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審決分類 審判 査定不服 外観類似 登録しない W35
審判 査定不服 観念類似 登録しない W35
審判 査定不服 称呼類似 登録しない W35
管理番号 1375988 
審判番号 不服2019-13128 
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-02 
確定日 2021-07-01 
事件の表示 商願2018- 90258拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成30年7月12日に登録出願され、その後、指定役務については、原審における令和元年6月5日付けの手続補正書及び審判請求と同時に提出された同年10月2日付けの手続補正書により、最終的に、第35類「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,洋服・コート・セーター類・ワイシャツ類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,寝巻き類・下着・水泳着・水泳帽の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キャミソール・タンクトップ・ティーシャツの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,アイマスク・エプロン・えり巻き・靴下・ゲートル・毛皮製ストール・ショール・スカーフ・足袋・足袋カバー・手袋・ネクタイ・ネッカチーフ・バンダナ・保温用サポーター・マフラー・耳覆いの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第5166683号商標(以下「引用商標」という。)は、「KANGOL」の文字を標準文字で表してなり、平成19年5月16日に登録出願、第35類「帽子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同20年9月12日に設定登録され、その後、同30年9月18日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和2年6月26日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要点
請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。
(1)請求人と引用商標権者は、本願商標と同一又は類似の商標について、本願商標の指定役務に係る商品と引用商標の指定役務に係る商品に関し、互いに登録を受けて“すみ分け”している実情がある(甲3の1、甲3の2)。このような取引の実情があるにもかかわらず、役務の審査基準において類似と「推定」していることから、この「推定」に基づいて、画一的に一般的・抽象的な混同を生ずると判断することは取引の実情を無視しているものといわざるを得ない。
(2)引用商標は、類似商品・役務審査基準に従えば、引用商標の指定役務と請求人が所有する登録商標の指定商品とが互いに類似するにもかかわらず登録されているのであって、引用商標は、請求人所有の登録商標によって拒絶されるべきところ過誤により登録されているものであり、そもそも本願商標の拒絶理由の根拠とはなり得ないものである。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、カンガルーをモチーフとしたとおぼしき図形と、その下に「KANGOL」の欧文字を横書きした構成からなるところ、その構成中の図形は、カンガルーをモチーフとした図形として看取される場合があるとしても、かなり抽象的に描かれたものであるから、これに接する取引者、需要者が、直ちに「カンガルー」を表したものと認識するとはいえないとみるのが相当である。
そして、当該図形は、特定の事物を表すものとして親しまれているような事情は見いだせないものであるから、これより、特定の称呼及び観念は生じないものである。
また、本願商標の構成中の「KANGOL」の欧文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
してみれば、本願商標の構成中の図形部分と欧文字部分とは、観念上のつながりもなく、視覚上、分離して看取され得るものであるから、それぞれが要部として認識されるものである。
そうすると、本願商標は、その構成中の「KANGOL」の欧文字に相応して「カンゴール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、「KANGOL」の欧文字からなるところ、当該文字は、一般的な辞書等に採録された語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているものとも認められないから、特定の観念を生じることのない造語とみるのが相当である。
そうすると、引用商標は、「KANGOL」の欧文字に相応して「カンゴール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本願商標と引用商標の類否について
本願商標と引用商標を比較すると、両者は、全体の外観においては、相違するものの、本願商標の要部である「KANGOL」の欧文字部分と引用商標は、つづりを共通にすることから、外観上類似するといえるものである。
次に、称呼においては、両者は、共に「カンゴール」の称呼を生じるものである。
そして、観念においては、両者は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本願商標の要部である「KANGOL」の欧文字部分と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観において類似し、称呼を共通にするものであるから、これらを総合して考察すれば、本願商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
エ 本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について
指定商品又は指定役務が類似のものであるかどうかは、商品又は役務が、通常、同一営業主により製造若しくは販売又は提供されている等の事情により、それらの商品又は役務に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断すべきである(最高裁昭和33年(オ)第1104号、知財高裁平成27年(行ケ)第10096号参照)旨判示されているところである。
そこで、本願の指定役務である「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,洋服・コート・セーター類・ワイシャツ類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,寝巻き類・下着・水泳着・水泳帽の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キャミソール・タンクトップ・ティーシャツの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,アイマスク・エプロン・えり巻き・靴下・ゲートル・毛皮製ストール・ショール・スカーフ・足袋・足袋カバー・手袋・ネクタイ・ネッカチーフ・バンダナ・保温用サポーター・マフラー・耳覆いの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標の指定役務である「帽子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、両者が類似のものであるかどうかを検討すると、別掲2のとおり、本願の指定役務に係る取扱商品(例えば「まくら,クッション,ティーシャツ,セーター,コート,下着,キャミソール,靴下,靴,スニーカー,かばん,トートバック,リュック,ベルト,ワッペン,うちわ」など)と引用商標の指定役務に係る取扱商品「帽子」が同一の小売店で販売されている実情がある。
さらに、これらの商品を購入する需要者は、共に一般消費者であり、需要者の範囲は一致するといえるものである。
そうすると、本願の指定役務と引用商標の指定役務とは、提供の手段、目的又は場所、需要者の範囲が一致することに加え、現実に同一の営業主により両者の取扱商品が販売されているという実情があることも踏まえると、これらの役務に同一又は類似の商標を使用した場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る役務と誤認混同されるおそれがあると認めるのが相当であるから、両者は類似の役務であるというのが相当である。
オ 小括
以上によれば、本願商標は引用商標と類似する商標であり、かつ、引用商標の指定役務と類似の役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願の指定役務である「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「小売等役務」という。)において販売(譲渡)される商品は、「帽子,ずきん,ヘルメット」とは生産部門、用途等を異にする類似しない商品に関するものであるから、本願の小売等役務と引用商標の指定役務である「帽子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは互いに非類似の役務である旨主張する。
しかしながら、本願の指定役務と引用商標の指定役務は、共に小売等役務であるから、両者の役務の類否は、その取扱商品の類否ではなく、小売等役務間においての役務の類否について判断すべきである。
そうすると、上記(1)エのとおり、本願の指定役務と引用商標の指定役務とは、その役務に同一又は類似の商標を使用した場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る役務と誤認混同されるおそれがあると認めるのが相当であるから、両者は類似の役務であるというのが相当である。
イ 請求人は、請求人と引用商標権者である「カンゴール リミテッド」(以下「Kangol社」という。)とは、2002年(平成14年)9月2日に、Kangol社の所有する知的財産権の譲渡等に関する契約を行った旨述べて契約書の原本の写し及び翻訳文(甲3の1、甲3の2)を提出し、Kangol社との契約に基づき、本願商標を「帽子,ナイトキャップ,ずきん,ヘルメット,すげがさ」以外の商品について永年にわたり取引において使用していることから、本願商標と引用商標とは互いに紛れるおそれのない非類似の商標である旨主張する。
しかしながら、請求人から提出された上記契約書の写し及び翻訳文からは、実際の取引の実情は不明であり、仮に請求人の主張する取引の実情があるとしても、商標の類否判断において考慮することのできる取引の実情とは、単に当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではなく、その指定商品全体についての一般的・恒常的な実情を指すものと解すべきであり(最高裁昭和47年(行ツ)第33号参照)、役務についても同様に解されているところ、請求人の主張する上記実情は、取引における一場面を抽出した特殊的、限定的なものといわざるを得ないものであり、商標の類否判断にあたり考慮すべき一般的、恒常的な取引の実情ということはできない。
そして、上記(1)ウのとおり、本願商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
ウ 請求人は、令和2年5月28日付け上申書及び当審における証拠調べ通知に対する同年7月31日付け意見書において、引用商標は、「類似商品・役務審査基準」によれば、請求人が所有する登録商標の指定商品と互いに類似するにもかかわらず登録されているのであって、引用商標は、請求人所有の登録商標によって拒絶されるべきところ過誤により登録されているものであり、本願商標の拒絶理由の根拠とはなり得ないものである旨主張する。
しかしながら、上記2のとおり、引用商標は、現に有効に存続しているものであるから、商標法第4条第1項第11号の拒絶の理由の根拠となり得ないものとはいえない。
なお、請求人の所有する登録商標(甲6?甲14)の指定商品は、引用商標の指定役務である「帽子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは類似するものとはいえず、過誤により登録されているとは認められないものである。
エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1(本願商標)


