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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 101
管理番号 1015179 
審判番号 審判1994-3450 
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1994-02-21 
確定日 2000-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2151351号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2151351号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.本件登録第2151351号商標(以下「本件商標」という。)は、「ドゥーセラム」の片仮名及び「DUCERAM」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、昭和61年3月14日に登録出願、第1類「人工歯用材料、その他本類に属する商品」を指定商品として平成1年7月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2.請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第11号証を提出している。
(1) 本件商標は、請求人の商号と類似のものである。
(2) 請求人は、甲第1号証〜甲第4号証に示すとおり、本件商標の出願前の1985年12月4日にドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」という。)において、本件商標と類似の商標及び指定商品に係る商標登録出願を行っており、ドイツ商標登録及び国際商標登録を取得している。さらに、請求人と被請求人とは、甲第5号証に示すとおり、本件商標の出願前の1986年3月5日以前に本件商標に係る指定商品を日本へ輸入する事項に関して交渉を開始し、甲第6号証に示すとおり、本件商標に係る指定商品の独占供給に関する、有効期間が1989年10月1日から5年の契約を締結している。
また、請求人は、昭和62年4月30日に本件商標と類似の商標に関し、同一又は類似の指定商品に係る商標登録出願(商願昭62-48669号)を行い、平成1年7月21日付発送の拒絶理由通知を受けて、本件商標の存在を知り、甲第7号証に示すとおり、被請求人に対し、被請求人の行為は不当であるので何らかの形でこの問題の解決を行うよう求めたが、現在まで履行されていない。
(3) 被請求人によって請求された平成6年審判第9239号(第2457881号商標登録無効審判事件)の審判請求理由補充書(甲第8号証)において、被請求人は、人工歯用材料の輸入、販売等に関する業務を行っており、ドイツ国DUCERA社とは古くから取引があり、DUCERA社製品の日本国での輸入代理店として、その輸入、販売に携わっている旨、また、DUCERA社から輸入した商品を「DUCERAM」の商標を付して日本国内で販売している旨述べている。
(4) 以上説明したように、被請求人は、本件商標が請求人の商号及び商標と類似であることを出願当初から認識していた。また、本件商標と類似の商標に関する権利をパリ条約の同盟国で有する請求人に無断で、本件商標に係る商標登録出願を行った。さらに、請求人の再三の要求にも関わらず、被請求人は本件商標権を放棄したり、請求人へ移転したりすることを行わず、本件商標に係る当事者間の問題の解決が未だに計られていない。
請求人の商標は、パリ条約第6条の2により保護されるべきものであり、本件商標登録はパリ条約の同盟国国民の権利を侵害しており、国際信義に反する公の秩序を害するものとい’わざるを得ない。
(5) 被請求人は、答弁書において述べているように、本件商標を付した商品を日本国に輸入し、業として国内で譲渡するに際し、商標登録出願を行い、本件商標にかかる権利を取得したものである。
請求人は、本件商標に類似した商標を本件商標登録出願以前の1986年の始めごろから使用し、本件商標出願時点ではドイツ国内において周知であった。
