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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない 126
管理番号 1015310 
審判番号 審判1993-16810 
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1993-08-20 
確定日 2000-05-22 
事件の表示 平成4年商標登録願第47427号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別紙に示すとおり「企業市民白書」のの文字を横書きに書してなり、第26類「印刷物、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成4年3月31日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶理由
原審において、『本願商標は、政府の公式の調査報告書を認識させる「白書」の文字を有してなるので、これを出願人が商標として使用するときには、該商品が政府発行の商品であるかの如く認識され、商取引における秩序を乱すおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。』旨認定して、本願を拒絶査定したものである。
3 請求人の主張
請求人は、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものではないと主張し、参考文献1ないし7(枝番を含む)を提出している。
(1)本願の拒絶理由通知について
「政府発行の商品であるかの如く認識される」事実を認定する証拠はなく、又それが顕著な事実でもない。
本願商標は政府発行の刊行物に付した名称そのものではなく、政府発行の刊行物の名称にはない。
ここで、拒絶理由は二つの点において誤りがある。
その一点は、「該商品が政府発行の商品であるかの如く認識され」とした事実認定自体の誤りである。
その二点は、「商取引における秩序を乱すおそれがあるものと認める。」ことを直ちに公序良俗違反とした法解釈の誤りである。
(2)上記第一点について
「白書」の文字は、参考文献1(判例時報の写し)によれば、政府内部の取扱申し合わせに基づき使用されてきたものであることは認められる。
そして、政府発行の「白書」は大蔵省印刷局が発行し、その販売ルートも限られており、読者層も特殊である。一方、社会一般においては、「白書」、「青書」のもつ良好なイメージを使用するためさまざまな経済取引分野、さらには社会文化的活動(例えば映画の題名「いちご白書」など)において一般的に使用されてきた。
印刷物の取引分野においては、社団法人経済団体連合会が「社会貢献白書」を(参考文献2)、社団法人企業メセナ協議会が「メセナ白書」を(参考文献3)、社団法人日本青年奉仕協会が「ボランティア白書」(参考文献4)をそれぞれ発行しており、それらは一例にすぎず、出版物における名称においては、「白書」、「青書」を含む各種の名称が多量に使用されている。参考文献5は白書を含む題号の図書目録であるが、おびただしい数の印刷物が「白書」名義として民間から出版されている。
そして、上記参考文献の出版物の発行において、一般需要者がそれらが政府刊行の出版物であると誤認するおそれは全くないと理解できる。なぜなら、仮にかような誤認のおそれがある場合は、上記社団法人の監督官庁(政府)が政府発行の商品と誤認するおそれがあるとして指導があるはずである。
さらに、認可法人以外の出版社が発行する一般の書籍において、白書を含む名称の書籍が極めて多量に発行されている事実をみても、一般社会においては、「…白書」は政府刊行物というより、統計、データ、報告書等の内容を示す出版物として理解されていることを示すものであり、出版市場において政府刊行物との間で出所の誤認を生じたというケースはない。
かように、「白書」なる言葉は政府刊行物において使用された歴史的由来はあるにしても、現在社会の一般国民の認識においては、統計、データ、報告書等の内容を示す出版物として一般名称化している状況にあると考えられる。
(3)上記第二点目の商取引の秩序と公序良俗の関係について、商取引秩序の混乱のおそれは、直ちに公序良俗違反に該当するものではない。本願商標を指定商品に使用した場合、社会通念上の一般的道徳観念の観点から容認しがたいと具体的に判断できるか否かが公序良俗の問題となるのであって、単なる取引秩序一般をもって公序の内容となるものではない。
拒絶理由の論理からすると、現代社会において、政府(大蔵省印刷局)以外から出版されている「白書」類の出版物すべては国民の一般的道徳観念から容認しがたいと判断することに等しい。あまりにも国民一般の社会常識に反することになる。
昭和53年行ケ第194号判決(東京高裁昭和55年1月30日判決言渡)のケースにおいては、「CABINET」なる商標を使用することは品質誤認のおそれがある(取引秩序の混乱のおそれがある。)としても直ちに公序良俗を害するものではないとしたものである。公序良俗の該当性の判断は極めて具体的判断でなければならず、保護すべき公序良俗の内容が確定されていなくてはならない。
(4)仮に、単に商取引の秩序を乱すおそれがあれば商標法第4条第1項第7号公序良俗違反に該当するとしても、本願商標は以下の如く「商取引の秩序を乱すおそれがある商標」とは認められない。
まず、本願商標の出願人は社団法人日本フィランソロピー協会という社会貢献活動に寄与する公共性の高い団体である。本願商標の当初の出願人は高橋克人であり、当初出願人は社会貢献活動を通じて社会に貢献し、同活動の報告の目的のため、印刷物の商品に本願商標を使用することを意図していた(参考文献6の1〜4)。
