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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z42
管理番号 1373892 
審判番号 取消2018-300743 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-09-26 
確定日 2021-03-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4434146号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4434146号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成からなり,平成11年5月25日に登録出願,第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,美容,理容,入浴施設の提供,写真の撮影,気象情報の提供,求人情報の提供,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,一般廃棄物の収集及び分別,産業廃棄物の収集及び分別,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,通訳,翻訳,施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,編み機の貸与,ミシンの貸与,衣服の貸与,植木の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,漁業用機械器具の貸与,鉱山機械器具の貸与,計測器の貸与,コンバインの貸与,祭壇の貸与,自動販売機の貸与,芝刈機の貸与,火災報知機の貸与,消火器の貸与,タオルの貸与,暖冷房装置の貸与,超音波診断装置の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,凸版印刷機の貸与,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,布団の貸与,理化学機械器具の貸与,ルームクーラーの貸与」を指定役務として,同12年10月5日に登録査定,同年11月17日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成30年10月5日である。
なお,本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成27年10月5日から同30年10月4日までを,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定役務中,第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」についての登録を取り消す,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,審判請求書において,その理由を要旨次のように述べ,甲第1号証を提出した。
本件商標は,その指定役務中,第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
なお,請求人は,被請求人提出の審判事件答弁書及び令和元年9月13日付け審判事件回答書に対して,何ら弁駁していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を審判事件答弁書及び審判事件回答書において要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人について
被請求人は,商品セールスコンセプトの企画,商品パッケージ・商品ブランドWEB・集客イベント・販売促進物・広告の企画制作に関する事業を展開するものであり,国内外の多くのクライアントから依頼を受け,多くの実績を残している。
(2)被請求人の提供する役務について
被請求人は,クライアントからの依頼に応じて,クライアント製品のプロモーションイベントの企画・立案・制作を委託され,その企画の一環としてクライアント製品に関連するアプリケーションプログラムの設計・作成・保守(以下「本件役務」という。)を行うものである。
当該アプリケーションプログラムは,デジタルサイネージ上で起動するものであり,利用者がデジタルサイネージ上の画面に接触することで動作し,コンテンツが提供されるものである(乙1)。
本件役務は,イベントの企画の一環としてではあるものの,本件役務に対応して対価が支払われるものであることから,クライアントに対して独立して商取引の目的として提供され得るものである。
(3)本件商標の使用の実情について
乙第1号証は,被請求人が設計・作成するアプリケーションプログラムの企画コンテ案であるものの,平成28年5月16日付けで作成され,現にクライアントに対して頒布された。
同号証の表紙中央下部には,本件商標の下部に「CORPORATION」の欧文字が小さく表示されているが,当該欧文字は「会社,企業」を表すものとして広く認識,理解され,一般に用いられているものであり,自他役務識別力は無きに等しいものである点にかんがみれば,本件商標に何らの影響を与えるものではない。
