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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y12
管理番号 1375140 
審判番号 取消2019-300252 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-03-29 
確定日 2021-05-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第5150167号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5150167号商標(以下「本件商標」という。)は、「APOLLO」の文字を太文字で表してなり、平成18年7月21日に登録出願、第12類「自動車用タイヤ・チューブ・フラップ,その他の自動車並びにその商品及び附属品」を指定商品として、同20年7月11日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成31年4月15日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年4月15日から同31年4月14日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べた。
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用をした事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人の答弁に対して、何ら応答していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書及び回答書において、要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。
1 審判事件答弁書の要旨
(1)使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一の商標であること
本件商標は、「APOLLO」の文字を太めの線で表してなるものであり、デザインに多少の特徴は見られるが、文字を表す際の一般的なデザインの範ちゅうに属するものといえ、際立った外観的な特徴はない。
一方、被請求人の使用に係る商標は、「apollo」の文字を太めの線で表したものであり(乙1、乙8、乙10)、これも多少の特徴は見られるが、デザインは一般的になされる通常のデザインの範ちゅうに属するものといえる。
つまり、同じ文字について、本件商標は大文字で表されたものである一方、使用商標は小文字で表されているが、このような商標の相互使用は、「社会通念上同一と認められる商標」の使用として、登録商標の使用に該当する。
この点、社会通念上同一と認められる商標の例として、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」を挙げるが、商標審判便覧では、さらにかかる商標の具体例として、ローマ字の大文字と小文字の相互間の使用(「HI-KE」と「hi-ke」)を挙げる。
本件においても、こうした点は同様であり、「APOLLO」と「apollo」の相互使用は、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」といえるので、後者は前者と「社会通念上同一と認められる商標」ということができる。
(2)本件商標の使用の事実
ア 乙第1号証は、被請求人のウェブサイトにある商品紹介のページであるが、ここでは被請求人が販売する商品の「自動車用タイヤ」(より具体的には「トラクター用タイヤ」)が写真付きで紹介され、ページの左上には、本件商標とは社会通念上同一と認められる商標「apollo」が表示されている。また、タイヤ自体にも、同じ商標「apollo」が付されている。
このタイヤは「AGREX85」というタイプのタイヤで、19種類のサイズが用意されているが、そのうちのひとつに「320/85 R24 AGREX85 TL-E」というサイズの商品がある(以下「本商品」という。)。これが我が国に輸入(「譲渡」)され、販売された事実を以下に証明する。
