• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W25
審判 一部申立て  登録を維持 W25
審判 一部申立て  登録を維持 W25
審判 一部申立て  登録を維持 W25
審判 一部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1375215 
異議申立番号 異議2020-900167 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-29 
確定日 2021-06-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第6244239号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6244239号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6244239商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、2019年(平成31年)4月8日に登録出願、第9類「ネットワークカメラ,ネットワーク用カメラ,パノラマカメラ,デジタルビデオカメラ,デジタルムービーカメラ,ビデオ監視カメラ,監視カメラ,監視及びモニタリング用ビデオカメラ,電子カメラ,防犯・防災用監視カメラ,防犯及び防災用監視カメラ,防犯用監視カメラ,多目的カメラ,防犯用監視ビデオカメラ,遠隔監視システム用ビデオカメラ,赤外線カメラ,赤外線熱画像探知カメラ,電池用充電器,蓄電池」及び第25類「ティーシャツ,タンクトップ,帽子」を指定商品として、2020年(令和2年)3月10日に登録査定、同年4月9日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第832340号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2004年(平成16年)6月25日に国際商標登録出願、第25類「Clothing, footwear, headgear.」並びに第3類、第9類、第14類、第16類、第18類、第24類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2005年(平成17年)9月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品中、第25類「全指定商品」(以下「本件商品」という場合がある。)について、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 申立人の周知、著名性について
申立人(英文名称:Giorgio Armani S.P.A.)は、デザイナーであるジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)により1975年にイタリアのミラノに設立されたファッションハウス(最新の高級服のメーカー)であり、高級ホテル(アルマーニ ホテルズ)や高級リゾートのチェーンビジネスのみならず、世界中でカフェやバー、ナイトクラブの運営も行っている(甲3?甲5)。
アルマーニブランドは、ファッション業界で最も権威のあるブランドと紹介され、メインブランド「ジョルジオ アルマーニ」の他、複数の姉妹ブランド、化粧品、リゾート、高級レストランなど多彩な事業を展開して「アルマーニ」と総称される(甲4)。
2 申立人の創立者ジョルジオ・アルマーニについて
ジョルジオ・アルマーニは、同じくイタリアを代表するファッションデザイナーであるジャンフランコ・フェッレ(Gianfranco Ferre:末尾の「e」の上には、アクサンテギュ記号が付されている。)氏、ジャンニ・ヴェルサーチ(Gianni Versace)氏とともに、「ミラノの3G」と呼ばれ、その一翼を担い、世界中で知られており、その知名度を表す最たるものとして、ファッションデザイナーとしては2人目として、アメリカの「Time(タイム)」誌の表紙を1982年(昭和57年)に飾り、1940年代のクリスチャン・ディオール以来約40年ぶりにファッションデザイナーとして表紙を飾った。イタリア人としては、ノーベル賞受賞劇作家のルイジ・ピランデルロに次いで2人目である(甲5)。
また、1981年(昭和56年)のGQ誌の「メンズ・スタイル・アウォード・フォー・ベスト・ファッションデザイナー賞」を皮切りに、1985年(昭和60年)にはイタリア政府から、イタリア共和国功労勲章「コメンダトーレ章」を、1986年(昭和61年)にはその最高位「グランデ・ウッフィチャーレ章」を、1987年(昭和62年)には「共和国功績勲章」、「大騎士賞」を授与されている。受賞歴はイタリア国内にとどまらず、1988年(昭和63年)にはスペイン国王から、世界最高のファッションデザイナーに贈られる「クリストバル・バレンシアガ賞」を、1989年(平成元年)には日本でも「繊研賞」を授与されている。
