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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない 126
管理番号 1007810 
審判番号 審判1996-18446 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-10-31 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 昭和58年商標登録願第58759号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別紙に示すとおり「詩吟神風流」の文字を横書きしてなり、第26類「印刷物、書画」を指定商品として、昭和58年6月24日に出願人岩渕幸次、同岩渕ムツ子の両名により登録出願され、その後、出願人については、商標登録出願人名義変更(一般承継)届をもって、岩渕ムツ子が単独承継したものであって、また、指定商品については、昭和61年9月29日付手続補正書をもって「雑誌、新聞、パンフレット」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原審において登録異議の申立てがあった結果、原査定が本願商標を商標法第4条第1項第8号に該当するものとして、本願を拒絶した理由は、「本願商標は、『詩吟神風流』の文字よりなるところ、該商標は、詩吟の一流派の名称(団体)を表したものと認められる。しかして、登録異議の申立人(以下、「申立人」という。)及び出願人がそれぞれ提出した書証と同人らの主張によれば、申立人の代表者たる岩渕英夫は、前記詩吟団体の、二代目総元であること、及び出願人は、初代総元の未亡人であること等の事実が認められる。してみると、これらの事情よりすれば、出願人は、たとえ初代総元の未亡人の立場にある者であるとしても、同人が個人として出願されている、前記詩吟団体の名称よりなる本願商標は、畢章、他人の名称に他ならないものと言わざるを得ないものであり、かつ当該他人の承諾を得ているものとも言えない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、登録できない。」とするものである。
3 当審の判断
本願商標は、前記のとおり「詩吟神風流」の文字を横書きしてなり、第26類「雑誌、新聞、パンフレット」を指定商品とするものである。
そこで、本願商標が、商標法第4条第1項第8号に該当するか否かについて判断する。
(1)商標法第4条第1項第8号の適用について
原審の拒絶の理由とした商標法第4条第1項第8号は、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」について登録が受けられない、とするものであって、その立法趣旨は人格権の保護にある。
そして、ここでいう「他人」については、法人格のない社団が一定の範囲で商標法上の権利の主体となり得ないものとされているとしても、同法が、一般私法上の人格権的利益の保護を主たる目的とする本号から、法人格を有しない社団を除外している、すなわち、本号にいう「他人」に法人格のない社団は含まれない、と解する理由はなく、その名称又はその著名な略称を含む商標は、本号によって商標登録を受けることができないものと解すべきである(東京高等裁判所平成8年行ケ第225号判決参照)。
また、自己の名称等と他人の名称等が一致し、かつ、当該他人の人格権を害するものと認められる場合は、その他人の承諾を要するものと解するのが相当である。
(2)詩吟神風流について
当審において請求人の提出した甲第1号証(詩吟神風流沿革)によれば、詩吟神風流は、岩渕神風が昭和2年に詩吟神風会として創設したものであって、該流派は、同30年に「詩吟神風流」と改名、同61年2月12日に創始者岩渕神風死去、同61年5月11日に創始者の甥である岩渕神木が二代目岩渕神風を襲名したこと、また、その直後の同62年7月26日に新たに創始者の長男岩渕清を宗家とする詩吟神風流を後継するとの記載が認められる。
そうすると、詩吟神風流は、創始者の没後、一方は二代目総元を襲名し、もう一方は宗家を後継するというやや不自然な承継の様相を呈していたことが窺われ、該流派は事実上二つに分派し、各々が別個に活動している状況を認めることができる。
以下、二派の状況について検討する。
▲1▼ 岩渕神風(岩渕神木)を二代目総元する詩吟神風流について
原審において申立人の提出に係る各書証(千葉家庭裁判所検認に係る遺言書、神風流詩吟集〈別冊〉昭和62年1月1日全日本詩吟道連盟本部、詩吟神風流本部発行)等によれば、当該流派では、中心となる者を総元と称し、その初代総元は当該流派の創始者である岩渕神風(本名岩渕幸次)が勤めていたところ、その死去により、二代目総元は岩渕神木(初代総元の甥、本名岩渕英夫)へと承継せられたものと推認し得るものである。
そして、当審において、申立人「東京都中央区新川2丁目6番17号詩吟神風流」の主体並びにその存立等に関し、平成11年9月3日付の嘱託書をもって合議体審判長名により東京法務局長に対し、その登記簿謄本の送付方を依頼したところ、送付された履歴事項全部証明書によれば、商号及び営業所は上記のとおりとし、商号使用者の氏名及び住所を「東京都小金井市本町5丁目30番17号 岩渕英夫」、営業の種類として「1 詩歌吟詠教室の経営 2 教本、機関紙並びに吟詠に関する図書の出版販売 3 上記事業に付帯する事業」とする旨の記載が認められる。
