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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1372948 
異議申立番号 異議2020-900294 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-09 
確定日 2021-04-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第6301648号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6301648号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6301648号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和元年7月9日に登録出願、第43類「飲食店における飲食物の提供」を指定役務として、同2年9月4日に登録査定、同年10月8日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、引用する登録第4361932号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成10年9月14日登録出願、第42類「そば・うどん・ご飯物を主とする飲食物の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として、同12年2月18日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
(1)申立人の立場
申立人は、京橋エドグランという商業施設(オフィスビル)において、うどん・蕎麦等の飲食物の提供を「山茂登」という商標で業として営んでおり(甲3?甲7)、当該施設の建設前も昭和26年よりその地で「山茂登」の屋号にて長く営んでいた。
(2)商標法第4条第1項第10号について
周知性
甲第3号証の「1、山茂登 本店」とあるように、「山茂登」は、申立人が中心となって「のれん会」を作っており、東京、埼玉を中心に、愛知、神奈川、千葉も含めて、うどん・蕎麦を中心とした飲食店として30店舗もの一大グループを作っていた。
なお、「山茂登」はロゴではあるが、商標出願もして登録・維持している(甲2)。
また、池袋パルコ及び津田沼パルコという大きな百貨店にも店舗を出して、積極的に営業していた。首都圏に集中的に店舗(30店舗)を出していたことによって、大きな知名度(周知性)を有していた。
現在は、店舗数が縮小して11店舗(甲4)になったが、チェーン店のような形態ではない場合において11店舗は、かなり大きな同一ブランドを使用している集合体である。
甲第4号証は、全国を調べられるタウンページで「山茂登」を、検索したものであり、「山茂登」は申立人の関係店舗が圧倒的数(11店舗)であるのに対し、本件商標の権利者に関係すると思われる「五頭の山茂登」は2店舗にすぎない。
さらに、申立人の店舗の1つが取り上げられた雑誌のごく一例(甲5?甲7)からもわかるように、申立人の「山茂登」は、飲食物の提供の分野において、大きな知名度を有している。
以上より、申立人の「山茂登」は、申立人の業務にかかる役務を表示し需要者の間に広く認識された商標といえる。
イ 「五頭の」が地名であること
2004年の合併前の笹神村の説明において、笹神村が「五頭山」と「五頭温泉郷」で有名な場所であることが記載されている(甲8)。
さらに、本件商標の権利者の店舗の本店が、「五頭温泉郷」にあることが分かり(甲9)、「五頭温泉郷」は顧客満足度の高い温泉で1位をとっているから(甲10)、これを訳した「五頭」は知名度のある地名である。
以上より、「五頭」は地名であり、かつ、知名度がある。
ウ 結論
以上より、「五頭」について、知名度がある地名であるということから、本件商標の「五頭の山茂登」の「五頭の」部分は識別力が極めて低いことになる。
他方、「山茂登」は「ヤマモト」と称呼するが、この読み方は極めて特殊であり、どのように称呼するのか迷うものであり、「ヤマシゲノボル」と称呼する方がむしろ自然である。
そのなかで「ヤマモト」と称呼するこの漢字は、珍しいことから、高い識別力が「山茂登」にある。
そうすると、本件商標「五頭の山茂登」と、申立人の周知商標「山茂登」とは類似の商標であり、役務についても同一(類似)である。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
周知性
商標法第4条第1項第10号と同旨。
イ 「五頭の」が地名であること
商標法第4条第1項第10号と同旨。
ウ 本件商標の権利者の使用
本件商標権者は、「五頭の」を小さく「山茂登」を大きく使っており、さらに、「山茂登」の部分だけについて、「やまもと」のふりがなを使っている(甲11)。また、本件商標権者は、「五頭の」を小さく「山茂登」を大きく使っている(甲12)。
エ 結論
以上より、「五頭」について、ある程度知名度のある地名ということから、本件商標の「五頭の山茂登」の「五頭の」部分は識別力が極めて低いことになる。
申立人の「山茂登」を知っている需要者や、インターネット等で検索して申立人の「山茂登」を知ったものは、「都内にもある『山茂登』は、新潟の五頭にも支店(関係店)がある。」のように考える可能性が極めて高く、これ以外に、「都内の『山茂登』と『五頭の山茂登』は、『五頭の』がついているから別系列(別資本)である」と考える方が普通ではない。
そうすると、本件商標「五頭の山茂登」は、申立人の周知商標「山茂登」と混同を生ずるおそれがある商標であると判断すべきであり、役務についても同一(類似)である。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第11号について
