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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X41
管理番号 1376908 
審判番号 取消2018-300489 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-06-27 
確定日 2021-07-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5303502号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5303502号商標(以下「本件商標」という。)は、「エンデバー」の文字を標準文字で表してなり、平成21年10月1日に登録出願、第41類「企業・団体の組織構成員に対する教育研修,企業・団体の人材育成に関するコンサルティング,人材育成のための教育訓練,企業・団体の人材育成に関する研修会の企画・運営又は開催,委託による社内研修の企画・運営又は開催,研修・セミナーの企画・運営又は開催,研修・セミナーのテキストの制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用のビデオ・磁気テープ・磁気ディスク・コンパクトディスク・光学式ビデオディスクの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),電子出版物の提供」を指定役務として、同22年2月19日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
本件審判の請求の登録日は、平成30年7月10日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である同27年7月10日から同30年7月9日までを、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨次のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 請求人は、被請求人の平成30年9月6日付け答弁書及び令和2年10月13日付け回答書に対して、何ら意見を述べていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、平成30年9月6日付け答弁書及び令和2年10月13日付け回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、本件商標について、指定役務中「企業・団体の人材育成に関する研修会の企画・運営又は開催、委託による社内研修の企画・運営又は開催、研修・セミナーのテキストの制作」等について日本国内において継続して3年以上使用している。
(1)本件商標権者の業務について
本件商標権者が、一般の顧客に対して配布している会社概要の第8版(乙1)の作成日は2016年6月である(文書の末尾に記載)。業務分野として「人事教育企画」が記されており、これは本件商標の指定役務「企業・団体の人材育成に関する研修会の企画」、「委託による社内研修の企画」等に該当する。
当該会社概要の右上に本件商標と社会通念上同一の商標が表されている。
(2)本件商標の使用の事実について
2017年(平成29年)11月30日に横浜市に提出した提案書(乙2:以下「提案書」という。)ないし横浜市への請求書送付状(乙7)は、本件商標権者が横浜市からの受託を受けて実施した研修に関する一連の資料である。
提案書の表紙中央に、本件商標と社会通念上同一の商標(「Endeavour」)、その下に本件商標と同一の商標が表されている。また、提案書と同時期に提出した2017年11月29日付け見積書(乙3:以下「見積書」という。)にも、右上に本件商標と社会通念上同一の商標が表されている。
2017年(平成29年)12月15日に横浜市に提出した研修会の日程表(乙4:以下「研修スケジュール表」という。)の右下に本件商標が表されている。
2018年(平成30年)2月28日に、横浜市戸塚区役所8階大会議室において、午前10時から11時30分にかけて実施された研修で配布したテキスト(乙5:以下「研修テキスト」という。)表紙の中段及び左下に本件商標と社会通念上同一の商標(「Endeavour」)が表され、また、各章の最初の頁の左下に本件商標と社会通念上同一の商標(「Endeavour」)が表されている。
研修会が実際に行われたことを示す当日の写真(乙6:以下「研修風景写真」という。)中の研修会場のスクリーンに映されたテキストにも本件商標が写っている。
研修会に係る請求書を送付した際の送付状(乙7:以下「請求書送付状」という。)の下部中央に本件商標と同一の商標が表されている。