つまり、ジョルジオ・アルマーニは、20世紀で最も成功したデザイナーであり、著名な番付「フォーブズ(Forbs)」の世界長者番付にもランクインされている(甲5)。
上記で述べたことは、雑誌「VOGUE」の記事においても同様に記載されている(甲6)。
3 申立人の日本での事業について
申立人は、1987年(昭和62年)に、Giorgio Armani Japan株式会社を設立したのが日本でのビジネスの始まりである。
日本進出から30年を経過した現在でも、日本で認知される高級ブランドの1つとして、東京の銀座や青山のみならず日本各地で出店を続け、現在では日本国内で64店舗を擁しており、申立人のブランドの日本国内での知名度が高いことがうかがえる。
昨今では、都内にある小学校の制服のデザインをしたことが全国のテレビ局により報道されたが、これも、ジョルジオ・アルマーニが日本全国で高級ブランドであることが広く知られているからに他ならない。
4 引用商標の周知、著名性について
上記1ないし3のとおり、申立人とそのブランドであるGiorgio Armaniは、40年以上も世界各国で広く事業活動を行っている。引用商標も1985年(昭和60年)から前記のあらゆるArmaniブランドの展開に際して使用されている。
したがって、その保有するブランド(商標)と引用商標は、日本国内のみならず、世界各国で周知・著名なものとして認知されている。
(1)売上高
2014年(平成26年)ないし2018年(平成30年)の申立人のアニュアルレポートによれば、売上高(1ユーロ130円で換算)は、2012年(平成24年)は29億2840万ユーロ(約3807億円)、2013年(平成25年)は30億4720万ユーロ(約3961億円)、2014年(平成26年)は31億3580万ユーロ(約4077億円)を記録している。
また、全世界での「アルマーニ(Armani)」ブランドの商品の販売額は、2015年(平成27年)は40億1150万ユーロ(約5215億円)、2016年(平成28年)は39億4040万ユーロ(約5123億円)、2017年(平成29年)は39億2660万ユーロ(約5105億円)、2018年(平成30年)は38億600万ユーロ(約4948億円)を記録している(甲8)。
上記金額を見ても、申立人ブランドの世界での市場規模は大きく、ブランドの持つ価値が高く、申立人の商標並びにブランドが需要者に周知されていることが分かる。
(2)日本での売上高
2015年(平成27年)ないし2019年(令和元年)の日本におけるGiorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)ブランドの商品の売上高は、平均で70億円ほどである。
(3)世界での引用商標を付した商品の売上高
2015年(平成27年)ないし2019年(令和元年)の世界における、引用商標を付した商品の売上高は、いずれの年も391億円から444億円以上を達成している。
(4)広告宜伝費
申立人が日本を含む世界各国で費やしたGiorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)ブランドに関する2012年(平成24年)ないし2017年(平成29年)の広告宣伝費は、いずれの年も、最低20億円以上、最高時は25億円以上の広告宣伝費をかけており、申立人が世界中でその所有するブランドの育成と価値の向上に力を入れていることが分かる。
また、申立人が日本で費やしたGiorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)ブランドに関する広告宣伝費は、2017年(平成29年)以降、最低2億円以上を費やし、日本国内の広告宣伝に力を入れ、申立人がその所有するブランドの育成と価値の向上に力を入れていることが分かる。
(5)商品の販売個数
申立人は、引用商標が使用されるジョルジオ アルマーニというブランドの他にも「エンポリオ アルマーニ(Emporio Armani)」、「アルマーニ コレッツィオーニ(Armani Collezioni)」、「アルマーニ ジーンズ(Armani Jeans)」、「アルマーニ エクスチェンジ(Armani Exchange)」、「アルマーニ カーサ(Armani/Casa)」、「アルマーニ ドルチ(Armani/Dolci)」などの個別ブランドを所有し、被服、鞄や小物などの革製品、宝飾品、靴などを販売している。アルマーニに関わるその全体で毎年6000万個程度の商品を販売している。
日本においては、2014年(平成26年)には11万999個、2015年(平成27年)には9万6524個、2016年(平成28年)には4万6178個、2017年(平成29年)には8万6567個、2020年(令和2年)の春夏シーズンに3万9649個、同秋冬シーズンに4万25個の商品を販売している。
(6)引用商標を広告、宣伝を目的に使用された例
申立人の日本向けのインターネットホームページの写しによれば、引用商標が複数のページに表示され、申立人のビジネスと引用商標とが密接に関わっており、引用商標が国内外の消費者の目に触れる機会が多いことが分かる(甲9)。
