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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 009
管理番号 1015192 
審判番号 審判1997-21443 
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-12-22 
確定日 2000-02-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第3213551号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3213551号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件商標登録第3213551号に係る商標(以下「本件商標」という)は、別紙に表示するとおり「SANWA」の欧文字を横書きしてなり、平成6年2月21日商標登録出願、第9類「タクシーメーターその他の測定機械器具」を指定商品として平成8年10月31日に登録されたものである。
第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
結論同旨の審決
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第10号違反について
請求人会社(三和テスメックス株式会社、三和エム・アイ・テクノス株式会社、三和電気計器株式会社)は、昭和16年設立された三和電気計器製作所を創始とし、当時急速に家庭用として普及し始めたラジオ受信機の修理用の診断器として回路計(サーキット・テスタ)の製造・販売を行っていたが、その後、分野を温度計、回転計、照度計、光束計及び表面粗さ測定器に拡大し、これら商品には「SANWA」の商標を用いて製造・販売の業務を行ってきた。
その結果、本件商標の出願時(平成6年2月21日)には、商標「SANWA」は、請求人の業務に係る温度計、回転計、照度計、光束計及び表面粗さ測定器などの測定機械器具を表示するものとして、需要者の間に周知されるに至っていた。
本件商標は、請求人の商標「SANWA」と実質的に同一の商標であり、その指定商品は、請求人の商標「SANWA」を使用してきた商品と同一又は類似する商品に該当する。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
請求人の商標「SANWA」は請求人の業務に係るマルチテスタ、電子応用測定器、L.C.R.測定器、素子・材料用測定器、ロジック測定器などの各種テスタ又はメータを表示する商標として、本件商標の出願前、需要者の間に周知されていた。
本件商標は、請求人の上記商標と実質的に同一である。その指定商品は、各種の測定機械器具であり、請求人が商標を使用している前記の各種テスタ等と製造、流通、用途の各分野を共通にすることの多い商品であって、互いに関連性の強い商品である。本件商標がその指定商品に使用されるときは、それら商品が請求人の業務に係る商品であるか、又は請求人と何らかの関連を有する者によって製造・販売されている商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録をされたものである。
3 答弁に対する弁駁
(1)請求人の商標「SANWA」の使用が、たとえ昭和63年9月以前、他人の商標権を形式上侵害する状態にあったとしても、その使用は公然、かつ、平穏に行われており、他人から差止請求その他一切の苦情・抗議等を受けることなく継続的になされていたのであるから、その使用は請求人の使用としての効力を生じており、その使用によって周知性を取得するのに支障はない。
昭和30年以降の請求人の商標の使用については、甲第3号証の3、同第4号証の3ないし15、同第5号証の1ないし24、同第30号証によって立証されている。
(2)「SANWA」の商標を用いて回路計等の計測機器の事業を行っているのは、請求人のみである。
本件商標の指定商品は、タクシーメーターを含む測定機械器具であるところ、請求人の回路計、温度計等は、全国の代理店等、その系列の販売店を経由してユーザーの手にわたる(甲第30号証)。これら代理店、販売店は、請求人の回路計等のみならず、他社の計測機器も取り扱っている。また、請求人のユーザーは、大手だけでなく、全国の中小を含むメーカー、建設業者、工事業者等であり、請求人の回路計、温度計等の他、多くの他社製の測定機械器具を業務に用いている。
したがって、本件商標の指定商品は、請求人が商標「SANWA」を使用している計測機器、測定機器と流通経路、需要者(ユーザー)を同じくするから、本件商標をその指定商品に使用するときは、請求人の商品と混同を生ずる。
4 証拠方法
請求人は、審判請求書に記載のとおり証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証(枝番号を含む)を提出した。
第3 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決
2 答弁の理由
(1)商標法第4条第1項第10号違反について
▲1▼請求人は、本件商標の登録出願(平成6年2月21日)前の昭和49年頃より、同人が引用する商標(甲第2号証の1に示すとおり「sanwa」の欧文字よりなるもの、以下「引用商標」という。)を測定機械器具の概念に属する商品に使用していたことは認める。
しかし、引用商標の使用商品である電気磁気測定器の概念に属する回路計や電子応用機械器具の概念に属する商品等は、本件商標の指定商品とは非類似の商品である。そして、引用商標の商品の使用例は、会社案内のパンフレット、総合カタログがほとんどであるところ、それらの発行部数、頒布先等は不明。引用商標の使用商品について新聞、雑誌への広告回数も不明。技術教科書等における使用例は、引用商標を使用した商品を紹介するにすぎない。本件商標の指定商品と類似する商品とみられる温度計、回転計、照度計、光速計、表面粗さ計等の具体的商品についての個別的販売数量、販売額などを示す資料はない。
引用商標は、請求人提出の書証のみをもってしては、測定機械器具を取り扱う産業分野において請求人の取り扱いに係る測定機械器具に類似する商品を表示するためのものとして、本件商標出願時、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
