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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない 117
管理番号 1015189 
審判番号 審判1997-10139 
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-06-12 
確定日 2000-02-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第2713554号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2713554号(以下、「本件商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成のものであり、昭和61年6月16日に登録出願、第17類「被服、布製身回品その他本類に属する商品」として、平成8年4月30日に登録されたものである。
2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の無効理由として引用する登録第1976394号(以下、「引用商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成のものであり、昭和49年2月19日に登録出願、第17類「被服」を指定商品として、昭和62年8月19日に登録され、その後、平成9年6月3日に更新登録されたものである。
3 請求人の主張
請求人は「本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第13号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標と引用商標の類似関係について
本件商標の構成から、文字部分と図形部分を一体として認識して称呼が生じるものではなく文字部分から、称呼が生ずる。
そして、中央の文字部分は「Town&Country」と「Surf Designs」が2段書きされているため、この文字部分からは「タウン アンド カントリー サーフ デザインズ」の称呼のほかに、単に「タウン アンド カントリー」の称呼をも生ずる。この2段書きの文字部分を一連に称呼した場合「タウン アンド カントリー サーフ デザインズ」と称呼するのは繁忙な取引場裡にあっては冗長なものであるから、世上よく親しまれた「Town&Country」の文字の部分を捉えて「タウン アンド カントリー」とも称呼されるのである。
また、同様に、本件商標からは、この「Town&Country」の部分から「町と田舎」の観念が生ずる。
本件商標からこのような称呼及び観念が生ずることは、甲第3号証の審決からも裏付けられる。一方、引用商標からは「タウン アンド カントリー」の称呼が生じ、「町と田舎」の観念が生じる。
したがって、本件商標と引用商標とは称呼及び観念において共通し、本件商標は引用商標に類似する。
また、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一である。
以上から、本件商標と引用商標とは類似関係にある。
(2)上記のように本件商標と引用商標とは類似関係にあるため、引用商標の商標権者である本件審判の請求人は、審判請求の利益を有している。
(3)以上のように、本件商標は、商標法第4条第1号第11号の規定に違反して登録されたものであり、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
(4)被請求人の答弁に対する弁駁の理由
本件商標は、文字と図形の組み合わせよりなる商標である。被請求人は、本件商標の把握の仕方に非常に独特な見解を示しているが、この見解は商標の類否を判断する上で全く妥当性を欠くと思慮する。
図形と文字よりなる商標において、文字と図形が一体不可分の構成でない限り、文字は文字より称呼等が生じ、図形は図形より称呼等が生じるのが、社会経験則上一般的である。
ここで、請求人は審判請求書において、本件商標の図形部分を「陰陽曲玉図」と表現したが、「陰陽曲玉巴」と表現を改める(甲第13号証)。
しかし、被請求人は本件商標において、図形は中国の哲学・宗教に基づくもので、旧くから極めてよく知られた図形であり、この図形が英文字の表記に対し割合的に極めて大きいから、図形が主に商標として直感的に認識され、把握されるが、文字部分は図形の中に一種のデザイン化されているので、文字はスローガン的に認識され、文字部分が独り歩きするとは考えられないと主張している。
本件商標に接した取引者・需要者中、被請求人が主張するように「インヨウマガリタマ」あるいは「インアンドヤン」の称呼を生じる者が果たして何人いるだろうか。
本件商標の図形部分から、簡易迅速を旨とする商取引の実際において、難しい「陰陽曲玉巴」の図から「インヨウマガタマトモエ」あるいは英語の「インアンドヤン」との称呼を生じ取引されるとは考えられない。
本件商標は、甲第13号証や乙第1号証に示すような書籍や辞書を見なければ特定の称呼が生じない難しい図形部分より、慣れ親しんだ文字部分から生じる称呼でもつて取引される。
