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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1011103 
審判番号 審判1999-35058 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-02 
確定日 1999-11-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4118122号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4118122号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4118122号商標(以下「本件商標」という。)は、「DIESEL CRUZE」の欧文字と「ディーゼルクルーズ」の片仮名文字を上下二段に書してなり、平成8年9月9日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),スリッパ,運動用特殊衣服」を指定商品として、同10年2月27日に設定登録されたものである。
2.請求人が引用する商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2273385号商標は、「DIESEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年4月18日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成2年10月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
同じく登録第3252866号商標(以下、両商標をまとめて「引用商標」という。)は、「DIESEL」の欧文字を横書きしてなり、平成5年10月27日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年1月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第9号証を提出した。
(1)本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、同法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当する商標であり、その登録は無効とされるべきである。
(2)請求人の調査した範囲においては、本件商標の商標権者が本件商標の指定商品に係る業務を行っている事実は発見できなかった。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品について使用する商標」の要件を具備しないものと認められるから、その登録は無効とされるべきである。
(3)本件商標は、請求人の上記引用商標と類似し、指定商品も抵触する(甲第4号証)。
本件商標は、「DIESEL」と「CRUZE」の語を単に羅列した商標であり、「ディーゼルクルーズ」と一連にのみ称呼すべき特別の理由はないから、簡易迅速を尊ぶ商取引の場においては、本件商標からは、「ディーゼル」単独の称呼が生ずる可能性がある。特に、引用商標が世界的に著名になっている点を考慮すれば、その可能性は極めて高いものといえる。
そうとすれば、本件商標は、引用商標と「ディーゼル」の称呼を共通にする称呼上類似の商標といえる。
よって、本件商標は、引用商標と称呼上類似する商標であり、指定商品も抵触するから、商標法第4条第1項第11号に該当することは明らかである。
(4)請求人は、イタリアで設立された会社であり、かばん、靴、被服等のファッション関連商品について、引用商標を10年以上にわたり世界的に使用している。日本では、1990年より三菱商事株式会社及び株式会社ワールドとの提携により、引用商標を付したかばん、靴、被服等のファッション関連商品が販売され、現在では、大阪市中央区南仙波2-7-11に住所を有する株式会社パンドラを通じて販売され、新聞や雑誌にも頻繁に広告・宣伝・紹介されている(甲第1号証及び甲第3号証)。
引用商標は、日本では、国際分類第3、9、14、16、17、18、25類及び旧分類第17、21、25類において出願公告又は登録されている(甲第5号証)。また、英国、米国、カナダ、韓国、台湾、フィリピン、シンガポールで登録されている(甲第5号証)。
以上より、引用商標が、本件商標の出願日前より、我が国において、かばん、靴、被服等のファッション関連商品の商標として著名になっていたことは明らかである。
本件商標と引用商標が称呼上類似することは、上述したように明らかである。
また、引用商標の使用商品も本件商標の指定商品とファッション関連商品という意味で抵触、近似するものである。
よって、本件商標は、請求人の著名商標と類似し、その商品も抵触、近似し、請求人の商標のただ乗りに該当するから、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当することは明らかである。
(5)このような著名商標からなる結合商標については、その著名な部分からも称呼が生ずることは社会通念に照らして明らかであるからである。審査基準、審決、判決も同様の考えに立脚している。
特許庁審査基準には、「指定商品又は指定役務について著名な商標と他の文字を結合した商標は、原則として、その著名な商標と類似する」と記載されている(甲第7号証)。