そのため,同号証の表紙中央下部には,本件商標と社会通念上同一の商標が表示されているものといわなければならない。また,同号証の第1頁ないし第3頁の右下部には,いずれも本件商標が表示されている。
被請求人がクライアントに対して,このアプリケーションプログラムを含む成果物を納品する際に発行する納品書(乙2)の「項目」欄中には「3.アプリケーション開発関係」の記載があり,その右横の「金額」欄に対価が記載されている(具体的な金額は公表を差し控える。)。この記載は,被請求人がクライアントに対してアプリケーションプログラムの設計・作成を行っており,クライアントから被請求人に対して本件役務の対価が支払われていることを端的に示すものであり,納品書の右上部には,本件商標が表示されている。
なお,同号証は,平成28年(2016年)6月20日に作成され,クライアントに納品されたものであり,これに対応する「請求書」(乙3)は,作成日付,件名,項目,金額共に納品書(乙2)と完全に一致するものであり,同様に右上部に本件商標が表示されている。
これらの書証(乙1?乙3)は,いずれも共通して「シニアエコイベント」/「なつかしい楽しい家事 今昔物語」のタイトル(件名)が表示されていることから,一連の取引書類であることが理解,把握可能である。
さらに,「イベント会場設営・アプリケーション簡単マニュアル」(乙4)は,イベントの実施に先立ってクライアントに対して頒布するものであり,設営のイメージや手順その他の必要な事項を事前に伝えることを目的とするものである。
とりわけ,乙第4号証の第5頁ないし第10頁には,クライアントからの依頼に応じて被請求人が設計・作成を行ったアプリケーションプログラムの操作マニュアルが掲載されており,表紙も含めた全頁にわたって本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている。
なお,乙第4号証は,平成28年(2016年)6月23日に作成され,クライアントに納品されたものである。
また,被請求人は,アプリケーションプログラムの納品後も不具合が発生する場合には,プログラム変更等のアプリケーションプログラムの保守を行う場合もある。
乙第5号証は,システムやプログラムにメンテナンスを必要とする不具合が発生した場合に,被請求人がクライアントに対して納品する報告書であり,同号証の中央下部には,本件商標と社会通念上同一の商標が表示されており,第2頁ないし第9頁右下部には本件商標が表示されている。乙第5号証の第8頁中央下部の「設問の途中でも,タッチしたら即反応するようにプログラムを変更」や「A・Bの文字の部分でも,タッチしたら反応するようにプログラムを変更」の記載からも,被請求人が,アプリケーションプログラムの保守を行っていることが容易に理解できる。
なお,乙第5号証は,平成28年(2016年)7月25日に作成され,クライアントに納品されたものである。
被請求人が管理運営するウェブサイトの左上部には,本件商標が常に表示されている(乙6)。このウェブサイトを閲覧した者が,被請求人に対して,アプリケーションソフトウェアやウェブサイトの構築などの依頼をすることが多くある。そのため,本件商標は,自他役務識別力や出所識別標識として十分に機能し,その結果被請求人の業務上の信用やグッドウィルを表彰するものである。
(4)被請求人が要証期間内に本件指定役務について本件商標を使用していることについて
乙第1号証ないし乙第6号証のいずれの書証も,要証期間内に作成,頒布されたものである。
さらに,乙第1号証ないし乙第6号証は,被請求人が設計・作成・保守を行うアプリケーションプログラムに関するものであり,この「アプリケーションプログラム」は「電子計算機用プログラム」に含まれることから,被請求人は,第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」の提供を行っている。また,乙第1号証ないし乙第6号証のいずれの書証においても本件商標,又は,本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている。
加えて,被請求人は,乙第1号証ないし乙第5号証では,本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用(商標法第2条第3項第3号,同第4号及び同第8号)しており,乙第6号証では,ウェブサイト上で本件商標を表示していることから,本件商標を使用(商標法第2条第3項第7号)している。
したがって,被請求人は,要証期間内において,本件役務について本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることは明らかである。
2 回答書における主張
(1)被請求人クライアント名称について
ア 乙第1号証ないし乙第3号証に記載されている被請求人のクライアント名称は,「花王カスタマーマーケティング株式会社」とある一方で,乙第4号証及び乙第5号証に記載されている名称は「花王グループカスタマーマーケティング株式会社」と記載されている。
この点については,親会社である花王株式会社が,花王グループカスタマーマーケティング株式会社準備会社に対して,花王カスタマーマーケティング株式会社を含めた合計3社の株式を吸収分割により承継したものであり,その後,当該準備会社が,「花王グループカスタマーマーケティング株式会社」に商号を変更したという事情が存在する(乙7)。
