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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
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審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
管理番号 1380146 
異議申立番号 異議2020-685008 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-27 
確定日 2021-08-31 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1471756号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1471756号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1471756号商標(以下「本件商標」という。)は、「ICE-SAR」の文字を横書きしてなり、第14類「Watches.」を指定商品とし、2019年(平成31年)4月3日にIcelandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し(以下、Icelandにおける出願の日を「優先日」という。)、同年4月8日に国際商標登録出願され、令和2年7月7日に登録査定され、同年9月18日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、次のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5920120号商標(以下「引用商標」という。)
商標の構成:別掲1のとおりの構成からなる立体商標
登録出願日:平成25年9月13日
設定登録日:平成29年2月10日
指定商品:第14類「貴金属及びその合金,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,計時用具,時計,時計用ストラップ及びその他の時計の部品及び附属品,プラスチック製の計時用具の専用ケース」並びに第16類及び第20類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
2 申立人が、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する標章は、次の(1)及び(2)のとおりであり、申立人が、「時計」に使用し、需要者の間に広く認識されているとするものである。
(1)標章の構成:「ICE」の欧文字よりなる標章(以下「引用標章1」という。)
(2)標章の構成:別掲2のとおりの構成からなる標章(以下「引用標章2」という。)
以下、引用標章1及び引用標章2をまとめていうときは、引用標章という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号の該当性について
(1)申立人は、引用標章を付した商品「時計」を、2007年にベルギー国で販売開始し、現在では世界25か国で販売している。そして、我が国でも、2009年に販売を開始した。
(2)引用標章が、外国のみならず、我が国においても、すでに取引者、需要者の間で広く知られた商標であることは、以下の事実及び記述からも明らかである。
なお、雑誌、新聞及びウェブサイト等においては、片仮名の「アイスウォッチ」の表記もあるが、これは、我が国の取引者、需要者に対する商品の紹介において、便宜上、引用標章2を表音で書き換えたものである。
ア 毎月の雑誌、新聞及びウェブサイト等への掲載
引用標章に係る商品「時計」(以下「使用商品」という。)について、申立人は、数多くの雑誌、新聞及びウェブサイト等に広告を行う一方で、それらの雑誌等には、数多くの紹介記事が掲載されている。
申立人が作成した2017年から2020年上半期までのマンスリープレスレポートによれば、毎月膨大な数の雑誌、新聞及びウェブサイト等に広告あるいは紹介記事が掲載されている(甲2の1?甲2の4)。
イ 我が国における毎年の売上本数
我が国における使用商品の売上本数は、例えば、2017年で59,267本、2018年で74,562本、2019年で55,448本である。
この本数は、我が国での腕時計の売上本数としては相当の数に匹敵するものであり、エの調査レポート雑誌「時計市場&ブランド年鑑」によれば、2017年実績では、我が国における腕時計の販売総数のうち、第13位の売上本数を記録している。
ウ 日経MJ新聞の掲載
日経MJ新聞の2019年(令和元年)8月19日付けの記事として「破竹のアイスウォッチ」、「ベルギー発、売上本数10年で5倍」、「低価格や品数で人気」などのタイトルでアイスウォッチ(ICE WATCH)の記事が掲載されている(甲3)。
例えば、「ベルギー発の『アイスウォッチ』が存在感を増している。年間の売上本数は10万本と進出から10年で5倍に急拡大。1万,2万円という手ごろな価格に加え、自分好みのデザインを選べる豊富な品ぞろえが人気の理由だ。(中略)ベルギーで2007年に誕生し、日本には2009年に進出した。現在は日本全国の百貨店や商業施設などに直営店を10店構えるほか、取扱代理店は約400店に上る。」等である。
エ 調査レポート雑誌「時計市場&ブランド年鑑2019」への掲載(甲4)