(7)雑誌等への掲載事例
申立人は、インドやブラジル国内で頒布される雑誌等へ引用商標が付された商品の広告掲載を多数行っている。
また、日本国内においても、2018年(平成30年)から2020年(令和2年)にかけて、日本国内で頒布される女性誌に複数回数商品が掲載され、その商品に引用商標が表示されている(甲10)。
(8)世界各国での引用商標の商標登録例
申立人は、世界122か国の商標登録のほか、71か国を超える指定国を指定した、マドリッド協定議定書に基づく国際登録商標を所有し、引用商標の世界的な法的保護を確保の上、使用している(甲11)。
(9)引用商標について著名性を認定したスペインでの異議申立ての決定
他人が所有するスペイン登録商標に対する異議申立ての審理において、引用商標の著名性が認定されている(甲12)。
(10)Brand Financeによる評価
英国に拠点を持つ、世界のブランドの評価を行う事業者Brand Finance社は、2017年(平成29年)のイタリアのブランドトップ50を分析しており、申立人のブランドの総称である「Armani」について、第10位にランク付けしている(甲13)。
(11)Reuters(ロイター)による記事
ロイターの記事によれば、2017年(平成29年)は25億ユーロ(1ユーロ=126円換算で3150億円)の売上を達成しており、プラダに次いで2番目に大きいイタリアのファッショングループであると報じている(甲14)。
5 商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標は、図形と文字からなり、横書きのため、需要者はまず左端に配置された図形に目をとめ、この図形は、英語のアルファベットの「G」と「S」が組み合わさって、全体に円を構成する図形(以下「GSロゴ図形」という。)と容易に理解できる。「GSロゴ図形」に続く文字「BROTHERS」は、「同胞、仲間」などの意味を有し、需要者によく知られた英単語である。そこで、本件商標を看取する需要者は、語頭の左端から本件商標を認知し、「GSの同胞、GSの仲間」なる語義を認識する。商標は自他商品等識別のためのものであり、必要不可欠の機能は、識別機能であるところ、一般に、「○○の同胞、仲間」なる語義を有する語の場合、「同胞、仲間」の部分には、かかる識別の機能は弱く、識別の要の役をなすは、「○○」の部分である。本件商標の場合は、「GSロゴ図形」の部分である。円の中に「G」と「S」の2文字を等分に左右に配し、円の外縁及び円の中心に十文字を配した線に沿うように、「G」と「S」双方の文字を配している。
引用商標も、円状に英語のアルファベット2文字の「G」と「A」が組み合わさってなるモノグラムであり、本件商標のように、円の中心に十文字を配した場合にできる線に沿うように「G」と「A」を配している。
このように引用商標と構図を一にする本件商標は、外観が区別し難いほどに近似してデザインされている。つまり、本件商標のモノグラム部分の左側の「G」は、引用商標の「G」のデザインと同様に、文字の末端部が円中央に向かって上方向に直角に伸びたあと、左方向に直角に折れ曲がる点で、構成を共通にしている。また、右側のもう一方の文字「S」は、2つの曲線部が円の十字の中心線に沿って配されることにより、「S」そのものでなく認識できる。その結果、引用商標の右側半分の「A」の文字をかたどったデザインとほぼ同一に近いほど近似している。
商標の類似判断は、時と処を別にして行う隔離観察で行うところ、本件商標に接した需要者は、要部の「GSロゴ図形」の微細な構成の各要素を明確に記憶して判断するのではなく、外観の印象に基づいて認知するはずであるから、国内外で周知・著名なブランドであるジョルジオ・アルマーニの代表的ロゴである引用商標との詳細な差異を認知することはできず、極めて印象を一にする図形であると認知する。つまり、本件商標のモノグラムによって構成された図形部分と引用商標とは、ともに円とその内部を四分割するような縦線と横線よりなる点において共通しており、区別できないほど近似している。
したがって、両商標の外観は極めて近似した外形からなり、外観が類似している。
称呼の点については、本件商標が「ジーエス」である一方、引用商標は「ジーエー」であり、両商標とも3音もしくは2音と極めて短い称呼からなるにも関わらず、最初の2つの音を共通にしており、差異が共通点を凌駕するほど区別できず類似である。
観念については、本件商標の「GSロゴ図形」からは特定の観念を生じさせない。
一方、引用商標は周知、著名であり、ジョルジオ・アルマーニを略して「GA」と表記され世界中で広く多用されてきたのであるから、単なるアルファベット2文字の組み合わせという意味合いだけでなく、ファッション業界の商品である被服、鞄、アクセサリー、靴などとの関係ではジョルジオ・アルマーニ氏なるデザイナー及び同者が関わる各ブランドを想起させる。
前記のとおり、引用商標自体は周知、著名な商標であるから、外観と称呼が近似している本件商標に接した需要者は、「GA」からなるモノグラムを配した、つまり、ジョルジオ・アルマーニの意味からなるロゴと想起されることが容易に想像できる。