イ 乙第2号証は、被請求人が本国であるインドから我が国へ本商品を輸出した際に、被請求人が発行した請求書(インボイス)である。左上には「Exporter(輸出人)」として「APOLLO TYRES LTD(アポロ タイヤズ リミテッド。以下「アポロ社」という場合がある。)」と被請求人の名称が記載されている。住所も「PLOT NO.7 SECTOR 32,INSTITUTIONAL AREA GURGAON-122001 INDIA」であり、本件商標で示される日本語表記の「インド ハリヤナ 122 001 グルガオン セクター 32 インスティテューショナル エリア 7 アポロ ハウス」と同じである。英文表記にいう「PLOT NO.7」は「区画番号7」という程度の意味で、日本語表記の「7」と異ならない。また、英文表記には日本語表記にある「ハリヤナ」と「アポロ ハウス」が省略されているが、「ハリヤナ」はインドの州の名前であり、「アポロ ハウス」は建物の名前である。名称と合わせ、その他の表記はいずれも一致しているので、住所も被請求人の住所を表すことに疑いはない。ちなみに、乙第7号証の保険証書では、「ハリヤナ」も「アポロ ハウス」も省略されず、それぞれ「HARYANA」「APOLLO HOUSE」と記載されているが、乙第2号証では単に省略しても住所が特定できる部分を省略したにすぎない。
次に、その下には「Consignee(荷受人)」として「MARUNAKA RUBBER INDUSTRY CO.,LTD.」「No.4-11 FUTANO-CHO,MIZUHO-KU,NAGOYA,4670861,JAPAN」との記載があるが、これは「愛知県名古屋市瑞穂区二野町4番11号」に所在の「丸中ゴム工業株式会社」(以下「丸中ゴム工業」という場合がある。)のことである(乙3)。
また、「Invoice No.& Date(請求書番号及び日付)」の項には、「OTH/C/EXP/17/000190」という請求書番号とともに、「15.05.2017」との記載があり、この書類が2017年5月15日に発行されたものであることを示す。その下の「Buyer’s Order No.& Date(購入者の注文番号&日付)」には「07.03.2017」の日付が見え、この請求書が約2ヶ月前の注文(申込)に応じて発行されたものであることが分かる。
そして、「Description of Goods(商品説明)」の欄には、「206PCS APOLLO BRAND TYRES ONLY(APOLLOブランドのタイヤのみ206個)」との記載があり、その下の「SIZE DESCRIPTION(サイズ説明)」の項には、本商品に対応する「320/85 R24 AGREX85 TL-E」の記載も見える。本商品の「Qty(quantity数量)」は合計206個のうちの126個、請求額は合計「20,921.95」米ドルのうちの「23,189.04」米ドルである。
これより、本商品については、2017年5月15日に、被請求人から我が国の丸中ゴム工業に向け、126個販売する契約が締結されたことが分かる。
ウ 乙第4号証は、本商品の運送を行ったNIPPON YUSEN KAISHA(日本郵船株式会社)が発行した船荷証券である。
上記同様、「SHIPPER/EXPORTER(荷送人/輸出人)」には被請求人である「APOLLO TYRES LIMITED(アポロ タイヤズ リミテッド)」が、「CONSIGNEE(荷受人)」及び「NOTIFY PARTY(着荷通知先)」には「MARUNAKA RUBBER INDUSTRY CO.,LTD.(丸中ゴム工業株式会社)」が記載されている。
運送を行う際の「CNTR.NOS.(コンテナ番号)」は「NYKU4335758」で、「SEAL NOS.(シール(封印)番号)」は「IN3484931」である。
「DESCRIPTION OF GOODS(商品説明)」の欄には、「206 PIECES IN TOTAL(合計206個)」「APOLLO BRAND TYRES ONLY(アポロブランドのタイヤのみ)」と記載され、乙第2号証に対応している。
「DATE CARGO RECEIVED(積荷の受入日)」は「15 MAY 2017(2017年5月15日)」であり、売買契約が成立して乙第2号証の請求書が発行され次第、直ちに運送が手配された。実際の「DATE LADEN ON BOARD(積荷日)」は「19 MAY 2017(2017年5月19日)」である。
エ 乙第5号証は、NIPPON YUSEN KAISHA(日本郵船株式会社)が提供する積荷の追跡システムにおける記録である。