甲第9号証は、請求人が本件商標の出願前の1985年8月1日付けで発行した商品の価格表であり、これから明らかなように、請求人は本件商標と類似の商標を付した商品を1985年8月時点で販売していた。甲第10号証は、本件商標の出願前の1986年3月12日発行の歯科医療従事者向け専門雑誌「歯科研究(das dental labor)」1986年3月号に掲載された請求人の商品の広告であり、これに示されるように、請求人は本件商標と類似の商標を付した商品に関する広告活動を、本件商標の出願前から盛んに行っていた。
そして、被請求人は請求人と本件商標の出願前から取引関係にあり、請求人が本件商標と類似の商標を使用しており、その商標が周知であることを認識していた。
また、甲第1号証〜甲第4号証及び甲第8号証から明らかなように、被請求人が輸入販売している本件商標を付した商品は、請求人が本件商標と類似の商標を付して製造販売する商品である。
すなわち、本件商標は、被請求人が請求人となんら関係なく、たまたま善意で商標登録出願して取得したわけではなく、実質的に、請求人が自ら製造販売する商品に付した商標を、被請求人が日本国内で使用するために行ったものである。
(6) その結果、請求人は、本件商標を付した商品の日本国内での販売に関し、不当な競争制限を受けている。すなわち、被請求人は、わが国における請求人の本件商標を付した商品の輸入代理店としての独占的な地位を確保しており、請求人が他の輸入代理店を使用することを困難にしている。
(7) このような行為は国際的な視野で見た場合に不正であり、このような行為を各国当局が適宜防止することは、パリ条約第6条の7を始めとする各種の条約で国際的に確認されている。これは、国内手続が合法であるか否かには一切関係がない。
したがって、本件商標は、「国際信義に反する商標」であり、商標法第4条第1項第7号に該当し、商標法第46条第1項第1号により無効にすべきである。
3.被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。
(1) 請求人は請求の理由において、被請求人所有の本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当すると述べているが、請求人が縷々述べている主張から本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当すると判断される理由を見いだせない。よって、請求人の主張はなんら根拠がなく、本件審判は成り立たないものであって、被請求人はこれに反論するには及ばない。
(2) 付言するに、商標審査基準には、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、以下のものを挙げている(江口俊夫、新商標法解説、第73頁、萼工業所有権研究所発行/特許庁商標課、商標審査基準、第32頁、社団法人発明協会発行)
(a)矯激な文字、卑猥な図形を含む商標
(b)社会公共の利益に反する商標
(c)社会の一般道徳観念に反する商標
(d)国際信義に反する商標
(e)他の法律によってその使用が禁止されている商標
しかしながら、本件商標はこれらの如き商標法第4条第1項第7号の理由に該当していない。
すなわち、被請求人は本件商標の指定商品に本件商標を付して日本国に輸入し、それを業として日本国内で譲渡するに際し、商標登録出願を行なった。この行為は、基本的に登録主義を採用するわが国商標法の下において、自己の業務に係る商品について使用する商標につき権利化を図ったものであって、合法である。
そして、本件商標は出願審査の結果、拒絶の理由が発見されなかったため登録され、現“時点では登録後すでに5年以上経過し、その間に権利者である被請求人が当該商標を指定商品に使用した結果、需要者、取引者間に業務上の信用が築かれている。
(3) そこで、本件商標について上述の商標審査基準上、第4条第1項第7号に該当するとされる前記(2)(a)ないし(e)の事由と対比すると、本件商標「ドゥーセラム/DUCERAM」は特定の観念を有しない造語であって、商標自体が例えば「日本革命」、「ごまの蝿」のように(a)矯激な文字あるいは(b)社会公共の利益、(c)社会の一般道徳観念に反するものとか、「征露丸」のように(d)国際信義に反するものとはいえず、また、「○○○株式会社」のように(e)他の法律によってその使用が制限されるものでもない。更に、本件商標は被請求人が正当な理由で商標権を獲得したものであり、これが商標保護を目的とする商標法の精神により維持される商品流通社会の秩序を毀損するものでもない。
(4) 請求人は、請求人の商標は、パリ条約第6条の2により保護されるべきものであり、「本件商標登録はパリ条約の同盟国々民の権利を侵害しており、国際信義に反する公の秩序を害するもの」と述べている。