調査レポート雑誌「時計市場&ブランド年鑑2019」(2018年12月25日発行)(甲4)によると、有力インポートウォッチブランド売上高ランキング(2017年基準)として、第13位にアイスウォッチ(ICE WATCH)が選定されている。
その前後を見ると、第1位のロレックスから始まり、アイスウォッチの下位でも、エルメス(第16位)等々、名だたる著名ブランドが並んでいるのがうかがえる。
この資料からも、アイスウォッチ(ICE WATCH)のブランドの取引者、需要者への深い浸透度がうかがえる。
(3)上記のように引用標章は、長期にわたり、商品「時計」について日本国内で使用された結果、少なくとも本件商標の優先日である2019年4月3日にはすでに、また、今日においても、商品「時計」について、取引者、需要者の間で広く知られた商標となっている。
しかるに、本件商標は、その構成中に「ICE」の欧文字を含むが、これは、引用標章1と同一の欧文字構成であり、同一の称呼及び「氷、氷面、氷菓など」の同一の観念が生じる。
また、引用標章2は、その構成中に「WATCH」の構成要素を含むが、「WATCH」は「時計」を意味する語として我が国でよく知られた英語であり、引用標章2が、商品「時計」について使用されていることから、「WATCH」部分は商品との関係で識別性が認められない部分であり、このため、引用標章2は、全体の「ICE WATCH」以外に、単に「ICE」とのみ簡略化されて認識される場合があるといえる。
したがって、本件商標は「ICE」と「SAR」をハイフン「-」をもって連結した結合商標ではあるものの、その前半部に、取引者、需要者の間で広く知られた引用標章1と同一の欧文字を含むことから、引用標章1と称呼及び観念において同一の類似する商標であるといえ、また、同じく取引者、需要者の間で広く知られた引用標章2とも、同様の理由により類似することから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、欧文字「ICE」と「SAR」をハイフン「-」をもって連結した構成となっているが、ここで、ハイフンとは「英文などで、合成度の浅い複合語の連結(中略)に使う」(広辞苑)ものであることから、本件商標は明らかに合成するには連結の度合いが弱い欧文字「ICE」と「SAR」の二つの語で構成されていることが看取できる。
イ 本件商標を構成する前半部の欧文字「ICE」は、英語の「ice」から「氷、氷面、氷菓など」などの語義を有する一方で、同後半部の欧文字「SAR」は特に辞書的な語ではないことから特別な語義を有しない造語であると推定される。
このため、欧文字「ICE」と「SAR」が組み合わされることによって、何らかの特定の観念を生じさせる熟語的な意味合いがあるとは認められない。
一方で、後半部分の「SAR」がそれ自体で何らかの語義を有しない欧文字の羅列にすぎないのに対して、いわゆる結合商標の構成要素中、一般に注意が注がれる前半部分の「ICE」は、取引者、需要者の間で広く知られた引用標章から抽出される「ICE」と同一の文字構成からなるという事情から、本件商標の前半部分「ICE」と後半部分の「SAR」とでは、商標としての識別性の強弱に著しい差異があり、取引者、需要者の注意を惹起する力に顕著な相違があるといわざるを得ない。
ウ 本件商標の前半部の「ICE」からは「アイス」の称呼が生じるものの、後半部の欧文字「SAR」は特定の語義を有しない語であることから、「サー」以外に一文字一文字を区切って「エスエーアール」なる称呼も生じる。
かかる場合、全体では「アイスエスエーアール」なる称呼が生じるが、かかる称呼は全体で10音という一気に一連称呼するには冗長であるといえる。
また、その称呼全体も平滑流暢に発音できるものではなく、明らかに前半部の「ICE」と後半部の「SAR」との間では段差や区切りが生じるものである。
エ したがって、本件商標に接する取引者、需要者は、特に注意が注がれる前半部分の「ICE」とのみ、本件商標を簡略化して認識把握し「アイス」と呼称する場合も決して少なくないといえる。
特段の熟語的意味合いのない二語がハイフンを介して連結されている場合の商標の類否判断においては、その構成要素中の一部からなる語と同一の文字構成である他の商標と類似するとする審決例が数多く存在する。
(2)引用商標について
引用商標は、立体商標であるところ、その構成要素には「ICE」の欧文字が大きく表示されており、当該部分が商標の中心的構成要素として、単独で抽出されて他の商標との類否判断が行われるため、引用商標は「ICE」とのみ簡略化されるといえる。
したがって、本件商標と引用商標は、それぞれの構成要素「ICE」に着目して「アイス」なる同一の称呼、さらに、「氷、氷面、氷菓など」の同一の観念が生じ、本件商標に係る指定商品と引用商標の指定商品は同一又は類似のものであり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)上記1のとおり、引用標章は、長期にわたり、商品「時計」について日本国内で使用された結果、少なくとも本件商標の優先日である2019年4月3日にはすでに、また、今日においても、商品「時計」について、取引者、需要者の間で広く知られた商標となっている。
また、引用商標は、取引者、需要者の間で広く知られた引用標章と同一の構成からなる標章をその構成要素に含み、その指定商品に、本件商標の指定商品である第14類「時計」を含むものである。
(2)日経MJ新聞(甲3)に「申立人の商品の販売の好調さを支えるのは種類の多さにある。アイスウォッチの商品点数は7月(注:2019年)現在、約350に上る。通常の腕時計では新作の投入は半年に1回だが、同ブランドでは1ヶ月に1回のペースで、新作数は1シーズンで50程度になる」と書かれているように、申立人は、腕時計についての新たなデザインコンセプトに基づく新作を数多く提供している。