前記のコンテナ番号「NYKU4335758」とシール番号「IN3484931」(乙4)の追跡記録(予定含む)によれば、2017年5月15日にインドのコーチ(COCHIN)港に運び込まれた(リスト中No.2)。本商品に係るコンテナは、5月19日に荷積み(同No.3)され、この日は乙第4号証と整合する。次いで、5月25日にスリランカのコロンボ(COLOMBO)港で(同No.9)、また6月8日にベトナムのカイメップ(CAI MEP)港で(同No.14)、本商品は順次別の船に積み替えられた後、6月16日に我が国の名古屋港に到着した(同No.16)。
そして、同日中に荷揚げされたコンテナは、荷受人に向けて国内ターミナルから出発し(同No.19)、その翌日の6月17日に、空のコンテナが荷受人より戻された(同No.20)。
こうした流れから、本商品は、被請求人の本国であるインドから、輸入者/購入者である丸中ゴム工業所在の名古屋ヘコンテナ船で運ばれ、そこで同社に譲渡された後、空いたコンテナが船会社に戻されたことが分かる。
オ 乙第6号証は、本商品に関するCERTIFICATE OF ORIGIN(原産地証明書)である。
この書類は、2011年に我が国とインドとの間で締結されたCOMPREHENSIVE ECONOMIC PARTNERSHIP AGREEMENT BETWEEN THE REPUBLIC OF INDIA AND JAPAN(CEPA:日本国とインド共和国との間の包括的経済連携協定)に基づいて発行されるもので、我が国への輸入申告の際に必要となるものである。ちなみに、同協定によれば、鉱工業品は基本的に我が国で関税がかからない。
内容として、「Exporter(輸出者)」に被請求人「APOLLO TYRES LTD」が、「Importer(輸入者)」に「MARUNAKA RUBBER INDUSTRY CO.,LTD.(丸中ゴム工業株式会社)」が記載されていることは、乙第2号証及び乙第4号証の各書類と同様である。「Transport details(運送の詳細)」には、「BY SEA:COCHIN PORT INDIA TO NAGOYA JAPAN(海運:インドコーチ港から日本国NAGOYA)」と記載され、これは乙第5号証に示す輸入経路を示す。
「Item Number(商品数)」の欄には、「206 PCS CONTAINING APOLLO BRAND TYRES ONLY(206個 APOLLOプランドのタイヤのみ)」との記載があり、これも乙第2号証及び乙第4号証に示される商品及び個数と同じである。また、「Invoice number(請求書番号)」には、「OTC/C/EXP/17/000190」と記載されているが、この番号は乙第2号証の請求書番号に一致している。
発行の日付は、16 MAY 2017(2017年5月16日)であり、これは乙第5号証に照らせば、本商品がインドの港に運び込まれてから荷積みされるまでの間(5月15日?19日)であるから、その間に書類を含め、輸出の準備が整えられていたことになる。
力 乙第7号証は、本商品に掛けられた損害保険に係る保険証書である。
「Insured Name(被保険者名)」が被請求人「APOLLO TYRES LIMITED」であること、「Voyage Details(航海詳細)」の欄の「Invoice/PO No.(請求書/発注書番号)」が「OTC/C/EXP/17/000190」であること、「Subject Matter Insured(保険の目的物)」が「206 PCS APOLLO BRAND TYRES ONLY(APOLLOブランドのタイヤのみ206個)」であること、「Consignee Name(荷受人名)」が「MARUNAKA RUBBER INDUSTRY CO.,LTD.(丸中ゴム工業株式会社)」であることは、いずれも前記乙第2号証及び乙第4号証ないし乙第6号証の各書類に対応している。
こうした保険証書の記載が、本商品の輸出そのものに係る前記書類の記載内容と一致していることは、実際に本商品が輸出された事実を裏付けるものである。
キ このように、本件商標権者である被請求人は、本件審判請求前3年以内である2017年5月15日から同年6月17日までの一連の取引において、本件商標の指定商品「自動車用タイヤ」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標「apollo」を付し、これを日本国内において丸中ゴム工業に「譲渡」(商標法第2条第3項第2号)したものである。
ク また、これ以外にも、本件商標は我が国で使用されている事実がある。
このうち、乙第8号証は、本件商標が付された「自動車用タイヤ」の我が国における販売が紹介されている新聞記事である。
