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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X16 |
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管理番号 | 1375993 |
審判番号 | 取消2019-300623 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2019-08-09 |
確定日 | 2021-07-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2127589号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2127589号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2127589号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、昭和61年10月21日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年3月27日に設定登録、その後、同21年4月22日に指定商品を第16類「新聞」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年8月23日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年8月23日から令和元年8月22日までの期間(以下「要証期間」という。)である。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載する。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、ウェブサイトで、本件商標を過去の新聞各号に付して提供する行為は、商標法第2条第3項第2号に規定されている行為に該当すると主張する。 しかしながら、本件審判の対象としている指定商品は、第16類に分類されている「印刷物」としての「新聞」であり、これが商標法第2条第3項第2号の使用に該当するには、「印刷物」としての「新聞」又はその包装に標章を付したものを譲渡等する行為が必要である。 一方、本号に規定されている「電気通信回線を通じて提供する行為」の対象とする商品及び被請求人のウェブサイトで提供されている商品(デジタルコンテンツ)は、第9類に分類されている「電子新聞」であり、本件審判の対象としている指定商品とは何ら関係がない。 したがって、乙1は、指定商品「新聞」に標章を付したものを電気通信回線を通じて提供する行為を示すものではない。 また、被請求人は、本件商標を付された新聞は、現在休刊中ではあるが、この点は、商標の使用行為とは何ら関係なく、仮に休刊中であることをもって、商標の使用が認められないとすれば、復刻版に商標を付する行為が使用とは認められないこととなり、不整合が生じると主張する。 しかしながら、「休刊」という字義からも明らかなように、当該請求人の主張は、現時点において「印刷物」としての「新聞」に本件商標を使用していないことを自認しているものと考えられる。 また、復刻版として使用する事実がないにもかかわらず、上記の主張することには何ら説得力がない。 (2)被請求人は、ウェブサイトには、新聞が休刊中であることを開示し、新聞の過去号を掲載したものであるところ、これは、裏を返せば、廃刊ではなく、休刊であることを明らかにすることによって、復刊を予想させ、復刊時の宣伝、広告的な効果を狙ったものであるから、商標法第2条第3項第8号に規定されている行為にも該当すると主張する。 しかしながら、ウェブサイトに掲載されている事項は、定期的に発行してきた「滋賀新聞」を休刊することについての読者に対するお礼のみであり、需要者に対して将来的な復刊を示唆する記載は一切ない。 よって、上記掲載事項を含むウェブサイトに登録商標が表示されていたとしても、商標法第2条第3項第8号には該当しない。 仮に、2007年以降、現に発行されていない「新聞」について、将来的な復刊の示唆も何らないにもかかわらず、「休刊」の文言のみに基づいて本号の使用が認定されるとすれば、名目的な商標の使用が認められることとなってしまう。 (3)使用期間について 被請求人は、ウェブサイトは、2004年2月14月から現在に至るまで継続的に運営されており、少なくともこの1年間について継続的に多数のアクセスが認められるから、本件商標は、要証期間内に使用されていると主張する。 しかしながら、ウェブサイトでの使用は、本件商標の指定商品「新聞」についての使用に該当しない。 (4)被請求人のウェブサイトにおいて、過去の記事を掲載して提供するサービスは、第35類に分類される「新聞記事情報の提供」又は第41類の「電子出版物の提供」ともいえることからも、被請求人は第16類の「新聞」について使用していないことが明らかである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙9を提出した。 1 被請求人及び「滋賀新聞」の来歴 (1)被請求人である株式会社京都新聞ホールディングスは、株式会社京都新聞社(以下「京都新聞社」という。)などを傘下の子会社とするホールディングカンパニーである。 (2)「滋賀新聞」の来歴 被請求人は、名称を「滋賀新聞」とする新聞(以下「本件新聞」という。)の発刊を企図し、本件商標を登録した後、本件商標を付した本件新聞(乙1)を2004年2月14日号から毎週土曜日に発売される週刊新聞として発刊した。 その後、本件新聞は、2007年2月24日号をもって休刊となった。 他方、被請求人は、過去に発刊された本件新聞各号を誰でもが無償で読めるように、2004年2月14日から、「滋賀新聞ウェブサイト」(乙1、以下「本件ウェブサイト」という。)を開設した。本件ウェブサイトは、そのまま現在に至っている。 本件ウェブサイトには、過去発行分の本件新聞各号の内容が掲載されており、かつ、掲載されている本件新聞各号の表題欄には、本件商標が使用されている。 その間、2014年の会社分割に伴い、本件ウェブサイトの事業母体は、京都新聞社に移行した。 本件ウェブサイトヘのアクセス数及びアクセス元は、相当数にのぼる(乙2)。 2 本件商標が使用されている事実 (1)使用の主体 本件ウェブサイトの運営事業は、京都新聞社が行っている。 京都新聞社は、被請求人から当該運営事業を任された際、本件商標の通常使用権を許諾されている。 したがって、本件商標の現在の使用主体は、通常使用権者である。 (2)使用の行為 ア 本件ウェブサイトでは、本件商標を過去の本件新聞各号に付して提供している。当該行為は、商標法第2条第3項第2号に規定されている「商品に標章を付したものを電気通信回線を通じて提供する行為」に該当する。 したがって、本件商標は、その指定商品である「新聞」について使用されている。 なお、本件商標を付された本件新聞は、現在休刊中ではあるが、この点は、商標の使用行為とは何ら関係しない。仮に休刊中であることをもって、「新聞」における商標の使用が認められないとすれば、例えば、復刻版に商標を付する行為が使用とは認められないこととなり、商標法において使用を定義した趣旨との不整合が生じるからである。 また、使用は、業としての使用であることが要件であるところ、本件ウェブサイトは、京都新聞社によって事業の一つとして運営されているから、無償とはいえ、業としての使用に当然に該当する。 イ 本件ウェブサイトは、本件新聞が休刊中であることを開示し、かつ、本件新聞の過去号を掲載したものであるところ、これは、裏を返せば、廃刊ではなく、休刊であることを明らかにすることによって、復刊を予想させ、復刊時の宣伝、広告的な効果を狙ったものである。 してみれば、本件ウェブサイトでの本件商標の掲載は、商標法第2条第3項第8号に規定されている「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」にも該当する。 (3)使用期間 本件ウェブサイトは、2004年2月14日から現在に至るまで継続的に運営されており、本件ウェブサイトに掲載されている本件商標も同期間継続的に使用されている。 また、少なくともこの1年間について継続的に多数のアクセスが認められる(乙2)。 したがって、本件商標は、要証期間内に使用されている。 (4)使用地域 本件ウェブサイトは、日本国内で開示されている。 したがって、本件商標は日本国内において使用されている。 (5)小括 以上より、本件商標は、その指定商品である「新聞」について、通常使用権者によって、要証期間内に日本国内において使用されている。 3(1)指定商品の範囲 商標法の目的及び不使用取消審判の趣旨からすれば、商品に付された商標に対して化体する信用は、需要者によって形成される以上、願書に記載された指定商品と、実際に登録商標が使用されている商品との同否を認定する場面においては、需要者が登録商標の付されている実際の商品をどのように認識しているかを把握し、その需要者が認識している商品と、願書に記載された指定商品とを比較しなければならない。 そして、需要者が有する商品の概念(社会通念上の商品の概念)が、時代や世代に応じて変化していくことを念頭に置けば、商標法第50条に規定されている指定商品の範囲は、指定商品・役務の分類などといった形式的なものに捕らわれることなく、需要者を基準として、願書に記載されている指定商品の社会通念上の概念に従って、実質的に定めなければならないというべきである。 (2)本件商標が使用されている商品 本件商標が使用されている態様は、本件商標を画面左上に大きく銘打って新聞の紙面をほぼそのままウェブサイトに掲載し、これをプリントアウトできるようにしたものである(乙1及び乙7)。 このウェブページにアクセスした需要者が、本件商標が何の商品に付されているか、問われれば、ごく自然に「新聞」と答えるであろうし、「新聞ではなく、それとは違う電子出版物」と答える相当数の需要者が存在するとは到底思えない。 すなわち、本件商標は、需要者にとってみれば、「新聞」について使用されているものであり、「新聞」について信用が蓄積され、化体しているのである。 そもそも、第16類の「新聞」が「印刷物」であるという前提もその根拠が判然としないが、需要者にとってみれば、ウェブページであれ、印刷物であれ、本件商標が付されている商品は「新聞」である。 仮に、第16類の「新聞」が「印刷物」であるとしても、本件商標は、ウェブページを介して、紙に印刷(プリントアウト)できるのだから、この点を考慮すれば、本件商標は「印刷物」としての「新聞」に使用されているともいえる。 (3)請求人が弁駁書において主張する根拠は、本件商標が「印刷物」としての「新聞」には使用されていないという点にある。 しかしながら、その根拠は、商標の使用に対する判断主体である需要者を基準にしたものではなく、単に分類という形式だけに基づいたものであるから、失当である。 そもそも、第16類の「新聞」が紙媒体に限られるとか、第9類の「電子新聞」と第16類の「新聞」とは何ら関係がない、とまでいいきる根拠も不明である。 商標法の目的に照らし、現今の社会通念に鑑みれば、商標の使用の場面においては、これらは同一というべきであり、形式的な商品分類に拘泥すべきでない。 仮に、第16類のみで登録商標を有し、紙媒体での「新聞」を業として出版してきた企業が、電子出版に全て切り替えたとした場合、その企業の従前保有していた第16類の登録商標が、全て不使用取消審判で取り消されるとなれば、他人による同商標の第16類での登録が可能になり、需要者の混乱を招くのは必至である。 第4 当審の判断 1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。 (1)2004年(平成16年)2月14日から、商標権者は、本件新聞を発刊し、その後、本件新聞は、2007年(平成19年)2月24日号をもって休刊となった(被請求人の主張)。 (2)商標権者は、過去に発刊された本件新聞の各号を誰でもが無償で読めるように、2004年(平成16年)2月14日から、本件ウェブサイトを開設した(被請求人の主張)。 (3)本件ウェブサイトには、電子化された本件新聞の内容が掲載され、また、本件商標が表示されている(乙1及び乙7)。 2 本件商標は第16類「新聞」に使用をされたかについて (1)第16類「新聞」について 商標法施行令の別表における第16類は、「紙、紙製品及び事務用品」とされており、商標法施行規則の別表における第16類では、「印刷物」の包括表示の下に「新聞」が例示されている。 また、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説(国際分類第9版対応)」には、第9類の「電子出版物」の項に「この概念には、ダウンロードによる電子出版物、記録媒体に格納した電子出版物が含まれる。」との記載がある。 そうすると、本件商標の指定商品である第16類「新聞」は、「印刷物」(紙媒体)としての「新聞」であるというべきであり、ダウンロードによる又は記録媒体に格納された「電子新聞(電子出版物)」は含まれないというべきである。 (2)商標法上の商品としての電子情報財について 商標法上の商品とは、商取引の目的たり得べき物をいうのであり、これには、無体物である電子出版物等の電子情報財も含まれる。 そして、電子情報財が商標法上の商品というためには、流通性が必要というべきであり、ダウンロード等により顧客に電子情報財そのものが送信され、顧客がハードディスクに記録し、継続して管理・支配できる場合に、電子情報財自体が流通しているといえる。 (3)判断 ア 前記1(3)のとおり、本件ウェブサイトには、本件商標が表示されており、本件新聞が掲載されていることが認められる。 しかしながら、本件新聞は、本件ウェブサイトに掲載されていることからして、電子化されたもの、すなわち「電子新聞(電子出版物)」というべきであるから、本件商標の指定商品である第16類に属する「印刷物」(紙媒体)としての「新聞」について、本件商標が使用をされているとは認めることができない。 イ 前記1(2)のとおり、本件ウェブサイトは、過去に発刊された本件新聞を誰でも読めるように開設されたものである。 そうすると、本件ウェブサイトにおいては、本件新聞を流通させているというよりも、むしろ電子化された本件新聞の内容を提供(供覧)させているといえる。 