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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20204857 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W31
管理番号 1376904 
審判番号 不服2019-11572 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-03 
確定日 2021-07-26 
事件の表示 商願2018- 28360拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの立体的形状からなり,第31類「培地にシイタケ種菌を植え付けて菌糸を蔓延させてなる容器入りシイタケ菌床」を指定商品として,平成30年3月9日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標を,その指定商品『培地にシイタケ種菌を植え付けて菌糸を蔓延させてなる容器入りシイタケ菌床』に使用した場合,これに接する取引者,需要者は,当該商品の形状を表示したものと認識するにとどまり,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないから,商標法第3条第1項第3号に該当する」旨を認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋
当審において,令和2年6月22日付けで,別掲2に示すとおりの事実を示した上で,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,当該商品できのこの栽培を行い,きのこがある程度生えた状態の形状の一例(菌床上面から発生させることを特徴とする)を表示したものと認識するにすぎず,商品の特性,優位性を表したものと理解させるに止まり,何人かの業務に係る商品であることを表示したものと認識することはないというのが相当であるから,本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当するものである旨の審尋をし,期間を指定して,これに対する回答を求めた。

第4 審尋に対する請求人の意見
1 審尋では,本願の指定商品を「培地にきのこ種菌を植え付けて菌糸を蔓延させてなる容器入りきのこ菌床」と捉えているが,本願の指定商品は,「培地にシイタケ種菌を植え付けて菌糸を蔓延させてなる容器入りシイタケ菌床」である。シイタケには,「菌床の上面からは生え難い」という特性があり,本願商標は,シイタケ菌床であるからこそ,自他商品識別機能を発揮する。
2 本願商標の立体的形状は,「a)直方形の菌床が透明な袋に収納され,b)その上部で袋体が折り返され,その折り返し部に帯状のバンド体が止着され,c)その上面から子実体が生えている立体的形状である」という特徴を備えるものであって,直方体や円柱などありふれた形状などではない。
3 本願商標の自他商品識別性の判断の主体となるのは,本願の指定商品に係る菌床シイタケの栽培業者である。かかる判断主体が,上記2のとおりの形態的特徴を備えたシイタケ菌床を見たときに,どのような認識作用が働くことになるのかが自他商品識別力の有無を問う際の判断基準となるべきである。
4 別掲2の(1)ないし(3),(5)及び(6)は、シイタケではなく,それ以外のきのこの栽培の様子を示すものであり,また,(4)は,従来の栽培法に基づいてのシイタケの栽培であって,全面を露出しての菌床の形態は本願商標の形態とはまったく異なるものである。
5 本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。また,本願商標が,商標法第3条第1項第3号に該当するものでもないことは,審査段階での意見書及び審判請求書に説明したとおりである。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は,別掲1のとおり,半透明のフィルム(上部は水色の帯が巻かれている。)で上面以外が覆われた直方体の菌床の上面からシイタケと思しき大小4本のきのこが生えた様子を表した立体的形状からなるところ,当該形状は,菌床を用いたきのこの栽培において,きのこの収穫時,あるいは栽培開始から収穫までの間に,栽培者の目に触れる形状と認められるものである。
イ 上面から複数本のきのこが生えている様子を表す写真等について
別掲2のインターネット情報によれば,きのこの菌床を取り扱う業界においては,販売される商品の形状を表した写真等と共に,当該商品を使用し,ある程度きのこが生えた状態の形状を表した写真等を表示することが普通に行われており,その中には,本願商標に係る立体的形状と同様に,直方体や円柱などありふれた形状の菌床の上面以外の面を半透明のフィルムや袋等で覆ったり,容器に入れ,フィルム等で覆われていない上面から複数本のきのこが生えている様子を表す写真やイラストを表示している例も見受けられる。