さらに、本件商標の文字部分も上下2段であり、かつ上段の文字「Town&Country」は図形の円輪郭よりはみ出た構成であるから、視覚的にこの部分が強く印象づけられるので、「タウンアンドカントリー」の称呼を容易に生じるし、仮に上下2段の文字を一連に称呼「タウンアンドカントリーサーフデザインズ」しても冗長であるため、上段の文字部分から生じる称呼「タウン アンド カントリー」でもって取引されるとするのが常識的である。
誰でもが良く知っており、簡単に称呼が生じる図形であれば、文字部分よりも図形部分から容易に称呼を生じることはあるが、商標の構成上図形と文字とが異なる内容の識別力を有する商標であれば、図形から称呼を生じ、文字から文字に対応した称呼を生じるのが、通常である(添付した各審決例を参照)。
ちなみに、本件事案に参考となる審決例をひもといてみるに、次のように判断されている。
文字と図形の組み合わせよりなる商標において、「読みやすい文字部分をとらえてこれより生ずる称呼をもって取引に資する場合が決して少なくない」と判断された審決例が多数ある(甲第4号証、その他同種の審決例として甲第5号証ないし甲第11号証)。
さらに、文字と図形の組み合わせからなる商標で、識別力を有する文字が、図形よりも小さく表示されていても、その文字はそれ自体独立して識別力を有する機能を果たすと判断された審決もある(甲第12号証)。
上記したように本件商標に接した取引者や需要者は、容易に称呼を生じない図形から生ずる称呼よりも、容易に文字から生じる称呼をもって取引するのが一般的である。
被請求人は、本件商標と同一並びに類似の商標を自己の業務に係る商品に付して販売を開始して、現在に至り特に日本国内において「インヤンマーク」としてサーファーや若者に広く認識されていると主張しているが、その資料の提示が無いし、被請求人が主張しているほど広く認識されているかどうか、請求人は知らない。
仮に被請求人が主張するように図形が「インヤンマーク」として認識されているとしても、その称呼が「タウンアンドカントリー」の称呼よりよく使用されているとは思えない。
今般、被請求人が提出した答弁書を吟味したところ、被請求人の答弁には正当な理由が無い。
したがって、「タウンアンドカントリー」の称呼をも生じ、「町と田舎」の観念を生ずる本件商標は、「タウンアンドカントリー」の称呼を生じ、「町と田舎」の観念を生ずる引用商標と称呼及び観念を共通とし、かつ指定商品も共通とするものであるから、無効とされるべきである。
4 被請求人の答弁
被請求人は「結論同旨の審決を求める旨」答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
(1)本件商標は、陰陽曲玉図形と、その陰陽曲玉図形中の中央部上下2段に配した英文字の「Town&Country」「Surf Designs」と、陰陽曲玉図形外で下側に円弧状に配した英文字の「Pearl City,Hawaii」とからなる構成を有し、旧第17類の「被服、布製身回品その他本類に属する商品」を指定商品とし、昭和61年6月16日に商願昭61-61792号として商標登録出願をし、平成8年4月30日に登録第2713554号として商標登録を受けた。
これに対し、商標としてカタカナ文字の「タウン アンド カントリー」と英文字の「Town&Country」とを上下2段に配した構成を有し、旧第17類の「被服」を指定商品とし、昭和49年2月19日に商願昭49-22887号として商標登録出願をし、昭和62年8月19日に登録第1976394号として商標登録を受けた登録商標と類似するとの理由で、本件商標は商標登録無効の審判の請求を受けた。
然し、被請求人は次に述べる理由で本件商標の登録を無効とする理由を容認できない。
(2)本件商標の図形は中国の哲学・宗教に基づくもので、旧くから極めてよく知られた図形である。上述した「陰陽曲玉図形」なる語句は請求人の審判請求の理由中に記載された表現を拝借したものであるが、英語では「yin and yang」と記載乃至は表現されている(乙第1号証)。
請求人が主張するとおり、本件商標は確かに、英文字の「Town&Country」「Surf Designs」を陰陽曲玉図形の構成中で中央部上下2段に含んでいる。
しかし、本件商標の構成からすると、陰陽曲玉図形が英文字の「Town&Country」「Surf Designs」に対して割合的に極めて大きい。それに加えて、この陰陽曲玉図形は旧くから極めてよく知られた図形であるだけに、本件商標は図形が主に商標として直観的に認識され、把握される部分である。
その構成中で、英文字の「Town&Country」「Surf Designs」は陰陽の中に一種のデザイン化されたものであり、「Town&Country Surf Designs」とスローガン的に認識され、把握される部分に過ぎない。
換言すれば、本件商標は上述した如く旧くからよく知られた図形が主体に構成されているため、その構成中から英文字の「Town&Country」が抽出され、この英文字の「Town&Country」が独り歩きするとは考えられない。
請求人は、本件商標の構成から、文字部分と図形部分を一体として称呼が生じるものではなく、文字部分から称呼が生ずる、と述べられている。
しかし、本件商標を構成する主たる図形の一般的な認識度合いからすると、請求人が表現されるような「陰陽曲玉図」から「インヨウマガリタマ」或いは英文字の「yin&yang」から「インアンドヤン」との称呼が生じるといえる。