ここでは、「インドのタイヤメーカーapollo社」すなわち被請求人の我が国における販売代理店である株式会社イベロジャパン(以下「イベロジャパン社」という場合がある。)が、本商品と同じ「AGREX85」というタイプのタイヤの販売を行っていることが紹介されている。記事の掲載は、本件審判請求前3年以内の日付である2017年2月14日付で、販売代理店は通常使用権者の地位にある者である。したがって、本件商標は、ここでも要証期間内に、我が国で通常使用権者により、その指定商品について使用(「譲渡」)されていたものといえる。
なお、こうした商標の使用は、被請求人自身によるものとも評価できる。「商標権者等が商品に付した商標は、その商品が転々流通した後においても、当該商標に手が加えられない限り、社会通念上は、当初、商品に商標を付した者による商標の使用であると解される」(知財高裁平成25年9月25日判決平成25年(行ケ)第10032号)(乙9)とされるように、タイヤの側面に付された商標「apollo」は、乙第1号証にも見るとおり被請求人が付したものといえ、それが我が国に流通している段階においても、記事の写真に見るように手が加えられた形跡はないので、ここにいう商品の販売(譲渡)は被請求人自身によるものともいえる。
加えて、乙第10号証は、2017年を含め、被請求人が我が国で配布した本商品を含むカタログである。カタログ中の「AGREX85」というのが本商品であり、ここでは乙第1号証や乙第8号証と同じ写真が掲載され、本商品が紹介されている。こうしたカタログの配布は、本商品に関する「広告」あるいは「取引書類」に本件商標を付して「頒布」(商標法第2条第3項第8号)する行為にあたる。
(3)まとめ
以上の証拠及び理由により、本件商標は本件審判請求前3年以内に、被請求人により、我が国においてその指定商品ついて使用されていることは明らかである。
また、使用されている商標の態様も、本件商標と社会通念上同一と認められるものである。
したがって、本件審判の請求は成り立たない。
2 審尋回答書の要旨
(1)審尋の暫定的な見解に関する意見
ア 審尋の暫定的な見解(1)のうち、被請求人の商品紹介ウェブサイト(乙1)が、被請求人のウェブサイトであることを確認し得る記載がないとの点については、今般あらたに同ウェブサイトの連絡先に関するページ(乙13)を提出する。
ここには被請求人の名称「Apollo Tyres Limited」(アポロ タイヤズ リミテッド)及び住所「7 Institutional Area,Sector 31-Gourgaon 122001,India」(インド 12001 グルガオン セクター32 インスティテューショナル エリア7)が掲載されている。本件商標に係る被請求人の住所のうち、インドの州の名前である「ハリヤナ」と、建物の名前である「アポロ ハウス」は省略されているのみで、これが被請求人の住所と同一であることは答弁書にも述べるとおりである。
乙第1号証のトップレベルドメインが「apollotyres.com」で乙第13号証と同じであるように、これらは印刷の日時が異なるのみで、今も昔も同じ被請求人のウェブサイトである。また、乙第2号証、乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証等に示される「APOLLO」ブランドのタイヤ「AGREX85」が、時期的にも遠くない乙第1号証で紹介される商品と考えて不自然ではなく、要証期間内に流通していた商品は乙第1号証で示される商品を指す。さらに、2017年2月時点における本商品の写真(乙8)と、乙第1号証に掲載されるものが同じであるので、この間本商品には変更がないことが分かり、上記乙第2号証等に言及される商品が本商品であることに間違いはない。
なお、タイヤの画像に「apollo」の文字が確認できないとされるが、乙第1号証の原本によれば明確であるので、必要の節にはこれを示す準備がある。また、念のため、タイャの拡大画像を乙第14号証として提出する。これは、乙第1号証と同じページで現在掲載されているものであるが、ここの商品写真をクリックすると拡大写真が表示され、「apollo」の文字も確認しやすいと思われる。
イ 次に、同見解(2)では、丸中ゴム工業が本商品を要証期間内に譲渡し、引き渡したことを確認できないとされるが、乙第2号証等に示す契約に基づき、丸中ゴム工業に本商品の移転がなされれば、すなわち「譲渡」がなされれば商標権者による本件商標の使用といえる。