そして、引用標章を、その個別の時計に使用する際には、「ICE」あるいはその片仮名である「アイス」に、新作時計のデザインコンセプト毎に、他の欧文字あるいは片仮名を付して、個別の時計の名称としている。
例えば、2017年から2020年のマンスリープレスレポート(甲2の1?甲2の4)に示すように、「アイスフォーエバー(ICE forever)」、「アイスデュオ(ICE duo)」、「アイスシックスティーナイン(ICE sixty nine)」、「アイスラブ(ICE love)」、「アイスタイム(ICE time)」、等々である。
(3)かかる事情に鑑みれば、申立人の商品「時計」が現実に販売されている市場において、取引者、需要者の間で広く知られている商標である引用標章から抽出される「ICE」と同一の欧文字「ICE」を、その主要部として構成要素に含む本件商標が付された「時計」が市場に流通した場合は、市場における具体的な事情に基づいて判断すれば、申立人の販売する商品「時計」の新作、あるいは、少なくとも申立人の業務に係る商品であると混同を生ずるおそれがあるのは必定であるといわざるを得ない。
したがって、申立人の商品の出所と一体の関係にあると信じて商品を購入する取引者、需要者の期待を裏切ることになるので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 まとめ
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号の規定に該当し、その登録は取り消されるべきである。
第4 当審の判断
1 引用標章の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人の腕時計ブランドである「アイスウォッチ」は、2007年にベルギーで誕生し、世界25か国で腕時計が販売されている。そして、我が国では、2009年にその販売が開始され、2019年8月現在、日本全国の百貨店や商業施設などの10の直営店や、約400の代理店において、販売されている(甲3)。
イ 「アイスウォッチ」シリーズの腕時計は、1万円から2万円という手頃な価格帯の商品である。そして、一般的な腕時計の新作が、半年に1回のペースで発売されているところ、「アイスウォッチ」シリーズの腕時計の新作の発売は、1ヶ月に1回のペースであり、新作数は、1シーズンで約50種類である。このように、「アイスウォッチ」シリーズの腕時計のモデルの種類は、豊富であり、2019年7月現在、その数は、約350種類に上る(甲3)。
ウ 雑誌、新聞、ウェブサイト等での「アイスウォッチ」シリーズの各モデルの腕時計(以下「申立人商品」という。)の紹介記事においては、商品写真の近くに「ICE-WATCH」、「Ice-Watch」や「アイスウォッチ」の文字が掲載されている(甲1?甲3)。
エ 申立人商品には、例えば「アイスフォーエバー(ICE forever)」、「アイスラブ(ICE love)」、「アイスシックスティーナイン(ICE sixty nine)」、「アイスタイム(ICE time)」及び「アイスデュオ(ICE duo)」等の「アイス」や「ICE」の文字から始まるモデル名が使用されている(甲2)。
オ 申立人商品は、2017年1月から2020年1月の雑誌、新聞、ウェブサイト等において、約470回広告宣伝されたところ、その広告宣伝費用は、2017年から2019年の3年間において、約4,500万円であった(甲2)。
カ 申立人商品である腕時計の文字盤の多くには、引用標章2と同一の構成態様からなる標章がデザインの一部として付されているところ、それらの商品の広告宣伝においても、商品写真の近くには、引用標章2と同一の構成態様からなる標章が表示されている。
また、一部のモデルの腕時計の文字盤には、引用標章2と同一の構成態様からなる標章が表示されていないものがあるところ、それらの文字盤には「ice」の文字やハート型等の絵柄がデザインの一部として付されており、それらの商品の広告宣伝においても、商品写真の近くには、引用標章2と同一の構成態様からなる標章が表示されている。
キ 申立人商品の我が国における販売本数は、2017年に59,267本、2018年に74,562本、2019年に55,448本、2020年に14,277本(2020年分は年の途中の数値)である(申立人の主張)。そして、2019年8月19日付けの日経MJ新聞には、申立人商品について、「年間の売上本数は10万本と進出から10年で5倍に急拡大。」との記載がある(甲3)。
ク 2018年12月25日発行の「時計市場&ブランド年鑑2019」(甲4)の「有力インポートウォッチブランド売上高ランキング(2017年基準)」では、「アイスウォッチ」が第13位であった。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、申立人は、「アイスウォッチ」シリーズという手頃な価格帯の腕時計を、我が国において、平成21年(2009年)に販売を開始し、令和元年(2019年)8月現在、日本全国の百貨店や商業施設などの10の直営店や、約400の代理店において、販売している(甲3)。
そして、遅くとも平成29年(2017年)1月から現在まで継続して、引用標章2と同一の構成態様からなる標章が「腕時計」に使用され、販売されるとともに、雑誌、新聞、ウェブサイト等を通じ、平成29年(2017年)1月から令和2年(2020年)1月の3年間に約470回広告宣伝され、その広告宣伝費用は、約4,500万円であった(甲2)。
