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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 122
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 122
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 122
管理番号 1011073 
審判番号 審判1998-35638 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-16 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2716968号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2716968号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.本件商標
本件登録第2716968号商標(以下、「本件商標」という。)は、「RITZ SADDLER」の欧文字を書してなり、平成4年2月6日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成8年10月31日に設定登録がなされたものである。
第2.請求人の引用商標
請求人の引用する登録第2247818号商標(以下、「引用A商標」という。)は、「RITZ」の欧文字を書してなり、昭和59年9月17日に登録出願、第22類「かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成2年7月30日に設定登録がなされたものであり、登録第2247819号商標(以下、「引用B商標」という。)は、別紙に表示するとおりの構成よりなり、昭和60年3月1日に登録出願、第22類「フランス製のかさ、フランス製のつえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成2年7月30日に設定登録がなされたものである。
第3.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、要旨次のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第23号証を提出した。
1.商標法第4条第1項第11号の規定の違反
本件商標は,前述の構成からなるから、これから「リッツサッドラー」の称呼が生じる。さらに、本件商標から、「リッツ」の称呼が生じる。
すなわち、本件商標から生じる称呼「リッツサッドラー」の前半部の「リッツ」の「リ」は、促音「ッ」を伴っているから、歯の間から呼気を一気に強く出して発音され、また「ツ」も歯の間から呼気を一気に強く引き出して発音される。その結果、「リッツ」は、それぞれの音がはっきりと強く歯切れ良く発音される。また、後半部の第1音「サ」は、口を大きく開けて発音される「ア」を母音とし、しかも促音「ッ」を伴っている。さらに、語尾音の「ラ」は長音を伴っている。その結果、本件商標を称呼した場合、まず「リッツ」と歯切れ良く発音されるから「ツ」の後で一呼吸置かれ、「サッドラー」が発音される。しかも、「リッツ」と「サッドラー」の発音方法を比べると、「リッツ」は跳ねるように強く発音されるから、「リッツ」が特に聴者の印象に残る。
さらに、「RITZ」は、我が国でも著名な世界でも屈指の超高級ホテルであり、しかも、本件商標は「RITZ」と「SADDLER」の間に一文字程度の間隔があるから、本件商標は「RITZ」と「SADDLER」が外観上分離して認識され、本件商標に接する者は「RITZ」に強く注意をひかれ、これを当該「RITZ HOTEL」と認識する。これに対し、後半部の「SADDLER」は何ら意味を有しない言葉である。したがって、本件商標に接する需要者、取引者は前半部の「RlTZ」に注意を惹かれ、これを単に「リッツ」と称呼する可能性が高い。
したがって、本件商標からは、「リッツ」の称呼が生じ、かつ「リッツホテル」の観念が生じる。
一方、引用各商標はそれぞれ前述の構成からなるから、これから「リッツ」の称呼及び観念が生じることは疑いない。
したがって、本件商標と引用各商標は、称呼上及び観念上類似する商標である。
2.商標法第4条第1項第8号の規定の違反
「RITZ」は、異議申立人及び異議申立人の経営する「リッツホテル/RITZ HOTEL」の略称として、本件商標の出願日である平成4年2月6日より相当以前からわが国において極めて周知、著名なものとなっていた。
一方、本件商標は、その構成中に異議申立人の周知、著名な略称「RITZ」を含むものであるにもかかかわらず、商標権者はその登録について異議申立人から承諾を得ていない。
3.商標法第4条第1項第15号の規定の違反
異議申立人の経営する「RITZ HOTEL/リッツ ホテル」は、世界的な超一流ホテルであり、単に「リッツ」という略称で呼ばれている。しかして、かかる事実は古くからわが国においても確立されており、少なくとも本件商標の出願日である、平成4年2月6日より相当以前からわが国において周知、著名なものとなっていたことは明らかである。
また、異議中立人は、幅広い分野における商品を販売している。しかも、本件商標は、第25類に属する「はき物、かさ、つえ」を指定商品とするものであるが、これらの商品はホテルのサービスの一環としてホテルの部屋に備え付けられたり、泊まり客によって利用されるものである。また、今日では、特に高級ホテルは自己のホテルでこれらの商品を実際に販売していることは周知の事実である。
したがって、かかる事実に鑑みれば、異議申立人の周知、著名な略称及び商標である「RITZ」「リッツ」と類似し、あるいは明らかに「RITZ」の文字をその構成中に含む本件商標が指定商品について使用された場合、需要者、取引者は、当該商品が異議申立人あるいはこれと何らかの関係がある者によって製造、販売された商品であるかの如く商品の出所について誤認、混同を生じる可能性が高い。
4.商標法第4条第1項第16号の規定の違反
異議申立人は、幅広い範囲において、優れた品質の商品の製造、販売を行っている。したがって、異議申立人の周知、著名な略称であり、かつ商標である「RITZ」「リッツ」と称呼上類似し、あるいはこれをその構成中に含む本件商標が指定商品について使用された場合、需要者、取引者は、異議申立人の業務との間に出所の混同を生じるばかりでなく、「RITZ」「リッツ」の高級イメージから、該商品が異議申立人の商品と同等の品質を備えた高級品であるかの如く商品の品質の誤認を生じるおそれがある。
