術/データ通信の基礎知識」によれば、「マルチポイント回線」の用語解説(第286頁)において、「単一通信回線に2台以上の端末機が接続されている回線のこと(以下省略)」と説明され、これについて『「マルチ・ドロップ」ともいう。』と説明されている。これら両甲号証は、いずれもデータ通信技術に関する基礎的事項の解説を内容する出版物と認められるところ、これらにおける「マルチドロップス方式」ないしは「マルチ・ドロップ」についての記載は、「マルチドロップ」の語が、コンピュ一タ,デ一タ通信等の分野において、極めて基礎的な技術又は技術用語であることをうかがわせる。
(ハ)甲第3号証乃至甲第8号証は、それぞれ、技報又は講演論文の一部であって、特に「マルチドロップ」を「配電」に利用した技術が紹介されている。
甲第3号証(「住友電気工業(株)技報」1990年9月第137号第36頁〜第42頁)の配電総合自動化用光マルチドロップシステム」には、配電機器の遠隔監視・制御遠隔検針,負荷制御等に、光分岐器を用いた光マルチドロップシステムを採用した技術が詳説されている。
第4号証(平成7年8月「電気学会 電子・情報・システム部門大会講演文集」)には、「配電関連情報伝送用光マルチドロップネットワーク」(P317〜)の論文において、「1本の光ケーブルを分岐カプラにより多分岐する光マルチドロップ方式」について説明されているとともに自動検針システム,設備監視システム,静止画伝送システム等により構成される配電総合自動化システムの構築モデルとその実証が詳説されている。
甲第5号証(平成4年7月,「電気学会 電気・エネルギー部門大会論文集」)には、「光伝送方式による配電自動化の実証結果、光多分岐(マルチドロップ)方式」の論文において、マルチドロップによる配電自動化システムの実用化が報告されているとともに、光ファイバケーブルの分岐のために、光ファイバを撚り合わせて溶着した光ファイバ融着形分岐体を使用する技術や、光ファイバーケーブルの加工,分岐クロージャの構成等についても報告されている。甲第6号証(平成7年12月発行「古河電工時報No97」(別冊P100〜P108)には配電保守監視システムに故障区間標定機能を追加するために、画像,気象等のセンサデータ,故障電流波形等を複合し、1芯の光ファイバーにより伝送することが可能な周波数多重による光マルチドロップ方式を採用した光マルチドロップ伝送装置の開発が報告されている。
甲第7号証(平成6年6月発行「古河電工時報NO.94」(別冊P32 〜P37)には、配電保守用の遠方監視システムとして、TV画像を光マルチドロップ方式により伝送する技術が報告されている。
甲第8号証(平成7年12月発行「古河電工時報NO.97」(別冊P60 〜P67)には、配電自動化システムに採用される光マルチドロップ伝送装置が報告されており、例えばその伝送路形態に関しては、分岐方式とし、4分岐光カップラを用いた旨等も報告されている。なお、甲第6号証乃至甲第8号証に示された光マルチドロップ伝送を利用した配電の保守,監視,自動化の技術は、甲第9号証として示す申立人の事業案内冊子(P8〜P9)にも紹介されている。
(ニ)また、甲第10号証乃至甲第13号証は、本件取消に係る指定商品中の「電気通信機械器具」,「電子応用機械器具」の製品カタログ又はパンフレットであるところ、これらの製品はいずれも「マルチドロップ」に対応するものとされている。例えば、甲第10号証は、(株)理経が販売する通信機器(モデム)「ALM MULTIPORT IV」を示す商品カタログであるが、このカタログには、当該品の特性として「マルチドロップ」の形態で使用されることが記載されている。
甲第11号証は、日本電気(株)製、通信機器(モデム)「DSP9602R」を示すものであるが、その特性として、「高性能高速自動等化器により、マルチドロップシステムにおけるデータスループットの大幅な向上を実現します。」と記載されており、当該製品がマルチドロップシステムに関するものであることを示している。
甲第12号証は、Logitec Corp.が販売する製品(通信機器)「RS-232C バッファマルチプレクサ LMPー350」、「RSー232C 光バッファマルチプレクサ LMP-355」を示すものであるが、それらの特性として「マルチドロップ方式による容易な増設」、「マルチドロップ方式で最大1275台までの(中略)接続が可能」とそれぞれ記載され、これらの製品がマルチドロップ方式に適するものであることを示している。
甲第13号証は、AMD社製「マイクロコントローラ Am186ES,Am188ES」(電子応用機械器具)を示すものであるが、その優れた機能性に関し、「マルチドロップ・9ビット・シリアル・ボート・プロトコル」と記載されている。
(ホ)ところで、本件商標「マルチドロップシステム」については、甲第14号証として示す平成10年11月26日付け拒絶理由通知においても、特許庁より「電気の供給と信号の伝送を同じ電線で行うことができる省配線システムで、例えば、工場内の製造工程や物流ラインに沿って設置してある多数のセンサーを二本の電源線を介してコンピュータやシーケンサー(逐次制御装置)と結ぶことのできるシステムであることを認識する旨の認定がされている。
(ヘ)以上のように、「マルチドロップ」の技術は、配電,監視,物流等、多方面の伝送システムに採用されているものと認められるとともに、「マルチドロップ」の文字は、「マルチドロップシステム]、あるいは「光マルチドロップシステム」,「マルチドロップ方式」のように使用される場合を含め、本件登録異議の申立に係る指定商品を取り扱う分野において、前記意味合いのものとして普通に使用されているものであることが明らかである。