また、申立人商品の我が国における販売本数は、平成29年(2017年)に59,267本、平成30年(2018年)に74,562本、令和元年(2019年)に55,448本、令和2年(2020年)に14,277本(令和2年分は年の途中の数値)であって(申立人の主張)、平成29年(2017年)基準の「有力インポートウォッチブランド売上高ランキング」では、「アイスウォッチ」が第13位であった(甲4)。
加えて、令和元年(2019年)8月発行の新聞(甲3)において、申立人商品が、我が国での販売を開始して以降の10年で、販売本数が5倍に拡大し、成長を続けていることが記載されていたこと、申立人商品の広告宣伝において、商品写真の近くに、引用標章2と同一の構成態様からなる標章が表示されていること、及び、商品の紹介記事において、「ICE-WATCH」、「Ice-Watch」又は「アイスウォッチ」と表示され、「アイスウォッチ」と称されていることを併せみれば、「ICE-WATCH」、「Ice-Watch」又は「アイスウォッチ」の文字と引用標章2は、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時(優先日である2019年(平成31年)4月3日時点。以下同じ。)前から、登録査定時(令和2年7月7日。以下同じ。)はもとより現在においても継続して、我が国において、手頃な価格帯の腕時計に関心を持つ需要者の間に広く認識されているものといえる。
次に、引用標章1を構成する「ICE」の文字について、以下検討する。
上記のとおり、申立人商品の紹介記事においては、商品写真の近くに、「ICE-WATCH」、「Ice-Watch」又は「アイスウォッチ」の文字が、広告宣伝においても、商品写真の近くに、引用標章2と同一の構成態様からなる標章が、それぞれ使用されている。
そして、申立人商品である腕時計の文字盤の多くには、引用標章2と同一の構成態様からなる標章がデザインの一部として付され、また、一部のモデルの腕時計の文字盤には、「ice」の文字やハート型等の絵柄がデザインの一部として付されているものがある。
しかしながら、それらはいずれも文字盤全体のデザインの一部であり、その商品のモデル名は、「アイスフォーエバー(ICE forever)」、「アイスラブ(ICE love)」、「アイスシックスティーナイン(ICE sixty nine)」、「アイスタイム(ICE time)」及び「アイスデュオ(ICE duo)」等であって、広告宣伝においては、商品写真の近くに、引用標章2と同一の構成態様からなる標章が使用されているから、「ICE」又は「アイス」の文字のみが、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く知られたことを示す具体的な証拠はない。
そうすると、申立人商品、「ICE-WATCH」、「Ice-Watch」又は「アイスウォッチ」の文字若しくは引用標章2と関連なく表示されている「ice」の文字、「ICE」の文字(引用標章1)、又は「アイス」の文字までもが、需要者において、申立人の業務に係る商品を表示するものと理解されるとはいい難い。
したがって、「ICE」の文字からなる引用標章1は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、また、その小文字表記である「ice」や読みの片仮名表記である「アイス」の文字も、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「ICE-SAR」の文字を横書きしてなる。
そして、本件商標の構成は、「ICE」の文字と「SAR」の文字との間に、やや短く表された「-」(ハイフン)の符号を介するとしても、同じ書体、同じ大きさで、外観上まとまりよく一体的に表された印象を与えるものであり、構成文字全体から生ずる「アイスサー」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標の構成中、「ICE」又は「SAR」の文字のいずれかが、取引者、需要者に対し、指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える、あるいは出所識別標識としての称呼、観念が生じないというべき特段の事情も見いだし得ないものであることから、本件商標は、構成全体をもって一体不可分の造語を表したものとして取引者、需要者に認識されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「アイスサー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標は、別掲1のとおり、箱状の白色の立体形状(前面の白枠内は透明である。以下「引用立体形状部分」という。)であって、その正面と背面には、「ICE」及び「WATCH」の文字並びに図形が表示されてなる立体商標である。
イ 引用商標の指定商品である「時計」等の商品との関係においては、引用立体形状部分は、通常採用し得る商品の包装箱の形状の一種と認識されるとみるのが自然である。
そうすると、引用立体形状部分は、商品の包装箱の形状を表示したものというのが相当であるから、同部分は、格別に看者の注意をひくものではなく、商品の出所識別標識としての機能を有しない部分であるといえる。
ウ 以上からすれば、引用商標は、その正面と背面に表示された「ICE」及び「WATCH」の文字並びに図形が独立して自他商品の識別標識として機能しているとみることができ、当該文字及び図形をもって取引者、需要者に看取、認識されるものとみるのが相当である。