なお、回路計は、本件商標の指定商品「測定機械器具」とは、その使用目的、機能、取引系統、需要者層を異にし、類似する商品ではない。
してみると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではない。
▲2▼引用商標の不正な使用
ところで、請求人は、引用商標「sanwa」を昭和44年以降、測定機械器具の概念に属する「温度計」を製造・販売していると主張するところ、件外のサンワ精機株式会社が所有する商標登録第1348247号に係る商標は、「sanwa」の文字と図形の組み合わせよりなり、第10類「測定機械器具」等を指定商品とし、昭和48年2月3日登録出願、同53年9月29日商標登録、同63年9月29日商標権存続期間の満了により消滅、平成1年12月14日抹消登録された事実がある。そして、該商標権に対し専用使用権又は通常使用権の登録はなく、請求人から無効審判、取消審判の請求がされた形跡もない。また、請求人は、該商標権消滅後本件商標の登録出願時までの間に引用商標「sanwa」について商標登録出願をした形跡もない。さらに、本件商標の登録出願に対し、その登録出願時である平成6年2月21日までには、引用商標が請求人の取り扱いに係る測定機械器具に類似する商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至ったとする事情を主張・立証することもなかった。
かかる事情よりすれば、昭和49年以降、測定機械器具について引用商標を使用してきたとの請求人の主張は、他人の登録商標の存在を知りながら、故意にその登録商標に類似する商標をその登録商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用するものであって、当然許されない行為というべきである。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるとの請求人の主張は、合理的理由を欠くものである。むしろ、本件商標に類似すること明らかな引用商標を本件商標の指定商品「測定機械器具」と同一又は類似する商品に使用することは、本件商標権の侵害とみなす行為に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
引用商標が請求人の取り扱いに係る回路計等を表示するのものとして、本件商標の出願時需要者の間に認識されていたことは、被請求人も否定しない。
しかし、引用商標は、「sanwa」の文字を表したと容易に理解され、さほど特異な構成でもなく、他に類例をみない創造語を表したものともいえず、「三和」に通じ、該文字を商号中に有する会社が請求人や被請求人を含め各種業界に相当数存在すること、請求人の取り扱いに係る商品は、主なる納入先が表示され(甲第3号証の1)、「請求人の商品は専門家の需要に応ずる商品であるため、新聞、一般雑誌等には広告していない」との請求人の主張から、専門家の需要に応じて取引されるいわゆる受注に基づく製造・販売を主とする特殊な商品である。これらを総合すれば、引用商標は、本件商標の出願当時、測定機械器具を取り扱う産業分野における取引者、需要者が直ちに請求人を想起するほどに周知・著名であったとは認めることができない。
加えて、請求人の回路計等と被請求人の「タクシーメーター」とは、その使用目的、機能等が相違、その製造部門、流通経路、需要者層が異なるから、たとえ、引用商標に類似する本件商標を被請求人が「タクシーメーター」に使用しても、請求人又は請求人と何等かの関係を有する者の取り扱いの係る商品であるかのように商品の出所について混同が生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
第4 当審の判断
そこで、まず本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるか否かについて検討する。
(1)請求人の主張及び提出に係る甲第3号証(パンフレット1976-3-1、40年史、「50年星霜」)によると、請求人会社(三和テスメックス株式会社、三和エム・アイ・テクノス株式会社、三和電気計器株式会社)は、昭和16年8月に設立された三和電気計器製作所を創始とし、昭和25年に専門分野別に三つに分離し、小型携帯テスタの製造・販売を担当する三和電気製作所(現在の三和テスメックス株式会社)、中型、大型テスタ及び電気計測器の製造・販売を担当する三和電気計器製作所(現在の三和エム・アイ・テクノス株式会社)、無線測定器の製造・販売を担当する三和無線測器研究所を設立、昭和28年12月にテスタの販売業務を統合し、その販売のみを担当する三和電気計器株式会社を設立、そして、昭和16年当時急速に家庭用として普及し始めたラジオ受信機の修理用の診断器として回路計(サーキット・テスタ)の製造・販売を行っていたが、その後、分野を温度計、回転計、照度計、光束計及び表面粗さ測定器に拡大し、これら商品には昭和28年に「SANWA」の商標を採択、昭和49年より「sanwa」(別紙に表示する商標《甲第2号証、請求人所有の商標登録第1301104号に係る商標と同一の商標》「引用商標」)を用いて製造・販売の業務を行ってきたこと、請求人の測定器は、昭和39年全国内生産の75%を占め、昭和43年における生産台数は延べ500万台、同57年には800万台を越えていること、同37年から始まった日本電子工業展(現在のエレクトロニクス・ショー)には当初から継続出典している事実が認められる。
(2)請求人提出の甲第4号証の1ないし9、13、14(商品カタログ)、甲第5号証の1ないし4、6ないし12、14ないし21、23ないし26(パンフレット)によれば、請求人の引用商標は、回路計、温度計、回転計、照度計、光度計、光速計、表面粗さ測定器等の商品に1978年(昭和53年)より使用されている事実を認めることができる。
(3)また、請求人提出の甲第6号証(「新・テスタの測定と応用」昭和42年CQ出版社)、甲第7号証(「デジタル・テスタ原理と使い方」1988年誠文堂新光社)、甲第8号証(「新テスタの100%活用法」昭和61年CQ出版社)、甲第9号証(「テスター自由自在」1989年日本放送出版協会)、甲第11号証(「回路計の制作実習」1994年三和電気計器株式会社)、甲第12号証(「新技術・家庭科総合資料」1991年正進社)によれば、昭和42年より引用商標を付した回路計が技術科教科書、参考書、副読本に掲載されている事実が認められる。