しかし、請求人の商標は、パリ条約第6条の2により保護されるべきものではない。
パリ条約第6条の2は、いわゆる周知商標の保護に関し、登録国において他の締約国の商標として広く認識されている場合は、その商標の登録を拒絶し又は無効とすることができる旨の規定であり、わが国商標法においては商標法第4条第1項第10号によってその運用がなされている。
そして、商標法第4条第1項第10号では、商標登録出願時に同一又は類似の一商標が指定商品に関して周知となっていた場合、その出願の登録は認めないとする規定である。
(5) しかしながら、商標「DUCERA」は、本件商標の出願時である昭和62年4月30日において、パリ条約の同盟国内において請求人の商標として広く知られているとは認められない。以下にその理由を述べる。
▲1▼ 請求人が甲第1号証及び甲第3号証として提出している資料は、「ツエットエフエー ツォンテクニッシュ フォルシュウング ウント アントヴィックラング ゲーメンハーウント ツェーオー カーゲー」(以下「ツエットエフエー社」という。)によるドイツ及び国際商標出願の願書の写しであり、この証拠書類から、本件商標に関してはドイツ出願時である1985年12月4日及び国際商標登録時である1988年8月5日時点では、ツエットエフエー社が正当な権利者であったことが明白である。
また、甲第2号証及び甲第4号証として提出している資料は1989年8月16日及び1989年9月27日に上記権利者から請求人に、その商標権が移転され登録されたことを示す資料である。
よって、本件商標の出願時点では、正当な権利者はツエットエフエー社であって、請求人は上記商標について何の権利も有しない。
▲2▼ しかも、商標「DUCERA」は昭和61年3月14日時点に当時の商標の所有者であるツエットエフエー社の表示であることを示すものとして、周知であるとする事実を見いだせない。
すなわち、請求人は商標「DUCERA」が本件商標の出願時点に、日本国内及び外国で周知であったことを認めるに足る主張をしておらず、また、商品を輸出している事実も認められない。請求人が提出した甲第8号証からは、本件に関してはせいぜい被請求人と請求人が古くから取引があったことを示しているに過ぎない。
よって、商標「DUCERA」が本件商標出願時に請求人の商標として周知であったことが明らかにならない限り、本件商標がパリ条約第6条の2に該当するとはいえない。
▲3▼ 請求人は、本件商標と類似の商標が本件商標の出願前に周知になっており、また、請求人がその商標を使用していること及びその商標が周知であることを被請求人は認識していた旨述べている。
しかしながら、単に価格表に「DUCERAM」が記載されていること及び本件商標の出願日のわずか2日前の1986年3月12日に発行された専門誌に広告が掲載されているからといって、本件商標の出願日時点で「DUCERAM」が周知に“なっていないことは経験則上明らかである。
周知になるためには、長期間の使用、大量の広告宣伝、当該商品の販売高などで判断されるが、請求人の弁駁からは到底「DUCERAM」が周知とはいえないものである。
また、周知性を証明するための政府機関・商工会議所等の証明書を提出しているわけでもない。
したがって、本件商標の出願時、請求人が主張する如く本件商標と類似の「DUCERAM」がドイツにおいて周知になっていないことは明らかである。
▲4▼ 上述の通り、パリ条約第6条の2の規定は、我が国商標法との関係においては、商標法第4条第1項第10号によって規定されている。これは、他人の商品と混同を生じるかどうかという見地の、いわゆる私益的不登録事由に該当するもので、もし本号に該当すれば、このような商標の独占排他的権利を他人に認めることが出来ないから、これを排除すると規定されているものである。
▲5▼ 他方、商標が国際信義に反し、商標法第4条第1項第7号に該当するとの主張は、この規定の趣旨から見て、公序良俗の見地から一個人に独占排他的権利を認めることができないから排除するとされたもので、いわゆる公益的不登録事由に該当する。
したがって、パリ条約第6条の2及び商標法第4条第1項第7号の設立趣旨は互いに相入れぬ全く異なる次元にある。請求人が本件商標がパリ条約第6条の2に該当する旨の主張をするのならば、商標法第4条第1項第10号をその理由にすべきものと思料するが、同号に関する考察を何等せず、しかも我が国において周知著名とも認められない請求人商標を、商標法第4条第1項第7号と結び付けて公の秩序に反するなどと主張する、審判請求の理由における論理はまさしく我田引水と言わざるを得ない。
