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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない 121
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 121
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 121
管理番号 1004411 
審判番号 審判1995-10194 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1995-05-02 
確定日 1999-10-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第2603318号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 I 本件商標
本件登録第2603318号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙(1)に示した構成よりなり、第21類「かばん類、袋物、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成3年3月15日登録出願、同5年11月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
II 引用商標
請求人が引用する登録第2043879号商標(以下「引用A商標」という。)は、別紙(2)に示した構成よりなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧品」を指定商品として、昭和60年7月22日登録出願、同63年4月26日に設定登録されたものである。
同じく登録第2392745号商標(以下「引用B商標」という。)は、別紙(3)に示した構成よりなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧品」を指定商品として、平成1年5月30日登録出願、同4年3月31日に設定登録されたものである。
そして、引用各商標はいずれも現に有効に存続しているものである。
III 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録についてこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第28号証(枝番を含む)を提出している。
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、顕著に表示された「BP」のアルファベットと従属的に表示された「Big Prosperity」の英語よりなる。英語で「Big」は形状が大きいこと、「Prosperity」とは「繁栄」を意味するものであるから、「大いなる繁栄」の意味での「Big Prosperity」の使用は正しい英語ではなく、一般に使用されている表現でもない。このように「Big Prosperity」(大いなる繁栄)等という表現は、長く読みづらいものであり、日本人が商標としてそのまま称呼することは先ずあり得ず、単に附記的なものにすぎない。
(2)これに対して、引用各商標は、アルファベット「BP」がその顕著な要部である。
(3)したがって、「BP」の要部を同一にする本件商標と引用各商標は、「ビーピー」の称呼を生ずるものであり、明らかに類似の商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に反する。
2.商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号について
(1)引用各商標は、請求人の「BPマーク」として世界的に周知著名なものである。
即ち、請求人(The British Petroleum Company p.l.c.)は、英国を代表する企業であって、全世界に存在する1900余の子会社及び関連会社の親会社であり、世界的石油資本のメジャーとしても著名である。請求人及びそのグループ企業が一般に「BP」(ビーピー)、もしくは「BP」グループ企業と称されていることは、世界各国の産業界及びわが国の産業界において顕著な事実である(甲第1号証ないし同第4号証、同第6号証ないし同第9号証)。
(2)わが国においも、BPジャパン株式会社、BPジャパントレーディング株式会社、BPケミカルズ株式会社及びペトロルブインターナショナル株式会社等のグループ企業が存在し、自動車用オイル、石油、化学その他種々の工業分野でわが国の主要企業と永年の取引実績を有しており、また、本件商標の出願前より雑誌広告、テレビ広告、自動車レースのスポンサー等の宣伝活動が広く行われてきた。その結果、「BP」の表示は、請求人及び同グループ企業の社標及びその製品の商標としてよく知られているものである。
さらに、これ等の広告・宣伝活動の一環として、「BP」マークの付された衣類、身の回り品等の雑貨品が販促品として広く一般に頒布され、これ等はその出願前より「『BP』グッズ」として周知である。
