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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 040
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 040
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 040
管理番号 1004432 
審判番号 審判1997-15957 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-09-25 
確定日 1999-10-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第3270922号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3270922号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、平成4年9月25日に登録出願、第40類「プラスチックの加工,金属の加工」を指定役務として平成9年3月12日に設定の登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
第2 請求人の主張
請求人は、「登録第3270922号商標の登録は、無効とすべきものとする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同38号証を提出している。
1.請求の理由
(1)請求人の提出に係る、平成3年4月30日、株式会社ぎょうせい発行の「日本会社録(第18版)」(甲第3号証)、請求人により発行された「会社案内」(甲第4号証及び同5号証)及び「三共株式会社定款」(甲第6号証)の各記載に徴し、請求人会社は、明治32年三共商店創業、同40年三共合資会社に改組改称、大正2年3月1日株式に改組し、平成7年3月現在、資本金416億2300万円、従業員数6,812名、年間売上高4,100億円を示し、株式も東京、大阪、名古屋の各証券取引所第1部上場、札幌、新潟、福岡の各証券取引所にも上場し、全国的に多数の支社、営業所、出張所及び工場を有するほか、海外の多数の有数企業と技術提携をしている我が国有数の製薬を主業務とする一流大企業である。
(2)そして、請求人は、商標公報及び商標登録原簿謄本(甲第7号証乃至同11号証)に示す通り、「三共」及び「SANKYO」の文字より成る登録商標を、登録第248571号、同第647377号及び同第647378号として、それぞれ商標権存続期間の更新登録もなされ、現に商標権として有効に存続しているものの商標権者であるところ、該甲各号証の記載に徴し、これらの登録商標は、すべての商品の区分において、防護標章の登録及びその存続期間の更新登録もなされていること明らかなところである。
(3)尚、請求人の堤出に係る、昭和34年1月15日、商標研究会編集・発行の「日本商標大事典」(甲第12号証)、同47年9月5日、商標研究会発行の「新版日本有名商標録」(甲第13号証)、平成6年11月20日、商標調査会発行の「日本商標名鑑’94」(甲第14号証)及び1970年社団法人日本国際工業所有権保護協会(AIPPI)発行の「FAMOUSTRADEMARKS IN JAPAN」(甲第15号証)の各記載に徴するも、請求人の所有に係る上記各登録商標が、請求人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、古くより広く認識されているものであること明らかなところである。
(4)しかして、本件商標は、その構成、上述の通り、「SANKYO ALUMINIUM」の文字より成るものであるところ、その構成中の「ALUMINIUM」の文字は、業種、業態を表示する部分であって、本件商標の自他役務を識別するための最も重要な部分(所謂、商標の要部)は、商標構成中の前半部に、やや特殊な態様をもって顕著に存する「SANKYO」の文字部分にあるといわざるを得ず、したがって、本件商標は、簡易、迅速を旨とする取引の実際にあっては、「SANKYO」の文字部分のみを捉えて、単に「サンキョウ」とのみ称呼される場合の決して少なくないことは、取引の経験則に照らして、否定し得ないところである。
(5)一方、請求人の所有に係る各登録商標は、それぞれの構成上、これらよりは、いずれも「サンキョウ」(三共)の称呼及び観念を生ずるものであること明らかなところであるばかりでなく、請求人の業務に係る商品を表示するためのものとして、極めて周知、著名なものであるから、本件商標をその指定役務について使用をするときは、その役務が、請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、誤認、混同を生じさせるおそれの充分にある商標であるといわなければならないところである。