また、上記詩吟神風流なる団体に関し、該流派が、現に、その活動を行っていることは、詩吟神風流機関誌「神風流」第118号(平成11年7月30日発行)に至るまで発行されている機関誌及び同「神風流創始六十五周年記念 詩吟大会(平成3年11月2日ないし4日 日比谷公会堂において)」、同「神風流創始七十周年記念 詩吟大会(平成8年11月2日及び3日 日比谷公会堂において)」、同「詩吟神風流 全国詩吟大会(日時:平成5年5月9日ないし平成11年5月16日毎年開催 会場:日比谷公会堂)」、同「新年全国詩吟大会 兼各杯コンクール決勝(日時:平成8年1月21日第27回ないし同11年1月24日第30回 会場:九段会館)」とする当該催しに係る冊子(大会プログラム)等から認め得るところであり、かつ、これら大会の主催及び機関誌等の発行者は「詩吟神風流総本部」及び「詩吟神風流総元(二代目)岩渕神風(本名岩渕英夫)」であることが客観状勢として認められる。
そして、このように請求人(出願人)の所属するところでない別の「詩吟神風流」を名乗る団体が存在し、活動を行っている点については、請求人(出願人)の提出に係る甲第2号証の3詩吟神風流機関誌第78号(昭和63年3月23日発行)の流祖神風先生三回忌法要おける詩吟神風流宗家岩渕清の流祖墓前祭誓詞とする解説記事によっても認め得るところである。
してみれば、岩渕神風(本名岩渕英夫)を二代目総元する「詩吟神風流」は、詩歌吟詠を目的とした相当数の構成員からなる集合体であり、団体としての組織を有し、団体自体が社会上の一個の単一体としての存在を有するものとみるのが相当である。
▲2▼ 創始者の長男岩渕清を宗家とする詩吟神風流について
他方、岩渕清を宗家する詩吟神風流が団体として存し、現に、その活動しているものであることは、詩吟神風流機関誌「神風流」第76号(昭和62年11月10日発行)、同第106号(平成8年1月1日発行)等の機関誌(甲第2号証の1ないし同15)、及び同「詩吟神風流創始六十五周年 記念大会(平成3年10月20日)」(甲第3号証)、同「詩吟神風流創始七十周年 記念大会(平成8年11月23日 於 九段会館)」(甲第4号証)、同「全国詩吟大会(日時:平成5年10月17日 会場 九段会館)」(甲第5号証の1)、同「新年全国詩吟大会 全国決勝コンクール(日時1989年1月16日 会場 九段会館)」(甲第5号証の2)とする当該催しに係る冊子(大会プログラム)等から認め得るところであり、かつ、これら大会の主催及び機関誌等の発行者は、「詩吟神風流総本部」及び「宗家岩渕清」であることが認め得るものである。
そして、岩渕清を宗家とする詩吟神風流は、上記▲1▼の「詩吟神風流」と同様に詩歌吟詠を目的とした相当数の構成員からなる集合体であり、団体としての組織を有し団体自体が社会上の一個の単一体としての存在を有するものとみることができる。
▲3▼ 請求人(出願人)岩渕ムツ子について
請求人(出願人)「岩渕ムツ子」は、原審において提出された商標登録出願人名義変更(一般承継)届、異議申立てに対する答弁書添付の書証及び当審において提出された甲各号証によれば、初代総元である岩渕神風(本名岩渕幸次)の未亡人であり、上記▲2▼の「詩吟神風流」の理事長であること、及び詩吟の号を「神甲」と称していることが認められるものである。
(3)本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するか否かについて
そこで、本願商標を上記認定事実に照らし判断するに、「詩吟神風流」は、二代目総元岩渕神風(本名岩渕英夫)とする上記▲1▼の団体と宗家岩渕清及び理事長岩渕神甲(本名岩渕ムツ子)とする同▲2▼の団体が存在し、両団体共にそれ自体が社会上の一個の単一体として、それぞれ現に活動していることが客観状勢として認められるところである。そして、本願商標は、これら両団体の名称と同じくするものである。
しかして、本願は、一方の流派に属する者と認められる「岩渕ムツ子」に係る登録出願であって、たとえ、同人が初代総元の未亡人であり、かつ、上記▲2▼の団体理事長であるとしても、それをもって他方の流派に係る人格権その他商標登録等に関し、正当な権限に基づき登録出願に及んだものとは認められず、また、その証左は見出せない。
してみると、「岩渕ムツ子」の出願に係る本願商標は、商標法第4条第1項第8号に規定するところの他人、すなわち二代目総元岩渕神風とする上記▲1▼の団体の承諾を得たものではないことが明らかである。
そうとすれば、本願商標は、他人の名称と同一の商標であり、かつ、他人の承諾を得ていないものであるから、同法第4条第1項第8号に該当し、登録することができない。
なお、請求人は、詩吟神風流を継いだ事情及び流派の現状について立証するため証人尋問を申請しているが、当該流派の活動状況及び現状は、上記(2)において認定したとおりであって、その事情も提出された書証等により、すでに明らかであるから、その必要性を認めない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記

審理終結日 1999-10-15 
結審通知日 1999-11-05 
審決日 1999-11-16 
出願番号 商願昭58-58759 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (126 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 茂中村 欽五 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 渡口 忠次
高野 義三
商標の称呼 1=シギンシンプ-リ+ユ- 
代理人 菅 博 

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