以上から、要証期間に、本件商標を使用して、少なくても「研修・セミナーの企画・運営又は開催」に該当する役務を提供していたことは明らかである。
2 令和2年10月13日付け回答書
(1)横浜市から受託を受けて実施した研修(乙2?乙7)
ア 横浜市から委託を受けた経緯、委託の内容等について
本件商標権者は、横浜市の競争入札有資格者名簿に登録されている(乙13)ため、その名簿等を参照した横浜市栄区の担当者から、研修業務の打診を電話で受けた。その後、同担当者から、当該研修業務が実際に実施された年の前年の2017年(平成29年)11月22日付けのメール(乙14:以下「電子メール」という。)にて、本研修の仕様書(乙15:以下「仕様書」という。)が送付され、見積書提出の依頼を受けた。そのため、提案書及び2017年11月29日付け見積書を提出した。
業務内容については、仕様書記載のとおり、戸塚区・栄区・泉区の常任統計調査員の接遇スキルのレベルアップである。横浜市の競争入札有資格者に関する規定が平成31年4月1日に改訂されているため、資格開始日が平成31年4月1日と表示されているが(乙13)、横浜市担当者との前記一連のやりとりに鑑みれば、本件商標権者が平成29年当時も同名簿に掲載されていたことは明らかである。
イ 見積書と請求書送付状のあて先が異なる理由について
研修対象者は、戸塚区・栄区・泉区の常任統計調査員である(乙15)が、見積書は、窓口となっていた栄区の担当部署へ2017年(平成29年)11月に提出した(乙3)。研修は当初予定どおり2018年(平成30年)2月28日に戸塚区役所の8階大会議室にて実施した。そして請求書の送付は、横浜市からの指示により横浜市戸塚区宛てに送付した(乙7)。栄区も戸塚区も研修対象者を所管する区役所である。戸塚区の請求書送付先担当者は、当初から栄区担当者も電子メールのCCにも入っており、いずれも一連の研修であることは明らかである。
ウ 研修風景写真について
研修風景写真は、2018年(平成30年)2月28日午前10時すぎ(研修開始直後)に研修実施場所である戸塚区役所8階大会議室で、研修風景の記録のため、撮影されたものである。撮影者は研修を委託した横浜市の職員であり、研修終了後に実際の写真を出力紙にて手渡しされたため、撮影日時を示すデータ等は残っていない。しかし、写真1枚目では、当日使用したテキストの表紙(乙5として提出したスライド1枚目)が前面のスクリーンに投影されており、掛け時計の時刻が10時5分頃を指している。また、写真2枚目は、研修テキストの第1頁(乙5のスライド2枚目)が投影された画面が写っており、この研修を撮影したものであることが分かる。
エ 請求書送付状に添付した請求書について
請求書送付状に添付した請求書は、追加提出する(乙16:以下「請求書」という。)。
オ 提案書ないし請求書送付状のいずれの記載が商標法第2条第3項第3号ないし同項第8号に該当するのかについて
(ア)提案書
a 使用商標について
使用商標は、提案書の表紙に表示された「エンデバー」の部分であり、標準文字で表された本件商標と同一の文字であり、称呼を共通にし、観念において異なるところがないので、社会通念上同一の商標といえる(商標法第38条第5項かっこ書)。
b 使用役務について
使用商標を用いて提供した役務は、横浜市から受託した常任統計調査員の研修であり、本件商標の指定役務「研修の企画・運営又は開催」に含まれるものである。そして、提案書は、「研修の企画・運営又は開催」についての「広告」に該当し、「役務に関する広告・・・に標章を付して展示し、若しくは頒布し、・・・提供する行為」に該当する。
c 使用者について
提案書の作成者は、本件商標権者である。
d 使用時期について
提案書が作成されたのは、2017年(平成29年)11月30日であって、要証期間に含まれており、使用時期は要証期間内である。
e まとめ
以上から、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る役務の範ちゅうに含まれる「研修の企画・運営又は開催」についての「広告」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して役務を提供したため、その使用は「役務に関する広告・・・に標章を付して展示し、若しくは頒布し、・・・提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(イ)見積書、請求書送付状及び請求書
a 使用商標について
使用商標は、各証拠の以下の部分である。
(a)見積書の社名・住所と発行年の2017年11月28日の間に表示された「Endeavour」の表記
(b)請求書送付状の下部に表示された「エンデバー」の表記
(c)請求書の右上に表示された「Endeavour」の表記
