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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない 033
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 033
審判 全部無効 観念類似 無効としない 033
管理番号 1015194 
審判番号 審判1998-35647 
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-18 
確定日 2000-02-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第3369856号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3369856号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成6年11月7日登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同10年7月24日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
2 請求人の引用商標,
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第45256号商標(以下、「引用A商標」という。)は、別紙(2)に表示したとおりの構成よりなり、明治44年2月15日登録出願、第38類「清酒」を指定商品として、同44年3月23日に設定登録され、その後、5回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第380356号商標(以下、「引用B商標」という。)は、別紙(3)に表示したとおりの構成よりなり、昭和23年7月7日登録出願、第38類「清酒」を指定商品として、同24年12月20日に設定登録され、その後、3回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第1010683号商標(以下、「引用C商標」という。)は、別紙(4)に表示したとおりの構成よりなり、昭和45年11月20日登録出願、第28類「清酒」を指定商品として、同48年4月26日に設定登録され、その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第8号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきである。
▲1▼本件商標と引用C商標並びに同A商標及び同B商標の各文字部分とでは、冒頭に「筑後の」という言葉が付されているか否かの差異がある。
しかし、この「筑後」という言葉は、現在の福岡県南部の地域を示す旧国名(甲第5号証)であるから地名であり、「筑後の」という言葉は、単に指定商品について産地や販売地を表示するにすぎないもので要部とはならず、自他商品の識別性を持たない部分である。
そうとすると、自ずと取引の実際や経験則に徴するまでもなく、本件商標に接する取引者、需要者は、産地、販売地の観念「筑後」地方と相俟って、「筑後の」を棄捨して、親しみやすく強く印象づけられる「寒梅」の部分を摘出するという取捨選択により、「寒梅」の文字より生ずる称呼、観念をもって取引に資することは明らかであるから、本件商標と引用A商標乃至同C商標(以下、「引用各商標」という。)とは、称呼及び観念において同一又は類似する商標に該当する。
▲2▼本件商標と同じく「『旧国名』プラス『寒梅』」の商標である「尾張の寒梅」の登録無効審判事件については、審決がなされている(甲第6号証の2)が、当該審決中において、特許庁も「尾張の寒梅」が、引用各商標に類似し、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきであるとしている。
また、現実に取引者、需要者に該当する酒小売店が、本件商標を付した紙パック入り清酒を「筑後の寒梅」としてではなく、「筑後の」を省いて「寒梅パック」として販売している事実(甲第7号証及び同第8号証)も存在する。
▲3▼よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきである。
(2)本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきである。
▲1▼請求人の所有に係る商標「寒梅」は、全国的に知られており、本件商標の如く「筑後の」の文字を「寒梅」の文字の頭に冠して被請求人が酒類「筑後の寒梅」を販売するとなれば、斯かる商品につき、取引者、需要者間においてその商品の出所について混乱を生じ、他人たる請求人の業務に係る商品である清酒「寒梅」と混同を生ずるおそれのあることは必至である。
▲2▼現実にも、被請求人の紙パック入り清酒が、「筑後の寒梅」としてではなく「寒梅パック」として販売に供されていて、あたかも請求人の商品であるかの如く取り扱われている事実(甲第7号証及び同第8号証)が存在している。
▲3▼よって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでないと仮定したにせよ、本件言商標は、同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきである。
4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁して、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第6号証を提出している。
(1)本件商標が、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるとする請求人の主張について