(6)更に、請求人の名称は、「三共株式会社」であるところ、「株式会社」は法人の種類を表示する部分であって、自他名称を識別するための主たる重要な部分は、「三共」の文字部分にあり、これが、請求人の名称を表示するための実質的な部分であって、請求人は、「三共」(サンキョウ)とのみ略称されて、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識され、著名なものであることは、特許庁においても顕著なる事実であると確信するところである。
一方、本件商標は、請求人の名称の略称として著名な「サンキョウ」と同一称呼を生ずる「SANKYO」の文字を含んでいるにも拘わらず、本件商標は、その登録について、請求人の承諾を得ている事実はないものである。
(7)請求人の上記主張理由の正当性を立証すべく、著名商標(名称)を保護すべき旨の平成4年(ワ)第22500号(平成5年9月24日判決言渡)判決外7件の判決例をを挙げて、請求人は、これを自己の主張理由に有利に援用することとする。
(8)また、請求人の提出に係る商標公報及び商標登録原簿謄本(甲第8号証及び同24号証乃至同31号証)の記載に徴すれば、請求人の所有に係る登録第248571号商標を原商標登録とする防護標章が、第35類、第36類、第37類、第38類、第39類、第40類、第41類及び第42類の各役務を指定役務として、それぞれ登録されている事実がある。ということは、請求人は、製薬業務を主とする多角経営の法人会社であって、該登録商標を上記の各類に属する役務について、第三者が使用をするときは、その役務が、請求人の業務に係る役務であるかの如く、その役務の出所につき、誤認、混同を生じさせるおそれが充分にあるということを、特許庁が認めたことの証左に外ならないところである。
(9)更にまた、請求人の提出に係るパンフレット(甲第32号証乃至同35号証の記載に徴すれば、請求人は、食品や医薬品産業に関する工場、事業所等の異物混入対策や微生物汚染等のメンテナンスに関する役務(甲第32号証及び同33号証)、家庭の生活害虫の防除、植木、植裁の害虫対策、カビの防除等のケア・サービスに関する役務(甲第34号証)及び畜鶏舎や豚舎等の畜産業における害虫等の防除サービスに関する役務(甲第35号証)の各種役務を業として行っていることが明らかなところであって、請求人は、多角経営の法人会社であるというを相当とするところである。
(10)してみれば、本件商標は、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されている、請求人の所有に係る上記の各登録商標と称呼において、彼此相紛らわしい類似の商標であるといわなければならないので、これをその指定役務について使用をするときには、その役務と請求人の業務に係る役務との間において、役務の誤認、混同を生ずるおそれの充分にある商標であり、かつ、請求人の名称の著名な略称を含んでいる商標であるにも拘わらず、その登録について、請求人の承諾を得ていないものであるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同法第4条第1項第10号及び同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号に基づいて、その登録は、無効とされるべきものである。
よって、本件審判請求は、その請求の趣旨に記載の通りの審決を求める次第である。
2.答弁に対する弁駁
本年6月14日付をもって、特許庁商標審査基準室より、「周知・著名商標の保護等に関する審査基準の改正について」(甲第36号証)が、公表された。
(1)その改正の主な内容としては、次のようになっている。
▲1▼ 周知・著名商標と他の文字又は図形と結合している商標は、原則として、拒絶することとする。
▲2▼ 特許庁ホームページに「日本国周知・著名商標検索」として掲載されている商標を原則として周知・著名商標として取り扱う。
▲3▼ 「日本有名商標集」(日本・AIPPIが作成したもの)は、商標審査便覧上周知・著名である可能性がある商標とし、この商標は、原則として周知・著名なものと推認して取り扱うこととする。
(2)そして、その具体的な改正内容としては、次のようになっている。
第4条第1項第10号について:
▲1▼ 本号でいう「需要者の間に広く認識された」他人の未登録商標と他の文字又は図形等とを結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則としてその未登録商標と類似するものとする。