見積書、請求書送付状及び請求書において表された使用商標は、欧文字「Endeavour」からなるものであり、標準文字で表された本件商標を英語で表記したものであり、同一の称呼及び観念を生じる商標で社会通念上同一の商標とえる(商標法第38条第5項かっこ書)。また、請求書送付状の使用商標は、片仮名「エンデバー」からなるものであって、標準文字で表された本件商標と同一の文字であり、称呼を共通にし、観念において異なるところがないので、社会通念上同一の商標といえる(商標法第38条第5項かっこ書)。
b 使用役務について
使用商標を用いて提供した役務は、横浜市から受託した常任統計調査員の研修であり。本件商標の指定役務「研修の運営又は開催」に含まれるものである。そして、上記の乙各号証は、「研修の運営又は開催」についての「取引書類」に該当し、「役務に関する・・・取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、・・・提供する行為」に該当する。
c 使用者について
見積書、請求書送付状及び請求書の作成者は、いずれも本件商標権者である。
d 使用時期について
見積書、請求書送付状及び請求書が作成されたのは、2017年(平成29年)11月から2018年(平成30年)2月までの間であって、これは要証期間に含まれており、使用時期は要証期間内である。
e まとめ
以上から本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る役務の範ちゅうに含まれる「研修の運営又は開催」についての「取引書類」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して役務を提供したため、その使用は、「役務に関する・・・取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し・・・提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(ウ)研修スケジュール表
a 使用商標について
使用商標は、研修スケジュール表の右上の欧文字「Endeavour」であり、これは、標準文字で表された本件商標の英語表記であり同一の称呼及び観念を生じ、社会通念上同一の商標といえる(商標法第38条第5項かっこ書)。
b 使用役務について
使用商標を用いて提供した役務は、横浜市から受託した常任統計調査員の研修に係るものであり、本件商標の指定役務「研修の企画・運営又は開催」に含まれるものである。そして、研修スケジュール表は研修の提供の用に供する物である。したがって、「役務の提供の用に供する物・・・に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」に該当する。
c 使用者について
研修スケジュール表の作成者は、本件商標権者である。
d 使用時期について
横浜市へ提出した研修スケジュール表が作成されたのは、2017年(平成29年)12月15日であって、要証期間に含まれており、使用時期は要証期間内である。
e まとめ
以上から本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る役務の範ちゅうに含まれる「研修の企画・運営又は開催」について役務の提供の用に供する「スケジュール表」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して役務を提供したため、その使用は、「役務の提供の用に供する物・・・に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」(商標法第2条第3項第5号)に該当する。
(エ)研修テキスト
a 使用商標について
使用商標は、研修テキストの各頁の下部にあり、欧文字「Endeavour」からなるものであって、標準文字で表された本件商標の英語表記であり、同一の称呼及び観念を生じ、社会通念上同一の商標といえる(商標法第38条第5項かっこ書)。
b 使用役務について
使用商標を用いて提供した役務は、横浜市から受託した常任統計調査員の研修であり、本件商標の指定役務「研修の運営又は開催」に含まれるものである。そして、研修テキストは、その研修を受ける者の利用に供する「テキスト」に標章を付しているものであり、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物・・・に標章を付する行為」に該当する。
c 使用者について
研修テキストの作成者は、本件商標権者である。
d 使用時期について
研修テキストを用いて役務が提供されたのは、2018年(平成30年)2月28日であって、要証期間に含まれており、使用時期は要証期間内である。
e まとめ
