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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 122 |
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管理番号 | 1008012 |
審判番号 | 審判1998-30275 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2000-07-28 |
種別 | 商標取消の決定 |
審判請求日 | 1998-03-24 |
確定日 | 2000-01-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2543462号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 商標法第50条の規定により、登録第2543462号商標の指定商品中「はき物」についてはその登録は、取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
I 本件商標 本件登録第2543462号商標(以下「本件商標」という。)は、「CROCKETT & JONES」の欧文宇と「クロケットアンドジョーンズ」の片仮名文字を上下2段に書してなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成2年10月12日登録出願、同5年5月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 II 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。)を提出した。 1.被請求人は、本件商標を日本国内において、その指定商品中の「はき物」についても継続して3年以上使用していない。 また、本件商標について専用使用権者もしくは通常使用権者の登録もなく、他に使用権者による使用もない。 さらに、本件商標は、不使用についての正当な理由も存在しない。 したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中の「はき物」についての登録を取り消されるべきである。 2.答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、平成9年3月に請求人からクロケットアンドジョーンズの紳士用皮靴をサンプル輸入しており、9月には、請求人製造のクロケットアンドジョーンズ紳士靴の本格的な輸入販売を行うとの前提であったが、平成9年12月17日に、やむを得ぬ事情により、東京地方裁判所へ和議手続開始の申立てを行ったので、本件商標の本格的輸入を中止せざるを得なかったものであり、和議債権者の同意がなされ、和議が成立した場合には、請求人からクロケットアンドジョーンズの紳士靴の輸入を再開する。故に、現在の本件商標の一時的不使用は、被請求人が和議手続中により、営業の一部活動を中断せざるを得ない状況によるものなので、不使用について正当の理由がある旨主張する。 しかしながら、被請求人が本件商標の不使用の正当理由として主張している、和議申請中のためであるとの主張は、全く合理的な理由がない。以下詳述する。 ▲1▼被請求人は、平成5年5月31日には、本件商標を請求人に無断で商標登録していたものであり、本件審判の予告登録日(平成10年5月20日)から3年前においても被請求人は、営業活動を十分できるにもかかわらず本件商標を使用していなかったものである。 即ち、被請求人が債務の超過により、和議申請に至ったのは、被請求人自身の営業活動の懈怠が原因であり、何等不使用について正当な理由に該当しないものである。 ▲2▼商標法第50条の正当理由とは、登録商標の使用をしようとしていた商標権者、専用使用権者又は通常使用権者がその責めに帰すことができない事由が発生したために使用をすることができなかった場合をいい、そのような事情がなかったならば、その登録商標が使用されていたはずであり、その登録商標の使用がされていたのと同視してもよいような特別な事情を意味する。 例えば、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊したため、その使用ができなかった場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されていた場合等である。 ▲3▼また、和議申請が本件商標の不使用取消期間の3年の大半を占めるのであれば、またある程度の合理的な理由がある。 しかし、本件審判の場合、不使用取消審判の予告登録が平成10年5月20日であり、他方、和議申請が平成9年12月17日であるから、たった5ヶ月が法律の規定により不使用の正当期間にすぎないものである(甲第1号証)。 故に、被請求人の和議申請は本件商標の不使用の正当理由に該当することはないので、本件商標の登録は取り消されるべきである。 (2)被請求人が主張する、平成9年3月の請求人からクロケットアンドジョーンズの紳士靴のサンプル輸入(5足にすぎない。)は、あくまでもサンプル輸入なので、当事者の内部的なものであり、市場に販売するためのものではないので、商標法上の商標の使用に該当するものでないことは明らかである。 (3)なによりも問題なのは、当該サンプル輸入の靴に実際に使用されていたブランド(商標)は、本件商標ではなく、被請求人のメインブランドである「AVONHOUSE」である(甲第2号証)。 なお、被請求人の靴及び衣料品に関するメインブランドが「AVONHOUSE」であることは、乙第5号証(和議手続開始申立事件における意見書)より明白である。 即ち、請求人の当該輸出製品には、請求人のブランド(本件商標)「CROCKETT & JONES」を使用したのではなく、被請求人の要望に基づいて被請求人のブランド「AVONHOUSE」を使用したものであり、いわゆる、輸入先のOEM(相手先ブランドによる生産)によるの生産・輪出であった。 したがって、被請求人による平成9年3月のサンプル輸入、そしてそれに基づく9月からの本格的に輸入販売を計画していたのは、請求人から輪入したOEMによる自社ブランド「AVONHOUSE」の輸入靴の販売であったことは明白である。 (4)実際に被請求人が本格的に使用しようとして請求人へ依頼した、1997年9月の依頼状の履行は、実際は行われなかった。1997年3月から9月の間に請求人へ依頼がなされたが、当該依頼は履行(船積み)されなかった。何故なら、請求人は、被請求人から1997年8月には、会社が破産したと知らされていたからである。そして当該依頼は、キャンセルされた。請求人の工場には、当該製品を未だに所有しているが、そのブランドが「CROCKETT & JONES」ではなく、被請求人ブランドの「AVONHOUSE」であることよりも明らかである(甲第2号証及び甲第3号証)。 故に、被請求人が、請求人から輸入する紳士靴に使用しようと企画していたのは、本件商標ではなく、被請求人ブランドの「AVONHOUSE」であることは明確なので、本件商標の不使用について、例え、請求人の会社に和議申請がなされようとも、本件商標に関する不使用の正当理由に該当しないことは明々白々である。 (5)以上述べたように、本件商標がその指定商品に実際に使用されていないことが明らかであるから、その登録は取り消されるべきものである。 III 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。 1.被請求人は、平成9年3月に、請求人からクロケットアンドジョーンズの紳士用皮靴をサンプル輸入しており(乙第1号証)、これらの輸入した紳士用の皮靴をさらに同年の秋には相当量輸入して、本格的に店頭に並べて販売する予定で、取引業者に通知し、その準備も完了していた。なお、このサンプル靴の輸入代金は、請求人宛電信送金薄により支払完了済みである(乙第2号証)。 2.被請求人は、上記サンプル用紳士用皮靴を輸入後、被請求人の店舗に取引業者用に並べて販売のために展示しており、これは、平成9年に本格的にクロケットアンドジョーンズの皮靴を販売することを意味しており、当然の事ながら、商標の使用に該当する行為である。又、価格設定については、1足上代で53,000円から68,000円という設定も完了していた。 9月には、請求人製造のクロケットアントジョーンズ紳士靴の本格的な輸入販売を行う前提で、請求人と被請求人の売買も成立しており、10月に輸入するということで英国から日本への出荷の時期についての最終打ち合わせも済まされていた(乙第3号証、乙第4号証)。 3.ところが、被請求人は、平成9年12月17日、やむを得ぬ事情により、東京地方裁判所に、和議手続開始申立を行った(東京地方裁判所平成9年(コ)第32号和議手続開始申立事件)。そこで10月の本格的輸入も、突然中止せざるを得ないこととなり、被請求人は、請求人に対し、その旨通知した。 4.東京地方裁判所における和議手続開始申立は、整理委員も選任され、平成10年7月15日には、整理委貝から意見書が東京地方裁判所に提出され意見書46頁の結論部には、和議条件が履行される可能性が十分あるとの判断が付されている(乙第5号証)。 和議債権者の同意がなされ、和議が成立した場合には、請求人から、クロケットアンドジョーンズの紳士用靴の輸入を再開し、日本において、大量に販売する予定である。 5.以上、現在の本件商標の一時的不使用は、被請求人が和議手続中により、営業の一部活動を中断せざるを得ない状況によるものであり、正当な理由が存在するのである。さらに、平成9年3月には、現実に、販売のためにサンプル輸入した事実もあり、「3年以上使用していない」という請求人の主張は理由がない。又、前記したように、請求人と被請求人との間で、サンプル輸入が行われ、また、大量の輸入を平成9年10月には予定されていたのであり、請求人の今回の一部取消審判請求は、信義則に反するものである。 IV 当審の判断 1.答弁の理由及び乙各号証を総合すれば、概略以下の事実が認められる。 (1)被請求人は、1997年(平成9年)3月27日付請求人からのInvoiceに記載された「MensLeatherShoes6403-5995-samples」(紳士用革靴-見本)を輸入したこと、 (2)請求人より被請求人に対し、被請求人が注文した「boot」を1997年10月の第1週に船積みする旨のテレファックスが同年9月10日付であったこと、 (3)被請求人は、平成9年12月17日に東京地方裁判所に和議手続開始申立(東京地方裁判所、平成9年(コ)第32号和議手続開始申立事件)を行ったこと、 (4)被請求人は、破産原因が発生したことにより、上記(2)に記載の請求人との取引を中止したことが認められる。 