そのため,乙第1号証ないし乙第3号証記載の「花王カスタマーマーケティング株式会社」と,乙第4号証及び乙第5号証記載の「花王グループカスタマーマーケティング株式会社」とは,実質的に同一法人ということができる(以下「花王グループカスタマーマーケティング株式会社」を「被請求人クライアント」という)。
イ 本件イベントについて
乙第1号証ないし乙第5号証に係る資料は,同一のイベント,すなわち,被請求人クライアントが,被請求人に対して依頼した「シニア向け環境啓発キットコンテンツ なつかしい家事 今昔物語」(以下,「シニアエコイベント『なつかしい楽しい家事今昔物語』」(乙1?乙3),「なつかしい,エコな,家事の今昔物語」及び「シニアエコ『なつかしい,楽しい家事 今昔物語』」(乙4,乙5)を併せて「本件イベント」という。)に係る一連の流れの資料である。
被請求人クライアントが被請求人に対して発行した「デザイン注文書の写し」(乙8)は,被請求人クライアントが本件イベントに用いるデザイン制作の発注を被請求人に対して行った事実を示すものであり,下部の「制作アイテム」欄中の「インタラクティブコンテンツ」に被請求人が制作提供したデジタルサイネージ上で作動するアプリケーションプログラムが含まれる。
さらに,このデザイン注文書(乙8)によりデザイン制作を依頼された被請求人が,デザイン納品時に被請求人クライアントに対して発行した請求書(乙9)は,乙第3号証の黒塗り箇所を除外し金額部分を開示したものである。
この乙第8号証と乙第9号証は,対応関係にあり,このことは,両者における税込合計金額が「7,565,076円」と一致していることからも首肯される。
さらに,被請求人は,被請求人クライアントから物品制作を依頼された際に発行された「製造注文書の写し」(乙10),これと対応する請求書(乙11)及び三菱UFJ銀行が発行する「普通預金通帳の写し」(乙12)を提出する。乙第12号証中の「28-7・15」,すなわち,平成28年7月15日に「カオウカスタマーマーケテ」,すなわち,被請求人クライアントから被請求人に対して「8,586,000円」の振込みがあった事実を示すものであり,当該金額は,乙第9号証の税込合計金額「7,565,076円」と乙第11号証の税込合計金額「1,020,924円」とを合算したものである。
(2)被請求人クライアントが作成した本件イベントに関する「昭和家事キット/環境啓発イベント/活用事例」(乙13)によれば,本件イベントが以下のアないしエの日時,場所において行われていたことを示されている。
ア 平成28年(2016年)6月25日?26日(2日間)
「いとく大館ショッピングモール」
イ 平成28年(2016年)9月28日?10月4日(7日間)
「近鉄百貨店和歌山店5F催事場隣接」
ウ 平成28年(2016年)11月15日(1日間)
「三越百貨店日本橋店7Fギフトセンターイベントスペース」
エ 平成29年(2017年)1月14日?15日(2日間)
「フジ エミフルMASAKI」
乙第13号証には,本件イベントがショッピングモールや百貨店等において開催されていることが示され,さらに,写真画像入りでイベント開催時の詳細が報告されている。
このように,本件イベントは現実に開催され,その開催事実を客観的,かつ,詳細に把握することができる。
(3)本回答書において提出した乙第7号証ないし乙第12号証,並びに,既に提出している乙第1号証ないし乙第5号証のいずれもが要証期間内の日付となっており,これらの乙各号証を時系列に並び替えると以下のアないしコのようになる。
ア 平成28年(2016年)5月16日
被請求人が被請求人クライアントに対して本件イベントの企画提案(乙1)
イ 平成28年(2016年)5月27日
被請求人クライアントが被請求人に対して本件イベントに関するデザイン制作及び物品製作の発注(乙8,乙10)
ウ 平成28年(20116年)6月20日
被請求人が被請求人クライアントに対して本件前記デザイン及び物品を納品及び請求書の発行(乙2,乙3(乙9),乙11)
エ 平成28年(2016年)6月23日
被請求人が本件イベントに関するアプリケーションのマニュアルを作成(乙4)
オ 平成28年(2016年)6月25日,26日
本件イベントの開催(いとく大館ショッピングモール:乙13)
カ 平成28年(2016年)7月15日
被請求人クライアントが被請求人銀行口座に請求金額を振込(乙12)
キ 平成28年(2016年)7月25日
被請求人が本件イベントに関するメンテナンス報告書を作成(乙5)
ク 平成28年(2016年)9月28日?10月4日
本件イベントの開催(近鉄百貨店和歌山店:乙13)
ケ 平成28年(2016年)11月15日
本件イベントの開催(三越百貨店日本橋店:乙13)
コ 平成29年(2017年)1月14日,15日
本件イベントの開催(フジ エミフルMASAKI:乙13)
このように,本件イベントに関する被請求人と被請求人クライアント間における一連の取引は,極めて適正,かつ,合理的なものであり,何ら不自然な点はない。
したがって,被請求人は,要証期間内において,本件指定役務について本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることは明らかである。
(4)結語