エ 引用商標の構成中、その全体が白色である背面部分には、上から順に、いずれも背景と同色の白色で「ice」の文字(「i」の文字の点部分は、デザイン化した滴状の形状である。)、横線、「WATCH」の文字を三段に配して盛り上がらせ、まとまりよく一体に表された構成からなるものである(以下「引用背面部分」という。)ところ、各段は、左右の幅を揃えて、近接して配されていることから、全体として、外観上まとまりよく一体化に看取、把握されるものである。
そして、中段の横線は、上下の文字部分を強調する装飾的な図形として理解されるものであるから、それ自体に、出所識別標識としての特定の称呼及び観念が生じるものとはいえない。
したがって、引用背面部分は、その構成する文字部分(上下に表された「ice」「WATCH」部分)に照応して、「アイスウォッチ」の称呼が生じ、上記1(2)のとおり、「ICE-WATCH」、「Ice-Watch」又は「アイスウォッチ」の文字と引用標章2が、申立人の業務に係る商品(腕時計)を表示するものとして、比較的低価格の腕時計に関心を持つ需要者の間に広く認識されているものであることからすれば、「申立人の業務に係るブランドとしてのアイスウォッチ」程の観念を生じるものである。
オ 引用商標の構成中、正面の四角白枠内の透明部分には、上から順に、「ice」の白文字(「i」の文字の点部分は、デザイン化した滴状の形状である。)、白色の横線、「WATCH」の灰色文字を三段に配してなる(以下「引用正面部分」という。)。
そして、各段は、色彩を異にするものであり、「ice」の白文字部分は、「WATCH」の灰色文字に比して大きく表してなる。また、中段の横線は、「ice」の文字部分と同色のものであるから、「ice」の文字部分を強調する装飾的な図形として理解されるものというのが相当である。さらに、各段の背景は、透明であり、色彩の対比において、明瞭に識別できる白色にて、大きく顕著に表された「ice」の文字部分が、視覚上、最も強く看者の注意を引くものである。
そうすると、引用正面部分の構成中、「ice」の白文字部分が、取引者、需要者において強く支配的な印象を与えるものとみるのが相当であって、当該文字部分を要部として抽出し、当該文字部分のみを本件商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、引用正面部分は、その要部である「ice」の白文字部分に相応して「アイス」の称呼及び「氷」の観念を生じるものである。
カ 以上より、引用商標は、その構成中、背面にまとまりよく表された「ice」及び「WATCH」の文字部分に照応して、「アイスウォッチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。また、正面における要部である「ice」の白文字部分に相応して「アイス」の称呼及び「氷」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との比較
ア 本件商標と引用商標及びその要部とを比較すると、上記(1)及び(2)のとおり、それぞれの構成文字は明らかに相違し、異なる印象を与えるものであるから両者は外観においては、明確に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
イ 称呼においては、本件商標から生じる「アイスサー」の称呼と、引用商標から生じる「アイスウォッチ」の称呼とを比較すると、両称呼は、それぞれ5音又は7音で構成されるものであって構成音数が相違し、かつ、後半の「サー」又は「ウォッチ」の音に差異を有することから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり、相紛れるおそれのないものである。
また、本件商標から生じる「アイスサー」の称呼と、引用商標の要部から生じる「アイス」の称呼とを比較すると、両称呼は、それぞれ5音又は3音で構成されるものであって構成音数が相違し、かつ、後半の「サー」の音の有無に差異を有することから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり、相紛れるおそれのないものである。
ウ 観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないものであるところ、引用商標からは構成全体として、「申立人の業務に係るブランドとしてのアイスウォッチ」程の観念を生じ、その要部である「ICE」の文字から「氷」の観念を生じるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において、相紛れるおそれはないものである。
エ そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないか相紛れるおそれのないものであり、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は、非類似の商標というのが相当である。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
引用商標の指定商品は、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。
(5)小括
