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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 021 |
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管理番号 | 1010921 |
審判番号 | 審判1997-2467 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2000-09-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1997-02-14 |
確定日 | 1999-11-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2691980号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2691980号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2691980号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成2年11月29日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として同6年8月31日に設定の登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を、概要次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第28号証を提出している。 1.請求の理由 (1)請求人が引用する商標 請求人が引用する登録第1721847号商標(以下、「引用A商標」という。)は、別紙(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和51年11月22日登録出願、第21類「宝玉及びその模造品、その他本類に属する商品」を指定商品として、同59年10月31日に設定登録され、その後、平成7年2月27日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 同じく、請求人が引用する登録第1748108号商標(以下、「引用B商標」という。)は、別紙(3)に表示したとおりの構成よりなり、昭和51年11月22日登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同60年2月27日に設定登録され、その後、平成8年1月30日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 なお、上記両引用商標とも、その指定商品中の「宝玉及びその模造品」については、放棄により消滅し、その登録が平成5年7月26日になされ、また、同じく「身飾品、ボタン類」については、登録を取り消すべき旨の審決が確定し、その登録が同7年10月17日になされているものである。 ▲1▼本件商標の指定商品は、上記引用A及びB商標の指定商品を含むものである。 ▲2▼引用A及びB商標は、「LEONARD」及び「レオナール」からなり、これを要部とするものである。 ▲3▼請求人(レオナールファッション)は、世界で最も美しいプリントとして世界中の女性から愛され続けているブランド「LEONARD」、「レオナール」―「花のレオナール」のイメージで受けとめられている―のファッションメーカーである(甲第1号証)が、本件商標出願時である平成2年11月29日当時、日本を含め世界的に著名であった。即ち、日本においては、「LEONARD」、「レオナール」ブランドは、1969年より、三共生興株式会社をディストリビューター及びライセンシーとして(甲第2号証)展開され、三共生興株式会社は積極的に広告、宣伝等に務め、その取扱商品である「衣服、かばん類、袋物、傘」の販売高は、本件商標の出願前2年間のみをとっても、卸売価格ベースで、以下のとおりであり、非常に大きなものであった。 1989年1月1日〜1989年12月31日 3,338,456,977 1990年1月1日〜1990年12月31日 4,254,444,471 ▲4▼「LEONARD」「レオナール」ブランドは、世界の一流品を記載した雑誌にも必ず取り上げられ(甲第3号証乃至同第5号証)、新聞等で広く報じられ(同6号証乃至同第12号証)、また、「家庭画報」、「ミセス」、「ヴァンサンカン」等のファッション雑誌等に掲載、広告されている(同第13号証乃至同第25号証)。 よって、本件商標の出願当時、「LEONARD」、「レオナール」は衣類を中心として、かばん類、袋物、傘などのブランドとして、また、請求人の略称として、日本において著名であった。 (2)商標法第4条第1項第11号に関する主張 本件商標は、欧文字「LEONARD」及び「FILS」の文字を横書きしてなるが、「LEONARD」と「FILS」とは構成上明確に可分であり、両者を一連にのみ把握すべき格別の理由も無い。したがって、本件商標において、「LEONARD」は要部である。 