ウ 請求人の商品「シイタケ菌床」に係る特許権(以下「請求人特許権」ということがある。)について
請求人は,以下のとおり,請求人特許権を有していた(職権調査)。
請求人は,平成9年10月6日,発明の名称を「しいたけ菌床の発生方法」とする特許出願をし,同12年7月14日,設定の登録を受け(特許第3087171号),同29年10月6日,当該特許権は存続期間満了により消滅した。
当該発明に係る特許公報には,【特許請求の範囲】の項に「【請求項1】しいたけ菌床栽培の培養完了後の発生工程において,栽培容器の上部を取除いて菌床上面のみを露出させ,その他の部分は菌床側面及び底面部分との間に若干の隙間を保持させて栽培容器として残し,その隙間に注水することで菌床側面及び底面からのきのこの発生を抑制し,菌床上面からのみ発生させることを特徴とするしいたけ菌床の発生方法。」の記載がある。
また,【発明が解決しようとする課題】の項に「本発明は・・・円柱状及び角型を問わずどんな形状の菌床であっても,簡易な方法により,上面のみを露出させた菌床の水分を適正に保持して,優良な品質のきのこが上面からのみ継続的に発生するしいたけ菌床の発生方法を提供する。」の記載及び【課題を解決するための手段】の項に「本発明は・・・菌床上面からのみ発生させることを特徴とするしいたけ菌床の発生方法である。」の記載がある。
エ 小括
上記アないしウによれば,本願商標に係る立体的形状は,上面以外を半透明のフィルムで覆った直方体の菌床からなるものであるところ,本願の指定商品を取り扱う業界においては,格別特異な形状をしたものとはいうことができず,本願商標をその指定商品について使用しても,これに接する取引者,需要者は,当該商品できのこ(シイタケ)の栽培を行い,きのこ(シイタケ)がある程度生えた状態の形状の一例(菌床上面から発生させることを特徴とする)を表示したものと認識するにすぎないといわざるを得ない。
そうすると,本願商標は,商品の特性,優位性を立体的形状で表したものと理解させるにとどまり,自他商品の識別標識とは認識し得ないというのが相当である。
したがって,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから,商標法第3条第1項第6号に該当し,登録することができない。
2 使用による自他商品識別力の獲得について
請求人は,本願商標はその使用によって自他商品識別力を獲得した商標である旨を主張し,甲第1号証ないし甲第53号証,資料1ないし資料9及び特許資料1ないし特許資料5を提出しているので,本願商標が使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。
(1)本願商標の使用について
請求人が提出した証拠及び請求人の主張によれば,以下のとおりである。
ア 請求人について
請求人は,昭和36年6月に栃木県で創業した「北研産業株式会社」を前身とし,きのこ種菌の製造販売,きのこ菌床の販売,きのこ生産用機器及び資材の販売,きのこ類の生産販売等を事業とする会社である(請求人の主張)。
イ 本願商標の使用開始時期・使用期間・使用地域について
本願商標の使用開始は,平成9年(1997年)頃で,約20年有余にわたって継続的に本願商標の立体的形状からなる商品「培地にシイタケ種菌を植え付けて菌糸を蔓延させてなる容器入りシイタケ菌床」(以下「請求人商品」という。)に使用している。また,全国に配された営業所により営業活動がされている(請求人の主張)。
しかしながら,本願の指定商品について本願商標が継続的に使用された事実を裏付ける証拠の提出はない。
ウ 上面からシイタケを発生させる方法によるシイタケ生産量
全国の菌床生シイタケの生産量のうち,菌床の上面からシイタケを発生させる栽培方法(以下「上面栽培」という。)による平成18年ないし同29年の生産量及びその比率は,約2万7559tないし約3万3919t(約43.6%?約61.7%)であり,全生産者数のうち,上面栽培を行う生産者数及びその比率は,平成17年ないし同29年は,638戸(約17.8%)ないし1362戸(約50.1%)である(請求人の主張)。
しかしながら,これらの生産量及び生産者数の裏付けとなる証拠の提出はない。
エ 本願商標を使用した請求人商品の市場シェア,売上高,販売数,広告費等
本願商標を使用した請求人商品の市場シェア,売上高,販売数及び広告費等については,客観的な証拠の提出がなく不明である。
オ 広告宣伝の方法,期間,地域及び規模
(ア)学会誌,技術情報誌
平成15年(2003年)ないし同30年(2018年)にかけて,「農林水産技術 研究ジャーナル」,「日本特用林産振興会情報誌 特産情報」等に上面栽培の技術に関する記事が掲載,紹介されるとともに,菌床の上面からのみシイタケが生えている写真が掲載されている(甲9,甲12,甲13,甲16?甲18,甲20,甲21,甲23,甲24)。
(イ)全国サンマッシュ生産協議会研修会資料