▲2▼ 本号でいう「需要者の間に広く認識されている商標」の認定に当たっては、防護標章登録を受けている商標又は審決若しくは判決で需要者の間に広く認識された商標と認定された商標については、その登録又は認定に従い需要者の間に広く認識された商標と推認して取り扱うものとする。
第4条第1項第15号について:
▲1▼ 他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。
▲2▼ 著名性の認定に当たっては、防護標章登録を受けている商標又は審決若しくは判決で需要者の間に広く認識された商標と認定された商標については、その登録又は認定に従い需要者の間に広く認識された商標と推認して取り扱うものとする。
(3)請求人の引用商標である登録第248571号、同第647377号及び同第647378号商標は、いずれも第40類において、第248571号防護標章登録第36号、第647377号同第28号及び647378号同第29号として、防護標章登録されており、また、特許庁ホームページに「日本国周知・著名商標検索」(甲第37号証)として掲載されており、更には、「日本有名商標集」(甲第38号証)にも掲載されていることを、総合勘案するとき、請求人の各引用商標が、著名商標であることに疑いの余地はないところである。
(4)してみれば、上記の「周知・著名商標の保護等に関する審査基準の改正」によるも、請求人の著名商標に、「ALUMINIUM」の文字を結合した本件商標は、たとえ、その外観構成がまとまりよく一体に表されているものであるとしても、商標法第4条第1項第10号及び同法第4条第1第15号に該当するものであり、しかも、本件商標は、その構成が、「SANKYO」と[ALUMINIUM」の各文字の外観構成が、まとまりよく一体に表されているものであるというよりも、むしろ、それぞれ前半部と後半部の文字の構成態様を著しく異にし、両文字が、分離分断して把握され易い構成態様であるから、その登録は、無効とされるべきものである。
(5)また、被請求人は、審判事件答弁書第5頁内において、被請求人においても本件商標を「SANKYO」(サンキョウ)と略称することなく、「SANKYO ALUMINIUM」(サンキョウアルミニウム)と表示して使用しているのが実情であると答弁し、乙第9号証乃至同11号証等を提出しているが、本件商標が、そのまま使用されているのは、同10号証の「会社概要」(英文版)のみであり、その他には、本件商標が、そのまま使用されている事実はないばかりでなく、該英文のみで印刷された「会社概要」が日本国内で、頒布され、使用されているものとは、到底把握できないものである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同30号証を提出している。
(1)本件商標は、審査段階における出願公告(平成7年商標出願公告第79446号)に対し、本件審判請求の理由と同趣の理由をもって、請求人が登録異議の申立てを行い、審査官の「登録異議の申立てについての決定」において、「理由がない」との決定(乙第3号証)を受けたものである。
(2)請求人は、本件商標に対し、請求人所有に係る登録第248571号商標(乙第4号証)、同第647377号及び同第647378号の登録商標(乙第5号証)(以下、単に「引用各商標」という。)を引用して、「本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同法第4条第1項第10号及び同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、結局、本件商標は、商標法第46条第1項第1号に基づいて、その登録は無効とすべきである。」と主張し、証拠方法として甲第1号証乃至同35号証を提出している。
(3)請求人主張の前記(2)の要旨を分説すると、次のとおりである。
▲1▼請求人は、甲第3号証乃至同6号証に示すとおり、我が国有数の製薬を主業務とする一流大企業である。
▲2▼請求人は、甲第7号証乃至同11号証及び同24号証乃至同31号証に示すとおり、「三共」及び「SANKYO」の文字よりなる引用各商標を所有し、すべての商品及び役務の区分において防護標章の登録をしている。
▲3▼甲第12号証乃至同15号証の記載に照らし、引用各商標が、請求人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において古くより広く認識されているものである。