他方、丸中ゴム工業は、事業として各種タイヤを取り扱っており(乙15)、個人の消費者ではないので、同社が輸入したタイヤをその後我が国で販売(「譲渡」、「引渡し」)することは当然といえる。また、乙第2号証等の契約に基づき輸入しているのであり、我が国における通常使用権者といえるから、この者が「輸入」(商標法第2条第3項第2号)すれば商標の使用にあたる。
ウ さらに、同見解(3)では、乙第8号証の記事中の「apollo社」が本件商標権者(被請求人)であることを示す証拠がないとされるが、これを被請求人以外であると考えることは不自然である。乙第8号証の記事では、「インド」「タイヤメーカー」「apollo社」「AGREX85」という語とともに、商品の写真が掲載されている。そして、インドのタイヤメーカーでAGREX85という写真にあるタイヤを扱っているapollo社といえば、まさに被請求人であり、四重五重に記載事項が一致する被請求人が、ここでいうapollo社とは異なるというのは明らかに不自然である。
また、記事中のイベロジャパン社と被請求人との関係を証明する証拠の提出がないとされるが、「世界各国から注目を集めている」(乙8)とされるように、世界的に幅広く展開される商品にあって、すべての当事者の関係を明らかにすることは、必ずしも現実的でない。イベロジャパン社が扱うタイヤも、インドのタイヤメーカーのapollo社のものであることが客観的に紹介されているのであり、日本国内の販売代理店とされているのだから、同社は決して無関係の第三者などではなく、通常使用権者の地位にある者である。
ちなみに、イベロジャパン社が要証期間内に我が国で本商品の販売をおこなっていることは別の媒体においても記事にされている。乙第16号証は、平成28年(2016年)7月18日発行の「農経しんぽう」という新聞記事のウェブサイト掲載版であるが、ここでも同社がインドのタイヤメーカー・アポロ社製のタイヤ「AGREX85」、すなわち被請求人の製造販売に係る本商品の発売を行っていることが紹介されている。
(2)本件商標の使用の事実
以上について、まとめると、本件商標と社会通念上同一の商標が付された被請求人ウェブサイトに掲載の本件商標の指定商品「自動車用タイヤ」(乙1、乙13、乙14)は、要証期間内に被請求人により丸中ゴム工業に「譲渡」され、また同社により「輸入」された(乙2、乙4?乙7)。
加えて、上記本商品は、通常使用権者の地位にあるイベロジャパン社により、要証期間内に我が国で「譲渡」され、同様に被請求人によって「譲渡」された(乙8、乙9、乙16)。あるいは、両者により「広告」に本件商標を付したものが「展示」され、若しくはこれらを内容とする情報に本件商標を付して「電磁的方法により提供」(商標法第2条第3項第8号)された。
なお、イベロジャパン社による本商品の流通は、丸中ゴム工業による本商品の流通があったことを理解させ、同様に被請求人と丸中ゴム工業との間における取引過程が、イベロジャパン社との間にあったことを理解させる。本商品は、現在においても我が国で販売されているところであり(乙17)、引き続き一定量の取引がなされる商品となっている。
これより、本件商標の要証期間内における我が国での指定商品についての使用の事実は明らかといえる。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人の提出した証拠及びその主張によれば、次のとおりである。
ア 乙第13号証は、トップレベルドメインが、「apollotyres.com」のウェブページであり、当該ウェブページの左上部に、「apollo/TYRES」の表題、その下に連絡先として「Apollo Tyres Limited」(アポロ タイヤズ リミテッド)及び住所「7 Institutional Area Sector 32-Gourgaon 122001,India」(インド 12001 グルガオン セクター32 インスティテューショナル エリア7)等の記載がある。
イ 乙第14号証は、被請求人によれば、乙第13号証と同様に、トップレベルドメインが、「apollotyres.com」で、2020年(令和2年)7月18日に印刷した被請求人の商品紹介のウェブページの印刷物である。1葉目には、左上部に、「apollo/TYRES」の表題があり、その下に、「AGREX85」、トラクター用タイヤの画像及びタイヤサイズを表す「320/85 R24 AGREX85 TL-E」等の記載がある。
また、2葉目は、上記タイヤの拡大画像であり、当該タイヤには、「apollo」、「AGREX85」の文字が刻印されている。