以上により、本件商標と引用商標とは、外観上極めて紛らわしく、称呼及び観念上も類似しているため、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあることは否定できないから、本件商標と引用商標とは類似するというべきである。
また、本件商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものが包含されている。
よって、本件商標は、先願の類似商標と同一又は類似する商標であって、同一又は類似する指定商品にかかる登録出願であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録された商標である。
6 商標法第4条第1項第15号違反について
本件商標と引用商標とが類似するとはいい得ないとした場合であっても、引用商標が申立人の商標として日本国内において周知、著名であることからすると、本件商標が本件商品について使用されたときには、需要者、取引者をして、申立人の提供する商品であるかのごとく、又は申立人と経済的、組織的に何らかの関連を有するものの提供に係る商品であるかのごとく、その出所について需要者をして誤認混同を招くことは明らかである。
本件商品は、引用商標の第25類の商品に含まれる商品であるから、狭義、広義の出所の誤認混同を生じるおそれが存在する。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないとした場合であっても、本件商標は同項第15号に違反して登録されたものである。
7 商標法第4条第1項第19号違反について
引用商標は、申立人の周知、著名な商標として世界各国で認識されることからすると、これと類似する本件商標をその指定商品に使用する場合には、ファッション業界において周知・著名な円状にデザインされたアルファベット2文字をデザインしたモノグラムからなる引用商標に化体した知名度にフリーライドして、不正の利益を得る目的のもと使用することになり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、デザイナーであるジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)により1975年(昭和50年)にイタリアで設立された高級服のメーカーである。「アルマーニ」ブランドは、ファッション業界で最も権威のあるブランドと紹介され、メインブランド「ジョルジオ アルマーニ」の他、複数の姉妹ブランド、化粧品、リゾート、高級レストランなど多彩な事業を展開して「アルマーニ」と総称される(甲3、甲4)。
イ 申立人は、1987年(昭和62年)に、Giorgio Armani Japan株式会社を設立し、日本進出から30年を経過した現在でも、日本で認知される高級ブランドの1つとして、東京の銀座や青山のみならず日本各地で出店を続け、現在ではGiorgio Armani及びEmporio Armaniのブランドとして、日本国内で64店舗を有していると主張している。
ウ 申立人は、2014年(平成26年)から2018年(平成30年)までのアニュアルレポートを提出し、全世界での「アルマーニ(Armani)」ブランドの商品の販売額を主張するが、その詳細は不明である(甲8)。
エ 申立人は、2012年(平成24年)ないし2017年(平成29年)の日本及び世界におけるGiorio Armani(ジョルジオ アルマーニ)ブランドの広告宣伝費などを主張するが、それらを客観的に裏付ける証拠の提出はない。
オ 申立人は、被服、鞄や小物などの革製品、宝飾品、靴などの商品に係る、アルマーニブランド全体の販売数、日本における、2014年(平成26年)ないし2017年(平成29年)の販売数を主張するが、それらを客観的に裏付ける証拠の提出はない。
カ 申立人の主張によると、甲第9号証は、申立人のウェブサイトであるところ、引用商標が、バッグ、財布、カードケース等に使用されていることが確認できるが、これらが掲載された時期は確認できない。
キ 2018年(平成30年)から2020年(令和2年)に、我が国で販売された女性誌に、引用商標が付された被服、履物、バッグ及び財布等が掲載されたとはいい得るとしても、これらの雑誌の発行部数や普及の程度は不明である(甲10の4?甲10の12)。
ク その他、引用商標が付された商品についての我が国における販売期間、売上高や市場シェアなどの事業規模、宣伝広告の回数などを具体的に把握し得るものは見いだせない。
(2)まとめ
上記(1)によれば、ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)は、本件商標の登録出願時において、世界的に著名なデザイナーとして評価され、事業家としても、世界的な名声を博し、「GIORGIO ARMANI」、「ジョルジオ アルマーニ」の名前あるいは姉妹ブランドやその略称である「ARMANI」及び「アルマーニ」の標章は、本件商標の登録査定時はもとより、本件商標の登録出願時においても、申立人の業務に係る商品「被服、靴、鞄、ベルト、革製小物」等の出所表示として、我が国又は外国の一般の取引者、需要者の間に、ある程度認識されていたものと認められる。