以上から本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る役務の範ちゅうに含まれる「研修の運営又は開催」について「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して役務を提供したため、その使用は、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物・・・に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第3号)に該当する。
(オ)研修風景写真
a 使用商標について
使用商標が表れている部分は、研修風景写真に表された、投影されたスクリーンの下部に映っている「Endeavour」の表示であり、標準文字で表された本件商標の英語表記であり同一の称呼及び観念を生じ、社会通念上同一の商標といえる(商標法第38条第5項かっこ書)。
b 使用役務について
使用商標を用いて提供した役務は、横浜市から受託した常任統計調査員の研修であり、本件商標の指定役務「研修の運営又は開催」に含まれるものである。そして、研修風景写真は、研修の提供のために使用されるテキストの投影に標章を使用していることを示すものである。
c 使用者について
研修風景写真に投影されたテキストの作成者は本件商標権者である。写真そのものの撮影者は横浜市の職員であるが、実際に商標を使用して商標権者により役務が提供されたことを示す。
d 使用時期について
研修風景写真に係る役務が提供されたのは、2018年(平成30年)2月28日であって、要証期間に含まれており、使用時期は要証期間内である。
e まとめ
以上から本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る役務の範ちゅうに含まれる「研修の運営又は開催」について「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して役務を提供したため、その使用は、「役務の提供の用に供する物に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」(商標法第2条第3項第5号)に該当する。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)会社概要第8版
本件商標権者の「会社概要第8版」(作成日:2016年6月)の写しとされる書面には、第1頁に「会社概要/エンデバー/(Endeavour)」の記載の下、「設立 1998年3月」、「役員」として代表取締役社長の氏名(以下「A氏」という。)及び代表取締役の氏名(以下「O氏」という。)の記載があり、「業務分野」として「人材教育企画」等の記載がある。そして、「所在地」として「本社:・・・神奈川県横浜市中区山手町119-28」の記載がある。また、第2頁の末尾には「8th Edition 2016.6」の記載がある(乙1)。
(2)横浜市の競争入札有資格者名簿抜粋
「横浜市の競争入札有資格者名簿抜粋」の写し(2020年9月30日印刷)とされる書面は、下部にURL及び上部に「2020/9/30」の記載があるウェブサイト画面のプリントアウトであり、左上に「横浜市」の表示があり、「有資格者名簿一覧(物品・委託等)」のタイトルの下、「令和2年9月30日 現在」の記載と共に「商号又は名称」として「株式会社エンデバー」、「本社所在地」として「神奈川県横浜市中区山手町119-28」、「代表者氏名」として代表取締役社長A氏及び代表取締役O氏の氏名、「種目」として「各種調査企画/事務・業務の委託」等の記載があり、「資格開始年月日」として「平成31年 4月 1日」の記載がある(乙13)。
(3)電子メール及び仕様書
ア 電子メール
「電子メール」(作成日:2017年11月22日)の写しとされる書面には、「差出人」として「栄区」の担当者の氏、所属部署等、「件名: [お見積り依頼] 横浜市統計調査員事務研修会業務委託について」、「日時: 2017年11月22日 15:50」、「CC:」として「戸塚区」の担当者の所属部署等及び「泉区」の担当者の所属部署等の記載があり、横浜市栄区の担当者から「株式会社エンデバー ご担当社様」あてに「・・・統計調査員に対する研修会につきまして、仕様書を送付させていただきますので、見積書の作成をお願いします。」の記載がある。また、添付ファイルのアイコン表示と共に「調査員事務研修会業務委...書.doc」の記載がある(乙14)。
イ 仕様書
「調査員事務研修会業務委託仕様書」の写しとされる書面は、同じタイトルの下、「調査員事務研修会業務委託について、以下のとおり仕様を定める。」との記載があり、「1 件名」として「調査員事務研修会業務委託」、「2 業務目的」として「円滑かつ正確な調査の実施につながる統計調査員の接遇スキルのレベルアップを図る。」、「4 参加予定人数」として「約50人(最大80人)」の記載がある。また、「5 業務内容」として、「ア 調査員事務研修会の実施/統計調査員の接遇スキルのレベルアップを図るため、戸塚区・栄区・泉区の常任統計調査員向けに研修を実施する。法人向け・個人向けの対面での接遇を想定する。」、「イ 実施時期(予定)/平成30年2月28日(火)10時から11時30分まで」、「ウ 実施場所/戸塚区役所8階大会議室」等の記載がある(乙15)。
