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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W18
審判 一部申立て  登録を維持 W18
審判 一部申立て  登録を維持 W18
審判 一部申立て  登録を維持 W18
管理番号 1372926 
異議申立番号 異議2020-900090 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-27 
確定日 2021-04-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第6214037号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6214037号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6214037号商標(以下「本件商標」という。)は、「BACKSTAGE PASS」の文字を標準文字で表してなり、平成31年1月21日に登録出願、第14類「キーホルダー,身飾品,貴金属製靴飾り,時計」、第18類「愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として、令和元年12月17日に登録査定、同2年1月7に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下の2件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
(1)登録第5134532号の2商標(以下「引用商標1」という。)は、「BACK STAGE」の欧文字と「バック ステージ」の片仮名を上下二段に表してなり、平成19年4月26日に登録出願、同20年5月16日に設定登録された登録第5134532号商標の商標権の分割に係るものであって、第35類「つけづめ・つけまつげ・ひげそり用具入れ・ペディキュアセット・マニキュアセット・耳かき・貴金属製コンパクト・携帯用化粧用具入れ・化粧用具(『電気式歯ブラシ』を除く。)・つけあごひげ・つけ口ひげ・ヘアカーラー(電気式のものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,起動器・交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。)・交流発電機・直流発電機・配電用又は制御用の機械器具・回転交流機・調相機・陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)・電球類及び照明用器具・電池・電気磁気測定器・電線及びケーブル・家庭用食器洗浄機・家庭用電気式ワックス磨き機・家庭用電気洗濯機・家庭用電気掃除機・電気ミキサー・電気かみそり及び電気バリカン・電気アイロン・電気ヘアカーラー・電気ブザー・家庭用電気マッサージ機・家庭用電熱用品類・電気式歯ブラシ・電機ブラシ・磁心・抵抗線・電極・電気絶縁材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成30年6月11日に商標権の分割移転がされたものである。
(2)国際登録第1221178号商標(以下「引用商標2」という。)は、「BACKSTAGE」の欧文字を横書きしてなり、2014(平成26)年1月22日にフランス共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2014(平成26)年6月20日に国際商標登録出願、第16類「Pencil sharpeners, paper tissues for removing make-up.」及び第21類「Sponges, cosmetic brushes, eyebrow brushes, mascara brushes, combs, toiletry utensils or kits, cosmetic utensils, perfume vaporizers, powder compacts, powder puffs.」を指定商品として、平成30年11月30日に設定登録されたものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標の指定商品中、第18類「携帯用化粧道具入れ」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)申立人及び引用商標の著名性について
申立人である「Parfums Christian Dior」(パルファン クリスチャン ディオール)は、フランスの著名なファッションデザイナーである「Christian Dior(クリスチャンディオール)」を創始者とするフランス国法人であり、1947年に化粧品及び香料類の製造販売を業とする企業として設立された。1968年に、著名な高級ブランドを取り扱う企業グループとして知られる「LVMH(ルイ ヴィトン モエ ヘネシー)グループ」の傘下となった後も、そのグループの幅広い販売網と宣伝により、日本を含めた世界各国において広く知られる極めて知名度の高いブランド力を維持し続けている。
申立人の取り扱いに係る商品は、香水等の化粧品を始め、化粧用具、化粧用ポーチからバッグ、婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライターなど、化粧品及び服飾関係を主として幅広い分野に及び、これら申立人による商品は、申立人の長年の継続的な努力によって、いずれも洗練された高品質であり、世界の超一流品として極めて高い信用が形成されているものである。
創始者であるChristian Diorの理念である完璧なトータルファッションを目指し、「つま先から頭の先までディオールをまとった女性」を実現するにあたって、満を持して2013年に発表され、日本には2015年以降に発売されるようになったメイクアップ化粧品及び化粧用具ブランドが、引用商標に係る「BACKSTAGE」である。
申立人は、「BACKSTAGE」(バックステージ)に係る商品について、日本を含めた世界各国で展開するにあたり、「BACKSTAGE」の周知を図るべく、現在に至るまで積極的な宣伝広告活動を展開している(甲4、甲5)。