請求人主催のもとに設立した,菌床シイタケの生産者の団体である「全国サンマッシュ生産協議会」が平成10年,同12年ないし同27年及び同29年に開催した全国大会,研修会,夏期セミナーでは,そこで使用された資料において上面栽培の技術や当該技術を使用した栽培例が掲載,紹介されるとともに菌床の上面からのみシイタケが生えている写真が掲載されている(甲25?甲52)。
(ウ)キノコ栽培全科(社団法人農村漁村文化協会 2001年9月30日発行)
菌床シイタケの項において,「図10 収穫期の菌床栽培シイタケ(写真:北研)」の記載の下,菌床の上面からのみシイタケが生えている写真が掲載されている(資料7-a)。
カ 上面栽培に関する技術に対する受賞
請求人は,菌床シイタケの上面栽培の技術に関し,(ア)平成20年に「社団法人 農林水産技術情報協会理事長賞」(甲5),(イ)平成12年に「日本応用きのこ学会技術賞」(甲6),(ウ)平成26年に「栃木県フロンティア企業」(甲7),(エ)平成24年に「栃木県農産物知的財産功績者」(甲8)を授与,認定,表彰を受けている。
キ その他
請求人は,本願商標が使用による識別力を獲得したことを証明すべく「証明願」を70通提出している(甲53)。
そして,これらの証明願には,本願商標の図の1つ(別掲1の一番上の図)の下に,「上記標章は,株式会社北研の商品『培地にシイタケ種菌を植え付けて菌糸を蔓延させてなる容器入りシイタケ菌床』に対し,・・・現在に至るまで継続的に取引頂いているものであり,遅くとも平成28年3月頃には当社の上記商品に使用している標章であると,シイタケ生産業者の間で広く認識されていたものであることをご証明ください。」といった文章があらかじめ印刷され,各証明者によりシイタケ菌床の取引開始時期,日付,名称等が記載され,押印されている。
(2)判断
上記(1)によれば,請求人の提出する証拠からは,菌床の上面からのみシイタケの生えた姿が映った写真等やシイタケの上面栽培に関する記事が学会誌や請求人の関係者である全国サンマッシュ協議会による研修会等の資料において掲載されていることは確認することができるものの,これらの写真は,本願の指定商品について上面栽培の技術を用いて栽培を開始し,ある程度シイタケが育った状況を写したもので,それぞれ異なる形状のものであって,かつ,請求人商品の形状全体を明確に表示するものとはいえず,本願商標の立体的形状と同一のものは確認できない。また,本願商標の立体的形状が,自他商品識別標識として認識されるような態様の記載は見られない。そして,本願商標を使用した具体的な事実(例えば,商品の取引の際に,本願商標の立体的形状を商品の広告に使用する,本願商標の立体的形状からなる広告物を店頭に展示し使用するなどの事実)があったことを示すような証拠の提出はなく,本願の指定商品について本願商標が継続的に使用されていることを確認することができない。
また,菌床生シイタケの生産量のうち,上面栽培による生シイタケの生産量が平成18年ないし同29年において,ある程度の割合であったことはうかがえるとしても,本願商標を使用した請求人商品の市場シェア,売上高,販売数及び広告費については,客観的な証拠の提出がなく不明である。
そして,上記のとおり,平成9年10月から同29年10月までは請求人特許権が存在し,さらに,本願の指定商品に係る栽培技術に関し受賞された事実が請求人商品の宣伝になることがあるとしても,そのことをもって,本願商標が使用により自他商品識別力を取得したとはいえない。
そして,70通の「証明願」(甲53)は,上記(1)キのとおり,あらかじめ記載された定型文書に,請求人と取引のある日本各地のきのこの生産業者が取引開始時期及び証明日付を書き加えた上で,署名又は捺印をしたものである。当該証明願はシイタケの菌床を販売する事業者とその商品を取り扱って栽培を行う顧客との関係にあることから,生産業者は請求人から証明の協力依頼があれば協力する立場にあったこと,また,当該証明願には,本願商標を構成する図のうち1つのみが掲載されたものであって,証明者による説明の記載もなく,当該証明願について各証明者が,どのような立体的形状についてのものと認識し,いかなる具体的事実に基づいて証明しているか不明であることから,当該証明願の内容は信ぴょう性に欠けるといわざるを得ない。そして,当該証明願は,上面栽培を行う生産者数1362戸(平成29年)のうち,請求人の依頼に応じた70人(約5.1%)が協力したとことを示すにすぎず,本願商標の立体的形状が自他商品識別力を獲得していることを裏付ける証拠としては不十分なものといわざるを得ない。さらに,別掲2のとおり,シイタケの菌床もシイタケ以外のきのこの菌床も,広く一般に販売されているものであることからすれば,本願商標が自他商品の識別標識としての機能を発揮し得るか否かを判断するに当たっては,一般需要者を基準とすべきであるところ,一般需要者がどのような認識であるかは,請求人が提出する全証拠をもってしてもうかがい知ることはできない。
そうすると,本願商標は,具体的な使用事実に基づいて使用状況を把握し,その周知性の程度を客観的に推し量ることができないから,請求人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,平成8年ないし同9年頃に菌床の上面からシイタケを発生させる画期的方法を確立し,その技術的内容について同12年7月に特許権を取得しており,本願が関係している旨述べるとともに,本願商標の立体的形状の形態は,その技術内容が特許権によって,独占的実施を認められたものであって,その使用によって,信用蓄積がなされ自他商品の識別力の獲得に至っている旨を述べている。