(3)さらに、請求人提出の甲第13号証ないし甲第17号証及び甲第19号証(「トランジスタ技術」1989年4月号、1986年9月号、同年11月号、1987年3月号、同年7月号、1991年7月号)、甲第20号証(昭和62年6月24日付「日経産業新聞」)、甲第22号証(「電設資材」1989年3月号)、甲第23号証(「エレクトロニクス」1983年10月号)、甲第24号証(「電子材料」1988年1月号)、甲第25号証(「エレクトロニクス」1987年11月号)、甲第26号証及び甲第27号証(「光部品・製品カタログ集覧」1987年、1989年)によれば、請求人は、引用商標を付した温度計、光パワーメータ、テスタ、タコメータ、耐圧試験器、レーザーパワーについて広告を行った事実を認めることができる。
(4)以上の事実を総合すると、請求人の引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願時である平成6年2月21日頃には、請求人の業務に係る商品である回路計、温度計、回転計、照度計、光度計、光速計、表面粗さ測定器等の商品についての商標として既にこれらの商品を取り扱う取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとみるのが相当であり、上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(5)なお、この点について、被請求人も答弁書の6.理由(2)において「甲各号証(一部本件商標登録出願後作成に係るカタログ等を除く。)を総合すれば、引用商標が請求人の取扱いに係る回路計等を表示するためのものとして、本件商標登録出願(平成6年2月21日)当時すでに需要者の間に広く認識されていたことは、被請求人も敢えて否定するものではない。」としているところである。
(6)被請求人は、昭和49年以降、測定機械器具について引用商標を使用してきたとの請求人の主張は、他人の登録商標の存在を知りながら、故意にその登録商標に類似する商標をその登録商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用するものであって、当然許されない行為というべきである旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号は「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」について、商標登録を受けることができないと規定しているのであって、他人がその商標を悪意あるいは違法に使用していないことは要件となっていない(東京高等裁判所平成9年(行ケ)第279号審決取消請求事件、平成10年9月29日判決)。したがって、被請求人の主張は採用することができない。
(7)次に、本件商標と引用商標を比較すると、本件商標は、別紙に表示するとおり「SANWA」の欧文字を横書きしてなり、「タクシーメーターその他の測定機械器具」を指定商品とするものである。
他方、引用商標は、別紙に表示するとおり「sanwa」の欧文字を書してなり、前記した商品に使用しているものである。
本件商標と引用商標とは、その構成文字に相応して「サンワ」の称呼が生ずること明らかである。そして、両者は、いずれもローマ文字により、本件商標が大文字で「SANWA」、引用商標が小文字で「sanwa」と書してなるものであり、ローマ文字における大文字と小文字の相違は看者に与える印象は弱いものであるから、時と処を異にして離隔観察する場合には、外観上近似した印象、連想を生ずることは否定し難いところである。また、観念については、当該「SANWA」と「sanwa」の文字よりいずれも「三和」に通じる(この点については被請求人も認めるところである。)ものと認められる。
そうすると、本件商標と引用商標とは、「サンワ」の称呼を同一にし、外観についても近似したものであり、観念については「三和」に通じるものであることから、全体として互いに紛れるおそれのある類似した商標というべきである。
(8)本件商標の指定商品「タクシーメーターその他の測定機械器具」と引用商標の使用商品である回路計、温度計、回転計、光度計、光速計、表面粗さ測定器等の商品とを比較すると、引用商標の使用商品は、その用途からみて測定機械であり、他方、本件商標の指定商品も測定機械器具であることから、これらの商品が同一販売店、販売代理店等で取り扱われるであろうことは想定するに難くなく、その需要者(ユーザー)も、例えば、タクシーメーターとタコメーター(回転計)とは自動車に取り付けられることがあり、自動車の製造業者・修理業者が取り扱う商品であることが想定されるところである。
(9)以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品「タクシーメーターその他の測定機械器具」に使用するときは、当該商品が請求人又は請求人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあったものといわなければならない。
(10)したがって、本件商標は、その余の無効理由について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記


審理終結日 1998-12-15 
結審通知日 1999-01-05 
審決日 1999-01-14 
出願番号 商願平6-15387 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (009 )
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 和江池田 光治 
特許庁審判長 廣田 米男
特許庁審判官 小池 隆
小林 和男
登録日 1996-10-31 
登録番号 商標登録第3213551号(T3213551) 
商標の称呼 1=サンワ 
代理人 川又 澄雄 
代理人 三好 秀和 
代理人 小林 久夫 
代理人 木村 三朗 
代理人 佐々木 宗治 
代理人 大村 昇 

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