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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X25 |
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管理番号 | 1377934 |
審判番号 | 取消2018-300595 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2018-08-02 |
確定日 | 2021-08-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5108371号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5108371号商標(以下「本件商標」という。)は、「GO ANYWHERE」の文字を横書きで表してなり、平成19年6月11日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同20年2月1日に設定登録、同29年11月21日に存続期間の更新登録がなされているものである。 そして、本件審判請求の登録は、平成30年8月20日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を、以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び平成30年9月25日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者又は使用権者」という場合がある。)のいずれもが使用していないから、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録は、取消を免れない。 2 弁駁の要旨 (1)商品又は商標の包装に標章を付す行為(商標法第2条第3項第1号)について 被請求人は、いつ、どこで、だれが、商品又は商品の包装に本件商標を付したのか、主張も立証もしていない。 (2)商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(商標法第2条第3項第2号)について ア 本件商標が表示されたと主張する厚紙製ラベルについて 厚紙製ラベル(以下、単に「ラベル」という。)は、「GO ANYWHERE」の文字(以下「使用商標」という。)の他、その他の構成文字も配置されていることから、ラベル内で、使用商標が独立して自他商品の識別機能を果たしていえるとはいえず、むしろ、ラベルに使用された構成文字全体をもって、一体不可分の商標として把握、認識されるとみるのが相当である。 よって、ラベルに使用商標が表示されているとしても当該文字は、本件商標と同一の商標でもなければ、本件商標と社会通念上同一と認められる商標でもない。 また、通常使用権者による商品仕様シート(乙5)は、取引書類ではないから、これに商標を付しても商標法第2条第3項の商標の使用には該当しないし、これに表示されたラベルと、商品の写真(乙3)に表示されたラベルとは、文字の色が異なるから、通常使用権者による商品仕様シート(乙5)に表示されたラベルが、実際に商品に付されていたとはいえない。 さらに、「ファッションセンターしまむら」(以下「しまむら」という。)の値札とともに、ラベルが子供用デニム製半パンツ(以下「子供用半パンツ」という。)にどのように付されているのか、商品の写真(乙3)のラベル部分の拡大写真を見ても明らかではないが、少なくとも商品自体に縫い込まれておらず、どのような商品にも容易に付することができるものである。 イ 子供用半パンツが、平成30年6月26日にはしまむら株式会社(以下「しまむら社」という。)によって株式会社カイタックファミリー(以下「ファミリー社」という。)に対し発注され、しまむら社に納品されたと主張する行為について (ア)被請求人は、しまむら社が、取引先に対しオンラインで提供している受発注システム「しまむらFRIMO」(以下「FRIMO」という。)の画面の写し(乙6)を提出し、商品の写真(乙3)に示されたラベルを付した子供用半パンツが、平成30年6月26日にはしまむら社によってファミリー社に対し発注され、しまむら社に納品されたと主張し、また、「開発元『株式会社インターサーブ』の説明」(乙7)によると、FRIMOの画面の写し(乙6)は、その左上に「A伝一覧」と表示されていることから、「取引先コード:527101 株式会社カイタックファミリー」より「株式会社しまむら」の事業所に出荷された商品詳細が表示される画面であると主張する。 しかしながら、「開発元『株式会社インターサーブ』の説明」(乙7)には、「A伝一覧」の説明がないから、FRIMOの画面の写し(乙6)の画面中の取引がいかなるものであるか、だれがだれに対して発注又は出荷したのか明らかではない。 また、FRIMOの画面の写し(乙6)中の「発注日」には、「18/06/26」と記載され、「18」は必ずしも西暦とは認識できないため、平成30年6月26日に発注したとはいえず、出荷日の記載もない。 (イ)被請求人は、FRIMOの画面の写し(乙6)中の「商品コード」、「カラー漢字」、「サイズコード」、「商品名」、「売価」の各情報が、商品の写真(乙3)におけるしまむらの値札に印字されている表示と一致していると主張するが、FRIMOの画面の写し(乙6)の情報が、値札の表示に対応していることを示してはいるが、当該値札は、どのような商品にも容易に付することができるものであるから、FRIMOの画面の写し(乙6)の情報に対応する商品が、商品の写真(乙3)に表示された子供用半パンツと同一であることを証明していない。 さらに、FRIMOの画面の写し(乙6)中の「商品記号」である「F483RWR」は、通常使用権者による商品仕様シート(乙5)に記載された社内品番と一致するが、ここに表示されたラベルが、実際に商品に付されていたとはいえないし、通常使用権者による商品仕様シート(乙5)は、被請求人の子会社が作成した社内文書にすぎないから、証明力にとぼしい。 ウ 子供用半パンツをしまむら社がしまむらにおいて販売したと主張する行為について 被請求人は、FRIMOの画面の写し(乙6)中の商品が、商品の写真(乙3)に表示された子供用半パンツと同一であることを証明していない。 また、子供用半パンツにしまむらの値札が付いていたとしても、実際に、いつどこで当該商品が販売されていたか、主張も立証もしていない。 エ まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件商標が表示されたラベルを付した子供用半パンツが、平成30年6月26日にはしまむら社によって、ファミリー社に対し発注され、同社に納品された後、小売店舗「しまむら」において販売されていたことを証明していない。 よって、被請求人は、商標権者又は使用権者が、要証期間に、日本国内において、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したとはいえない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書及び平成31年4月2日付け審尋回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書で乙第1号証ないし乙第7号証を、回答書で乙第8号証ないし乙第20号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁書による主張の要旨 本件商標は、その指定商品につき、通常使用権者によって使用されている。 (1)乙第1号証及び乙第2号証について 乙第1号証は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)のウェブサイト抜粋であり、乙第2号証は、本件商標権者を持株会社とするアパレル企業グループ「カイタックグループ」傘下の子会社であるファミリー社による陳述書である。 これらの書証に示されるように、本件商標は、本件商標権者により、ファミリー社に対して、その範囲を限定しない通常使用権が許諾されている。 (2)第乙3号証ないし乙第5号証について 乙第3号証は、ファミリー社が中国より輸入し日本国内で販売した商品の写真である。これらの写真に示された商品は、子供用半パンツであり、しまむら社が全国に展開している衣料品チェーンストア「しまむら」に納品され、同小売店舗において一般に小売販売されている。 これらの写真に示されるように、子供用半パンツの腰ゴム部分に、「しまむら」の値札とともにラベルが付されており、当該ラベルの最上段には、本件商標と書体が異なるものの英文字つづりが完全に一致する使用商標が表示されている。 なお、子供用半パンツに付されているラベルは2種類あり、適用サイズ110cmないし120cmの子供用半パンツには長方形のものが、適用サイズ130cmないし150cmの子供用半パンツには菱形のものが付されているが、いずれのラベルについても使用商標が表示されている。 (3)乙第6号証及び乙第7号証について 乙第6号証は、しまむら社が同社の取引先に対してオンラインで提供しているFRIMOにおける、ファミリー社の取引画面の写しであり、乙第7号証は、FRIMOの開発元のウェブサイトの抜粋である。開発元「株式会社インターサーブ」(以下「サーブ社」という。)の説明に示されるとおり、前記取引書面写しは、その画面左上に「A伝一覧」と表示されていることから、「取引先コード:527101ファミリー社」よりしまむら社の事業所に出荷された商品詳細が表示される画面であって、画面左列の「子供カジュアルY」とはしまむら社の担当者名を、その下の「アサヒリンク羽島第二」とは同社の配送事業委託先である「株式会社アサヒ・リンク」の岐阜羽島第二センターが出荷場所になったことをそれぞれ示している。そして、例えば、前記取引画面の下から二段目には、「・商品コード:709-0618」、「・カラー漢字:濃水色」、「・サイズコード:150--」、「・発注日:18/06/26」、「・伝票日付:18/06/29」、「・商品記号:F483RWR」、「・商品名:OK*デニムポケデサHP」、「・売価:¥1,300」が表示され、これらの情報は、商品の写真(乙3)における「ファッションセンターしまむら」の値札に印字されている「・OK*デニムポケデサHP」(取引画面の「商品名」に相当)、「・150」(取引画面の「サイズコード」に相当)、「・濃水色」(取引画面の「カラー漢字」に相当)、「・¥1,300」(取引画面の「売価」に相当)、「・709-0618」(取引画面の「商品コード」に相当)の表示と一致している。 (4)結語 以上、提出書証に示されるとおり、本件商標と同一の英文字つづりからなる使用商標は、本件請求が予告登録された平成30年8月13日より前、同年6月26日には、しまむら社によって、ファミリー社に対し発注され、しまむら社に納品された子供用半パンツのラベルに表示使用されたことは明らかである。 そして、子供用半パンツは、しまむら社に納品された後、同社が全国展開している小売店舗「しまむら」において販売された。 よって、本件商標は、本件審判請求に係る指定商品につき、要証期間に、日本国内において、通常使用者によって使用されていたのであるから(商標法第2条第3項第1号又は同項第2号)、請求人の主張には理由がない。 2 回答書による主張の要旨 (1)当審における審尋 審判長は、被請求人に対し、平成31年3月14日付けで、合議体の暫定的見解を示し、被請求人が答弁書で提出した乙第1号証ないし乙第7号証によっては、(ア)通常使用権者が、要証期間に、本件商標について商品又は商品の包装に標章を付する行為を行ったこと(商標法第2条第3項第1号)を証明していない、(イ)通常使用権者が、要証期間に、商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を行ったこと(商標法第2条第3項第2号)を証明していない旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。 (2)回答書による主張の要旨 ア 被請求人としまむら社の商取引方法について 被請求人らグループ会社としまむら社との商取引は、主として、本件商標の通常使用権者であるファミリー社が行っており、同社が企画し、中国等の海外工場で製造した各種アパレル関連商品を、卸売り業者を介することなく、直接「しまむら社」に納入し販売している。毎年、ファミリー社が企画した多種多様な商品は、しまむら社のバイヤーとの商談を経て採用されると、全国約2000店舗に及ぶ同社の小売店舗に納入されることから、FRIMOを利用することにより、両社間の受発注業務の電子化、効率化が図られている(乙6、乙11)。 イ しまむら社への商品納入方法について 現在、アパレル関連商品は、中国をはじめとする海外生産により日本国内に輸入されるのが通例である。しまむら社が、海外工場で生産された商品を大量に仕入れて全国の小売店舗で販売する場合,発注先であるファミリー社に対し、商品の値札付け等を海外生産工場において完了した状態で、商品を梱包、出荷することを求めるため、中国の縫製工場から日本国内に輸入された商品は、既に、値札付け作業が完了しており、各小売店舗「しまむら」は、自店に納品された商品を店頭に陳列して販売するだけである。 ウ 請求人の主張に対する反論 (ア)ラベルについて 新たに提出する同種シリーズの子供用半パンツの写真(乙13、乙5の2枚目[品番F483JWZ]左下欄に掲載された「65ブルー」に相当する商品である。)は、サイズ130-150の商品であることから、菱形をしたラベルが付されていたが、このラベルは、中央に極端に大きな黒色文字で「GO ANYWHERE」と横書きされており、この表示が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であることは明白である。 なお、本件商標が付されたラベルは、衣料品について従来から汎用されているロックスやループロックと称されるナイロン樹脂製ワイヤを用いて商品に装着されているので、一旦商品に装着すると、ワイヤを破断しないかぎり取り外すことはできない。 (イ)FRIMOの画面表示について 会計伝票は、会社の業態や方針によって独自の伝票や帳簿の種類が多数存在するところ、しまむら社においては、商品注文の商談が決まると「先付伝票」が起案され、当該商品の総数量が発注され、その後、当該商品をどこの店舗向けに、いくらの数量を納品するかについては、当該商品の投入予定日前にしまむら社の担当バイヤーにより発行される「A伝」によって振分指示されることになっている。 (ウ)新たに提出する資料 新たに提出するFRIMO先付伝票(乙14)は、乙第13号証の商品写真に示される子供用半パンツ(商品番号:F483JWZ-3、同品番には3種の柄模様が存在するため、枝番「-3」が付与されている。)に関するものであり、しまむら社からファミリー社に対して「先付発注日:2018年05月22日」、「投入予定日:2018年06月15日」とし、サイズ「130」が「数量:500」、サイズ「140」が「数量:400」、サイズ「150」が「数量:400」、その合計を「計画数量:1,300」として発注されたこを示している。 これらFRIMO先付伝票や「A伝一覧」は、しまむら社とファミリー社の両者間の取引関係画面であって、両社以外が関係する商取引内容が表示されることはない。 なお、子供用半パンツの写真(乙13)に示される子供用半パンツにつき、被請求人は、新たに商品台帳(乙16)、縫製指示書(乙17)、ラベル指示書(乙18)及び仕上げ指示書(乙19)を提出する。これらの書証は、いずれも通常使用権者が作成した社内書類ではあるが、2017年4月18日以降における当該商品の製造過程と具体的縫製内容、及び本件商標を表示したラベル等の具体的形態や表示内容とその装着方法などが詳細に示されている。 