以上のとおり,被請求人の提出に係る乙各号証を勘案すれば,本件商標が被請求人によって,要証期間内において,本件指定役務について使用されているものであることが容易に理解できる。そのため,本件商標は,商標法第50条第1項の規定に基づいて,その登録を取り消されるべきものではなく,請求人による審判請求は理由がない。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の証拠の内容
(1)乙第1号証は,被請求人が,花王カスタマーマーケティング株式会社に宛てて作成した企画コンテ案と主張するものであり,表紙の左上には,「花王カスタマーマーケティング株式会社御中」との記載がある。そして,中央の四角枠内には,「シニアエコイベント/『なつかしい楽しい家事 今昔物語』/デジタルサイネージ アプリケーション/企画コンテ案/2016年05月16日」の表示があり,中央下部には,別掲2に示すとおりの構成からなる標章(以下「使用商標1」という。)が表示されている。
また,2葉目ないし4葉目の右下部には,別掲3に示すとおりの構成からなる標章(以下「使用商標2」という。)が表示されている。
(2)乙第2号証は,被請求人が,花王カスタマーマーケティング株式会社に宛てた納品書(写し)と主張するものであり,「納品書」のタイトルの下,左側には,「花王カスタマーマーケティング株式会社 御中」の記載,右側には,「納品日 2016.06.20」の記載があり,その下には,「株式会社マス」の文字が,郵便番号,住所,電話番号,FAX番号,電子メールアドレスと共に表示されており,その左側には,使用商標2が表示されている。さらに,その下には,「下記の通り納品致しました。」との記載があり,件名の欄には「シニアエコイベント」,「『なつかしい楽しい家事 今昔物語』企画・制作の件」の記載,項目の欄には「3.アプリケーション開発関係」の記載,数量の欄には「1式」の記載がある。なお,乙第2号証の金額の欄等,その一部については,マスキングが施されている。
(3)乙第3号証は,被請求人が,花王カスタマーマーケティング株式会社に宛てた請求書(写し)と主張するものであり,「請求書」のタイトルの下,左側には,「花王カスタマーマーケティング株式会社 御中」の記載,右側には,「作成日 2016.06.20」の記載があり,その下には,「株式会社マス」の文字が,郵便番号,住所,電話番号,FAX番号,電子メールアドレスと共に表示されており,その左側には,使用商標2が表示されている。さらに,その下には,「下記の通り御請求申し上げます。」との記載があり,件名の欄には「シニアエコイベント」,「『なつかしい楽しい家事 今昔物語』企画・制作の件」の記載,項目の欄には「3.アプリケーション開発関係」の記載,数量の欄には「1式」の記載がある。
また,乙第3号証の下部には,「会社名」として「株式会社マス」の記載のほか,支払先コード,振込先が記載されている。なお,乙第3号証の金額の欄等については,マスキングが施されている。
(4)乙第4号証は,被請求人が,イベントの実施に先立ってクライアントに対して頒布するものであると主張する「イベント会場設営・アプリケーション 簡単マニュアル」と題する書面であり,表紙には,リボン状の図形内に「なつかしい,エコな,家事の今昔物語」の表示,さらに,最下部には,「花王グループカスタマーマーケティング株式会社/マーケティング部門 MK推進グループ」の記載があり,その右下には,「企画/制作:」の文字の右横に使用商標1が表示されている。
また,第1頁ないし第11頁の右下部には,いずれも使用商標1が表示されており,表紙及び全頁の最下部には,「2016.06.23作成」の表示がある。
そして,第5頁ないし第10頁には,「アプリケーションについて-1」ないし「アプリケーションについて-6」のタイトルの下,アプリケーションの立上げ,終了,操作説明,手順,早送り,チャプター再生,トラブル対策等に関する説明が記載されている。
(5)乙第5号証は,被請求人が,システムやプログラムにメンテナンスを必要とする不具合が発生した場合に,クライアントに対して納品する報告書と主張するものであり,表紙の上部には,「花王カスタマーマーケティング株式会社/経営企画部門 環境推進室 御中」の記載があり,中央の四角枠内に「シニアエコ『なつかしい、楽しい家事 今昔物語 タッチしてエコ』キット/第1回イベント開催後の/不具合の対策・プログラム変更等/メンテナンス報告書」のタイトルが表示されており,その下には,使用商標1が表示されている。また,右下部には,小さな四角枠内に,正方形内に斜線を表した図形,「MASS」の文字及び「16.07.25」の表示がある。
また,第1頁ないし第9頁の最上段には,いずれも「なつかしい、エコな、家事の今昔物語 タッチしてエコ 第1回イベント開催後の不具合の解決等」の記載があり,右下部には,使用商標2が表示されている。
そして,第1頁には,「実施日時」として「2016年7月1日?22日」,「実施場所」として「株式会社マス」,「実施目的」として「第1回イベントを実施した際に気が付いた不具合(使い勝手が良くない点)の修正(対策)」等の記載がある。