しかしながら,請求人は,平成29年10月6日に請求人特許権の存続期間が満了するまでは,請求人特許権に基づき請求人商品の販売等を独占的に実施していたことを推認できるところ,特許権の権利者が,当該特許権に係る発明を一定期間独占できることは当然であり,特許権に基づく一定期間の独占の結果として,その権利範囲に含まれる商品の形状又はこれに類似する商品の形状について,権利者の業務に係るものとして一定程度知られたとしても,そのことをもって直ちに商標登録に必要な自他識別力を備えたことにはならない。そして,特許権に基づく,一定期間の独占の結果として,その権利範囲に含まれる商品の立体的形状又はこれに類似する商品の形状について,商標登録に必要な自他識別力を取得したとして商標登録を認めてしまうと,商標登録は存続期間の更新が可能なため,商標権者に半永久的に当該形状の独占を許すことになり,特許権の存続期間満了後には一般公衆にその発明の自由な利用をさせる,という特許法の意図に反する事態を招来することは,明らかである。
したがって,特許権による独占が認められていた商品の形状又はこれに類似する商品の形状については,原則として,例えば,特許権による独占とは無関係に自他識別力を取得した等の特段の事情の認められない限り,使用により自他識別力を取得したと認めることはできない。
そして,本願については,上記2のとおり,請求人が提出した証拠からは,請求人が本願商標を,その指定商品に使用した結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないものである。
したがって,請求人の主張は採用することができない。
(2)請求人は,シイタケは「菌床の上面からは生え難い」という特性を有するものであるから,本願商標が自他商品の識別標識としての機能を発揮し得るか否かを判断するに当たっては,「シイタケの菌床」の取引の実情に絞って判断する必要がある旨主張している。
しかしながら,上記2(2)のとおり,シイタケの菌床もシイタケ以外のきのこの菌床も,一般需要者をも対象として,広く一般に販売されているものであることからすれば,本願商標が自他商品の識別標識としての機能を発揮しうるか否かを判断するに当たっては,一般需要者を基準にシイタケの菌床を含むきのこの菌床を取り扱う業界の取引の実情を踏まえて行うべきである。
したがって,請求人の主張を採用することはできない。
(3)請求人は,「本願商標は,消費者に直接その姿が捉えられるものでなく,生産業者がシイタケを菌床栽培していく過程で,その栽培の一部に生まれてくる立体的形状を対象とするものであり,菌床の上面から立派な子実体がいくつも顔を出す姿は,最も象徴的であり,自他商品識別機能を有している」旨を主張している。
しかしながら,本願商標の立体的形状は,シイタケの栽培過程の一時期にのみ見ることができる形状の一類型であって,請求人の業務に係る本願の指定商品を用いて栽培したとしても,菌床ごとに生えてくるシイタケの本数や大きさ,生える位置等は様々であって,本願商標の立体的形状と全く同一の形状を再現できるとは考えがたいものであるから,上記1のとおり,本願商標は,本願商標に係る商品できのこ(シイタケ)の栽培を行い,きのこ(シイタケ)がある程度生えた状態の形状の一例(菌床上面から発生させることを特徴とする)を表示したものと認識するにすぎないものであって,自他商品の識別標識としての機能を発揮し得ないものと判断するのが相当である。
そして,本願商標が,商品の識別標識として機能するためには,商品の取引の際に,本願商標の立体的形状を商品の広告に使用する,又は,本願商標の立体的形状からなる広告物を店頭に展示し使用するなど,本願商標の立体的形状が商標として使用されている必要があるところ,上記のとおり,学会誌,雑誌等に掲載された写真は,本願の指定商品について上面栽培の技術を用いて栽培を開始し,ある程度シイタケが育った状況を写したものであって,請求人商品の形状全体を明確に表示するものとはいえず,本願商標の立体的形状が,自他商品識別標識として認識されるような態様の記載は見られない。そして,本願商標を使用した具体的な事実は確認することができない。
したがって,請求人の主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから,登録することができない。
なお,原査定は,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとして拒絶したものであるが,本願商標は,上記のとおり自他商品の識別標識としての機能を有しないものとするものであるから,この当審の認定,判断の内容は,原査定と実質的に相違するものではない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