引用商標は、申立人により、本件商標よりも先出願・先登録された商標であり、「山茂登」をロゴで記載したものである。
前述のとおり、「五頭」がある程度の知名度がある地名であること、「山茂登」を「ヤマモト」と称呼するということは普通ではないことを考え合わせると、本件商標の要部は「山茂登」であると判断すべきである。
そうすると、本件商標と引用商標は同一の「山茂登」であることから、称呼、外観、概念いずれにおいても類似していると判断すべきであり、役務も同一(類似)である。
以上より、本件商標は、引用商標と少なくとも類似の商標であると判断すべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)「山茂登のれん会会員名簿」において、「山茂登本店」を筆頭に、「山茂登」の店名で東京都(9店舗)、埼玉県(16店舗)、神奈川県(2店舗)、千葉県(1店舗)、愛知県(1店舗)の30店舗で構成されていたことがうかがわれる(甲3)が、当該会員名簿の作成者、作成日は不明である。
また、申立人は、申立人の関係店舗は、現在、11店舗である(甲4)旨主張している。
(イ)「NTTタウンページ」(2019年NTTタウンページ株式会社発行)において、「山茂登」のキーワードで全国を検索すると、上記の「山茂登のれん会会員名簿」に記載されている会員と住所を同じくする店舗が散見されるが、本件商標権者の店舗も存在する(甲4)。
しかしながら、当該タウンページは登録された職業別の店舗が紹介されているにすぎず、引用商標の周知性の判断にさほどの影響を与えるものではない。
(ウ)雑誌「Hanako」(2019年9月13日発行)、雑誌「東京人」(2017年9月発行)及び雑誌「そばうどん」(2017年発行)において、申立人と住所を同じくする「蕎麦きり 京橋 山茂登」が紹介され、1950年創業の蕎麦店であることはうかがえる(甲5?甲7)が、当該証拠において、引用商標の使用の事実は見当たらない。
(エ)申立人は、上記(ア)ないし(ウ)により、引用商標は、本件商標の登録出願時において、申立人の商標として需要者に広く知られていた旨主張しているが、申立人の提出した証拠からは、引用商標の使用の事実が見当たらず、引用商標の周知性の程度を推し量ることができない。
イ 上記アによれば、申立人は、1950年創業の蕎麦店である「蕎麦きり 京橋 山茂登」を経営し、「山茂登のれん会」を運営していることはうかがえる。
しかしながら、当該のれん会を構成する店舗は、30店舗存在した時期もあったようであるが、申立人の主張によれば、現在、11店舗に減少しており、雑誌等の紹介記事も2017年及び2019年の3件程度と少ないものである。
また、申立人が提出した証拠からは、引用商標の使用の事実が確認できない上、引用商標の我が国における周知性の程度を判断するための具体的な事実を裏付ける役務の提供実績等の量的規模を客観的、具体的に把握することができず、引用商標を広告・宣伝した時期・回数・方法等の証拠は何ら提出されていないから、申立人が提出した上記証拠によっては、引用商標の使用状況を把握することができず、その周知性の程度を推し量ることができない。
以上のとおり、引用商標の使用の実績や申立人の経営する蕎麦店における役務の提供実績等に係る主張、立証はないことを踏まえれば、引用商標は我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
他に、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる証左は見いだせない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
(2) 商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、毛筆書きの「五頭の」の文字と「山茂登」の文字とを二段に配してなるところ、当該文字は、格助詞の「の」を介して「五頭」の文字と「山茂登」の文字とを組み合わせたものと認識できるものであり、上段の「五頭の」と下段の「山茂登」は、文字の大きさが異なるものの、両文字はさほど間隔を設けずに、近接して配置されており、かつ、両文字は、いずれも毛筆書きの統一的な態様で表されていることから、全体として、まとまりのよい一体のものとして把握し得るものである。
また、本件商標の構成中の「五頭」及び「山茂登」の文字は、いずれも一般の辞書等に載録されていないものであり、特定の意味を有しない一種の造語として認識されるものであるから、本件商標は、特定の観念を生じないものである。
そして、特定の意味又は特定の読みを有しない漢字からなる造語にあっては、一般的には音読み又は訓読みによって読みやすい称呼が生じると考えられることから、本件商標の構成中の「五頭」の文字は、音読みによる読みやすい「ゴトウ」又は「ゴズ」の称呼を生じるものというのが相当である。
また、その構成中の「山茂登」の文字は、「山」を訓読みによる読みやすい「ヤマ」、「茂」及び「登」をそれぞれ音読みによる読みやすい「モ」及び「ト」の称呼を生じると考えられることから、「山茂登」の文字は、「ヤマモト」の称呼を生じるものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成全体から「ゴトウノヤマモト」及び「ゴズノヤマモト」の称呼を生じ、称呼においても、無理なく一連に称呼し得るものであるから、その構成全体をもって、一体不可分のものと認識、把握されるものというべきである。
してみれば、本件商標は、その全体が一連一体のものとして把握され、「ゴトウノヤマモト」及び「ゴズノヤマモト」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものであり、殊更「五頭の」の文字部分を捨象し、「山茂登」の文字部分をもって取引に資されるとみるべき特段の事情も見いだせない。
イ 引用商標