また、特許庁審判部は、以下の商標は、引用商標と類似又は商標法第4条第1項第15号に該当すると判断している(甲第8号証)。
出願又は登録商標 引用商標 適用条文
L’UOMO VOGUE VOGUE 4条1項15号
SUNSEAVOGUE VOGUE 4条1項15号
おにぎり宅急便 宅急便 4条1項15号
MILLE VOGUE VOGUE 4条1項15号
VOGUEPELLE VOGUE 4条1項15号
さらに、裁判所は、以下の商標は、引用商標と類似又は商標法第4条第1項第15号に該当すると判断している(甲第9号証)。
出願又は登録商標 引用商標 適用条文
白山雲竜 雲竜 4条1項11号
Polo Club Polo 4条1項15号
CASAVOGUE VOGUE 商標権侵害事件
東京電音株式会社 DENON 4条1項15号
HYPERchannel NEW HYPER 4条1項11号
(6)本件商標は、請求人の著名な略称である「DIESEL/ディーゼル」を含むから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(7)本件商標は、請求人の使用する引用商標の名声にただ乗りにするものであるから、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。
商標のただ乗り行為が、商標法第4条第1項第7号に該当することは、通説・学説の認めるところである(甲第6号証)。
4.被請求人の答弁
被請求人は何等答弁していない。
5.当審の判断
(1)請求人提出の甲第1号証の新聞記事の写しには「ディーゼル」「伊・ディーゼル社」の文字は表されているが、この写しは、新聞名、発行日が表示された部分が表されていないか、あるいは、それらが手書きで記載されたものであり、また、甲第2号証の雑誌広告の写しには「ディーゼル」「DIESEL」「Diesel」の文字は表されているが、この写しは、広告等が掲載された頁に雑誌名と何月号かを記載したものであって発行年が明らかでない(「FINE BOYS9月号」を除く)。
してみれば、甲第1号証及び甲第2号証によっては、「ディーゼル」、「DIESEL」、「Diesel」の標章が「被服、かばん、靴」について使用されていることは認められるとしても、それらの標章が、本件商標の出願日前より我が国において、請求人の業務の係る商品を表示するものとして広く認識されていたものとも、また、請求人の著名な略称であるとも認められない。
また、例え甲第1号証及び甲第2号証が請求人の主張するとおりに発行されたものであるとしても、本件商標の出願日前の1996年に発行されたもののみによっては、上述の判断を覆すに足りず、さらに、甲第3号証及び甲第5号証を併せみても、上述の標章が本件商標の出願日前より外国における需要者の間で広く認識されていたものとは認められない。
(2)そこで、被服等について使用されている商標「ディーゼル」「DIESEL」について、職権によって、新聞記事を調査したところ、例えば次の記載が認められた。
▲1▼1997年1月31日付け繊研新聞(東京都中央区在、株式会社繊研新聞社発行)に「インポート子供服 ジーニング増加、販路広げて」をタイトルとする記事に、「〜パンドラ(同)の『ディーゼル』、〜などは大人服での知名度が高く、売り上げは計画以上のペース。(略)ディーゼルの子供服は九六年秋冬から本格的に店頭に並ぶようになった。大人向けのカジュアルはすでに浸透しており、全国三百社程度で販売しているが子供服の販路は子供服専門店。ファッション感度を売り物にする『西日本の主な子供服専門店には並ぶようになった』とみており、今後関東へ販路を広げていく。」との記載。
▲2▼1997年2月10日付け繊研新聞に「【ベビー・子供服】各地で展示会が盛況 インポートに活気」をタイトルとする記事に、「パンドラ(本社大阪市)の『ディーゼル』のキッズは九六年秋冬から本格的に店頭に並ぶようになった。(以下、上記▲1▼と同旨)」との記載。
▲3▼1997年3月8日付け繊研新聞に「伊ディーゼル社 全ラインそろえ今年、東京に旗艦店を出店」をタイトルとする記事に、「欧州最大のジーンズメーカーであるイタリアのディーゼル社は、グローバル戦略の一環として今年中に東京に旗艦店『ディーゼル・スーパーストア』を出店する。レンゾ・ロッソ社長が七日、東京で明らかにした。旗艦店は売り場面積三百三十平方メートル前後で、全商品ラインを揃える。二○○○年までに大阪にも旗艦店を出店する計画だ。日本ではパンドラ(略)がディーゼル社と総代理店契約を結んでおり、『ディーゼル』を輸入しているが、オンリーショップは展開していなかった。取扱店は二百店で、このほかパンドラ直営店『インテレッセ』十二店でも販売している。九六年の売り上げは二十億円(小売りベース)で、九七年は前年比七五%贈の三十五億円の見通し。」との記載。
▲4▼1997年3月13日付け繊研新聞に「パンドラ 直営で3店開店」をタイトルとする記事に、「神戸と渋谷の店舗は、ジーンズカジュアルブランド『ディーゼル』の全ラインを中心に構成、新宿の店舗はディーゼルのフィメールラインとデニムラインを中心にレディス向けの構成にする。」との記載。
▲5▼1997年4月18日付け繊研新聞に「【ジーンズ】デニム復活の火付け役・デザイナージーンズ」をタイトルとする記事に、「ディーゼル 今年、東京に旗艦店 欧州最大のジーンズメーカーであるイタリアのディーゼル社は、(以下、上記▲3▼と同旨)」との記載。
