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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W3235 審判 全部無効 商8条先願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W3235 |
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管理番号 | 1374040 |
審判番号 | 無効2019-890074 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2019-11-29 |
確定日 | 2021-05-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5897738号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5897738号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5897738号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年5月10日に登録出願、第32類「タピオカ入り清涼飲料,タピオカ入り果実飲料」及び第35類「タピオカ入り清涼飲料及びタピオカ入り果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同年10月4日に登録査定、同年11月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第8条第1項に該当するとして引用する登録第5903256号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成28年3月9日に登録出願、第29類「タピオカ入りの乳製品」、第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア,タピオカ入りの菓子,タピオカ,食用タピオカ粉」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同年12月9日に設定登録されたものである。 2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして引用する商標は、別掲3のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)である。 第3 請求人の主張 請求人は、 結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、 証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、加藤靖昭氏(以下「本件の商標権者」という。)が登録出願し登録されているが、請求人は、この登録出願前から本件商標と全く同じ使用商標を使用している(甲3)。 本件の商標権者は、引用商標の商標権者の元取締役であった人物であり、2010年9月1日に取締役に就任し、2014年9月3日に辞任している(甲4)。 すなわち、本件商標は、本件の商標権者が辞任後に、申立人の許可なく登録出願したものであり、 横取りしたものと考えられる。 以上の事実から、請求人の使用商標と全く同じ図案の商標について、登録出願をして商標登録を受けた行為には、不正の目的があり、著しく社会的妥当性を欠くものであるとともに、公正な取引秩序を乱し、公の秩序を害するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきものである。 2 商標法第8条第1項について (1)本件商標と引用商標との類否 本件商標は、上段に「BullPulu」の文字を大きく書し、「B」、「P」、「u」部分が図案化された緑色の英文字と、下段に「TAPIOCA SWEETS」の文字を配した構成からなる。 「BullPulu」の文字は、造語であるが、「TAPIOCA SWEETS」の文字は、 本件商標の指定商品との関係からすると識別力を有しないため、本件商標の要部は、「BullPulu」となる。 これに対して、引用商標は、二重の円環からなり、外側の緑色の円環部分には、内側の円を囲むように白抜きのゴシック体で上段に「BULLPULU」、下段に「TAPIOCA」と表示され、中央部の白色の円内に犬の図柄を配した構成からなる。 「BULLPULU」の文字は、造語であるが、「TAPIOCA」の文字は、引用商標の指定商品との関係からすると識別力を有しないため、引用商標の要部は、「BULLPULU」となる。 以上から両商標の類否について検討する。 本件商標の外観については、 本件商標の要部を構成する文字のうち、「B」、「P」、「u」部分が図案化されているが、緑色の英文字を構成からする外枠部分は太線であるため、「BullPulu」という英文字以外の文字を認識することができない。 一方、 引用商標は、円環外側の緑色部分の上段に白抜きのゴシック体で「BULLPULU」の文字が書されている。 両商標の違いは、大文字と小文字の違いにすぎず、英文字の組み合わせは、全く同じであり、 外観上、類似する。 称呼については、本件商標及び引用商標の要部から、「プルブル」という全く同じ称呼を生じる。 また、タピオカドリンク専門店「BullPulu」は、全国に42店舗あり(甲5)、業界トップに追随する店舗数を誇り、周知度も高い(甲7?11)ことから、本件商標及び引用商標の要部からは、本件商標の指定商品の分野において、タピオカドリンク専門店である「BullPulu」という同一の観念が生じる。 したがって、総合的に判断すると、称呼及び観念が同一であることから、 両商標は類似する。 (2)指定商品間の類似について ア 販売部門の一致 タピオカ飲料を販売する店ではその多くが、本件商標の指定商品である第32類「タピオカ入り清涼飲料,タピオカ入り果実飲料」と引用商標の指定商品である第29類「タピオカ入りの乳製品」及び第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア」 を同じ店で販売している(甲12?20)。 イ 生産部門の一致 タピオカ入りの飲料を販売する店は、 客の注文後に店内で作ったタピオカ入り飲料を提供するのが一般的である(甲12、14)から、生産部門は一致している。 ウ 需要者の一致 昨今、タピオカ入り飲料は、若い女性の間で大人気となっており、メディアにも取り上げられている。このブームは、第3次タピオカブームと呼ばれ、SNSの一つであるインスタグラムの普及とともに、タピオカの黒い真珠のようなインパクトのある見た目が「インスタ映え」するとして若い女性に支持されたものとみられている。 このように、タピオカ入り飲料の需要者の中心は若い女性層であるため、需要者は一致している。 エ 原材料の一致 タピオカ入りの飲料には、材料であるタピオカが使われており、原材料が一致する。 オ 用途の一致 いずれも飲料で食品であるため、両商品の用途は一致する。 カ 上記アないしオからすると、本件商標の指定商品である第32類「タピオカ入り清涼飲料,タピオカ入り果実飲料」と引用商標の指定商品である第29類「タピオカ入りの乳製品」及び第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア」は、類似する商品である。 (3)指定商品と小売等役務間の類似について 上述したように、本件商標の指定商品である第32類「タピオカ入り清涼飲料,タピオカ入り果実飲料」と引用商標の指定商品である第29類「タピオカ入りの乳製品」及び第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア」は、類似する。 そうすると、本件商標の指定商品である第32類「タピオカ入り清涼飲料,タピオカ入り果実飲料」と同じ商品についての小売等役務である第35類「タピオカ入り清涼飲料及びタピオカ入り果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」も、引用商標の指定商品である第29類「タピオカ入りの乳製品」及び第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア,タピオカ入りの菓子」と類似する。 (4)以上により、本件商標と引用商標は、類似し、両商標の指定商品及び指定役務は類似する。また、引用商標が先願で、本件商標が後願であり、本件商標は、引用商標より先に登録されている。 したがって、本件商標は、商標法第8条第1項に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 商標法第8条第1項該当性について (1)本件商標について 本件商標は、 別掲1のとおり、上段に「B」、「u」、「P」部分が図案化された緑色の「BullPulu」の欧文字を大きく書し、その下段に小さく「TAPIOCA SWEETS」の欧文字を配した構成からなるものである。 そして、本件商標の上段の欧文字と下段の文字部分は、図案化の有無及び大きさにおいて相違し、視覚的に分離して看取されるものであり、かつ、その構成中、「BullPulu」の文字は、辞書等に載録がない語であって、「TAPIOCA SWEETS」の文字は、本件商標の指定商品及び指定役務との関係からすると、「タピオカのスイーツ(甘いもの)」程の意味合いを認識し、自他商品及び自他役務の識別力を有しないか、極めて弱いものといえるから、「BullPulu」の文字部分が独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るとみるのが相当である。 そうすると、本件商標からは、上段に大きく表された「BullPulu」の文字に相応して、「ブルプル」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。 (2)引用商標について 引用商標は、別掲2のとおり、緑色の二重円環内において、左右に白抜きで丸印を配し、さらに白抜きで上段に「BULLPULU」の欧文字を、下段に「TAPIOCA」の欧文字を円弧に沿って書してなり、また、中央円内には、犬の図形とその影を左側に配した構成からなるところ、中央の図形部分と欧文字部分は、それぞれが視覚上、分離、独立して認識、看取されるものである。 そうすると、引用商標は、その構成中、「BULLPULU」及び「TAPIOCA」の文字部分が、中央の図形部分から分離して観察され得るものである。 そして、引用商標は、中央の図形部分からは、特定の称呼及び観念を生じるものではなく、また、「BULLPULU」の文字部分は、辞書等に載録がない語であって、さらに、「TAPIOCA」の文字は、引用商標の指定商品及び指定役務との関係において、商品の原材料又は役務の提供に供する「タピオカ」を表すものであるから、 自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いといえるものであるから、「BULLPULU」の文字部分が 独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るとみるのが相当である。 してみれば、引用商標は、その構成中の「BULLPULU」の文字に相応して「ブルプル」の称呼をも生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、上記(1)及び(2)のとおりであって、全体の外観においては相違するものの、両者の要部である「BullPulu」と「BULLPULU」とは、大文字と小文字に差異を有するが、文字つづりを共通にするものであるから、外観上似通った印象を与えるというべきである。 