▲4▼本件商標の要部は「SANKYO」の文字部分にあるといわざるを得ず、取引の実際にあたっては「SANKYO」の文字部分のみを捉えて、単に「サンキョウ」とのみ称呼される場合が多いことは、取引の経験則に照らして否定し得ない。
▲5▼引用各商標は、いずれも「サンキョウ」(三共)の称呼及び観念を生じ、請求人の業務に係る商品を表示するためのものとして極めて周知・著名なものであるから、本件商標をその指定役務について使用するときは、その役務が、請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、誤認・混同を生じさせるおそれの充分にある商標であるといわなければならない。
▲6▼請求人の名称は、「三共株式会社」であるところ、重要な部分は「三共」の文字部分にあり、請求人は「三共」(サンキョウ)とのみ略称されて、取引者及び需要者間において極めて広く認識され、著名なものである。一方、本件商標は、請求人の名称の略称として著名な「サンキョウ」と同一称呼を生ずる「SANKYO」の文字を含んでいるにも拘わらず、本件商標はその登録について、請求人の承諾を得ている事実はない。
▲7▼請求人の主張理由の正当性を立証するものとして、甲第16号証乃至同23号証に示す判決要旨を提出している。
▲8▼請求人は、甲第32号証乃至同35号証に示す役務を業としており、多角経営の法人会社である。
(4)被請求人は、前記(3)の請求人の主張に対して、逐次、以下のとおり反論の答弁をし、その理由を述べ、証拠方法を提出する。
(5)前記(3)の▲1▼〜▲3▼に対する答弁
請求人は、先ず同人の提出に係る「日本会社録」「会社案内」「定款」等の記載に基づき、請求人会社の沿革をのべた上、現在においては我が国有数の製薬を主業務とする一流大企業であると共に、引用各商標はすべての商品及び役務区分において防護標章の登録を得ているので、請求人の業務に係る商品「薬剤」を表示するためのものとして取引者及び需要者の間において広く認識されているものであると主張している。
被請求人は、この点において、請求人が製薬を主業務とする一流大企業であり、引用各商標が請求人の製造・販売する「薬剤」を表示するためのものとして著名であることについて何ら否定するものではない。
しかしながら、引用各商標が商品「薬剤」を表示する商標として著名であるとしても、本件商標の指定役務は「プラスチックの加工、金属の加工」であって、引用各商標の指定商品「薬剤」とは、全く異なる産業分野及び技術分野に属するものであり、加えて、本件商標の指定役務と引用各商標の指定商品との具体的関係をみるに
(ア)本件商標の指定役務の提供と引用各商標の指定商品の製造・販売が同一の事業者によって取扱われていない。
(イ)本件商標の指定役務と引用各商標の指定商品の用途は一致するところが全くない。
(ウ)本件商標の指定役務の提供場所と引用各商標の指定商品の販売場所は、全く異なる。
(工)取引者・需要者の範囲が異なる。
等、本件商標の指定役務と引用各商標の指定商品との間には、全く関連性が認められないものであるから、本件商標をその指定役務に使用したとしても引用各商標との関係で誤認・混同を生ずるおそれがあるとは到底考えられない。
また、その旨の証拠の提出もなされていない。
さらに、引用各商標の防護標章として、多数の防護標章登録が存在することは認められるが、このような防護標章登録はあくまでも引用各商標の構成・態様自体に基づくものにすぎず、これをもって本件商標「SANKYO ALUMINIUM」との関係で誤認・混同を生ずるおそれがあるものとする理由とはならない。
(6)前記(3)の▲4▼▲5▼に対する答弁
本件商標の構成は、乙第1号証に示すとおり「SANKYO ALUMINIUM」の文字を横書きしてなるものであり、これを殊更に、「SANKYO」と「ALUMINIUM」とに分離すべき理由も存在せず、また「SANKYO」と略称すべき理由もない。
即ち、日本会社録「第19版」(乙第6号証)及び日経会社情報「1996秋号」(乙第7号証)並びに会社企業名鑑「昭和63年版」(乙第8号証)に記載のとおり、「サンキョウ」の称呼を冠する企業が多数存在する状況下にあって、商品及び役務の出所を表示する取引の実際においては、「三協」、「三共」、「三京」のみを表示することなく、むしろ「三共○○」、「三協○○」、「三京○○」、「サンキョウ○○」の如く、称呼し認識するのが一般的である。
被請求人においても本件商標を「SANKYO」(サンキョウ)と略称することなく、「SANKYO ALUMINIUM」(サンキョウアルミニウム)と表示して使用しているのが実状である。
また、被請求人は、その略称として「三協アルミ」及び「三協アルミニウム工業」(乙第9号証、同10号証及び同22号証乃至同26号証)が一般に認識されているところであり、「三協アルミ」及び「SANKYOALUMINIUM」の文字からなる商標が、商品及び役務の区分旧第7類(乙第27号証)及び第37類(乙第28号証及び同29号証)、第42類(乙第30号証)において多数登録されているところである。