引用商標は、別掲2のとおりの構成よりなるところ、当該文字は、草書体風の毛筆書きをもって何らかの文字を崩したものであろうと推測されるが、その態様は特異なものであって、いかなる文字を表したものか明らかではなく、一般的な取引者、需要者が特定の文字として判読することは困難なものであって、判読不能な文字よりなるものと判断するのが相当である。
してみれば、引用商標は、直ちに特定の文字を認識し、当該文字より生じる称呼等により取引に資するものとは認め難いから、出所識別標識としての特定の称呼及び観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標及び引用商標は、上記ア(別掲1)及びイ(別掲2)のとおりの構成からなるものであり、本件商標と引用商標とは、いずれも毛筆書きではあるものの、横書きと縦書きという態様の相違及び構成文字の相違という差異があるから、外観上、明確に区別し得るものである。
また、本件商標からは、「ゴトウノヤマモト」及び「ゴズノヤマモト」の称呼を生じ、特定の観念を生じないのに対し、引用商標からは、出所識別標識としての特定の称呼及び観念が生じるとはいえないから、称呼及び観念上、本件商標と引用商標とを比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観上、明確に区別し得るものであるから、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
なお、申立人は、引用商標は、「山茂登」の文字を表し、「ヤマモト」の称呼を生じる旨主張するが、仮に、引用商標が「山茂登」の文字を表したものと把握・理解させ、「ヤマモト」の称呼を生じ、特定の観念を生じないとした場合であっても、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、外観上、明確に区別し得るものであり、本件商標から生じる「ゴトウノヤマモト」及び「ゴズノヤマモト」の称呼と引用商標から生じる「ヤマモト」の称呼とは、その構成音数及び音構成において顕著な差異を有するものであるから、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
また、本件商標及び引用商標は、ともに特定の観念を生じないから、観念において比較することはできない。
してみれば、引用商標が「山茂登」の文字を表し、「ヤマモト」の称呼を生じるとした場合でも、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標である。
エ 小括
したがって、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が、同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(1)イのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そうすると、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務とが同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)イのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務の関連性の程度及び需要者の共通性の程度はある程度高いものであるとしても、本件商標は、本件商標権者がこれを指定役務について使用しても、取引者、需要者が引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)申立人の主張について
申立人は、「本件商標の構成中、『五頭』の文字は、『五頭山』と『五頭温泉郷』で有名な場所であり、本件商標の権利者の店舗の本店も五頭温泉郷にあるから、『五頭』は知名度のある地名である」旨主張している。
しかしながら、「五頭山」及び「五頭温泉郷」が新潟県に存在する山名及び温泉郷名であり(甲8、甲10)、本件商標権者の店舗が「五頭温泉郷」に存在する(甲9)ことは認められるとしても、「五頭」は土地につけられた固有名詞として著名な地名とはいえないものであり、何等かの料理の提供地(産地、販売地)を認識させるものでもなく、かつ、そのような証拠も見いだせないものであるから、「五頭」は、自他役務識別標識としての機能を果たし得るものと認められる。
よって、申立人の主張を採用することができない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当するものではなく、その登録は同条第1項の規定に違反してなされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標)



異議決定日 2021-04-05 
出願番号 商願2019-94779(T2019-94779) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W43)
T 1 651・ 262- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 263- Y (W43)
T 1 651・ 261- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 荻野 瑞樹 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 板谷 玲子
小田 昌子
登録日 2020-10-08 
登録番号 商標登録第6301648号(T6301648) 
権利者 株式会社キタカタ
商標の称呼 ゴズノヤマモト、ゴズ、ゴトー、ヤマモト 
代理人 植村 貴昭 

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