別掲1 本願商標(色彩は原本を参照。)




別掲2 令和2年6月22日付けの審尋の内容
1 菌床の上面以外の面を半透明のフィルムや袋等で覆い,覆われていない上面から複数本のきのこが生えている様子を表す写真等が表示されている例
(1)Yahoo!ショッピングにおける森のきのこ倶楽部のウェブサイト


(https://store.shopping.yahoo.co.jp/drmori1/03134.html?sc_e=afvc_shp_3306377#)

(2)カネコ種苗株式会社のウェブサイト


(http://kanekoseeds-p.jp/products/%E3%81%A7%E3%82%8B%E3%81%BE%E3%81%A3%E3%81%97%E3%82%85/)

(3)Amazonのウェブサイト




(https://www.amazon.co.jp/dp/B001JQ7J4Y%3F)

(4)種・野菜づくりの専門店 農業屋.comのウェブサイト

(http://www.nogyoya.com/fs/nogyoya/0000000103/set7306808-1)

(5)株式会社トップマンのウェブサイト

(http://www.topman.co.jp/ky/technology/cultivate/mushroom/5885-901.html)

(6)きのこ栽培塾のウェブサイト

(https://www.rakuten.ne.jp/gold/drmori1/kinsyo_hiratake.html)

2 請求人が保有していた特許権
(1)当該特許権は,請求人が,平成9年10月6日に発明の名称を「しいたけ菌床の発生方法」とする特許出願をし,同12年7月14日に設定の登録を受けたものであり,(特許第3087171号),当該特許権は,同29年10月6日に存続期間満了により消滅したものである。
(2)当該発明に係る特許公報には,【特許請求の範囲】として「【請求項1】しいたけ菌床栽培の培養完了後の発生工程において,栽培容器の上部を取除いて菌床上面のみを露出させ,その他の部分は菌床側面及び底面部分との間に若干の隙間を保持させて栽培容器として残し,その隙間に注水することで菌床側面及び底面からのきのこの発生を抑制し,菌床上面からのみ発生させることを特徴とするしいたけ菌床の発生方法。」の記載がある。
(3)また,【発明が解決しようとする課題】として「本発明は・・・円柱状及び角型を問わずどんな形状の菌床であっても,簡易な方法により,上面のみを露出させた菌床の水分を適正に保持して,優良な品質のきのこが上面からのみ継続的に発生するしいたけ菌床の発生方法を提供する。」との記載がある。
(4)当該特許権が消滅すると,何人も当該特許発明を自由に実施することができるようになる。

審理終結日 2021-05-25 
結審通知日 2021-05-28 
審決日 2021-06-08 
出願番号 商願2018-28360(T2018-28360) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 駒井 芳子古里 唯吉野 晃弘 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 平澤 芳行
須田 亮一
代理人 平山 俊夫 

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