本件商標は、このように請求人及び同グループ企業の商号の略称として、また商標として周知著名な「BP」の文字を要部として使用しているものであり、上記請求人グループの商業活動よりすれば、これを被請求人がその指定商品に使用すれば、これが「BP」企業グループまたはこれらと何らかの関連がある企業の商品であるかの如き、取引者及び需要者間に混同をに生ずることは必至である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号の規定に反する。
3.パリ条約第6条の2について
(1)請求人は世界各国において、「BP」の商標登録を有するもの(甲第7号証)であり、これと類似する本件商標はパリ条約第6条の2の規定に照らしてもその登録は認められるべきではない。
(2)被請求人は、本件商標の使用に際してアルファベットの「BP」のみを単独に使用し、これを「BPというブランド」として商標として使用し、これらの商品を「BP商品」等と、商品の出所表示として使用している。
したがって、「BP」が本件商標の要部であることは、その構成上、及び被請求人の実際の使用からも明らかである。
本件商標は、このように周知著名な他人の商号の略称及び商標を無断で使用するものである。
4.答弁に対する弁駁
(1)請求人は、被請求人の商標登録出願が審判段階で出願公告されたが、これに対し、本件と同様の理由により登録異議を申し立てている。
(2)商標審査基準によれば、第3条第1項第5号の商標の例として、ローマ字2文字の結合を挙げているが、これはあくまで、一般的な蓋然性にすぎず、本件の如き商標としての実体がある場合に、その実体を否定するために適用することは本末転倒である。
被請求人の如く、実際に「商標」として使用されている場合、上記審査基準の規定は該当しない。
最近の東京高裁判決においてもモノグラム化されたローマ字2文字の結合から特別の称呼は生じないとする審決が取り消された(甲第13号証)。審決の判断は審査基準によれば、単にアルファベット2字の結合とすれば、顕著性なしとなることと表裏の関係にあるものと思われるが、審査基準はあくまで原則であり、絶対的なルールではない。上記判決は商標の実体を見て、何が要部であり何が称呼であるか判断すべきものと判示しているのである。
本件の場合、モノグラムではなく、「BP」の文字自体であり、「ピービー」の称呼を生ずることに問題はない。
(3)被請求人は、「BPブランド」の使用について請求人商品と混同を生じたことはない旨主張するが、その主張には何等根拠がない。請求人自身「BPブランド」の商標表示によって取引をしているのである(甲第2号証12頁)から、混同を生ずる方がむしろ当然なのである。また、商標権の侵害について、商標法第37条のみなし規定があるように、実際に出所の混同が生じたか否かは侵害の要件となっていない。これは商標の類否判断でも同様である。
(4)被請求人は、請求人の提出した証拠について、請求人自身の営業案内であるとか、新聞記事については新聞は略字を使うことが多い等の理由で商標の周知性を否定している。
商標が使用される営業案内は請求人が取引先や顧客一般に配布しているものであり、それがなぜ証拠にならぬのが不可解である。新聞記事については、それが請求人の「社名の略称」として広く使用され、その使用が一般に定着している事実を客観的に物語るものである。新聞という公平な第三者機関による使用はその何よりの証拠である。
請求人は、日常的に新聞などで「BP」の略称をもって報道されており(甲第3号証、同第18号証及び同第28号証等)、業種を問わない「BP」の略称の著名性は、直営、系列のガソリンスタンドの有無に拘わらず、動かし難い事実である。
なお、乙第13号証(審決)に関しては、その認定に誤りがあると考えられるので、この判断を正すために新たに出願を行い現在審査係属中である。
(5)請求人が石油のメジャーであることは被請求人も認めている。さらに、請求人は自動車用オイルの分野でもわが国においても永い事業実績を有する。請求人の高性能オイルは、スポーツカーをはじめとする若い需要者層を中心にしたアウトドアー用の高性能自動車用に需要が高く、同商標を付した関連の自動車用品(帽子やバッグ等の身の回り品を含む)とともに、このような若年層に人気が高いものである。
また、請求人がスポンサーになっているレーシングチームはほとんどの有名な自動車レースに出場しており、請求人の商標を付して走行し、テレビ等で放映され、広告もされるので被請求人の主張するよりもはるかに広い分野で請求人の商標、名称の略称は周知である。
そして、請求人は、わが国経済界とも古くから密接な関係を有し(甲第19号証、同第23号証)、日本の大手企業にとり大事な顧客であり、わが国経済界、産業界に与える影響は計り知れないものがある。
ちなみに第5類において「BP」は使用に基づく顕著性を認められ、商標登録されている。
(6)被請求人は、請求人の製品とかばん類は分野が異なると言うが、ある事業分野で顕著な企業は、事業分野の枠を越えて一般常識として世人に広くその名を知られるものである。したがって、請求人ほど顕著な企業は、当業界のみならず、わが国社会の一般常識として公衆にその名を認識されていると言える。