また、新たに提出するインボイス(乙20)は、子供用半パンツの写真(乙13)に示される子供用半パンツにつき、本件商標権者や通常使用権者が製造を委託している中華人民共和国遼寧省大連市の縫製工場から本件商標権者に向けて商品出荷(輸出)された際の書類であり、その2枚目には、前記商品に該当する品番「F483JWZ」と契約番号「CTHYCA184-CJ181R」が記載されているが、これらは、商品台帳(乙16)の左上の記載内容や、商品に縫着された洗濯ラベルの表示、本件商標が表示されたラベルの裏面表示(乙13)に一致する。 エ 審尋に対する回答 (ア)ファミリー社は、中国の海外貿易商社「大連万林輸出入有限会社」(日本語表記)を介して、同社傘下で中国遼寧省大連市所在の縫製工場「大連佳林服装有限公司」に委託して、本件商標の指定商品「被服」に含まれる子供用半パンツを製造し、これに本件商標を付したうえで日本国に輸入して、しまむら社に販売納品したものであり、日本国内への輸入行為やしまむら社への納品(譲渡)行為は、要証期間に行われている。当該子供用半パンツのうち、例えば品番F483JWZ(枝番「3」が付されることがある。)の商品(乙5、乙13)は、ファミリー社によって独自に企画され、しまむら社に提案されていたところ、平成30年5月22日に同社担当バイヤーから先付発注を受けたので(乙14)、ファミリー社は、同社の商品台帳(乙16)や縫製仕様書等(乙17ないし乙19)に基づいて中国の貿易商社に縫製を依頼した。貿易商社は対象商品を縫製工場に縫製させ、ファミリー社が別途手配し供給した本件商標が表示されたラベルや洗濯ラベル、しまむら社の小売店舗「しまむらバースディ」専用の値札等を、同縫製工場内においてファミリー社の指示どおりに装着したうえで、平成30年6月9日、被請求人を宛名として、大阪港に向けて船便にて出荷した(乙20)。 (イ)一方、ファミリー社は、平成30年7月1日、しまむら社の担当バイヤーから、どの小売店舗に何点納品するのか振分指示を含めた発注を受けたので(乙15)、大阪港に到着した前記商品を国内流通拠点である「株式会社アサヒ・リンク」岐阜羽島第二センターに入荷し(乙15)、発注内容に従って、商品は各小売店舗に小口配送された。 (ウ)しかるに、こうしたファミリー社としまむら社間の一連の取引は、第三者であるサーブ社が提供しコンピュータネットワーク上で運用されるFRIMOを利用して行われることから、従来のような紙ベースの取引書類は存在しない。 しかしながら、少なくとも中国の縫製工場から被請求人に宛てた平成30年6月9日付けインボイス(乙20)には、商品の品番「F483JWZ」が契約番号「CTHYCA184-CJ181R」とともに記録され、かつ、実際の該当商品に縫着等された洗濯ラベルやラベルにも明記されているから(乙13)、これら一連の書証に示された商品が同じものであることは明らかである。 よって、本件商標権者又はその通常使用権者が、本件商標が付された子供用半パンツを中国から輸入し、日本国内において、しまむら社に販売納品した行為は、「商品に標章を付したものを輸入し」、「商品に標章を付したものを譲渡し」た行為(商標法第2条第3項第2号)に該当する。 (エ)答弁書において本件商標の使用事実として主張した品番「F483RWR」に係る子供用半パンツは、納品先の小売店舗で完売しており、追加の商品写真を提出することができないので、別品番「F483JWZ」の商品についてのインボイス等を新たな証拠方法として提出した。 被請求人は、この証拠方法をもって、要証期間の使用事実が立証されたものと考える。 第4 当審の判断 1 被請求人の立証責任 商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。 すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、(1)要証期間に、(2)日本国内において、(3)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、(4)本件取消請求に係る商品のいずれかについての、(5)本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。 2 被請求人の提出した証拠から以下の事実が認められる。 (1)本件商標の商標権者である株式会社カイタックホールディングス(以下「ホールディング社」という。)は、その子会社であるファミリー社に、本件商標の商標権について、通常使用権を許諾したことが認められる(乙2)。 (2)ファミリー社は、2017年(平成29年)12月7日に、「STYLE NO.」が「F483JWZ」、「BRAND NAME」が「GO ANYWHERE」の子供用半パンツの裁縫を中国の工場に指示したこと(乙17)及び同月14日に、「STYLE NO.」が「F483JWZ」、「BRAND NAME」が「GO ANYWHERE」の「130-150用」の子供用半パンツの中心部に使用商標が大きく表示されている茶色地のラベル(別掲)の取り付けを指示したことが認められる(乙19)。 (3)大連佳林服装有限公司が発行したINVOCE(審決注:「INVOICE」の誤記と認める。以下「インボイス」という。)によると、「STYLE NO.」が「F483JWZ」の商品は、2018年(平成30年)6月9日に、中国の大連から大阪に、合計1,740個輸入されたことが推認できる(乙20)。 