しかしながら、申立人による全世界での「アルマーニ(Armani)」ブランドの商品の販売額については、その詳細が不明であること、同様に広告宣伝費も客観的に裏付ける証拠は提出されていないこと、日本における販売数についても、それらを客観的に裏付ける証拠の提出はない。
また、本件商標の登録出願時及び登録査定時における、我が国及び外国の引用商標を使用した商品の市場シェアなどの販売実績や新聞、雑誌などの掲載事実や申立人ウェブサイトへのアクセス状況などの広告宣伝の実績に係る証左はいずれも見いだせない。
そうすると、申立人の提出に係る全証拠によっては、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。
その他、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていると認めるに足る証拠はない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、英語のアルファベットの「G」と「S」が組み合わさって、全体に円を構成するように描かれた「GSロゴ図形」と「GSロゴ図形」の右横に赤地の白抜きで「BROTHERS」の文字を横書にしてなるところ、「GSロゴ図形」と「BROTHERS」の文字は、いずれも、赤色横長四角形内に配されているものの、「GSロゴ図形」と「BROTHERS」の文字は、それぞれの大きさが異なり、また、「GSロゴ図形」中の「GS」は黒色で書され、他方、「BROTHERS」の文字は、白抜きされている等、これらの色彩が相違する等の相違点を有するため、「GSロゴ図形」と「BROTHERS」の文字とは、視覚上分離して認識、把握されるものといえる。
また、本件商標の構成中の赤色横長四角形及び「GSロゴ図形」は、需要者の間に広く知られている等の理由により、これらが、特定の称呼及び観念が生じると判断するべき事情は有さない。
さらに、本件商標の構成中の赤色横長四角形は、「GSロゴ図形」及び「BROTHERS」の文字の背景として認識されるものであるとしても、「GSロゴ図形」が、本件商標の指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき事情は有さないものである。
加えて、本件商標の構成中の「BROTHERS」の文字は、「兄弟」等の意味を有する英語(株式会社大修館書店 ベーシック ジーニアス英和辞典)として良く知られているものであり、当該文字が、本件商標の指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき事情は有さないものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「GSロゴ図形」と「BROTHERS」の文字が、それぞれ、出所識別標識としての機能を有するものと認識、理解するというのが相当であるから、その構成中の「GSロゴ図形」及び「BROTHERS」の文字を、自他商品の識別標識としての機能を有する要部として抽出し、これらと、引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成中の「BROTHERS」の文字に相応して、「ブラザーズ」の称呼を生じ、「兄弟」の観念が生じるものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、円の上部左側及び下部右側の弧を一部切り取り、左の円弧の下部先端に接続し、中央に向って縦直線を配し、その先端に接続し、左に向かって先端部分が斜めに切り取られた横直線を配している。また、右の円弧の上部先端に接続し、中央に向かって縦直線を配し、該円弧の中央部分から、先端部分が斜めに切り取られた横直線を配し、縦直線と横直線が中央付近で交差しているものである。
そうすると、引用商標は、上記の特徴的な構成による組み合わせがバランス良く結合しており、その構成全体がまとまりのある一体のものとして、需要者に強く印象づけられるものであって、円図形をモチーフとした特異性のある図形として認識されるとみるのが相当であり、これより、特定の称呼及び観念は生じないものと認められる。
なお、申立人は、引用商標はアルファベット「G」と「A」が組み合わさってなるモノグラムであると主張するが、これが仮に「G」と「A」を基調としたものであるとしても、その図案化の程度は高く、アルファベット「G」と「A」を組み合わせたものと看取されるというより、その構成全体から円図形として認識されるというべきである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、引用商標は、別掲2のとおりの構成よりなるところ、本件商標と引用商標とは、構成全体として、明らかに相違するものである。
また、本件商標の構成中の赤色横長四角形と引用商標とは、その色彩や構成が明らかに相違し、本件商標の構成中の「BROTHERS」の文字と引用商標とは、その色彩や構成が明らかに相違するものである。