さらに,第2頁には,「●第1回イベントを実施した際に気が付いた不具合(使い勝手が良くない点)に伴う仕様変更」のタイトルの下,「コンテンツ」の項に,「(1)クイズ→プログラムを変更/1)設問の途中でもタッチしたら即反応するように/2)A・Bの文字部分でも反応するように」の記載があり,第8頁の下部にも,「・クイズのタッチして反応するタイミングとタッチして反応する範囲を変更」の記載の下,「設問の途中でもタッチしたら即反応するようにプログラムを変更」及び「A・Bの文字の部分でも,タッチしたら反応するようにプログラムを変更」の記載がある。
(6)乙第7号証は,平成27年11月19日付けの花王株式会社による「会社分割(簡易吸収分割)に関するお知らせ(花王グループ販売等子会社の再編に関するお知らせ)」と題する書面であり,第1頁には,「花王株式会社の完全子会社である株式会社花王グループカスタマーマーケティング準備会社が,花王株式会社から花王カスタマーマーケティング株式会社,カネボウ化粧品販売株式会社及び花王フィールドマーケティング株式会社の株式を承継する会社分割(吸収分割)を行う」旨及び「会社分割の効力発生日は平成28年1月1日を予定している」旨が記載され,第3頁には,「5.分割後の株式会社花王グループカスタマーマーケティング準備会社(承継会社)の状況」として,「商号を花王グループカスタマーマーケティング株式会社に変更いたします。」との記載がある。
(7)乙第8号証は,被請求人が,被請求人クライアントが被請求人に対して発行した「デザイン注文書の写し」と主張するものであり,右上には,「注文年月日 2016年05月27日(金)」の記載,左上部には,「(株)マス 御中」の記載がある。そして,「デザイン注文書」のタイトルの下,右側には,郵便番号,住所,電話番号等と共に,「(社名)(担当者)」として「花王カスタマーマーケティング株式会社/花王グループカスタマーマーケティング株式会社/マーケティング部門 SPデザイン部」の記載がある。
そして,「納期日」の項には「2016年06月20日(月)」の記載,「品名・件名」の項には「シニア向け環境啓発キットコンテンツ なつかしい家事 今昔物語」の記載,「見積書日付」の項には「2016年05月27日(金)」の記載,「税込み金額(円)」の項には「7,565,076」の記載があり,さらに,下部の注文内容として「インタラクティブコンテンツ なつかしい家事 今昔物語 一式」の記載がある。
(8)乙第9号証は,被請求人が,デザイン注文書(乙8)に対応する被請求人クライアントに対して発行したものであって,乙第3号証のマスキングを除外し金額部分を開示したものであると主張する請求書であり,「税込み合計金額」の欄には「¥7,565,076」の記載がある。
(9)乙第10号証は,被請求人が,被請求人クライアントから物品制作を依頼された際に発行された「製造注文書の写し」と主張するものであり,右上には,「注文年月日 2016年05月27日(金)」の記載,右上部には,「(株)マス 御中」の記載がある。そして,「製造注文書」のタイトルの下,右側には,郵便番号,住所,電話番号等と共に,「(社名)(担当者)」として「花王カスタマーマーケティング株式会社/花王グループカスタマーマーケティング株式会社/マーケティング部門 SPデザイン部」の記載がある。
そして,「納期日」の項には「2016年06月25日(土)」の記載,「品名・件名」の項には「シニア向け環境啓発キット なつかしい家事 今昔物語」の記載,「見積書日付」の項には「2016年05月27日(金)」の記載,「税込み金額(円)」の項には「1,020,924」の記載がある。
(10)乙第11号証は,被請求人が,製造注文書(乙10)に対応する請求書と主張するものであり,「請求書」のタイトルの下,左側には,「花王カスタマーマーケティング株式会社 御中」の記載,右側には,「作成日 2016.06.25」の記載があり,その下には,「株式会社マス」の文字が,郵便番号,住所,電話番号,FAX番号,電子メールアドレスと共に表示されており,その左側には,使用商標2が表示されている。さらに,その下には,「下記の通り御請求申し上げます。」との記載があり,件名の欄には「シニアエコイベント」,「『なつかしい楽しい家事 今昔物語』製造の件」の記載,「税込み合計金額」の欄には「¥1,020,924」の記載がある。
また,乙第11号証の下部には,「会社名」として「株式会社マス」の記載のほか,振込先が記載されている。
(11)乙第12号証は,被請求人が,三菱UFJ銀行が発行する「普通預金通帳の写し」と主張するものであり,2葉目の表紙の写しとおぼしき面には,「普通預金通帳」,「三菱東京UFJ銀行」,「株式会社マス様」及び「口座番号」等の記載があり,この口座番号及び口座の名義人は,被請求人が作成したと主張する請求書(乙3,乙9,乙11)における振込先と一致している。
また,1葉目の通帳の記帳面の写しとおぼしき書面には,「28-7・15」の振込として,「カオウカスタマーマーケテ」が「8,586,000円」の振込みをした旨の記載がある。被請求人は,当該金額は,乙第9号証の請求書の税込合計金額「7,565,076円」と乙第11号証の請求書の税込合計金額「1,020,924円」とを合算したものであると主張しており,その金額は合致している。
2 認定事実
上記1によれば,被請求人は,平成28年(2016年)5月16日付けの「シニアエコイベント『なつかしい楽しい家事 今昔物語』デジタルサイネージ アプリケーション 企画コンテ案」と題する企画コンテ案(乙1)をもって,被請求人クライアントに対して本件イベントの企画を提案したことがうかがえるものであり,同企画コンテ案には,デジタルサイネージのデジタルアプリケーションプログラムに関する説明と共に,使用商標1が付されている。