このような著名商標は、たとえ非類似の分野であっても出所の混同を生じ、また実際に混同を生じなくても、商標のダイリューションを生ずることから、このような場合も含め従来がら広義に出所混同のおそれがあるとされてきたのである。
まして、請求人の場合、かばん類を含む種々のその販促商品に広くその商標を使用してきているのである。これらは主として請求人商品の広告宣伝のためであるが、本件のような事業において、商標の使用による周知認識の効果が否定されるべきものではない。
(7)被請求人は、本件商標と引用各商標が非類似である旨主張し、最高裁及び東京高裁の判例を引用しているが、これらの事件はいずれも称呼が近似していた商標につき下された判決であって、本件とは無関係である。
5.したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号の規定に違反して登録されたものであり、よって同法第46条第1項第1号の規定に基づきその登録は無効とされるべきである。
IV 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第14号証を提出している。
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標中の「BP」及び「Big Prosperity」の欧文字の意味するところは、被請求人の社名「大栄」に由来する。即ち、「大栄」は、「大きく栄える=大いなる繁栄」を意味するものとして、「名刺」の裏書きに記載されているとおり(乙第1号証)、本件商標を付した商品を購入したすべての需要者が大いに栄えていただきたいとの願いを込めたものであり、「BP」の2文字は「Big Prosperity」の略称として用いたものである。
(2)請求人主張の1.(1)ついて
わが国は英語を日常語と使用している国ではなく、語学事情からみて「Big Prosperity」の言葉自体が、請求人の指摘するとおり正しい英語の表現でないと理解できる者は少ない。また、いわゆる和製英語と呼ばれている欧文字表記の言葉が数多く存在することは周知の事実である。したがって、和製英語が、文法上間違っていたとしても、わが国では何ら問題とする点はなく、ただ英単語を並べただけの言葉であっても、観念的に意味が通じれば十分に適切な言葉として理解され、場合によっては正しい英語表示と誤解されることもある。
よって、本件商標中の「Big Prosperity」の語が英文法上正しくなくとも「大いに栄える=大いなる繁栄」の観念が生じることは明白である。
(3)本件商標と引用各商標とは非類似である。
▲1▼請求人主張の1.(2)について
商標審査におけるアルファベット2字の取扱いは、特段の事情がない限り、商品の種別、形式、内容、規格、商品番号などを表示する符号・記号などとして使用されていることから、自他商品の識別標識としては機能し得ないものとされている。
本件商標及び引用各商標の指定商品における請求人の周知度は、後に述べる理由によって低いものであるから、両商標の構成中の「BP」のアルファベット2字自体も、自他商品の識別標識としては機能し得ないとみるのが相当である。
このことは、請求人の使用に係る「BP」の商標が第5類に属する「液体燃料、気体燃料、工業用油等」の石油商品について著名といえるが、そのような著名性を有しても、単なるアルファベット2字で、普通の表記で表された商標の場合には、法第3条第2項による適用を受けなければ登録されなかったことから明白である(乙第12号証)。
また、商標の構成中に同一のアルファベットを有すものであっても、デザイン的に異なる図形商標においては、特定の称呼、観念が生じないものとして取り扱われており、登録を認められていることからも明らかである(乙第2号証)。
そうすると、引用各商標にあっては、その構成全体として不可分一体の1図形を形成しているものと認識されるとみるのが相当であり、「BP」の文字部分のみが独立して認識されることはない。
▲2▼観念について
引用各商標からは特別の観念が生じるものでない。一方、本件商標は、その構成中の「Big Prosperity」の語から「大いに栄える=大いなる繁栄」の観念が生じるため、両商標は観念において非類似である。
▲3▼外観について
引用各商標と本願商標を全体観察により比較すれば、引用各商標は、黒地の盾型の図形内に白抜きしたアルファベットで「BP」の文字を左横書きしたものである。そして、引用B商標は、引用A商標とほぼ同じ商標であるが、色彩が施されていることと、盾型の図形に縁取りがされている点が相違する。
一方、本件商標は、楕円形線輪郭内に横書きでアルファベット「BP」と、その下段に「BP」の欧文字よりも小さな欧文字で「Big Prosperity」と2段に表記された構成であるから、外観上互いに非類似である。
▲4▼称呼について
引用各商標は特定の称呼を生じないが、本件商標は、構成中の「Big Prosperity」の語より「ビッグプロスペリティ」の称呼が生じる。