請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反するとして、前記3の(1)▲1▼の主張とその証拠(甲第5号証)を挙げているが、「筑後」の文字が旧国名を表すことは事実として認められるものの、それが地名として認識されたとしても、直ちに地名が産地、販売地を表示するものとして省略され、地名以外の部分が自他商品識別標識として取引に資されることは、以下の理由により有り得ない。
▲1▼まず、「筑後」が指定商品である「酒類」やその原料である「米」の産地、販売地としてよく知られているという事実はなく、請求人も何らそのことについては立証していない。
加えて、清酒が地域性の強い商品といった性質からすると、使用される商標中に地名が含まれている場合、当該地で生産された商品であることをある程度暗示させることはあるとしても、当該地名を直ちに産地等の表示と理解せず、むしろ、地名と結合された他の語とを一体のものとして把握し、全体として自他商品の識別標識として認識する場合が多い。
▲2▼次に、請求人は、本件商標が「寒梅」の文字をもって取引される可能性がある証拠として、「『旧国名』プラス『寒梅』」の商標である「尾張の寒梅」の登録無効審判事件についての審決(甲第6号証の2)を挙げているが、この審決理由を精査してみると、本件商標とは構成が類似するものであっても、必ずしも事案を同じくするものとはいい得ず(東京高等裁判所での審決取消訴訟の裁判において、被告が欠席状態で判決されたものであり、また、登録無効審判で被請求人が何ら答弁せずに審理されたものであって、職権探知しても自ずから限界があるためである。)、この証拠は本件商標について採用するに値しない。
このことは、指定商品「酒類」において、本件商標と同じく語頭に地名を付した商標とその地名を除いた商標の審決例(平成1年審判第19084号;乙第1号証)、また、本件と指定商品を異にするにしても、本件と同様に一般需要者を対象とした商品を指定商品とした商標の審決例(昭和57年審判第208434号、同59年審判第1675号及び平成2年審判第17953号;乙第2号証乃至同第4号証)等からも明らかなように、『地名』プラス『ある言葉』」の構成であっても、商標の外観、称呼及び観念から商標全体をもって類否判断がなされ、さらに、商品の産地や取引の実情等は商品との関係において商品毎に総合的に判断されているのであって、「地名」部分があるからといって画一的にその部分が識別力をもたず、棄捨されるとはいえない。
甲第7号証及び同第8号証については、被請求人の清酒「筑後の寒梅」が「寒梅パック」と表示・広告され、販売されていることが事実であっても、それが直ちに本件商標から「筑後の」を棄捨して、「カンバイ」(寒梅)の称呼、観念をもって取引されていることには当たらず、表示欄が狭いとか、「パック入り」を強調し顧客の眼を引くために表示されたものとみるのが相当で、現にパックには「筑後の寒梅」と商標が大きく表示されている事実からも明らかであり、本件について証拠として採用するに値しない。
▲3▼また、特に本件指定商品の性質からすれば、一般に原料水や米の産地により味や品質が異なるものと認識されているため、取引者や需要者は、その味や品質等を吟味し、産地を目安とし、商品購入の判断材料としているのが相当であり、その際、商品のラベル(商標)とを合わせて商品を識別し、商品を購入していると見るほうが自然である。加えて、地域性の強い商品といった性質をもつからこそ、清酒の名称に地名が含まれている場合には、取引者、需要者は地名にも充分に着目すると考えられる。そうとすれば、この場合「『地名』プラス『ある言葉』」の構成をとることで、「地名」の部分も自他商品の識別機能を果たしているものと認められ、商標を地名を含めて一体と把握し、一ブランド(商標)として認識されるのが常である。
したがって、このような取引の実情からすれば、本件商標が「筑後の寒梅」と認識され、商標「寒梅」とは別異の商品として取引されていることは明らかである。
▲4▼以上の点をふまえて、本件商標と引用各商標の類否性について判断した場合、両者は、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても紛れ得るものでなく、類似のものとはいえない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(2)本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるとする請求人の主張について
請求人は、「請求人の所有に係る『寒梅』は、全国的に知られている。」と著名性を主張するが、本件商標の登録出願日である平成6年11月7日日以前に著名であることを立証する具体的な証拠、例えば、引用各商標を使用する商品の年間製造量、年間売上高、販売経路、販売地域やテレビコマーシャル等各種媒体を使用した営業努力の資料等を何ら提示していない。
また、請求人が挙げる甲第7号証及び同第8号証についても、被請求人の清酒「筑後の寒梅」が「寒梅パック」と表示・広告され、販売されていることが事実であっても、本件商標から「筑後の」を棄捨して、「カンバイ」(寒梅)の称呼、観念をもって取引され、混同を生じていることを立証するものではない。さらに、「寒梅パック」が、請求人の業務に係る商品である清酒「寒梅」として、取り扱われている事実も立証されておらず、これら甲号証は、本件について採用するに値しない。
以上のように、本件商標と引用各商標が明らかに別異のものと判断される以上、本件商標をその指定商品に使用しても、請求人又は同人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(3)以上から明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
5 当審の判断
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて
本件商標及び引用各商標の構成は、それぞれ別紙(1)乃至同(4)に表すとおりであるから、外観上は明らかに区別し得る差異を有するものである。
次に、これを称呼、観念上よりみるに、本件商標は、前記したとおり「筑後の寒梅」の文字を書してなるところ、該構成文字は、同書、同大、等間隔にまとまりよく一連に書してなるものであって、全体をもって称呼しても、淀みなく一連に称呼し得るものである。