したがって、本件商標はその構成上一体不可分の被請求人の商号の略称を表わしたものと認識されると判断するのが妥当であって、取引の場においても決して「SANKYO」と略称されることはあり得ないものであるから、引用各商標とは称呼、外観及び観念のいずれの点においても類似するものではない。
(7)前記(3)の▲6▼に対する答弁
商標法第4条第1項第8号は「人格権保護の規定」と解されるのが一般的であり、特定人との同一性が必要要件となるところである。
しかしながら、本件商標は「SANKYO ALUMINIUM」の英文字からなるのに対して、引用各商標は「三共」と「SANKYO」の文字を主要部とするものであるから、同一性があるものとはいえない。
この点、請求人は「サンキョウ」の称呼共通を理由にあげているが暴論も甚だしいものと言わなければならない。
「青木 勲」「青木伊佐男」「青樹 功」もプロゴルファの「青木 功」と称呼共通をもって、同一人と認識されると言うのであろうか。
前項で述べたとおり、被請求人の名称は「三協アルミニウム工業株式会社」であり、英文では、「SANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD.」(乙第11号証)である。
また、略称としては「三協アルミニウム工業」「三協アルミニウム」及び「三協アルミ」であると一般に認識されていること前述のとおりである。
したがって、請求人は本件商標「SANKYO ALUMINIUM」に対して、「請求人の承諾を得ている事実はない」旨主張しているが、前述のとおり解するのが法意に沿うものであり合理的であるから、承諾を得る必要はない。
(8)前記(3)の▲7▼〜▲8▼に対する答弁
請求人は、自己の主張を有利に導くため、著名商標を保護すべき旨の判決例を多数引用している。
しかしながら、これらの判決例は、いずれも「三菱」「シャネル」「加美乃素」「レヴィヨン」「MIKIHHOUSE、ミキハウス」「積水」「YASHICA、ヤシカ」といった商標の著名性に加え、独創性・希少性のあるハウスマークであること。さらに、これらのハウスマーク及びグループマークと同一文字又は同一文字を含む商標の構成である点において大きな相違があるものであるから、本件商標における係争とは事案を全く異にするものであって、本件の審理・判断に何ら影響を及ぼすものでない。
また、請求人は製薬業務を主とする多角経営の法人会社であると主張しているが、その事業内容は製薬関連の「食品・医薬品に関する異物混入対策」及び「害虫防除・カビの防除サービス」であって、本件商標に係る指定役務「プラスチックの加工、金属の加工」とは、先にも述べたとおり生産部門、販売部門、原材料、用途用法、提供目的、提供場所、施工部門及び業種等何一つ共通性又は関連性のない別異の役務であるから、本件商標をその指定役務について使用しても取引者・需要者をして請求人又は同人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る役務であるかの如く、役務の出所について誤認・混同を生じさせるおそれはない。
ところで、被請求人会社であるが、同人の提出に係る、1996年秋号日本経済新聞社発行の「日経会社情報」(乙第7号証)、同1993年、株式会社ぎょうせい発行の第19版「日本会社録」(乙第6号証)、被請求人会社発行の「会社案内」(乙第9号証及び同10号証)及び「三協アルミニウム工業(株)の定款」(乙第11号証)の各記載に照らし、被請求人会社は1960年に設立され、その後1970年に東京・大阪の証券取引所第1部に上場し、現在、ビル・住宅用建材を中心にアルミサッシ大手の一流会社として、資本金270億円、売上額2257億円、従業員6167名を擁する三協グループの中心的企業であることを明らかにする。
また、全国に多数の事業所及び支社・営業所を有するとともに、全国ネットで信頼性の高いサービスを提供しており、指定の工務店・代理店及び最終需要者を含め、取引者・需要者間に広く知られた会社である。特に、建設(一般住宅を含む)・建材業界においては、請求人の製薬業界におけるのと同様に、周知・著名な会社(乙第12号証乃至同20号証)であることを申し添える。
(9)本来、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標か否かについては、<イ>その他人の標章が創造標章であるか、<口>多角経営の可能性、<ハ>商品間、商品と役務間の関連性等を総合的に考慮する「特許庁商標課編『商標審査基準』(乙第21号証)」こととされているところ、請求人が、本件商標の無効理由に引用する各登録商標は「日本会社録」(乙第6号証)及び「会社企業名鑑索引」(乙第8号証)で明らかなように、あらゆる業種に多数存在しており希少性がなく、ありふれた名称であることを考慮して総合的に判断されるべきものである。
