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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z19
管理番号 1017166 
審判番号 審判1998-17902 
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-09 
確定日 2000-05-10 
事件の表示 平成9年商標登録願第190091号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第19類「コンクリート製品用吊り下げ係止具」を指定商品として、平成9年12月26日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、指定商品の形状を表したものであるから、これをその指定商品に使用したときは、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有しているときには、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」30頁においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、指定商品との関係において、コンクリート二次製品の移動・運搬・施工等の際に使用される「コンクリート製品用吊り下げ係止具」の形状の一形態を表したものとみられるものであって、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
(3)請求人は、本願商標の形状については、少なくともコンクリート製品を吊り下げる手段として機能すれば良く、その形状・構造は様々な方法がとり得、本願商標のような外形的特徴をとる必然性はなく、本願商標の取引者、需要者は、本願商標をみれば、その商品が請求人の製造・販売に係る商品であると認識し、他社による同種の商品とは明確に区別できており、本願商標の形状は、自他商品識別標識としての機能を果たしている旨主張している。
しかしながら、商品の形状は、その機能、即ち本願にあっては、本願商標に係る立体的形状が示す係止具はコンクリート製品を吊り下げる手段としての機能を果たすために採択されたものであることは、その形状からみて明らかであるということができる。
しかして、本願商標に係る商品の形状が、他人によるこの種商品の形状とは異なるものであっても、それが、「コンクリート製品用吊り下げ係止具」としての機能に関わるものである以上は、これに接する取引者、需要者は、当該商品の形状の範囲のものと認識するにすぎないとみられるものであり、請求人の主張する外形的特徴を有するという点をもって、直ちに本願商標に関し自他商品の識別性に影響を与えるものとは認め難いことは前記(1)で述べたとおりである。
また、商品又は商品の包装の形状については、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度の導入に当たっては、商標法第4条第1項第18号(商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状)等が設けられ、前掲工業所有権審議会答申でも、「…、指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること」としている(前掲答申P31参照)。
そして、商品等の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときに、識別力を認めて登録することは前記(1)で述べたとおりであるが、請求人は「本願商標の取引者、需要者は、本願商標をみれば、その商品が請求人の製造・販売に係る商品であると認識し、他社による同種の商品とは明確に区別できており、自他商品識別標識としての機能を果たしている」旨述べるものの、その証左を示してはいない。

4 結論
以上のとおり、本願商標は指定商品の形状を表したものであるとし、商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定の認定・判断は妥当なものであって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
本願商標


審理終結日 2000-02-24 
結審通知日 2000-03-07 
審決日 2000-03-23 
出願番号 商願平9-190091 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z19)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 栄二 
特許庁審判長 工藤 莞司
特許庁審判官 宮川 久成
寺光 幸子
代理人 恩田 博宣 

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