また、本件ウェブサイトにおいて、本件新聞が流通されていると認めるに足る証拠は見当たらない。 したがって、本件商標は、本件ウェブサイトにおいて、本件新聞の内容を提供する役務に使用をされているというべきであって、流通性のある商品に使用をされているということはできない。 ウ 以上により、本件商標は、請求に係る商品である第16類「新聞」に使用をされていると認めることはできない。 3 被請求人の主張について (1)被請求人は、商品に付された商標に対して化体する信用は、需要者によって形成される以上、願書に記載された指定商品と、実際に登録商標が使用されている商品との同否の認定は、需要者が登録商標の付されている実際の商品をどのように認識しているかを把握し、その需要者が認識している商品と、願書に記載された指定商品とを比較すべきである旨主張している。 しかしながら、前記2(3)イのとおり、本件商標は、本件ウェブサイトにおいて、本件新聞の内容を提供する役務に使用をされているというべきであって、流通性のある商品に使用をされているということはできないから、仮に被請求人の主張のとおり、需要者が認識している商品と、願書に記載された指定商品とを比較するとしても、前述の判断は左右されない。 (2)被請求人は、需要者が有する商品の概念(社会通念上の商品の概念)は、時代や世代に応じて変化していくことからして、商標法第50条に規定されている指定商品の範囲は、商品及び役務の分類といった形式的なものにとらわれることなく、需要者を基準として、指定商品の社会通念上の概念に従って、実質的に定めるべきである旨主張している。 しかしながら、指定商品の範囲は、願書の記載に基づいて定められるのであり(商標法第27条第2項)、商標法第50条に規定する指定商品についても、同様に解釈すべきである。 そうすると、前記2(1)のとおり、本件商標の指定商品である第16類「新聞」は、「印刷物」(紙媒体)としての「新聞」であるというべきであり、ダウンロードによる又は記録媒体に格納された「電子新聞(電子出版物)」は含まれないというべきである。 仮に、被請求人の主張のとおり、商標法第50条に規定する指定商品の範囲は、需要者を基準として、社会通念上の概念に従って実質的に定めるとしても、前記2(3)イのとおり、本件商標は、本件ウェブサイトにおいて、本件新聞の内容を提供する役務に使用をされているというべきであって、流通性のある商品に使用をされているということはできないから、前述の判断は左右されない。 (3)被請求人は、仮に第16類の「新聞」が「印刷物」であるとしても、本件商標は、ウェブページを介して紙に印刷(プリントアウト)できるのだから、この点を考慮すれば、本件商標は「印刷物」としての「新聞」に使用されている旨主張している。 しかしながら、たとえ、本件新聞が本件ウェブサイトを介して紙に印刷することが可能であるとしても、このことは、本件新聞の内容が本件ウェブサイトを介して提供されていることから当然のことであり、これによって、本件商標が「印刷物」(紙媒体)としての「新聞」に使用をされているということはできない。 (4)被請求人は、紙媒体での「新聞」を業として出版してきた企業が、電子出版に全て切り替えたとした場合、その企業の従前保有していた第16類の登録商標が、全て不使用取消審判で取り消されるとなれば、他人による同商標の第16類での登録が可能になり、需要者の混乱を招くのは必至である旨主張している。 しかしながら、紙媒体としての「新聞」を電子出版に切り替えたのであれば、「電子出版物」を指定商品として登録商標を取得すればよいのであり、当該取得をしないことを前提とした主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人が、要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る商品についての本件商標の使用をしていることを証明したとはいえず、また、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 |
審理終結日 | 2020-07-01 |
結審通知日 | 2020-07-03 |
審決日 | 2020-07-15 |
出願番号 | 商願昭61-111558 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(X16)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
中束 としえ |
特許庁審判官 |
木村 一弘 山田 啓之 |
登録日 | 1989-03-27 |
登録番号 | 商標登録第2127589号(T2127589) |
商標の称呼 | シガシンブン、シガ |
代理人 | 上村 喜永 |
代理人 | 福屋 好泰 |
代理人 | 西村 竜平 |
代理人 | 齊藤 真大 |
代理人 | 浅野 哲平 |