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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1375198 
異議申立番号 異議2020-900194 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-05 
確定日 2021-06-10 
分離された異議申立 有 
異議申立件数
事件の表示 登録第6256358号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6256358号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6256358号商標(以下「本件商標」という。)は、「zhiyun」の文字を標準文字により表してなり、平成30年9月24日に登録出願され、第9類「スマートフォン用スタビライザー,コンピュータ用スタビライザー,携帯電話用スタビライザー,カメラ用スタビライザー,液晶ディスプレイ用スタビライザー,ビデオカメラ用スタビライザー」を指定商品として、令和2年3月30日に登録審決、同年6月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「ZHIYUN」の欧文字を横書きしてなるものであり、申立人が商品「スタビライザー」(以下「申立人商品」という。)について使用しているというものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定によってその登録を取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証を提出した(なお、甲第39号証の後の証拠には、証拠番号が甲第45号証と記載されているが、甲第40号証と読み替えた。)。
1 商標法第3条第1項柱書について
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、平成28年5月16日に設立された茨城県つくば市に所在する会社であり、その事業内容は「コンピュータ、その周辺機器・関連機器及びそのソフトウェアの開発、設計、製造、販売並びに輸出入業務・インターネット等の通信ネットワーク及び電子技術を利用した各種情報提供サービス、情報収集サービス、広告・宜伝に関する業務及び代理業務や、通信販売業務、その他前記に付帯関連する一切の事業」とされている(甲1)。
本件商標権者は、平成27年から現在にかけて、日本国において、合計63件の商標登録出願又は商標登録の名義人である(甲2)。さらに、本件商標権者の取締役社長と同一の人物と思われる者の商標登録出願又は商標登録は合計23件が確認されている(甲3)。
一方、本件商標権者名義で経営されているインターネット通販サイトWES STORE(甲4)では、わずか2点の商品しか取り扱われておらず(甲5)、これらの商品にはいずれも本件商標が使用されていないことが確認できる。さらに、インターネット通販サイト楽天市場においても現時点で商品が取り扱われていない(甲6、甲7)。
さらに、登録商標の売買を業として経営されているウェブサイト「アットしょうひょう」(甲8)では、本件商標権者又はその取締役社長が所有している登録商標の転売に関する情報が大量に掲載されており、これらの商標はいずれも両者の自己の業務にかかる商品又は役務について使用する商標ではないことが明白である(甲9?甲23)。
以上の事実により、本件商標は登録後、本件商標権者の自己の業務にかかる商品又は役務について使用する商標ではなく、転売目的で本件商標を登録した蓋然性が極めて高いことがわかる。この理由から、本件商標の登録は取り消されるべきである。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、登録出願時に早期審査を請求しているにもかからず(甲25)、その後は早期審査に開示されているサイトにおいて全く商品の取り扱いがない(甲7)。なお、早期審査時のサイトにおいて掲載されている画像データなどは申立人の商品を扱っている他のホームページからコピーしたものである(甲26)。なお、「zhiyun」の文字は申立人の過去の取り扱いの標章「智云」のピンイン表記でもある。
本件商標権者は、申立人のブランドの世界的な著名性と顧客吸引力にフリーライドする意図をもって採択されたものといわざるを得ず、申立人に対して本件商標を買い取らせる目的又は申立人の事業活動を阻害する目的(不正な目的)をもって剽窃的に登録出願したものであるから、本件商標権者による当該登録出願は、健全な法感情に照らし条理上許されず、商標法の目的(商標法第1条)にも反し、公正な商標秩序を乱すものであり、商標法第4条第1項第7号によりその登録が取り消されるべきである。
3 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、申立人及びその日本法人であるZHIYUN TECH JAPANの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「zhiyun」に類似するものであり、またその商品はこれらに類似する商品に使用されるものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
なお、「zhiyun」の文字を含んだ標章は、申立人に係る「スタビライザー」商品において著名になっている(甲27?甲40)。
4 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人の著名な商標「ZHIYUN」と相紛らわしいものとして、商品等の出所の混同を生ずるおそれがある。
以上により、本件商標は他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、仮に商標法第4条第1項第10号や同項第15号に該当しなくても、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一の商標であって、不正の目的をもって使用するものに該当し、同法第4条第1項第19号によってその登録が取り消されるべきである。
申立人の商標「zhiyun」は、その商品「スタビライザー」について、本件商標の登録出願日前において既に日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている。
日本国内では、登録出願日前の日付で申立人の「zhiyun」ブランドのスタビライザーを取り上げたインターネット上の記事が多数ある。
上記1で述べたとおり、本件商標権者が、本件商標を自己の業務に係る商品又は役務について使用することなく、転売目的で本件商標を登録した蓋然性が極めて高いこと点から、申立人の業務上の信用が化体された商標「zhiyun」の著名性に便乗し、本件商標を転売で不正な利益を得る目的をもって使用する可能性が非常に高いといえる。本件商標の登録が維持された場合、申立人の業務上の信用が著しく害され、また、需要者の間に当該商標の出所の混同を生じるおそれがある。私益の観点のみならず、公益の観点でも本件商標は登録を認めるべきではない。
よって、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(平成24年5月31日 知財高裁 平成24(行ケ)第10019号)。
そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定商品について現に使用をしていなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、同法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、申立人が提出する全証拠によっても、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定商品に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
なお、申立人は、本件商標は本件商標権者の自己の業務に係る商品について使用する商標ではなく、転売目的で本件商標を登録した蓋然性が極めて高いことから、本件商標の登録は取り消されるべきである旨主張し、本件商標権者等が所有している登録商標の転売に関する情報(甲9?甲23)を提出しているが、先に述べたとおり、商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」として登録を受けられる商標は、現に使用している商標だけでなく、使用する意思があり、かつ、近い将来において使用する予定のある商標も含まれるものと解すべきであるところ、「コンピュータ、その周辺機器・関連機器及びそのソフトウェアの開発、設計、製造、販売」等を業とする本件商標権者(甲1)が、該商品及びそれと何ら関係のないものともいえない指定商品について、本件商標に係る登録出願をして登録を受けているものであり、かつ、本件商標が上記転売情報に掲載されているといったような事実も見いだせないから、申立人の主張及びそれに係る証拠のみによっては、近い将来において、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用する意思がないことまでを具体的に裏付けるものということはできない。
2 引用商標の周知性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、「ZHIYUN」の文字からなる引用商標が、スマートフォン用、カメラ用のスタビライザーに使用されていることは認められる(甲30?甲37)。
しかしながら、当該商品の我が国及び外国における売上高、販売量などの販売実績及び広告宣伝の回数や宣伝広告費の額など、周知・著名性を数量的に判断し得る具体的な証拠は提出されていない。
また、申立人が日本において販売している商品に関する情報(甲32?甲34)は、その商品掲載日が本件商標の登録審決後のものや不明なものであり、申立人の日本における正規代理店での紹介記事(甲35)は、その掲載日が不明であり、申立人の標章「ZHIYUN」の「映像のプロおすすめジンバル」調査一位の記事(甲36)及び日本のリサーチ機構による申立人のジンバルブランド力調査結果でNo.1の記事(甲37)は、本件商標の登録審決後のものであり、申立人の日本展示会参加関連情報(甲38)は、添付された写真の撮影日、撮影者、撮影場所等が不明であって、外国語で作成された書面は、訳文の提出がないため、その詳細な内容が不明である。
さらに、申立人の「zhiyun」ブランドのスタビライザーを取り上げる各ウェブサイトの記事にしても、そのアクセス数などは不明である。
そして、申立人が、「Zhiyun」の文字又は「ZHIYUN」の文字からなる標章及び標章の構成中に「ZHIYUN」の文字を含む標章を、世界各国で登録又は登録出願(甲40)をしているとしても、該事実は、引用商標の周知性を直接的に裏付けるものではない。
以上のことを総合的に勘案すると、申立人提出の証拠によっては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「zhiyun」の文字からなり、引用商標は、前記第2のとおり、「ZHIYUN」の文字からなるところ、両者は、外観において小文字と大文字の相違はあるが、そのつづりを同じくするものであるから、両者から生じる称呼及び観念に異なるところはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある類似の商標と認められ、本件商標の指定商品は、申立人が引用商標を使用する「スタビライザー」を含むものである。
しかしながら、引用商標は、上記2のとおり、申立人の業務に係る商品「スタビライザー」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記3のとおり、本件商標は、引用商標と類似するものであり、また、その指定商品も引用商標の使用に係る商品「スタビライザー」を含むものである。
しかしながら、上記2のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品「スタビライザー」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものであるから、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、申立人を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そうすると、引用商標は、上記2のとおり、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号所定の他の要件を判断するまでもなく、同号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10349号)。
これを本件についてみると、本件商標は、前記第1のとおり、「zhiyun」の文字を横書きしてなるものであるから、前記(1)に該当しないことは明らかであり、(2)ないし(5)に該当するものとすべき事情も見あたらない。
申立人は、「本件商標の出願人は、申立人のブランドの世界的な著名性と顧客吸引力にフリーライドする意図をもって採択されたものといわざるを得ず、申立人に対して本件商標を買い取らせる目的又は申立人の事業活動を阻害する目的(不正な目的)をもって剽窃的に出願したものである」旨を主張している。
しかしながら、引用商標は、上記2に記載のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものということができず、申立人が提出した全証拠を勘案しても、本件商標権者が引用商標に化体した業務上の信用を利用して不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認め得るような具体的事情は見いだすことができない。
その他、本件商標が公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきでものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2021-05-31 
出願番号 商願2018-120610(T2018-120610) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W09)
T 1 651・ 22- Y (W09)
T 1 651・ 271- Y (W09)
T 1 651・ 18- Y (W09)
T 1 651・ 25- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 文華小林 裕子吉沢 恵美子 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 豊田 純一
小松 里美
登録日 2020-06-03 
登録番号 商標登録第6256358号(T6256358) 
権利者 WES株式会社
商標の称呼 ジーウン、ジュイウン 
代理人 崔 海龍 

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