また、本件商標及び引用商標は、その要部から、「プルブル」の同一の称呼を生じ、特定の観念は生じない。 したがって、以上を総合的に判断すると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観において似通った印象を与え、称呼を共通にする類似の商標といえる。 (4)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品との類似について ア 販売部門の一致 タピオカ飲料を販売する店では、大粒タピオカや黒糖タピオカ入りのほうじ茶ラテ、抹茶ミルク、フルーツローズヒップ茶等の各種飲料(甲14)や、オレンジベース、コーヒーベース、ミルクベース、紅茶ベース、炭酸ベース等のタピオカドリンクをメニューに掲載しており(甲16)、清涼飲料、果実飲料、乳飲料、コーヒー等が同一店舗で販売されている。 イ 生産部門の一致 タピオカ入りの飲料を販売する店は、「選べる4つのベースティー」(甲12)や、お茶の甘さ、大粒タピオカ又は黒糖タピオカ等を選ぶ注文方法(甲14)により、客の注文後に店内で作った各種のタピオカ入りの飲料を販売するのが一般的であるから、生産部門は一致している。 ウ 需要者の一致 昨今、タピオカ入り飲料は、若い女性の間で大人気となっており、メディアにも取り上げられており、タピオカ入り飲料の需要者の中心は若い女性層であるため、需要者は一致している。 エ 原材料・用途の一致 タピオカ入りの飲料には、材料であるタピオカが使われており、原材料が一致し、いずれも飲料であるため、両商品の用途は一致する。 オ 上記アないしエによると、タピオカ入りの各種飲料は、販売場所、生産部門、需要者、原材料及び用途が一致しているといえるから、本件商標の指定商品及び指定役務である第32類「タピオカ入り清涼飲料,タピオカ入り果実飲料」及びこれらと同じ商品についての小売等役務である第35類「タピオカ入り清涼飲料及びタピオカ入り果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標の指定商品である第29類「タピオカ入りの乳製品」及び第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア」とは、類似する商品及び役務というべきである。 (5)本件商標と引用商標の商標登録出願日について 本件商標は、上記第1のとおり、平成28年5月10日に登録出願されたものであり、引用商標は、上記第2のとおり、平成28年3月9日に登録出願されたものであるから、本件商標よりも引用商標が先願と認められる。 (6)本件商標及び引用商標に係る商標登録出願人について 引用商標に係る商標登録出願人と本件商標に係る商標登録出願人(本件商標権者)とは、同一人ではない。 (7)小括 以上のとおりであるから、同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なった日に二以上の商標登録出願があったときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができるところ、本件商標は、最先の商標登録出願人でない者(本件商標権者)が商標登録を受けたものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に違反してされたものである。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について 請求人は、本件商標権者が、引用商標の商標権者の元取締役であって、会社辞任後に、請求人の許可なく使用商標と同一の商標を登録出願し、横取りしたものと考えられるから、登録出願をして商標登録を受けた行為には、不正の目的があり、著しく社会的妥当性を欠くものであるとともに、公正な取引秩序を乱し、公の秩序を害するものである旨主張している。 そこで、甲第3号証をみると、使用商標は、本件商標と同一の構成態様からなるものであって、各店舗において2014年12月2日以降に使用されていると認められる。 しかしながら、本件商標権者は、2014年9月3日に辞任している(甲4)ところ、 使用商標は、その3か月程を経てから使用されているものであるから、本件商標権者が就任中に使用商標を知り得て横取りしたとする確認ができない。 また、本件商標権者が請求人の元取締役であったことをもって、不正の目的があるということはできないし、請求人主張を裏付ける具体的な証拠の提出もない。 さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見当たらない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しないとしても、その登録は、同法第8条第1項に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標:色彩については原本参照。) 別掲2(引用商標:色彩については原本参照。) 別掲3(使用商標:色彩については原本参照。) |
審理終結日 | 2021-03-04 |
結審通知日 | 2021-03-09 |
審決日 | 2021-03-25 |
出願番号 | 商願2016-50692(T2016-50692) |
審決分類 |
T
1
11・
4-
Z
(W3235)
T 1 11・ 22- Z (W3235) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 森山 啓 |
登録日 | 2016-11-18 |
登録番号 | 商標登録第5897738号(T5897738) |
商標の称呼 | ブルプルタピオカスイーツ、ブルプルタピオカスウイーツ、ブルプル、タピオカスイーツ、タピオカスウイーツ |
代理人 | 駒津 啓佑 |