そして、その使用態様として、設立予定の社団法人が発行する予定の印刷物に使用することを目途していたものである。その後、平成10年9月25日付で高橋克人から、設立予定であった社団法人日本フィランソロピー協会に譲渡され、現在に至っているものである。社団法人日本フィランソロピー協会の事業内容その他の概要は非常に公共性の高い事業内容、出版活動を行うものである。
そして、「白書」の概念は、上述の如く、国民一般に統計、データ、報告書等の内容を示す出版物と理解されるのが通常であり、少なくともある程度の公共性を有する団体が発行する統計、データ、報告書等の内容を示す出版物と解釈されるのが社会的通念であって、政府の公式の調査報告書に限定して解釈されるものではない。
現実の出版活動ひいては商取引においても、参考文献2ないし5に示されるようにある程度の公共性がある団体が出版物に「白書」の文字を付して出版活動を行っていることが状態であり、このような活動は社会公共の利益に資することがあっても、何ら商取引の秩序を乱し公序良俗に反するようなことはあり得ない。
そして、かような出版活動に商標法の保護が与えられないのは公共の利益にとってマイナスとなり、むしろ商取引活動を阻害し産業の発達に寄与する商標法の精神にも反するものである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号について
上記法条に該当する公の秩序または善良な風俗を害する商標とは、商標自体が矯激な文字や卑狸な図形など秩序又は風俗を乱すおそれのある文字、図形、記号又はその結合等から構成されている場合及び商標自体はそのようなものでなくても、これをその指定商品に使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反する場合がこれに該当するものと解すべきである(参考:昭和26年(行ナ)29東京高等裁判所昭和27年10月10日判決)。
そうとすれば、仮に原査定における拒絶条文の適用に齟齬があるとしても、後述する理由により商取引の秩序を乱すおそれがある場合には、本条に該当するものと判断するのが相当である。
(2)本願商標の使用が商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるか否かについて
「白書」は、政府が政治、経済、社会の実態や政府の施策の現状を広く国民に知らせることを目的としたもので、白書等の取扱いについては、昭和38年10月24日事務次官会議申し合わせ「政府刊行物(白書類)の取扱いについて」に基づき、その内容・編纂及び公表についての責任体制、手続等が定められ、現在、公務員白書、中小企業白書、観光白書など各省庁から38種類の白書が発行されている。世上いわゆる白書と呼ばれるもののうちには、法律上、特にその作成が義務づけられておらず、各省庁によって、任意に作成されているものと法律上、講じた施策等について法律等に基づいて国会等に対する報告が義務づけられている場合にその報告書を白書として刊行しているものがあり、これらは、深く国民に浸透しているものと判断するのが相当である。
また、本願商標を構成する「企業市民」の文字は、「Corporate Citizenship」の訳で「企業は地域社会の責任ある一員であり、良き市民でなければならないという考え方」を意味する(「現代用語の基礎知識1992版」自由国民社発行)語であり、今日、企業の社会責任の重要性が増している現状よりすれば、「企業市民白書」の文字は、「企業市民」についての現状」報告を国民に周知させることを主眼としてとりまとめられた年次報告として発表される文書(白書)の意を表現したものとして理解されるというを相当とするところである。
そうとすれば、本願商標を例えば「印刷物」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は政府発行の刊行物であるかの如く、誤認するおそれがあり、ひいては、商取引の秩序を乱し得るおそれがあるものといわなければならない。
なお、請求人は、「白書」を含む名称の題号が多数図書目録に掲載されており、その本が民間から出版されていると主張しているが、参考文献5(図書目録データベースの検索結果の写し)には、「白書」の名称の付く出版物の大多数は、官公庁の監修、作成したものであり、「白書」の文字出版物を使用した場合、その商品の品質について誤認を生ずるおそれがあることを示しているものであるから、請求人の主張を採用することはできない。
したがって、本願商標を商標法第4条第1項7号に該当するとして拒絶した原査定は、適正なものであるから、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記

審理終結日 1999-09-07 
結審通知日 1999-09-24 
審決日 1999-10-04 
出願番号 商願平4-47427 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (126 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 良雄深沢 美沙子 
特許庁審判長 板垣 健輔
特許庁審判官 内山 進
杉山 和江
商標の称呼 1=キギ+ヨ-シミンハクシ+ヨ 2=キギ+ヨ-シミン 
代理人 元井 成幸 
代理人 高橋 隆二 
代理人 菅 直人 

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