別掲2(令和2年6月26日付け証拠調べ通知書で通知した事実)
本願商標の指定役務である「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,洋服・コート・セーター類・ワイシャツ類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,寝巻き類・下着・水泳着・水泳帽の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キャミソール・タンクトップ・ティーシャツの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,アイマスク・エプロン・えり巻き・靴下・ゲートル・毛皮製ストール・ショール・スカーフ・足袋・足袋カバー・手袋・ネクタイ・ネッカチーフ・バンダナ・保温用サポーター・マフラー・耳覆いの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る商品(例えば「まくら,クッション,ティーシャツ,セーター,コート,下着,キャミソール,靴下,靴,スニーカー,かばん,トートバック,リュック,ベルト,ワッペン,うちわ」など)と引用商標の指定役務である「帽子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る商品「帽子」が同一の小売店で取り扱われ、販売されている例。

(1)「SHIPS」のウェブサイトにおいて、「帽子」とともに、「クッション,Tシャツ,靴下,靴,トートバック,ベルト」などが販売されている。
(https://www.shipsltd.co.jp)
(2)「楽天市場」の「BEAMS」のウェブサイトにおいて、「帽子」とともに「コート,下着,靴,ワッペン,うちわ」などが販売されている。
(https://www.rakuten.ne.jp/gold/beams/)
(3)「UNITED ARROWS LTD.ONLINE STORE」のウェブサイトにおいて、「帽子」とともに「クッション,セーター,キャミソール,靴下,スニーカー,リュック,ベルト」などが販売されている。
(https://store.united-arrows.co.jp/)
(4)「株式会社ユニクロ」のウェブサイトにおいて、「帽子」とともに「まくら,ティーシャツ,靴,かばん,ベルト」などが販売されている。
(https://www.uniqlo.com/jp/)


審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-05 
審決日 2020-11-11 
出願番号 商願2018-90258(T2018-90258) 
審決分類 T 1 8・ 261- Z (W35)
T 1 8・ 263- Z (W35)
T 1 8・ 262- Z (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 佐代子水落 洋 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 木住野 勝也
小田 昌子
商標の称呼 カンゴール 
代理人 澤木 紀一 
代理人 小山 輝晃 

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