ところで、商品「日本酒」については、一般に原料(米)の産地により味や品質が異なると認識されているため、その名称(商標)に地名を付し、産地名を表すことが行われているのが実情である。
そして、上記実情よりすれば、例え本件商標中の「筑後」の文字部分が、「旧国名。今の福岡県の南部」(甲第5号証;株式会岩波書店:発行「広辞苑第四版」)を表したものであるとしても、かかる構成においては、構成中の「寒梅」の文字部分のみが独立して自他商品の識別機能、を果たすものとはいえず、全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるものというのが相当である。
してみると、本件商標よりは、その構成文字に相応して「チクゴノカンバイ」(筑後において寒中に咲く梅)の称呼、観念のみを生ずるものといわなければならない。
他方、引用A商標及び同B商標は、その構成中に「寒梅」の文字が、中央に大きく顕著に表されてなるものであるから、取引者、需要者が強い印象を受ける当該文字部分より生ずる「カンバイ」(寒中に咲く梅)の称呼、観念をもって、取引に当たるものというのが相当であり、また、引用C商標は、「寒梅」の文字を書してなるものであるから、該文字に相応して「カンバイ」(寒中に咲く梅)の称呼、観念を生ずるものである。
したがって、引用各商標よりは、「カンバイ」(寒中に咲く梅)の称呼、観念を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「チクゴノカンバイ」の称呼と、引用各商標より生ずる「カンバイ」の称呼とを比較するに、両称呼は、その構成音数を著しく異にするものであるから、称呼上相紛れるおそれのないものである。さらに、本件商標よりは、「筑後において寒中に咲く梅」の意味合いを、他方、引用各商標よりは、「寒中に咲く梅」の意味合いを生ずるものであるから、両者は、観念においても明らかに相違するものである。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
請求人は、「『旧国名』プラス『寒梅』」の構成文字よりなる商標に関する審判事件(平成8年審判第7364号)の審決(甲第6号証の2)において、特許庁も件外登録商標が、引用各商標に類似すると認定しているから、本件商標も引用各商標に類似し、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである旨主張している。しかしながら、前記審判事件についての審決は、東京高等裁判所での審決取消訴訟事件(平成10年(行ケ)第86号)において、被告が出頭しないため請求原因事実を自白したものとみなされて審決を取り消した判決に基づき審理したものであるから、必ずしも事案を同じくするものとはいい難く、この点を述べる請求人の主張は採用の限りでない。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて
本件商標は、全体で一体不可分のものとして認識し、把握されるものであって、その構成中の「寒梅」の文字部分のみが独立して認識される商標とは認められず、引用各商標とは別異の商標であること前記したとおりである。
請求人は、被請求人の業務に係る清酒「筑後の寒梅」が「寒梅パック」と表示・広告され、販売されているとして甲第7号証及び同第8号証を提出し、かつ、「寒梅」の文字或いは該文字を要部とする引用各商標が、請求人の業務に係る商品「清酒」に使用され、全国的に知られていた旨主張しているが、「寒梅パック」の表示については、当該紙パック容器に別途大きく表示された「筑後の寒梅」商標又は同製品の副次的表示と認め得るものであって、その点をもって直ちに請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるものとはいい難く、また、引用各商標が、本件商標の登録出願の時(平成6年11月7日)に既に取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたことを立証すべき具体的な証拠、例えば、引用各商標の使用開始時期、期間及び地域等、並びに、これを使用する商品「清酒」の生産量、売上高及び販売地域等、さらに、広告宣伝の方法、回数及び内容を何ら提示していない。
以上よりすれば、引用各商標が、請求人の業務に係る商品「清酒」に使用されている商標であるとしても、これが本件商標の登録出願時に、すでに取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたものとは認め難く、ほかに本件商標と引用各商標とが紛れ得るとする事情は見出せない。
してみれば、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、請求人或いは同人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものといわなければならない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものということができないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記




審理終結日 1999-05-25 
結審通知日 1999-05-28 
審決日 1999-06-04 
出願番号 商願平6-113073 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (033 )
T 1 11・ 262- Y (033 )
T 1 11・ 271- Y (033 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 幸一小林 薫 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 宮川 久成
澁谷 良雄
登録日 1998-07-24 
登録番号 商標登録第3369856号(T3369856) 
商標の称呼 1=チクゴノカンバイ 2=カンバイ 
代理人 吉村 仁 
代理人 榎本 一郎 
代理人 吉村 悟 

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