2.そこで、被請求人が本件商標を取消に係る商品「はき物」について、本件審判の請求登録日前3年以内に使用していなかったことにつき、正当な理由が存在するか否かについて検討する。 (1)乙第5号証(和議手続開始申立事件における意見書)によれば、本件審判の請求登録日である平成10年5月20日より3年以内の被請求人の営業活動について、以下の事実が認められる。 ▲1▼被請求人は、平成8年11月20日にシャンタル・デュモ株式会社(以下「シャンタル社という。)より営業を譲り受けたが、被請求人が設立された平成8年11月14日から第1期の事業年度終了日の平成9年1月20日までは会社設立以外の営業活動を全く行っていなかったこと、 ▲2▼第2期の期首(平成9年1月21日)にシャンタル社からの営業譲渡による資産・負債が計上され、「AVON HOUSE」ブランドの商品の販売を中心に営業が開始されたこと、 ▲3▼被請求人は、平成9年9月19日に手形不渡事故を起こし、卸部門の取引を停止し、その後は、販売商品の殆どがシャンタル社から譲り受けた在庫品であったこと、 ▲4▼破産の主たる原因として、「本来引き継ぐべきでないシャンタル社の不良債権を引き継ぎ、それを申立人(被請求人)で評価減を行ったこと、売上げの計上基準の経理処理に問題点があり正規の会計処理がなされていなかったこと」などが認められる。 (2)ところで、商標法は、使用により商標に蓄積された信用を保護することにより、産業の発達に寄与し、需要者の利益を保護すること目的としているものである。換言すれば、商標権者が登録商標を使用することを保護の前提としているものであって、一定期間登録商標を使用しない場合は、保護する対象がないものというべきであり、他方、不使用の登録商標を放置することは、商標の使用を欲する者の商標採択の範囲を狭める結果ともなり、国民一般の利益を損なうこととなる。 商標法第50条の立法趣旨は、上記のような一定期間登録商標を使用していない登録商標については、請求により、商標登録を取り消すことにあると解される。そして、上記商標法の目的、不使用取消審判制度の趣旨からすると、登録商標の不使用につき商標法第50条第2項但し書きにいう「正当な理由」があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて、商標権者の責めに帰することができないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該登録商標を取り消すことが社会通念上酷であるような場合をいうものと解すべきである。 (3)これを本件についてみると、前記1.及び2.(1)で認定した事実によれば、被請求人は、平成9年9月19日に手形不渡事故を起こしたこと、被請求人の破産の主たる原因として、本来引き継ぐべきでないシャンタル社の不良債権を引き継ぎ、それを被請求人で評価減を行ったこと、売上げの計上基準の経理処理に問題点があり正規の会計処理がなされていなかったことなどが認められるが、このような事情があったからといって、被請求人が本件商標を使用しないことについて、その責めに帰すことができないやむを得ない事情があったものとは認め難いところである。 しかも、被請求人は、請求人との取引を開始したのは、本件商標が設定登録された平成5年5月31日から約4年も経過した平成9年3月であり、その取引内容も、商品(紳士用革靴、5足)のサンプル輸入をしたにすぎないものであって、会社が設立された平成8年11月14日から平成9年1月20日までは事実上営業活動を全く行っていないことが認められる。 加えて、平成9年3月27日にサンプル輸入された紳士用革靴に、本件商標が使用されたのか明らかではなく、本件商標の設定登録以降、本件商標がその指定商品中の「はき物」について使用されたと認めるに足りる証拠の提出もない。 以上を総合して勘案すれば、本件商標の不使用を理由に本件商標の登録を取り消すことが、社会通念上被請求人に酷であると認めることはできない。 してみれば、被請求人は、本件商標をその指定商品に使用していないことについて、商標法第50条第2項但し書きにいう「正当な理由」があるものとは認められないといわざるを得ない。 3.したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、指定商品中の「はき物」について取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-09-29 |
結審通知日 | 1999-10-19 |
審決日 | 1999-10-29 |
出願番号 | 商願平2-115300 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(122 )
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 新五、関口 博 |
特許庁審判長 |
小松 裕 |
特許庁審判官 |
茂木 静代 小林 薫 |
登録日 | 1993-05-31 |
登録番号 | 商標登録第2543462号(T2543462) |
商標の称呼 | 1=クロケ+ツトアンドジ+ヨ-ンズ 2=クロケ+ツトジ+ヨ-ンズ |
代理人 | 武田 正彦 |
代理人 | 中里 浩一 |
代理人 | 中森 峻治 |
代理人 | 滝口 昌司 |