(ト)したがって、本件商標「マルチドロップシステム」は、これを登録異議の申立に係る商品中「電線及びケーブル,電気通信機械器具,液晶ディスプレイ・その他の電子応用機械器具及びその部品」に使用した場合には、これに接する者に、当該商品がマルチドロップシステムに採用可能な商品であることや、マルチドロップ対応品であること、ないしはマルチドロップの実施に好適なものであることを理解させるに過ぎないものと認められるから、商標法第3条第1項第3号の規定に該当する。
他方、本件商標は、これを前記登録異議の申立に係る商品中のマルチドロップシステム採用品又は非対応品等に使用するときは、これに接する者に、当該商品があたかも「マルチドロップ採用品ないしは対応品」であるかのように、商品の品質,機能につき誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号の規定に該当する。
(チ)また、本件商標「マルチドロップシステム」は、これを登録異議の申立に係る商品中の「電池、電気磁気測定器」に使用した場合には、これら商品が極めて汎用的なものであって、例えば甲第3号証乃至甲第9号証のような配電用光マルチドロップシステム、あるいは、甲第14号証のようなマルドロップシステム等に、システム構成機器のー部として使用されることが多いものと認められることから、これに接する者に、当該商品があたかも「マルチドロップシステム」好適品であるかのように、商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがある。してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第16号の規定に該当する。
(リ)以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の商品「電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気通信機械器具,液晶ディスプレイ・その他の電子応用機械器具及びその部品」については、商標法第15条第1項の規定に違反して登録されたものであって、同法第43条の2第1号の規定により、その登録は取り消されるべきものである。
3当審の取り消し理由
当該「マルチドロップシスチム」の語は、「デ一タ回線の接続形態の一つであり、一つの回線に多数の端末を接続する方式『分岐方式』を意味するものと認められると共に、この方式は、配電、監視、物流等の伝送システムに採用され、『マルチドロップ方式』、『光マルチドロップシステム』のように普通に使用されているものである。そうとすれば、「マルチドロップシステム」の文字よりなる本件商標を、その指定商品中「電線及びケーブル,電気通信機械器具,液晶ディスプレイ」について使用しても、単にその商品の品質・効能・用途等を表示するにすぎず、また、これ以外の「電子応用機械器具、等」の商品について使用した場合には、品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、「電線及びケーブル,電気通信機械器具,液晶ディスプレイ・その他の電子応用機械器具及びその部品」について、商標法第3条第1項項3号、同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものと認められる。
4 商標権者は、上記3の取り消し理由に対して、指定期間内に何ら意見を述べていない。
5 当審の判断
よって判断するに、当該「マルチドロップシスチム」の語は、「デ一タ回線の接続形態の一つであり、一つの回線に多数の端末を接続する方式『分岐方式』を意味するものと認められると共に、この方式は、配電、監視、物流等の伝送システムに採用され、『マルチドロップ方式』、『光マルチドロップシステム』のように普通に使用されているものである。そうとすれば、「マルチドロップシステム」の文字よりなる本件商標を、その指定商品中「電線及びケーブル,電気通信機械器具,液晶ディスプレイ」について使用しても、単にその商品の品質・効能・用途等を表示するにすぎず、又これ以外の「電子応用機械器具及びその部品」について使用した場合には、品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、登録異議申し立てに係る指定商品中、「電線及びケーブル,電気通信機械器具,液晶ディスプレイ・その他の電子応用機械器具及びその部品」について、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものと認められるので、同法第43条の3第2項によりその登録を取り消すものとし、その余の指定商品については取り消すべき理由がないから同第4項によりその登録を維持する。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-02-16 
出願番号 商願平9-162613 
審決分類 T 1 652・ 13- ZC (Z09)
T 1 652・ 272- ZC (Z09)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 中田 みよ子 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 江崎 静雄
沖 亘
登録日 1999-03-12 
登録番号 商標登録第4250021号(T4250021) 
権利者 キヤノン株式会社
商標の称呼 マルチドロップシステム、マルチドロップ、ドロップシステム、ドロップ 
代理人 河野茂夫 
代理人 丸島 儀一 
代理人 西山 恵三 

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