▲5▼被請求人は、本件商標と同一の商標を第26類に出願(商願平3-26326号)したところ、請求人の引用A商標と同一の登録第2350318号商標を引用した拒絶査定を受けたが、審判(4-22526)段階で出願公告の決定を受けた(乙第3号証)。このことからも、本件商標と引用各商標とは非類似の商標である。
▲6▼請求人は、東京高裁の判決を挙げ、本件商標と引用各商標は類似する旨主張するが、上記判決は、審決における「モノグラム化された構成からは特定の称呼を生ずるものとは認められない」との判断が取り消されたにすぎず、依然、モノグラム化された商標において称呼が生じないとする特許庁の審査基準が変更された事実はない。
被請求人は、商標の類否判断に関し、平3年(オ)第1805号(最高裁平成4年9月22日判決言渡)及び平成4年(行ケ)第93号(東京高裁平成5年2月17日判決言渡)を援用する。
2.商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号について
(1)請求人主張の2.(1)について
▲1▼請求人が、いわゆる石油資本メジャーとして著名であること及び「BP」のマークを使用していることは認められるが、一般に「BP」と称されればすべて請求人の会社を意味するとの主張は、事実に反し、かつ、何ら証明がなされていないので認めることはできない。
請求人は、同会社のグループ企業が「BP」(ビーピー)と称されていることの証拠として甲第1号証ないし同第4号証を提出しているが、甲第1号証及び同第2号証は、請求人目身の営業案内であって、自らを「BP」と称しているにすぎず、一般に「BP」と称されている証拠とはならない。
また、甲第3号証には、確かに見出しに請求人の略称として「BP」の欧文字が使用されているが、新聞の見出しは字数に制限があるため、請求人の社名が冗長であり、他に適切な略称もないことから「BP」と用いられているにすぎず、少なくともわが国においては請求人の主張する程の周知性がないことは、「BP」の表記のみではいかなる略称であるか読者に理解できないので、記事中にわざわざ「ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)」と説明書きがあることから明らかである。
▲2▼請求人は、「BP」グループ企業と言えば、請求人の子会社、関連会社を意味するものである旨主張するが、被請求人の属する「かばん製造・卸売業界」では、請求人に対する認識は単なる石油会社としてか知られていない。
(2)請求人主張の2.(2)について
▲1▼請求人が石油及び石油化学関連(自動車エンジンオイル)において、広く宣伝活動を行ってきたことは証拠によって認めるが、この広い宣伝活動の範囲は、石油化学関連における宣伝活動しか認められず、テレビ広告の実績(甲第9号証)も、その内容については明らかにしていないので何の広告であるか不明であるが、実績証明の記載内容から推測すると、すべて「自動車エンジンオイル」などの広告と推定できる。
また、雑誌広告例と称する一覧表(甲第9号証の2)は、内容が全く不明であり、実際に行われたのかも疑わしい。
▲2▼甲第8号証の1〜8までは、自動車エンジンオイル関連の石油化学品に対しての使用実績である。甲第8号証の9は服飾などに登録商標を使用しているが、賞品に使用しているにすぎない。一部に実際に販売している資料が存在するが、あくまでも自動車レースなどに関連した販売であって、バッグ類、他の身の回り品を大量に販売している証拠は存在せず、引用各商標を付した写真が提示されているのみでは、販売の実体が存在する程度しか事実として認めることができず、何ら周知となっている証拠を提示していない。これらは、請求人が自ら述べているように、「自動車エンジンオイル」などの宣伝活動の一環として提供された販促品にすぎない。仮に、大量に販売されていたとしても、本件商標と引用各商標は、前述したとおり、非類似の商標であるから、何ら問題となることはない。
したがって、請求人の石油化学製品以外の商品に使用する「BP」ブランドの周知性についての証拠及び宣伝形態は、自動車関連品の域を脱しておらず、身の回り品などにまで請求人の引用各商標が周知であることは認めることができない。
一般的に、独立して「BP」の文字のみをもって、直ちに、請求人を指称するものとは認められない(乙第13号証)。
このように、請求人の商号の略称である「BP」の著名性については、上記審決(乙第13号証)と、法第3条第2項の適用によって登録された第1576451号(乙第12号証)の商標における指定商品の範囲によって、容易に理解されるものである。
▲3▼請求人の知名度はわが国では他の石油メジャー企業よりも一般には余り知られていない事実がある(乙第4号証)。
即ち、日本に多数存在するガソリンスタンドは、他の石油メジャー企業の直営店(系列店)があるのに対し、請求人の直営店(系列店)については、ガソリンスタンドなどの業界団体である「全国石油組合」に確認したところ、わが国には無いために知名度が低いからである。また、請求人が世界企業であるとしても、その実態を理解しているのは石油化学業界においてのみである。
したがって、全く販路の異なる身の回り品の鞄などを扱う取引業者、消費者には、石油取扱い量について関心などは持つものでなく、請求人に対しては単なる石油業者としての理解でしかない。