(10)以上、種々述べてきた理由により、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同法第4条第1項第10号及び同法第4条第1項第15号のいずれにも該当しないこと明らかであるから、本件商標は、商標法第46条第1項第1号に基づいて、その登録を無効とする事由に該当しないものである。
よって、被請求人は、本件審判請求に対して、「答弁の趣旨に記載のとおりの審決を求める」ものである。
第4 当審の判断
そこで、判断するに、請求人は我が国有数の製薬会社であり、また、請求人の所有に係る引用各商標が、商品「薬剤」について使用され、取引者・需要者間に広く認識されていることは請求人の提出に係る甲第3号証乃至同15号証によって窺い知ることができる。
一方、被請求人の提出に係る乙第6号証「第十九版日本會社録126頁」株式会社ぎょうせい発行)、同7号証(「日経会社情報 季刊’96-IV秋号454頁」日本経済新聞社発行)、同9号証及び同10号証(「三協アルミ会社概要及びSANKYO ALUMINIUM INDUSTRY CO.,LTD ANNUAL REPORT」)、同11号証(「定款」)及び同12号証乃至同20号証(「建材情報」)によれば、被請求人は、「ビル・住宅用建材」を中心とするサッシ業界の大手企業であり、上記商品を取り扱う企業として、取引者・需要者間に、本件商標出願前より広く知られていることが認められる。
また、請求人の所有に係る引用各商標が使用されている「薬剤」と本件商標が使用される役務とは、その生産部門、販売部門、提供場所、施工部門等を著しく異にするものである。
そして、本件商標は、別紙に表示したとおり、一部の文字をレタリング化してなるものであるが、全体として「SANKYO ALUMINIUM」の欧文字をまとまりよく一体的に書してなるものであり、かつ、前記実情よりすれば、該文字は請求人の著名な略称を含む商標というよりは、「ビル・住宅用建材」等を取り扱うことで著名な被請求人の「三協アルミニウム工業株式会社」の名称の一部を英文字で表したものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成中の一部に請求人の著名な略称を含み、かつ、請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、取引者・需要者間に、その役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるとは認め難い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものということはできないから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。
なお、請求人は判決例及び「平成11年6月14日付け『周知・著名商標の保護等に関する審査基準の改正について』(特許庁審査第一部商標審査基準室)」を挙げて縷々述べているが、本件とは事案を異にするものであり、本件審判の判断に影響を及ぼすものではないから、この請求人の主張は、採用することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別紙

審理終結日 1999-06-30 
結審通知日 1999-07-09 
審決日 1999-07-26 
出願番号 商願平4-222855 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (040 )
T 1 11・ 23- Y (040 )
T 1 11・ 25- Y (040 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 薫原 隆 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 箕輪 秀人
澁谷 良雄
登録日 1997-03-12 
登録番号 商標登録第3270922号(T3270922) 
商標の称呼 1=サンキ+ヨ-アルミニウム 2=サンキ+ヨ- 
代理人 浅村 皓 
代理人 細井 貞行 
代理人 宇佐美 利二 
代理人 早川 政名 
代理人 長南 満輝男 
代理人 浅村 肇 
代理人 高梨 範夫 

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