(4)提案書及び見積書
ア 提案書
「横浜市への提案書」(作成日2017年11月30日)の写しとされる書面は、1葉目の左上に「横浜市 御中」、左中程に「Endeavour/エンデバー」、左下に「2017年11月30日」の記載があり、2葉目に、「エンデバーの特長」として「エンデバーは、人材育成及びコミュニケーションプログラムの開発を通じて、俊敏で柔軟性のある戦略実行をお手伝いします。」、「『教え』『教えられる』という一方的な教育ではなく、プログラム実施側もまた現場から学び続けるプログラムを提供します。」等の記載がある。
そして、3葉目ないし7葉目及び9葉目には、主に商品教育の実績や実施例の記載があり、また8葉目には、「会社概要」として「設立 1988年3月」、「代表取締役」A氏及びO氏の氏名、「業務分野 人事教育企画・・・講師派遣・・・」、「所在地 ・・・神奈川県横浜市中区山手町119-28」等の記載がある。
さらに、1葉目ないし9葉目の左上に「Endeavour/Strategic Solutions for Communication&Training」の記載がある(乙2)。
イ 見積書
「横浜市への見積書」(作成日2017年11月29日)の写しとされる書面は、右上に「見積書番号 201711CYS_001」、「株式会社エンデバー」の名称、同社の住所等と共に「2017年11月29日」の記載があり、左上に「横浜市栄区・・・係 御中」(審決注:「・・・」は担当部署名の記載。)の記載がある。
そして、「御見積書 [精算]」のタイトル及び「以下の通り御見積申し上げます。」の記載の下、「件名」として「調査員事務研修会 実施」の記載がありさらに、「御見積明細」の表中に「研修実施」として「統計調査員の接遇スキル レベルアップ/研修教材製作費」、「数量(単位)」として「1開催」等の記載があり、「単価」、「小計」、「計」、「営業管理費」及び「総計(税別)」の金額が記載されている(乙3)。
(5)研修スケジュール表、研修テキスト及び研修風景写真
ア 研修スケジュール表
「横浜市へ提出した研修スケジュール表」(作成日2017年12月15日)の写しとされる書面は、右上に「Endeavour」の記載があり、左上に「平成30年2月/調査員事務研修会」の記載がある。
そして、「スムーズ&正確な調査を行うために/『初対面の相手に受け入れてもらえる対応のコツ』」のタイトルの記載の下、研修会のスケジュール表が掲載され、「項目」として「開講の挨拶」、「オリエンテーション」、「第一印象」、「あいさつ」、「好印象を与える会話の技術」、「クレーム時のポイント」、「休憩(10分)」、「意見交換会」、「終わりの挨拶」及び「終了」の記載があり、「詳細」の記載には、各項目のポイントが記載されている(乙4)。
イ 研修テキスト
「研修のテキスト」(2018年2月28日実施)の写しとされる書面は、1葉中に2枚のスライドを上下に表した20葉の書面からなるものであり、1葉目上のスライドには、「スムーズ&正確な調査を行うために/初対面の相手に受け入れてもらえる対応のこつ」のタイトル及び「平成30年2月28日」の記載があり、下のスライドには「エンデバー」及び「代表取締役」A氏の氏名と共に「企業内の様々なトレーニングを開発・実施」の記載、続く2葉目上のスライド第2頁には「2011年 横浜市に移転」の記載がある。
また、3葉目上のスライド第4頁は、「本日のプログラム」として「1.第一印象の大切さ」(審決注「.」付き数字は丸付き数字を表す。以下同じ。)、「2.好印象を与える会話の技術」、「3.クレーム時のポイント」、「休憩」、「4.意見交換会」等の記載があり、4葉目上のスライド第6頁には「初対面の相手に受け入れてもらえる対応のコツを学びましょう!」の記載がある。
そして、4葉目下ないし9葉目下のスライド第17頁の「1 第一印象の大切さ?笑顔の重要性・身だしなみ・姿勢?」の項目は、良い第一印象を与えるための笑顔の作り方、身だしなみ・姿勢チェック、あいさつ仕方等が説明され、10葉目上ないし13葉目下のスライド第25頁の「2 好印象を与える会話の技術?発声・言葉づかい・話し方のコツ?」の項目は、話を始める前の心構え、声のトーン・速さ、会話の要点等についての解説や気遣い言葉の実例等が紹介され、14葉目上ないし15葉目下のスライド第29頁の「3 クレームを言われたら」の項目は、実際にクレームを受けた場合の対処法について解説されている。また、16葉目上ないし19葉目スライド第37頁「4 意見交換会?こんな時、どうされていますか?」の項目は、「個人情報は出したくない。出す必要あるの?」と言われたとき等の対応方法が記載されている。