本件商標は、上記(3)及び(4)のとおり、引用商標とは非類似の商標であるから、引用商標の指定商品が、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものであるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「ICE-SAR」の文字を横書きしてなるところ、上記2(1)のとおり、その構成中「ICE」の文字が、強く支配的な印象を与えるものとみることはできないものであって、その構成全体をもって一体不可分の造語を表したものとして取引者、需要者に認識されるものである。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「アイスサー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用標章について
引用標章1は、「ICE」の欧文字よりなる標章であり、その構成文字に照応して、「アイス」の称呼及び「氷」の観念が生じる。
また、引用標章2は、別掲2のとおり、上から順に、いずれも黒色で「ice」の文字(「i」の文字の点部分は、デザイン化した滴状の形状である。)、横線、「WATCH」の文字を、三段にまとまりよく一体に表された構成からなるものであるところ、各段は、左右の幅を揃えて、近接して配されていることから、全体として、外観上まとまりよく一体に看取、把握されるものである。
そして、中段の横線は、上下の文字部分を強調する装飾的な図形として理解されるものであるから、それ自体に、出所識別標識としての特定の称呼及び観念が生じるものとはいえない。
したがって、引用標章2は、その構成文字に照応して、「アイスウォッチ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用標章との類否について
ア 本件商標と引用標章とを比較すると、両者は外観においては、判然と区別し得る顕著な差異を有するから、両者は外観上、相紛れるおそれはないものである。
イ 称呼においては、本件商標から生じる「アイスサー」と引用標章1から生じる「アイス」の称呼又は引用標章2から生じる「アイスウォッチ」の称呼は、その音構成及び構成音数が明らかに異なるから、明瞭に聴別できるものであり、相紛れるおそれはないものである。
ウ 観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないものであるところ、引用標章1から「氷」の観念を生じ、引用標章2から「申立人の業務に係るブランドとしてのアイスウォッチ」程の観念を生じるものであるから、本件商標と引用標章とは、観念において相紛れるおそれはないものである。
エ そうすると、本件商標と引用標章とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのないものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は、類似するものではなく、その類似性の程度は極めて低いというべきである。
(4)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記1のとおり、引用標章1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間において広く認識されていたということはできないものであって、本件商標は、引用標章1とは、非類似である。
また、上記1のとおり,引用標章2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品(腕時計)を表示するものとして、比較的低価格の腕時計に関心を持つ需要者の間に広く認識されていたとしても,本件商標は、引用標章2とは、非類似である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、引用標章1は、我が国の需要者の間において広く認識されていたということはできないものである一方、引用標章2は、比較的低価格の腕時計に関心を持つ需要者の間に広く認識されていたものである。
しかしながら、上記3(3)のとおり、本件商標と引用標章は、非類似であり、その類似性の程度はきわめて低いというべきものである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者が、引用標章を連想、想起するということはできないものであるから、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある商標とはいえない。
その他、本件商標が商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別記】









異議決定日 2021-08-26 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W14)
T 1 651・ 25- Y (W14)
T 1 651・ 264- Y (W14)
T 1 651・ 261- Y (W14)
T 1 651・ 262- Y (W14)
T 1 651・ 271- Y (W14)
最終処分 維持  
前審関与審査官 林 圭輔 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 山根 まり子
小田 昌子
登録日 2019-04-08 
権利者 Slysavarnafelagieth Landsbjorg
商標の称呼 アイスサー 
代理人 田中 秀樹 

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