さらに、本件商標の構成中の「GSロゴ図形」は、上記(1)のとおり、白色円内にアルファベットの「G」と「S」が組み合わさって、全体に円を構成する図形からなるのに対し、引用商標は、上記(2)のとおり、円図形をモチーフとした特異性のある図形として看取されるものであるから、両者は、商標全体の構成態様において明らかに相違するものであり、かつ、構成全体としてそれぞれから受ける印象が大きく異なり、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、十分に区別し得るものであり、互いに紛れるおそれはないというべきである。
イ 称呼及び観念について
本件商標は、その構成中の「BROTHERS」の文字から「ブラザーズ」の称呼及び「兄弟」の観念が生じるのに対し、引用商標は、特定の称呼及び観念が生じないため、これらは、称呼及び観念上、比較することはできない。
ウ 小括
以上から、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において比較することができないものであるとしても、これらの外観において、明らかに相違するものであり、これらを総合して判断すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情も見いだせない。
(4)まとめ
したがって、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、たとえ、本件商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記1(2)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
そして、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、類似性の程度が高いとはいえないものである。
そうすると、本件商品と引用商標の指定商品及び指定役務中、第25類「Clothing, footwear, headgear.」とが、商品の用途、製造業者、需要者及び販売場所等を共通にするものであるとしても、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているとはいえないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、別異の商標であり、類似性の程度が高いとはいえないものであるから、本件商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標を本件商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標又は申立人を連想又は想起するとは考え難い。
以上によれば、本件商標は、これを本件商品について使用しても、その取引者、需要者をして、当該商品が、申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認めることはできない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記1(2)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり、かつ、上記2(3)のとおり、本件商標とは、別異の商標である。
そして、申立人の提出に係る証拠によれば、本件商標の権利者による本件商標の使用が引用商標に蓄積された名声や信用にフリーライドし、それらを毀損させるものというべき事実は見いだし難いばかりでなく、他に、本件商標は、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証拠はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の指定商品中、第25類「全指定商品」についての登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)(色彩は原本を参照されたい。)


別掲2(引用商標)



異議決定日 2021-06-10 
出願番号 商願2019-48906(T2019-48906) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W25)
T 1 652・ 222- Y (W25)
T 1 652・ 263- Y (W25)
T 1 652・ 262- Y (W25)
T 1 652・ 261- Y (W25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2020-04-09 
登録番号 商標登録第6244239号(T6244239) 
権利者 株式会社ダイトク
商標の称呼 ジイエスブラザーズ、ジイエス、ブラザーズ 
代理人 特許業務法人筒井国際特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