さらに、1葉目上下のスライド、4葉目下のスライド、10葉目上のスライド14葉目上のスライド、16葉目上のスライド及び20葉目上のスライドは、いずれもスライド下部の帯状の図形中に「Endeavour」の欧文字が横書きされている(乙5)。
ウ 研修風景写真
「研修風景写真」(作成日2018年2月28日)の写しとされる書面は、横浜市職員が撮影したとされる写真画像が上下2枚表されているものであり、上の写真画像は、会議室とおぼしき室内が写っており、当該室内で複数の机に数十名が着席している様子や、前方の壁際にスクリーン及びホワイトボードが設置され、その前に置かれた机及びマイクの傍らに1名の女性が立っている様子が写っていると共に、当該スクリーン横には10時前後の時間を示す壁掛け時計が写っている。スクリーンには、上記イの研修テキスト1葉目上のスライドと同様に「初対面の相手に受け入れてもらえる対応のコツ」の文字及びその下部に帯状の図形が写っている。
また、下の写真画像は、上記と同一とおぼしき室内の壁際にスクリーン及びホワイトボードの一部が写っており、当該スクリーンの前でマイクを持ち、着席した聴衆の前で話す女性が1名写っている。スクリーンには、上記イの研修テキスト1葉目下のスライドと同様に「エンデバー」及び代表取締役A氏の氏名の下、「企業内の様々なトレーニングを開発・実施」の文字が写っている(乙6)。
(6)請求書送付状及び請求書
ア 請求書送付状
「横浜市への送付状」(作成日2018年2月28日)の写しとされる書面には、「送付書」のタイトルの下、右上に「発信日:2018年2月28日」の記載並びに「株式会社エンデバー」の名称、住所、代表取締役O氏の氏名等の記載があり、左上は、「宛先」として横浜市戸塚区の担当者の記載がある。そして、「下記の通り、書類を送付させて頂きますので、よろしくお願い申し上げます。/記/■御請求書 1部」の記載あり、同書の下部には「Endeavour/エンデバー」の記載がある(乙7)。
イ 請求書
「請求書」(作成日2018年2月28日)の写しとされる書面は、左上に「御請求書」及び「横浜市契約事務受任者 御中」の記載があり、右上に「請求書番号 201711CYS_001」、「Endeavour」、「2018年2月28日」、「株式会社エンデバー」の名称、住所の記載と共に代表取締役O氏の記名及び押印がある。
そして、「下記の件名業務につき、ご請求申し上げます。」及び「件名:調査員事務研修会 実施」の記載の下、「御請求内容」の表があり、「領域」として「研修実施」、「内容」として「統計調査員の接遇スキル レベルアップ研修実施 以上一式」の記載があり、「単価」、「小計」、「営業管理費」、「総計」等の金額の記載及び「お振り込み先」の口座名の記載がある(乙16)。
2 上記1によれば、以下のとおり判断することができる。
(1)提供した役務について
ア 役務を提供した事実
(ア)本件商標権者である「株式会社エンデバー」は、横浜市の競争入札有資格者名簿に記載されているところ(乙13)、2017年(平成29年)11月22日に、横浜市栄区の担当者からの電子メールにて、横浜市統計調査員事務研修会業務委託について見積書提出の依頼を受けると共に、同メールの添付ファイルにて当該研修会の仕様書の送付を受けた(乙14)。
(イ)仕様書によれば、「統計調査員事務研修会」の目的は、「円滑かつ正確な調査の実施につながる統計調査員の接遇スキルのレベルアップを図る。」ことであり、その内容は「戸塚区・栄区・泉区の常任統計調査員向けに研修を実施する。法人向け・個人向けの対面での接遇を想定する。」こと、実施時期は「平成30年2月28日(火)10時から11時30分まで」、実施場所は「戸塚区役所8階大会議室」である(乙15)。
(ウ)本件商標権者は、上記メールに対し、2017年(平成29年)11月29日付けで横浜市栄区の担当者あてに見積書(乙3)を提出し、その後、2018年2月28日付けで横浜市あてに請求書(乙16)を提出しているところ、これらの取引書類の件名及び内容の記載がほぼ一致し、見積書番号及び請求書番号も共通することから、実際に仕様書の内容に沿った形で取引があり、本件商標権者は横浜市の委託により、2018年(平成30年)2月28日10時から11時30分に、横浜市戸塚区役所8階大会議室において、戸塚区・栄区・泉区の統計調査員の接遇スキルのレベルアップを図るため、「統計調査員事務研修会」を行ったとみることができる。
(エ)2018年(平成30年)2月28日に、「研修風景写真」として、横浜市職員が撮影したされる写真の画像(乙6)は、会議室とおぼしき室内で数十名の受講生を前にマイクを持ちスクリーンを背にした女性が講義を行っている様子がみてとれること、当該スクリーン表示された「初対面の相手に受け入れてもらえる対応のコツ」のタイトルは「統計調査員の接遇スキルのレベルアップを図る」という研修の目的に合致すること、また、スクリーンに本件商標権者の名称である「エンデバー」の文字及びその代表取締役A氏の氏名が表示さていること、壁掛け時計が10時少し前を指していること等からすれば、本件商標権者が、上記(ウ)のとおりの、「統計調査員事務研修会」を行ったことを裏付けるものといえる。