そして、当該インボイスの「For account and risk of messrs」の欄に記載された「CAITAC CORP.」の英語表記は、ホールディング社の旧名称であるカイタック株式会社を英語で表記したものと推認でき、また、同欄に記載された[3-12 SHOWACHO KITA-KU OKAYAMA JAPAN]の英語表記は、ホールディング社の住所「岡山県岡山市北区昭和町3?12」と一致することから、「STYLE NO.」が「F483JWZ」の商品を2018年(平成30年)6月9日に大連佳林服装有限公司から輸入した者は、ホールディング社であると推認できる。 (4)ファミリー社が、2017年(平成29年)12月14日に中国の工場に縫製の指示をし同月17日に使用商標が書された茶色地のラベルの取り付けを指示した子供用半パンツとホールディング社が、2018年(平成30年)6月9日に大連佳林服装有限公司から、1,740個輸入した商品は、ともに「STYLE NO.」が「F483JWZ」であることから、ホールディング社が、大連佳林服装有限公司から輸入した商品は、子供用半パンツであり、その商品のラベルには、使用商標が記載されていることが確認できる。 3 上記2で認定した事実を総合すれば、次のとおりである。 (1)使用商品及び使用商品を輸入した時期 ファミリー社(通常使用権者)は、2017年(平成29年)12月7日に子供用半パンツの縫製、同月14日に、子供用半パンツに使用商標が記載された茶色地のラベルの取り付けを中国の縫製工場に依頼した。 ホールディング社は、中国の縫製工場で製作された使用商標が記載された茶色地のラベルが取り付けられた子供用半パンツを2018年(平成30年)6月9日に、1,740個輸入した。 そうすると、使用商品は「子供用半ズボン」であるといえる。 また、使用商標を付した子供用半ズボンを、2018年(平成30年)6月9日に、ホールディング社(商標権者)は、大連佳林服装有限公司から輸入した。 そして、2018年(平成30年)6月9日は、要証期間である。 (2)使用商標と本件商標の同一性について 本件商標「GO ANYWHERE」と子供用半パンツの茶色地のラベルに記載された使用商標は、構成文字を同じくするものであるから、本件商標と使用商標は、社会通念上同一である。 (3)使用商品について 子供用半パンツは、本件商標の指定商品中の「被服」の範ちゅうに含まれる商品である。 (4)小括 上記(1)ないし(3)によれば、ホールディング社(商標権者)は、要証期間に、本件商標と社会通念上同一の使用商標が記載されたラベルが取り付けられた子供用半パンツを輸入した。 この行為は、商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを輸入する行為」に該当する。 4 請求人の主張について 請求人は、弁駁書にて、「ラベルに使用された使用商標が独立して自他商品の識別機能を果たしていえるとはいえず、当該ラベルに使用されたその他の構成文字の全体をもって、一体不可分の商標として把握、認識されるとみるのが相当である。よって、当該ラベルに使用商標が表示されているとしても、当該文字は、登録商標と同一の商標でもなければ、登録商標と社会通念上同一と認められる商標でもない。」旨を主張する。 しかしながら、茶色地のラベルに記載された使用商標は、他の文字に比べて大きく書されており、かつ、使用商標が、子供用半パンツの品質等を表示し、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断すべき事情を有するとは認められないものである。 そうすると、茶色地のラベルに記載された使用商標は、子供用半パンツの自他商品の識別標識としての機能を有する商標と判断するのが相当であり、上記3(2)のとおり、本件商標と使用商標は、社会通念上同一のものである。 よって、請求人の上記主張は採用できず、その他の請求人の主張も採用できない。 5 むすび 以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者が、本件商標と社会通念上同一の使用商標が記載されたラベルが取り付けた、本件商標の指定商品中「被服」の範ちゅうに含まれる「子供用半パンツ」を輸入した事実を証明したというべきである。 したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(使用商標)(原本は、乙19を参照。) |
審理終結日 | 2021-03-17 |
結審通知日 | 2021-03-19 |
審決日 | 2021-04-07 |
出願番号 | 商願2007-64335(T2007-64335) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(X25)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩谷 禎枝、田村 正明 |
特許庁審判長 |
榎本 政実 |
特許庁審判官 |
豊田 純一 小俣 克巳 |
登録日 | 2008-02-01 |
登録番号 | 商標登録第5108371号(T5108371) |
商標の称呼 | ゴーエニホエア、エニホエア |
代理人 | 森 寿夫 |
代理人 | 岡田 稔 |
代理人 | 鈴木 昇 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 坂上 正明 |