第4.被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。
第5.当審の判断
1.請求人が原審の登録異議申立において提出した甲号証(以下、本件提出の「甲号証」と区別して「原甲号証」という。)等によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人の経営する「リッツ ホテル」は、1898年、後にホテル王といわれたセザール・リッツにより、パリの一等地ヴアンドーム広場に面した一角に設立された。豪華で充実した設備、優美な内装、配慮の行き届いた調度品、きめ細かなサービス等により、設立以来、極めて、高い評価を受けてきた(原甲第27号証乃至同第31号証〈「世界ホテル案内」・昭和58年乃至同60年刊〉)。同ホテルには、プリンス・エドワード(後の英国王エドワード7世)、ウインストン・チヤーチル、テディ・ルーズベルト大統領、ヘンリー・キッシンジヤー、アーネスト・ヘミングウェイ、ゲーリー・クーパー、ココ・シヤネル等、王侯貴族、政治家、作家、実業家、俳優等各界の世界的著名人が宿泊利用者として名を連ねている(原甲第36号証〈リッツホテルの商品カタログ・昭和61年発行〉、原甲第48号証〈「あつめる」平成元年7月1日発行〉)。また、同ホテルは、一般客のほかビジネス客を対象としたサービスも行っている(原甲第28号証乃同第31号証)。
(2)リーダーズ英和辞典によれば、「ritz」の語は、「虚飾」、「見せびらかし」、「誇示」等の意味を有するものであるが、平成元年4月23日発行の朝日新聞の「いんぐりっしゅ散歩」の欄には、「豪華な」を意味する単語として「Ritzy」の語が紹介され、「リッツ ホテル」が語源となつていると記載されており、1998年株式会社研究者発行の研究者新英和大辞典の「ritz」の項には「スイスの著名なホテル経営者:Paris,London,New Yorkなどにその名を冠したホテルがある」との記載が認められる。
(3)世界のホテルの広告宣伝を兼ねた情報誌「世界ホテル案内」(昭和58年乃至同60年発行)は、「パリのホテル事情」という記事の中で、同ホテルを、「リッツ」及び「RITZ」という略称表示とともに、「伝統あるホテルのなかで代表的な老舗」、「フランスの誇る現代の宮殿」であり、著名な宿泊客が多い旨紹介している(原甲第27号証乃至同第31号証)。
(4)また、一般向けの旅行案内書である「パリと近郊の本」(昭和57年発行)及び「交通公社のポケットガイド〈パリ〉」(昭和54年発行)、さらに、内外の旅、世界各国の最新レポート等の特集記事を特徴とする月刊誌「世界画報」(昭和57年発行)においても、略称表示で「リッツ」及び「RITZ」の項を設け、「ココ・シャネルが晩年を過ごしたエレガントなホテル」、「ホテルの中のホテル」、「世界の代表的ホテル」、「・・・最も有名なホテル、著名人が利用する」等と説明している(原甲第33号証乃至同第35号証)。
(5)そして、同ホテルは、日本での予約も可能であり(原甲第22号証乃至同第26号証)、また年間を通じホテル宿泊日数の多い金融マンの選定に係る世界のホテルランキングにおいて昭和63年度には8位(世界のホテル200選 原甲第39号証)、平成元年には4位(毎日新聞 原甲第51号証)となつている。
(6)同ホテルの本館と別館を繋ぐ通路には、カルテイエ、シヤネル等世界の著名ブランド商品が展示され、その中にオリジナルのリッツブランド商品も含まれている(甲第47号証)。また請求人は、インペリアル・エンタープライズ株式会社を通じ、「RITZ」の商標を使用した食器、衣類、印刷物、時計、装身具、袋物等を本件商標の商標登録出願以前から販売していた(原甲第36号証乃至同第38号証)。
(7)以上の認定事実によれば、「RITZ」及び「リッツ」は、請求人の経営に係るホテルの略称として、我が国においても、本件商標の商標登録出願当時には、ホテル関係者のみならず本件商標の指定商品に係る取引者、需要者の間にも広く知られていたものと認められる。
2.本件商標は、前記したとおりの構成よりなるものであるところ、全体として特定の意味を表示するような語義的一体性はなく、またそのほかに全体が一体のものとして把握、認識されるものとすべき理由もないから、取引者、需要者は、これを「RITZ」と「SADDLER」の結合としてとらえ、「RITZ」を含む商標として認識するものとするのが相当である。
さらに、本件商標の指定商品中の「はき物、かさ、つえ」は、ホテルのサービスの一環としてホテルの部屋に備え付けられたり、泊まり客によって利用されるものであり、また、ホテルで販売されていることは周知の事実である。
3.してみると、被請求人が本件商標をその指定商品に使用する場合には、取引者、需要者は、その商品が請求人又は請求人と経済的、組織的に何等かの関係を有する者の業務に係わるものであると商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるをえない。
4.したがって、本件商標は、請求人のその他の主張について論及するまでもなく、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものと認められるから、同法第46条の規定により、その登録を無効とすべきである。
別掲 別記

審理終結日 1999-07-09 
結審通知日 1999-07-27 
審決日 1999-08-06 
出願番号 商願平4-12015 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (122 )
T 1 11・ 23- Z (122 )
T 1 11・ 271- Z (122 )
最終処分 成立  
前審関与審査官 関口 博小松 裕 
特許庁審判長 金子 茂
特許庁審判官 大渕 敏雄
平松 和雄
登録日 1996-10-31 
登録番号 商標登録第2716968号(T2716968) 
商標の称呼 1=リ+ツツサドラ- 
代理人 加藤 建二 
代理人 松井 誠 
代理人 中村 稔 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 青山 葆 
代理人 大島 厚 

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