(3)請求人の石油関連製品と本件商標のかばん類などの身の回り品とは何ら関連がなく、また、わが国における、請求人の印象は、石油及び石油化学に関連する多角経営の企業として強く取引者、一般需要者に与えており、一般に石油元売り会社及びグループ企業が、多角経営により衣服業界、かばん類に進出し、もしくは進出する傾向にあることについても、被請求人は聞いたことがないし、かつ、そのような証拠資料の提出はなされていない。特に、営業案内(甲第1号証)30頁の「事業の概況:会社の目的」には、ファッション関係への展開が明記されておらず、何上にファッション業界においても、請求人自身の略称とする「BP」が周知であると主張しているのか不可解である。
なお、モータースポーツの関連において、販促品、ないし自動車エンジンオイル等の宣伝として一部に、被服、かばん類の商品に引用各商標の使用が認められるが、これもその商品のデザインとしての使用が認められるだけである。仮に、この使用を商標の使用としたとしても、引用各商標のブランド販売としての業務展開とはいえず、自動車エンジンオイルの宣伝の一形態としての販売にすぎないので、その使用によって、単なるアルファベットの「BP」が請求人の社名として周知であるとの主張は根拠がないのは明白である。
(4)以上述べたとおり、「BP」の欧文字が請求人の略称を表すものとして周知著名であるとしても、その範囲は石油化学製品関係に限られ、本件商標の指定商品の範囲である身の回り品などにまで及ぶものでないことは明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号の規定に違反するものではない。
3.パリ条約第6条の2について
本件商標及び引用各商標は、特許庁において非類似と認定している上に、本件商標の指定商品に関して引用各商標には周知性がない以上、本件商標の登録がパリ条約違反にはならないことは先に述べた理由により明白である。
4.本件商標を被請求人が商品に使用している実態について
(1)請求人主張3.(2)について
被請求人は、通常は本件商標をそのまま使用している(乙第4号証ないし同第6号証)。また、一部商品(コインケース、ペンケース、靴べら、キーホルダーなど)については、請求人の指摘のとおり、楕円形線輪郭内に横書きで欧文字「BP」の構成よりなる商標が付されている(甲第10号証及び乙第6号証)。
しかし、上記の使用形態は、当該商品が小さなものであり、登録商標を刻印する場合に、「Big Prosperity」の部分が全く認識できなくなるため、やむをえずこれを省略しているのであって、販売に際しては、説明書に登録商標を使用して商標の誤解が起こらぬよう努めている(乙第7号証)。
いずれにしても、上記の使用形態は、本件商標中の「Big Prosperity」の部分を省略しているのみであるから、登録商標とは同一ではないが、商標の類似範囲であり、引用商標の盾型形状とは外観において全く異なる。また、「BP」の欧文字のみに請求人の主張するような、請求人の商号の略称としての周知著名な点は存在しないのであるから、問題とすべき点は存在しない。
(2)被請求人は、前記のとおり、社名「大栄」から「大いなる繁栄」を願って、「Big Prosperity」の略称である「BP」の2文字から、BPブランド商品として品質の高い手作りの革製品の提供に企業努力を重ね、業界内において大きな信用を築いたのである。
平成6年度には、「かばん」において通産省のグッド・デザインの選定(乙第8号証)を得た上、日本最大のパースナルギフトと生活雑貨の国際見本市である「第38回東京インターナショナルギフト・ショー」(乙第9号証)にも平成6年の春(2月)と秋(9月)に出展し、各社の通信販売に紹介されている(乙第10号証)。また、フジテレビ系テレビショッピング番組「ミッドナイトショッピング」においても、平成7年5月15日に放送された(乙第11号証)。
(3)以上のように、被請求人は本件商標を数々の宣伝媒体などによって使用しているが一度たりとも、請求人のグループ企業と間違えられたり、誤認を生じるようなことはなかった。
このことは、請求人は、わが国では単なる石油取扱い企業としての認識しかなく、請求人が主張する程の周知・著名性を有していないことに他ならない。また、被請求人は地道な販売活動によって、上記のように、多大なる業務上の信用を保持しているのであるから、この商標に化体した業務上の信用を失わせるようなことは許されるものではない。
IV 当審の判断
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、別紙(1)に示したとおり、楕円形内に、アルファベットの「BP」を大きく書してなり、該「BP」の下段に「Big Prosperity」の文字を書してなるものであるところ、楕円形内上段に書された「BP」は、下段の「Big Prosperity」の文字中の「Big」と「Prosperity」のそれぞれの頭文字をとって表したと理解されるとみるのが相当である。
ところで、普通に用いられる方法で書してなるアルファベット1字、もしくは2字は、一般的に、商品の形式、種別、規格等を表示するための記号、符号等として普通に使用されているのが商取引の実情であるから、これらを商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。