▲6▼1997年7月8日付け日本経済新聞(甲第1号証の一つとしても提出されている)に「イタリア、ディーゼル レンゾ・ロッソ社長 流行と一線画す」をタイトルとする記事に、「イタリアのファッション界で注目される若手経営者の一人が、ディーゼル社を率いるレンゾ・ロッソ社長(41)。イタリアン・カジュアル、いわゆる『イタカジ』の代表的なジーンズブランドとして知られ、世界を相手に年四千七百億リラ(約三百二十九億円)の売り上げを稼ぎ出している。」との記載。
▲7▼1998年8月24日付け繊研新聞に「伊ディーゼル 日本の販路開拓に本腰、コレクションとボード系を柱に」をタイトルとする記事に、「ディーゼルの全ブランドとラインを総合展開する旗艦店を九九年に東京、二○○○年に大阪に開設する。(中略)ディーゼルの日本での売上高(卸)は九七年が十八億円(前年比二八%増)、今年は二十二億円(二二%増)の見通し。」との記載。
(3)請求人提出の甲第1号証乃至甲第3号証、上述の新聞記事が掲載された事実及びその記載内容、さらには、我が国のファッション業界が、ヨーロッパや米国の流行や製品に強い関心をもち、我が国の消費者にヨーロッパや米国のブランド及び商品の紹介、販売等を行っていること、本件商標に係る出願の登録査定の日(平成9年《1997年》12月5日)前においても海外旅行者の増加、多種多様な情報媒体の発展等に伴い、我が国の消費者が海外の商品知識を容易に取得できる状況にあったことを併せみれば、「ディーゼル」及び「DIESEL」の文字は、請求人の業務に係る被服類をはじめとするファッション関連商品に使用する標章として、遅くとも本件商標に係る出願の登録査定の日前までには、既に我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものと判断するのが相当である。
(4)そして、本件商標は、前記したとおり「DIESEL CRUZE」と「ディーゼルクルーズ」の文字よりなり、その構成全体をもって特定の意味合いを表す語として理解されるものとは認められないこと、「DIESEL」と「CRUZE」の間にスペースがあり「ディーゼルクルーズ」の片仮名文字は「DIESEL CRUZE」の欧文字の読みを表したものと理解されること、及び「DIESEL」「ディーゼル」の文字が一般に親しまれた語であることから、容易に「DIESEL」「ディーゼル」と「CRUZE」「クルーズ」の語からなるもの理解されるものと認められる。
そうとすると、本件商標は、その構成中に「DIESEL」及び「ディーゼル」の文字を有するものと容易に認識されるものであり、また、本件商標の指定商品は被服を含むファッション関連商品であるから、本件商標をその指定商品について使用した場合には、上述の事情からして、これに接する取引者、需要者が、その構成中の「DIESEL」「ディーゼル」の文字部分に着目し、前記周知になっている請求人の業務に係る標章を想起し、その商品が請求人の業務に係る商品であると認識することが少なくないものといわざるを得ない。
してみれば、本件商標は、その構成中「DIESEL」「ディーゼル」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし、その文字に相応して「ディーゼル」の称呼及び「(動力としての)ディーゼル」の観念を生ずるものと言わなければならない。
(5)引用商標は、上述のとおり、いずれも「DIESEL」の文字よりなるものであり、その文字に相応して「ディーゼル」の称呼及び「(動力としての)ディーゼル」の観念を生ずるものである。
(6)そうとすると、本件商標と引用商標は「ディーゼル」の称呼及び「(動力としての)ディーゼル」の観念を共通にし、かつ外観においても「DIESEL」の文字を共通にする類似の商標であって、両者の指定商品も同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといわなければならない
(7)なお、請求人が主張する他の無効理由についてみると、商標法第3条第1項柱書の要件については、請求人からはこれに係る何等の証左の提出がなく、本件商標に係る出願の願書の出願人の業務欄に出願人が本件商標を使用する意思として指定商品に関する業務を記載しているから、また、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号については、「DIESEL」「ディーゼル」の文字が本件商標の出願日前より我が国又は外国おいて広く認識されていたものとは認められないこと上述のとおりであるから、さらに、商標法第4条第1項第7号については、出願前に広く知られていたものと認められない商標にただ乗りすることは考え難いから、本件商標は、これらの規定に違反して登録されたものとは言えない。
(8)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-08-05 
結審通知日 1999-08-20 
審決日 1999-09-01 
出願番号 商願平8-100186 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (025 )
T 1 11・ 25- Z (025 )
T 1 11・ 26- Z (025 )
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩内 三夫 
特許庁審判長 金子 茂
特許庁審判官 森吉 正美
茂木 静代
登録日 1998-02-27 
登録番号 商標登録第4118122号(T4118122) 
商標の称呼 1=デ+イ-ゼルクル-ズ 
代理人 足立 泉 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 

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