ウ 乙第8号証は、週刊「農機新聞」のウェブページの記事であるが、当該ウェブページには、「イベロジャパン、apolloタイヤの農機・建機用ラインナップ」の項に、「農機新聞2017年(平成29年)2月14日付け」の表題の下、「(株)イベロジャパンはインドのタイヤメーカーapollo社の日本国内の販売代理店。・・・。同社では、農業分野に・・・ラジアルタイヤ『AGREX85』(写真)・・・をラインナップ。日本市場においても市場が拡大することが予想されており、今後さらにタイヤのラインナップを揃えていく予定。」と記載されているとともに、不鮮明ながら「apollo」の文字が刻印された「AGREX85」タイプのタイヤ画像も掲載されている。
そして、当該タイヤの画像は、乙第14号証のタイヤの画像と酷似するものである。
エ 乙第16号証は、平成28年7月18日発行の「農経しんぽう」第3137号のウェブページの記事であり、この記事中の「インドのアポロ社タイヤを発売/イベロジャパン」の項に、「イベロジャパンは、1996年の創業時から毎年約8000台の中古機を世界59カ国の顧客と取引を行う中古農業機械・建設機械の総合商社で、独自の販売と仕入れのネットワークを持つ。同社が取り扱うインドのタイヤメーカー・アポロ社製のタイヤ・・・『AGREX85』・・・は、高品質・低価格により、世界各国から注目。」と記載されている。
(2)上記(1)からすれば、次の事実を認めることができる。
本件商標権者であるアポロ社は、「apollo」の文字(以下「使用商標」という。)を刻印した「AGREX85」というタイプのトラクター用タイヤ(以下「使用商品」という。)を2020年(令和2年)7月18日には、自社のウェブサイトにおいて掲載している。
そして、上記使用商標を刻印した使用商品は、2016年(平成28年)7月頃及び2017年(平成29年)2月頃に、本件商標権者の日本国内の販売代理店であるイベロジャパン社を通して販売されていたと推認できる。
2 判断
(1)使用商標
本件商標は、上記第1のとおり、「APOLLO」の文字を太文字で表してなり、使用商標は、「apollo」の文字を太文字で表してなるものであり、両者は、大文字と小文字といった違いはあるものの、欧文字のつづりを同じくするものであるから、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一のものと認められる。
(2)使用商品
使用商品は「トラクター用タイヤ」であって、これは、本件審判の請求に係る指定商品中の「自動車用タイヤ・チューブ・フラップ」の範ちゅうに属する商品である。
(3)使用者
使用商標の使用者であるイベロジャパン社は、上記1(1)ウのとおり、商標権者の国内販売代理店であるから、両者の間には、本件商標を使用することについて、黙示の許諾があったものと推認でき、イベロジャパン社は、本件商標に係る通常使用権者といえる。
(4)使用時期
使用時期は、使用商品を2016年(平成28年)7月頃及び2017年(平成29年)2月頃において販売されていたことから、これらの時期は要証期間といえるため、要証期間に使用されたものである。
(5)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品中の「自動車用タイヤ・チューブ・フラップ」の範ちゅうに含まれる商品「トラクター用タイヤ」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを譲渡した(商標法第2条第3項第2号に該当。)と認められる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者がその請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2020-12-25 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-21 
出願番号 商願2006-68327(T2006-68327) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y12)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小松 里美
齋藤 貴博
登録日 2008-07-11 
登録番号 商標登録第5150167号(T5150167) 
商標の称呼 アポロ 
代理人 伊東 美穂 
代理人 庄司 隆 
代理人 特許業務法人不二商標綜合事務所 
代理人 小谷 武 

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