してみれば、本件商標は、要部「LEONARD」において、請求人の著名な商標「LEONARD」と同一であり、「レオナール」と類似するから、引用A及びB商標と類似する。 したがって、本件商標は商標法第4条1項11号に該当する (3)商標法第4条第1項第7号に関する主張 本件商標は、甲第26号証に示すように、花がらをブランドコンセプトとして使用されていることから明かなとおり、著名な「LEONARD」ブランドの有する「花のレオナール」のイメージに便乗することを目的として登録されたものであり、「LEONARD」の有する顧客吸引力に只乗りせんとして出願し登録されたものである。かかる商標登録は、商標の国際的秩序に反するものであり、本件商標は、公の秋序、善良の風俗を害する虞のある商標である。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第8号に関する主張 本件商標は,請求人の著名な略称「LEONARD」を含むものであり、請求人の承諾なしに出願、登録されたものである。 よって、本件商標は、商標法4条1項8号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第15号に関する主張 本件商標は、請求人の著名な商標である「LEONARD」に「FILS」の文字を付加したものであり、本件商標をその指定商品に使用したときは、「LEONARD」のサブブランドと認識されるものであり、請求人又は請求人と何らかの経済的関係にある者によって製造販売されているとの誤認を需要者に生じさせる虞があるから、本件商標は商標法4条1項15号に該当するものである。 2.答弁に対する弁駁 本件商標は「LEONARD」及び「FILS」よりなるが、既述のとおり、「LEONARD」は、請求人の著名な商標であり略称である。そして、「FILS」は、フランス語の「息子」などを意味する語である(甲第27号証)。 今日、ブランドビジネスの進展に伴い、あるブランドが周知著名になると、そのブランドが対象とするラインの商品と取得層や年齢層が異なる層を対象とするラインの商品を開発し、その新たに開発したラインの商品に既存のラインの商品のブランドに言葉を付加した新たなサブブランドを付して、新しいサブブランドを展開するということが行われる。 前述のとおり、「FILS」は仏語で「息子」の意を有するものであるから、本件商標「LEONARD FILS」は、著名な「LEONARD」の男の子を対象としたサブブランドと認識されるものである。このことは、本件商標が、甲第26号証に示すように、請求人の商品の特徴である花柄のプリントを模した図柄とともに使用されており、本件商標が「LEONARD」のサブブランドを示す態様で、「LEONARD」の著名性に只乗する形で使用されていることからも、明らかである。 したがって、本件商標は、「LEONARD」のサブブランドとして認識されるものであるから、本件商標からは「LEONARD」の観念及び称呼が、「LEONARD FILS」の観念及び称呼とともに生ずるものである。 被請求人が答弁書において例示する商標は、いずれも人名と認識されるものである。 仮に、本件商標から「レオナール フィス」の一連の称呼が生ずるとしても、前述のとおり、本件商標は、「LEONRD」の男の子向の別ラインの商品の観念を生ずるものである。そして、既述の如く、「LEONARD」は著名である。 したがって、本件商標をその指定商品に使用したときは、本件商標を付した商品が、請求人の著名な「LEONARD」ブランドの別ラインの商品であり、請求人又は請求人と関係のある者、例えばライセンシーの製造販売に係る商品であるとの誤認を需要者に生じさせる虞れが大である。 第3 被請求人の答弁 被請求人は「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第23号証を提出している。 (1)本件商標は、「LEONARD FILS」の構成からなるものであり、その称呼は文字どおり「レオナルド(レオナード)フィス(フィルス)」であることはいうまでもないことであり、請求人の認識の如く、「LEONAD」と「FILS」とを可分に、かつ単に横一列に配したものではないから、その要部を「LEONARD」とするものではないことはその構成上一見して明らかである。 (2)無効理由(1)について 引用A商標は、「LEONAD/レオナール」であり、称呼は文字どおり「レオナール」である。また、引用B商標は、「LEONARD FASHION/レオナールファッシオン」であり、称呼は「レオナールファッシオン」である。 本件商標は、「FILS」が「LEONARD」と半文字分離れて綴られているとはいえ、全てが同じ書体で統一されているため必然的に「レオナルド(レオナール)フィス(フィルス)」と一連に称呼せざるを得ない。 したがって、「レオナルド(レオナール)フィス(フィルス)」と称呼する本件商標と引用A及びB商標とは非類似といわざるを得ない。 (3)無効理由(2)について 仮りに、引用A及び同B商標が周知著名であったとしても、その類似範囲は前記(2)で述べたように、称呼上「レオナール(レオナルド)」に限られるべきであり、「レオナルド(レオナール)フィス(フィルス)」と一連不可分に称呼される本件商標にまでその範囲が及ぶものではない。 