ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 Z0520 |
---|---|
管理番号 | 1017162 |
審判番号 | 審判1998-17897 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2000-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-11-09 |
確定日 | 2000-05-17 |
事件の表示 | 平成 9年商標登録願第165918号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、別掲した構成からなり、第5類「薬剤」及び第20類「プラスチック製ふた」を指定商品として、平成9年10月13日に立体商標として登録出願されたものである。 2 原査定の理由 原査定は、『本願商標は、外観上その形状に多少のデザイン化若しくは機能上の工夫が施されていることは認められるが、第5類に係る指定商品との関係からみれば、「薬剤」の包装(収納容器)の一形態を示す立体的形状を、また、第20類に係る指定商品との関係からみれば、包装容器の「プラスチック製ふた」の形状そのものを認識させるに止まるものであるから、これをそれぞれの指定商品について使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状、若しくは包装用容器のふたを普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。』旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1) 平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的に表された標章であって、商品又は役務について使用をするものを登録する立体商標制度を導入し、その中には商品若しくはその包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含まれるとしても、商品等の形状は、それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。 そして、この商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有しているものであるときは、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。 また、商品等の形状は同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人も使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。 そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係ない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標は、使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。 立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても、「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。 また、意匠法等により保護されている形状について重ねて又はその権利消滅後商標登録することは知的財産制度全体に不合理な結果をもたらすこととなる。 (2) これを本願についてみれば、本願商標は、液状又は粉状等に係る薬剤を収納する容器(収納容器)の蓋の形状としてその一形態を表すものであるから、これを指定商品「薬剤」に使用しても、取引者、需要者は、単に薬剤に係る収納容器の蓋と認識するにすぎないものと、また、これを指定商品「プラスチック製ふた」に使用しても、取引者、需要者は、単に容器の蓋と認識するにすぎないものと判断するのが相当である。 (3) (イ)請求人は、本願商標は従来にない斬新的な形状が付与されている旨主張するが、商品に係る収納容器の蓋の形状は、本来的には収納容器の蓋としての機能、すなわち、本願にあっては液体又は粉状等に係る薬を収納した容器の封をするという機能を果たすため、及び収納容器の一部又はその蓋としての美感を高めるために採択されるのものであることは前示のとおりであり、請求人が主張する本願商標に係る収納容器の蓋の形状の斬新性も、その機能又は収納容器の一部としての美感に係るものであると認められる。そして、通常の商品と異なる形状であっても、それが商品の機能又は美感に係るものである以上は、これに接する取引者、需要者は、当該商品の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当であり、請求人が主張するかわいく、ファッショナブルなイメージは美感に係るものである。 また、本願商標よりは「ハナガラ(花)」等の称呼及び観念を生ずる旨主張するが、本願商標の上部を形成する部分は花びら如きの形状をしているものの、これより直ちに「ハナガラ(花)」等の称呼及び観念を生ずるとは認め難く、請求人も主張するのみで立証するところがない。 してみれば、本願商標は、これを指定商品に使用しても、単に商品に係る収納容器の蓋の形状を表示するにすぎないものであり、自他商品の識別標識足り得ないというべきであるから、請求人の主張は採用することができない。 因みに、甲第1号証に係る立体商標は商標公報の右下に係る商標に表示された「図形」部分に自他商品の識別力があるとされたものと解される。 なお、立体的形状からなる商標であっても、商品又はその包装の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」としている(前掲答申P31参照)。 (ロ)請求人は、本願商標について、「包装用容器の蓋」として匠登録を受けた旨主張し、甲第2号証を提出しているが、このような形状について商標登録を認めるべきでないことは前示のとおりである。 (ハ)商品又はその包装の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときに、識別力を認めて登録することは前示のとおりである。 しかしながら、本願商標については、この点について主張、立証するところがない。 4 結論 以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消す限りでない。 よって結論のとおり審決する。 |
別掲 |
本願商標 |
審理終結日 | 2000-02-24 |
結審通知日 | 2000-03-07 |
審決日 | 2000-03-29 |
出願番号 | 商願平9-165918 |
審決分類 |
T
1
80・
13-
Z
(Z0520)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 良弘、泉田 智宏 |
特許庁審判長 |
工藤 莞司 |
特許庁審判官 |
寺光 幸子 宮川 久成 |
代理人 | 菊池 新一 |
代理人 | 菊池 徹 |