したがって、被請求人は本件商標の構成から英文字の「Town&Country」を単に引き出すことによって、その英文字より「タウンアンドカントリー」なる称呼が生じ、また、「町と田舎」なる観念が生じるから、本件商標が甲第2号証の引用商標と類似すると述べられる請求人の主張を容認できない。
(3)ちなみに、被請求人は1971年(昭和46年)3月に、米国・ハワイ州・カム899にサーフボード及びTシャツの製造及び販売を主たる業務を行うものとして設立され、1972年(昭和47年)から本件商標と同一並びに類似の商標を自己の業務に係る商品に付して販売を開始した。
その後、被請求人の製造・販売に係るサーフボードが好評を博し、また、世界的にも著名な業界紙「SURFER」及び「SURFlNG」等に本件商標と同一構成の商標を付した商品の定期的広告を掲載することにより意欲的な宣伝広告活動を行った結果、少なくとも商品「サーフボード」に関してはアメリカは勿論のこと、日本国内においても、本件商標と同一構成の商標は被請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者及び取引者の間に広く認識されるに至っている。
特に、日本国内においては上述した経緯から本件商標と同一構成の商標が「インヤンマーク」としてサーファーや若者には広く認識されるに至っている。
5 当審の判断
本件商標と引用商標は、それぞれ別紙に表示したとおりの構成であるから、外観上は、明確に区別し得る差異を有するものである。
次に、本件商標は、「陰陽曲玉巴」を表した図形の中央部に「Town&Country」と「Surf Designs」の文字を2段に配し、さらに該図形の円輪郭下方の外側に沿って円弧状に「Pearl City,Hawaii」の文字を配した構成よりなるところ、請求人は、その構成中「Town&Country」と「Surf Designs」の各文字が2段に書してなること、全体を一連に称呼すると冗長であることを理由に、「Town&Country」の文字部分を捉えて「タウンアンドカントリー」とも称呼される旨主張するが、これらの点を考慮したとしても、「Town&Country」と「Surf Designs」の各文字は、同書、同大で外観上まとまりよく一体的に構成されており、しかも、図形の中央部に左右を白黒反転させて表わすことによって図形と自然に調和されていることも相俟って、該各文字がより一体的に認識し、把握されるとみるのが相当である。
そうとすると、他に、「Town&Country」の文字部分のみをあえて分断、抽出して称呼し又観念しなければならないとする特段の事情も見い出し得ないものであるから、本件商標からは、前記構成文字に相応して「タウンアンドカントリーサーフデザインズ」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
一方、引用商標は、別紙に表示したとおり、「タウン アンドカントリー」と「Town&Country」の文字を2段に書してなるものであるから、その構成文字に相応して「タウンアンドカントリー」の称呼を生ずるものである。
そうしてみると、被請求人の主張する『本件商標は陰陽曲玉図形が「Town&Country」と「Surf Designs」の文字部分に対して割合的に極めて大きく、しかも該図形が古くからよく知られたものであるから、図形を主とした商標として認識され、これより「インヨウマガリタマ」或いは「インアンドヤン」の称呼が生ずる』という点については検討するまでもなく、本件商標と引用商標は、その称呼の音構成おいて顕著な差異があるものであるから、称呼において互いに紛れるおそれはないものである。
また、観念についてみるに、引用商標からは「町と田舎」程の観念が生じるとしても、本件商標は、前記認定のとおり、その「Town&Country」の部分が分断、抽出され観念されないから、引用商標と観念において紛らわしいとするところは見当たらない。
そうしてみると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれよりみても互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということができないから、商標法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記


審理終結日 1998-12-15 
結審通知日 1999-01-12 
審決日 1999-01-22 
出願番号 商願昭61-61792 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (117 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 茂久松本 はるみ 
特許庁審判長 板垣 健輔
特許庁審判官 杉山 和江
上村 勉
登録日 1996-04-30 
登録番号 商標登録第2713554号(T2713554) 
商標の称呼 1=タウンアンドカントリ-サ-フデザイン 2=パ-ルシティハワイ 3=タウンアンドカントリ- 4=サ-フデザイン 5=パ-ルシティ 
代理人 岩田 哲幸 
代理人 竹下 和夫 
代理人 村瀬 裕昭 
代理人 小玉 秀男 
代理人 池田 敏行 
代理人 中村 敦子 
代理人 長谷川 哲哉 
代理人 岡田 英彦 

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