してみると、本件商標は、その構成中の「BP」が顕著に書され、かつ、下段の「Big」と「Prosperity」のそれぞれの頭文字を表したものと理解されるものであるから、これより「ビーピー」と称呼される場合がないとはいえないとしても、上記アルファベットの商取引社会における使用状況からすれば、格別に強い自他商品の識別機能を有するものとはいえず、本件商標に接する「かばん類」等の取引者、需要者は、その構成中の「BP」の文字部分のみに強く印象付けられ、これを抽出して、称呼、観念するものとはみられないところである。
また、本件商標中の「Big Prosperity」の文字部分は、「Prosperity」の英語がわが国において、親しまれているものとはいい難いところから、「かばん類」等の取引者、需要者にあっても、全体として特定の観念を想起しないとみるのが相当といえるが、「かばん類」等の取引者、需要者がこれを発音するについては、さほど困難を要しないとみるのが相当であるから、これより「ビッグプロスペリティ」の称呼を生ずるということができる。
してみれば、本件商標は、その構成中の「BP」が格別に強い自他商品の識別機能を有するものではなく、また、「Big Prosperity」の文字部分も、特に強く印象に残る観念を想起させないものであって、楕円輪郭についてもありふれたものであるから、構成全体をもって、取引者、需要者に把握、認識されるとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、全体として特定の観念を生じないものであり、「Big Prosperity」の文字部分より「ビッグプロスペリティ」の称呼を生ずるものといわなければならない。
(2)引用各商標
引用各商標は、それぞれ別紙(2)(3)に示したとおり、いずれも盾型図形内にアルファベットの「BP」を書してなるものであるところ、前記(1)で認定したように、普通に用いられる方法で書してなるアルファベット1字、もしくは2字は、一般的に、商品の記号、符号等として普通に使用されており、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、引用各商標中の「BP」の文字部分にあっても、特異な方法で書されたものとはいえず、普通に用いられる方法の範囲内のものといえる。
上記事情よりすれば、引用各商標中の「BP」の文字部分は、これを殊更抽出して称呼するほど、強い自他商品の識別機能を有するものとはいえないから、引用各商標に接する「かばん類」等の取引者、需要者は、引用各商標の構成全体をもって、これを把握、認識するとみるのが相当である。
そうとすれば、引用各商標は、これより特定の称呼、観念は生じないといわなければならない。
(3)本件商標と引用各商標との比較
本件商標は、前記(1)で認定したとおり、「Big Prosperity」の文字部分より「ビッグプロスペリティ」の称呼を生ずるものであるのに対して、引用各商標は、前記(2)で認定したとおり、特定の称呼を生じないものであるから、両商標は、称呼において比較することができない。
また、両商標は、前記認定のとおり、いずれも特定の観念を有しないものであるから、観念上相紛れるおそれはないものである。
さらに、両商標は、別紙に示したそれぞれの構成よりみて、外観上区別し得る差異を有するものである。
したがって、本件商標と引用各商標とは、称呼、観念、外観のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ず、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2.商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号について
(1)甲第1号証ないし同第4号証、甲第8号証の1〜8、甲第19号証、甲第20号証ないし同第28号証(なお、甲第2号証と甲第16号証は同一のものと認められる。)を総合すると、請求人及び同グループ企業は、石油及びガスの探査・開発・生産、石油の供給・取引・精製及び販売をはじめとする石油関連事業を行う英国の企業として、世界的に知られていることが認められる。
そして、引用各商標は、わが国においては、請求人及び同グループ企業の取扱いに係る商品「潤滑油」等に使用する商標として、本件商標の登録出願前より、石油関連業界、機械・自動車業界などの取引者、需要者に広く認識されていたと認め得るところである。
(2)しかしながら、請求人及び同グループ企業が単に「BP」と略称され、本件商標の登録出願前より、需要者間に広く認識されている事実は以下の理由より認めることはできない。
▲1▼甲第1号証及び同第2号証は、請求人及びその関連会社のパンフレットであり、これらに「BP」の文字が使用されているとしても、これをもって「BP」が請求人らの略称として著名なものであるとする証左とはなり得ない。