そして,被請求人は,平成28年(2016年)5月27日付けで,被請求人クライアントから本件イベントに関するアプリケーション開発関係一式を含むデザイン制作及び物品製作の発注を受け(乙8,乙10),同年6月20日付けで,被請求人クライアントに対して本件イベントに関するデザインの納品書及び請求書を発行した(乙2,乙3,乙9)という取引の流れをみることができるものであって,当該納品書及び請求書には,使用商標2が表示されている。
さらに,被請求人は,平成28年(2016年)6月23日に,使用商標1が付された本件イベントに関するアプリケーションのマニュアル(乙4)を作成したことがうかがえるものであり,本件イベントの第1回目は,同月25日及び26日に,被請求人クライアントによって,いとく大館ショッピングモール(伊徳大館SC)において開催されたことがうかがえる(乙13)。
加えて,平成28年(2016年)7月15日に,被請求人クライアントから,被請求人に対して,本件イベントに関するデザイン制作及び物品製作の合計金額(乙9,乙11)が振り込まれたことがうかがえるものであり(乙12),また,同月25日付けで,被請求人は,被請求人クライアントに対して,「第1回イベント開催後の不具合の対策・プログラム変更等メンテナンス報告書」と題する報告書(乙5)を作成し,同報告書には,使用商標1が付されている。
なお,上記の本件イベントに係るデジタルサイネージのデジタルアプリケーションプログラムに関する一連の取引の流れに不自然な点は見いだせない。
3 判断
(1)使用者について
上記1の本件イベントに関するアプリケーション開発関係一式を含むデザイン制作に係る納品書(乙2)及び請求書(乙3,乙9)における納品者及び請求者の名称,住所と本件商標に係る商標登録原簿に記載された商標権者の名称及び住所が一致していることからすれば,当該納品書及び請求書の作成者は,本件商標権者(被請求人)であるといえる。
(2)使用商標について
上記1の本件イベントに関するアプリケーション開発関係一式を含むデザイン制作に係る納品書(乙2)及び請求書(乙3,乙9)に表示された使用商標2は,本件商標とは,下部の「MASS」の文字の右下における,登録商標であることを示す際に慣用的に使用される「(丸で囲まれた)R」の文字の有無の差異を有するにすぎないものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(3)使用役務について
上記1を総合勘案すれば,本件商標権者(被請求人)は,「デジタルサイネージのデジタルアプリケーションプログラムの開発及び保守」に関する役務の提供を行ったといえるところ,当該役務は,本件審判の請求に係る指定役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の範ちゅうに含まれる役務とみるのが相当である。
(4)使用時期について
上記1の本件イベントに関するアプリケーション開発関係一式を含むデザイン制作に係る納品書(乙2)及び請求書(乙3,乙9)における納品日及び作成日は,2016年(平成28年)6月20日であり,これは要証期間内である。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば,本件商標の商標権者は,要証期間内にその請求に係る指定役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関する取引書類に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したものと認めることができ,これは商標法第2条第3項第8号に該当する商標の使用ということができる。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者がその請求に係る指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」について本件商標の使用をしていることを証明したといえる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定役務について,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲 【別掲1】
本件商標


【別掲2】
使用商標1(色彩は答弁書参照)


【別掲3】
使用商標2



審理終結日 2020-10-29 
結審通知日 2020-11-02 
審決日 2020-11-19 
出願番号 商願平11-45231 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z42)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2000-11-17 
登録番号 商標登録第4434146号(T4434146) 
商標の称呼 マス 
代理人 藤本 正紀 
代理人 佐藤 大輔 
代理人 佐藤 恒雄 
代理人 橘 哲男 
代理人 石井 あやか 

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