(オ)上記(ア)ないし(エ)により、本件商標権者は、2018年(平成30年)2月28日に、横浜市のために「統計調査員事務研修会」を行ったことが認められる。
イ 提供した役務の内容及び役務において使用された物
研修テキスト(乙5)の1葉目上下2つのスライドの内容は、研修風景写真(乙6)とされる上下2つの画像中に写されたスクリーン上のスライドの内容と、記載文字や下部の帯状図形の形状がほぼ一致しており、上記アの横浜市の「統計調査員事務研修会」の研修会の開催経緯や被請求人の主張も勘案すれば、同テキストは、当該「統計調査員事務研修会」において実際に使用されたものとみることができる。
また、研修テキストは、初対面の相手に受け入れてもらえる対応のコツを学ぶことを目的とし、良い第一印象を与えるための笑顔の作り方、身だしなみ・姿勢チェック、あいさつ仕方、話を始める前の心構え、声のトーン・速さ、会話の要点等の教示や、気遣い言葉の実例、実際にクレームを受けた場合の対処法の紹介等、横浜市の統計調査員に対し「円滑かつ正確な調査の実施につながる接遇スキルのレベルアップを図る」ための知識を教授すること内容とするものであって、同市の構成員のための教育研修において用いられたものであるといえる。
さらに、研修テキストは、本件商標権者の名称である「エンデバー」の文字及びその代表取締役A氏の氏名が表示さていること、「2011年 横浜市に移転」の記載が本件商標権者の住所と一致すること、上記アの横浜市の「統計調査員事務研修会」の研修会の開催経緯、被請求人の主張も勘案すれば、同テキストの作成者は本件商標権者であるといえる。
してみれば、本件商標権者が行った、横浜市の「統計調査員事務研修会」は、本件商標の指定役務中の「企業・団体の組織構成員に対する教育研修」であり、当該研修に本件商標権者が作成した研修テキストが使用されたことが認められる。
(2)本件使用商標について
本件商標は、「エンデバー」の片仮名からなるところ、本件商標と研修テキストの表紙、第1頁、第7頁、第18頁、第26頁、第30頁及び最終頁のスライド下部の帯状の図形中に横書きされている「Endeavour」の欧文字(以下「本件使用商標」という:乙5)とは、それぞれ構成文字に相応して「エンデバー」の同一の称呼及び「努力」の意味する英語として同一の観念を生ずるものであって、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであることから、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
(3)使用時期について
上記(1)のとおり、本件商標権者は、要証期間内の2018年(平成30年)2月28日に、横浜市の「統計調査員事務研修会」において、「企業・団体の組織構成員に対する教育研修」を提供したことが認められる。
(4)使用者について
研修テキストを使用して横浜市の「統計調査員事務研修会」を行った者は、本件商標権者であることから本件商標の使用者は本件商標権者であると認められる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標権者である「株式会社エンデバー」は、要証期間内である2018年(平成30年)2月28日に、横浜市の「統計調査員事務研修会」において、本件商標と社会通念上同一の商標を付した研修テキストを用いて、本件商標の指定役務中「企業・団体の組織構成員に対する教育研修」を提供したことが認められ、当該行為は、商標法第2条第3項第4号にいう「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当する商標の使用ということができる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者がその請求に係る指定役務中「企業・団体の組織構成員に対する教育研修」について本件商標の使用をしていることを証明したといえる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2021-03-02 
結審通知日 2021-03-04 
審決日 2021-03-22 
出願番号 商願2009-74828(T2009-74828) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 鈴木 雅也
大森 友子
登録日 2010-02-19 
登録番号 商標登録第5303502号(T5303502) 
商標の称呼 エンデバー 
代理人 古井 かや子 
代理人 香原 修也 
代理人 島田 義勝 
代理人 河内 幸雄 

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