▲2▼本件商標の登録出願前に発行されたと認められる甲第3号証の8〜17(新聞、雑誌の記事)には、確かに、見出しに「BP」、もしくは「英BP」などの文字が使用されているが、記事の冒頭では「国際石油資本のブリティシュ・ペトロリアム(BP)」等と記載されており、見出しの「BP」を説明するようになっている。
一般的に、新聞などの記事においては、当該会社の略称が著名であるか否かにかかわりなく、紙面の関係から、略称を用いる場合が多く、新聞、雑誌等の記事に「BP」、もしくは「英BP」などの文字が使用されていることをもって、「BP」が請求人らの著名な略称であると認めることはできない。
▲3▼仮に、本件商標の登録出願前より、請求人らが「BP」(ビーピー)と略称され、石油関連業界、機械・自動車業界などの取引者、需要者に広く認識されていたとしても、その範囲を超えて「BP」が請求人らの略称を表示するものとして著名であったとは、甲各号証を総合しても認めることはできない。
(3)本件商標をその指定商品について使用した場合、以下の理由により、請求人らの取扱いに係る商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれはないものである。
▲1▼引用各商標は、前記2.(1)で認定したとおり、本件商標の登録出願前より、石油関連業界、機械・自動車業界などの取引者、需要者に広く認識されていたと認め得るとしても、その著名性は、石油関連業界等に限られるものであって、商品の用途、品質等を著しく異にし、製造者、流通経路、販売場所等をも異にする「かばん類」等の商品の分野においても、なお著名であるとの証左は見当たらない。
例えば、甲第9号証の1は、本件商標の登録出願日以降の1994年4月から1995年2月に、請求人の関連会社と認められる「ペトロルブ・インターナショナル株式会社」がした放送の申込みに対するテレビタイム放送通知書であるばかりでなく、その放送内容も、一部にエンジンオイルに関する宣伝広告が認められるとしても、その大部分は内容が不明なものである。また、甲第9号証の2は、「1978年から現在までの雑誌広告例」と表題があるものの、その期間に宣伝広告をした事実を裏付ける資料の提出はなく、宣伝広告の内容も明らかではない。
▲2▼引用各商標は、前記1.(2)で認定したとおり、その構成中の「BP」の文字部分のみが独立して把握、認識されるというものではなく、構成全体をもって、請求人らの取扱いに係る商品を表示するためのものとして認識されているものであり、同様に、本件商標も、その構成中の「BP」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものでない。
▲3▼被請求人が自己の取扱いに係る商品「かばん類」等に「BPブランド」等のように使用している事実があるとしても、上記▲1▼の事情よりすれば、出所の混同は生じないものといえる。
他に上記認定を左右する証拠の提出はない。
(3)したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含むものではなく、また、これをその指定商品について使用しても、請求人及び同グループ企業の取扱いに係る商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれはないものであるから、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に該当しない。
3.パリ条約第6条の2について
本件商標と引用各商標は、同一の商標でないことは、その構成より明らかであるばかりでなく、前記1.で認定したとおり、類似の商標とも認められないものである。また、前記2.で認定したとおり、本件商標は、その指定商品について使用しても、請求人及び同グループ企業の取扱いに係る商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、パリ条約第6条の2にも該当しないものである。
4.むすび
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第8号、同第10号及び同第15号並びにパリ条約第6条の2に違反して登録されたものではないから、同法46条の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別紙



審理終結日 1999-04-13 
結審通知日 1999-04-27 
審決日 1999-05-07 
出願番号 商願平3-26323 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (121 )
T 1 11・ 262- Y (121 )
T 1 11・ 271- Y (121 )
最終処分 不成立 
前審関与審査官 野上 サトル 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 小林 薫
茂木 静代
登録日 1993-11-30 
登録番号 商標登録第2603318号(T2603318) 
商標の称呼 1=ビイピイ 2=ビ+ツグプロスペリテ+イ- 
代理人 尾股 行雄 
代理人 照嶋 美智子 
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