(6) したがって、本件商標はいわゆる公序良俗の見地といった、公的不登録事由に該当せず、商標法第4条第1項第7号に該当しないものであって、商標法第46条第1項第1号により無効にすべきとの審判は成り立たない。
4.よって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるかどうかについて判断する。
本件商標は、前記のとおり、「ドゥーセラム」及び「DUCERAM」の文字を書してなるものであるところ、請求人は本件商標が国際信義に反するものである旨主張しているので、この点について検討する。
請求人の提出に係る甲第1号証乃至同第4号証によれば、「DUCERAM」の文字からなる商標が人工歯科材料等を指定商品としてドイツ及び国際知的所有権機関(以下「WIPO」という。)において登録されたこと、ドイツでの登録は1985年12月4日に出願、1986年9月11日に登録され、その権利者が当初ツエットエフエー社であったが、1989年8月16日に請求人に名義変更の登録がされたものであること、WIPOでの登録はドイツにおける登録を基礎として1988年8月5日にツエットエフエー社によって登録され、1989年9月27日に請求人への移転登録がされたものであることが認められる。そして、甲第5号証は被請求人から請求人に宛てられた1986年3月5日付けの書簡と認められるところ、その内容は被請求人が請求人会社を訪問したことに対するお礼と日本への商品の輸入許可を得るために必要な商品リストの送付等を依頼するものである。
また、甲第8号証によれば、被請求人の請求に係る別件の無効審判事件において、被請求人は請求人とは古くから取引があり、請求人の製品の日本国での輸入代理店としてその輸入販売に携わっている旨、及び、請求人から商品を日本国に輸入し日本国内のユーザーに「DUCERAM(ドゥセラム)」の商品名で商品の販売を行っている旨を述べていることが認められる。
さらに、甲第9号証及び甲第10号証によれば、本件商標の出願前にドイツにおいて請求人が「DUCERAM」の商標を用いた商品の価格表を発行し、かつ、歯科医療従事者向けの専門雑誌に該商品の広告をしていることが認められる。
以上の事実を総合すると、本件商標の出願前から、請求人がドイツにおいて「DUCERAM」の商標を使用していたものと認められるほか、被請求人は請求人と取引をしていたことが窺われ、甲第5号証にみられるように、被請求人が請求人の商品を日本に輸入しようとしていたことからすれば、被請求人は当然商品の価格についても関心を有するであろうことは想像に難くなく、請求人の発行に係る商品の価格表やその商品の広告、販売等についても少なからず関心を有していたものと推認されるから、被請求人は、請求人との取引の過程において、前記商品の価格表の存在又は請求人がドイツにおいて「DUCERAM」の商標を使用した商品を販売していたことを知り得る状況にあったものといわざるを得ない。そして、本件商標は、請求人の「DUCERAM」の商標と同一の綴り字及びその表音からなるものであって、しかも、該綴り字からなる既成語は辞書等に見出すことのできないものであることからすれば、両者は偶然の一致とはいい難いものである。
そうとすれば、被請求人は、請求人の「DUCERAM」商標の存在を知りながら、被請求人に無断で本件商標を出願し、その登録を受けたものというのが相当である。
しかして、被請求人のかかる行為によって登録された本件商標は、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものといわなければならない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものと判断するのが相当であるから、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-04-06 
結審通知日 1998-04-14 
審決日 1998-04-27 
出願番号 商願昭61-26119 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (101 )
最終処分 成立 
前審関与審査官 宮下 行雄 
特許庁審判長 秋元 正義
特許庁審判官 大橋 良三
渡邊 健司
登録日 1989-07-31 
登録番号 商標登録第2151351号(T2151351) 
商標の称呼 1=ドウ-セラム 2=デュセラム 
代理人 越場 隆 
代理人 山本 秀策 
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