また、請求人は甲第26号証を示して、引用A商標の「LEONARD」ブランドの持つ「花のレオナール」のイメージに便乗することを目的に云云…とあるが、本件商標には「花」乃至「花がら」のイメージは毛頭なく、したがって顧客吸引力に只乗するとする無効理由には無理があるといわざるを得ない。「引用商標」と「花のレオナール」との関係、関連も提出の甲号証では全く見当らないことを申し添える。 したがって、本件商標は引用商標の存在にかかわらず商標法第4条第1項第7号にも該当するものではない。 (4)無効理由の(3)について 本件商標の構成中の「LEONARD」は全世界に有名なデザイナーの略称であるので、本人の承諾を得る必要云云…とのことであるが、特許庁公告公報(乙第1号証乃至同第7号証)の存在により、請求人の主張が説得力の乏ぼしいものであることは明白である。なぜなら「LEONAD」の文字をこれらがその構成に有するも、夫々個々に公告、登録されている事実が存在するからである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号にも該当するものではない。 以上により本件商標は本件無効審判請求にもかかわらず、登録要件を具備しているものとして適法に登録されたものである。 よって、本件無効審判請求は「理由なし」との審決を賜わりたい。 第4 当審の判断 請求人が提出した甲第2号証(「外国ブランド専用権者等名簿」社団法人日本輸入団体連合会発行)、同第6号証乃至同第11号証(1989年9月26日付産経新聞記事、同日付京都新聞記事、同日付日経産業新聞記事、同日付繊研新聞記事、1989年9月27日付読売新聞記事、同日付日本繊維新聞記事)によれば、請求人は、我が国において三共生興株式会社を通じ、1969年より「婦人服」等の販売を開始し、百貨店60店、専門店140店、計200店のその売上げ高(小売り)は、1988年(昭和63年)が50億円であり、1989年(平成1年)には60億を超える見込みであることが記載されている。 また、甲第3号証乃至同第5号証(「世界の一流品大図鑑’81年版」株式会社講談社発行、「同’89年版」同社発行、「同’90年版」同社発行)によれば、「LEONARD」の商標を付した「スカート、水着、ワンピース」が請求人の業務に係る商標として掲載されている事実が認められる。 してみれば、上記の事実及び請求人の提出した甲第13号証乃至同第17号証及び同第19号証乃至同第25号証を総合勘案すれば、商標「LEONARD」は、本件商標出願前より、請求人が「婦人服」等に使用し、請求人の業務に係る商標として取引者、需要者間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。 そして、本件商標の指定商品に含まれる「装身具、ボタン類」等と、請求人の使用商標の商品である「婦人服」等とは、いずれも身につけるものであり、また、被服を取り扱う企業が、バンドあるいはネクタイピン等の商品にも被服と同一のブランドを付して製造、販売していることが多い等の実情を考慮すれば、両者は、互いに密接な関係を有する商品といわなければならない。 そうとすれば、請求人の著名な商標と認められる「LEONARD」の文字をその構成中に有する本件商標を、その指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、該商品が請求人若しくは同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品の如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項15号に違反して登録されたものであるから、他の法条について検討するまでもなく、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。 なお、被請求人は答弁書において、「LEONARD」の文字をその構成中に有する過去の登録例を挙げているが、本件商標が、商標法第4条第1項第15号に該当するのものであるか否かの判断は、本件商標の出願時を基準とするものであって、本件商標と該登録例とは同列において論ずることはできないから、本件の判断を左右するものとはいえない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別記 |
審理終結日 | 1999-08-17 |
結審通知日 | 1999-09-03 |
審決日 | 1999-09-13 |
出願番号 | 商願平2-133246 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(021 )
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小宮山 貞夫、宮川 久成 |
特許庁審判長 |
沖 亘 |
特許庁審判官 |
箕輪 秀人 滝澤 智夫 |
登録日 | 1994-08-31 |
登録番号 | 商標登録第2691980号(T2691980) |
商標の称呼 | 1=レオナ-ドフ+イルス 2=レオナルドフ+イルス |
代理人 | 佐藤 雅巳 |
代理人 | 古木 睦美 |
代理人 | 井沢 洵 |