申立人は、「BACKSTAGE」用の専門ウェブサイト及び店舗の専用カウンターを創設し(甲4の348、甲4の349、甲4の352、甲4の356、甲5の1)、雑誌への紹介記事だけでなく、YoutubeやInstagram、Twitter、Facebook、LineといったSNSによる宣伝広告手段も積極的に活用し(甲4、甲7の1)、さらにファッションの中心地の駅を中心にポスターによる宣伝やイベント活動も含め(甲7)、精力的に「BACKSTAGE」(バックステージ)の広告宣伝活動を行っている。
ア 広告宣伝費用
申立人は、引用商標に係る「BACKSTAGE」商品の発売以来、日本を含む世界各国において、多額の広告宣伝費を投下して、「BACKSTAGE」商品の販売促進活動・広告宣伝活動を行ってきた。
例えば、2017年は約1億2000万円、2018年及び2019年にはそれぞれ1億9000万円をかけており、2013年から2019年の7年間における「BACKSTAGE」の広告宣伝費用は、総額8億円を超えている(甲6)。
当該広告宣伝費用には、雑誌等の印刷物への掲載だけでなく、ファッションの中心地である地下鉄駅構内におけるポスター展示費用や、現在の需要者への広告手段の中心的役割を有しているSNS(ソーシャルメディア)(Facebook、Instagram、Twitter、Line、YouTube)へ広告を配信する費用、また世間に与える影響力が大きく、現在注目されている人物(インフルエンサー)を活用した宣伝手段にも費用を費やしており、2019年にはインフルエンサーに対して2200万円以上の費用を投下している。
イ 専用カウンター
「BACKSTAGE」を展開するにあたり、メイクアップの専用カウンター「ディオール バックステージ ストゥーディオ」が開設された。東京では、伊勢丹新宿店、ルミネ池袋にあり、さらに新しく2019年にオープンした渋谷スクランブルスクエアにもオープンした(甲4の348、甲4の349、甲4の352、甲4の356、甲8の1、甲4の2)。
ここでは、ファッションショーのバックステージのような臨場感あふれる空間となっており、店舗限定品をはじめ、「BACKSTAGE」商品の最新メイクアップ商品の販売のほか、それらを使用したメイクアップのレッスンをファッションショーのバックステージを担当したメイクアップアーティストが自ら担当し、スペシャルな体験ができるようになっており、大変注目を浴びている。
ウ ファッション雑誌、メイク雑誌及びファッション情報ウェブサイト
申立人が取り扱う「メイクアップ用化粧品,化粧用具」等の商品は数多くのファッション雑誌やメイク情報誌及びそれらのオンラインサイト、InstagramやFacebookにおいても、極めて多数掲載されており、「BACKSTAGE」商品を示す表示として、引用商標に係る「BACKSTAGE」(バックステージ)が使用されている(甲4)。
さらに、雑誌等ではなく個人のInstagramにも多数「BACKSTAGE」に関する商品について掲載されている(甲4の580、甲4の581、甲4の583、甲4の584、甲4の588?甲4の602、甲4の607、甲4の609?甲4の612、甲4の614、甲4の618、甲4の619、甲4の621、甲4の623、甲4の629?甲4の633、甲4の635、甲4の637?甲4の639、甲4の644、甲4の645、甲4の649?甲4の653、甲4の656?甲4の658、甲4の665?甲4の667、甲4の669、甲4の671)。
このように幅広く「BACKSTAGE」商品が掲載されている事実からも、「BACKSTAGE」商品の需要者の幅が広く、消費者及び需要者に広く認識されていることをうかがうことができる。
エ イベント
「BACKSTAGE」(バックステージ)に係る商品の新作発売時には、有名百貨店等におけるリリースイベントを開催している。例えば、2018年7月に新メイクアップラインが発売されるに際しては、2018年6月20日から26日にかけて伊勢丹新宿店においてポップアップイベントが開催され、先行販売も実施された(甲10の1)。さらに、2018年7月20日から8月5日まで、ファッションの中心地である表参道において、「ディオール バックステージ メイクアップイベント」が開催され、新商品を使用したメイクアップレッスンが開かれた。当該イベントが開催される店舗の壁面には「BACKSTAGE」が記載された黒い帯が巻かれ、大きなポスターも掲げられた(甲4の88、甲4の94?甲4の96、甲4の98?甲4の101、甲4の105、甲4の106、甲4の109、甲4の113?甲4の116、甲4の496、甲4の525、甲10の3?甲10の6)。
また、このイベントには「ディオール ビューティ アンバサダー」を務める若者に人気のファッションモデルが1日ブティックマネージャーとして登場し、多くのメディアに取り上げられ注目された。
オ 屋外広告
申立人は、ファッションの中心地である表参道の地下鉄駅構内において、2018年7月23日から7月29日にかけて、「BACKSTAGE」の文字を大きく記載した6種類のポスターを壁面に大々的に掲載した(甲7)。
カ SNS
申立人は、SNSであるFacebookやInstagram、Youtube、Twitter、Lineに公式アカウントを開設して最新の情報を発信し、1年間だけで約2500万円以上(2018年度)を費やして、「BACKSTAGE」に関する商品の新作をリリースしたりメイクアップ方法を紹介し、その際は必ず、「BACKSTAGE」の商品の写真やプロモーション動画等を配信している(甲7の1)。
これらの動画再生回数や時間が極めて多数であることは、「BACKSTAGE」に係る商品が消費者及び需要者から極めて注目されており、メイクアップ化粧品や化粧用具の商品名として引用商標の「BACKSTAGE」が認知されていることの証左といえる。
上記のような宣伝広告の結果、日本国内における「BACKSTAGE」に関する売上高は、2018年には約6億5千万円、2019年には約8億7千万円を超えている(甲6)。「BACKSTAGE」に関する商品の1個あたりの価格が平均しても数千円であることを考慮すると、このように毎年高い売上高を誇っていることに鑑みれば、上記のような販売実績は、「BACKSTAGE」を商品名とする商品が極めて高い人気を博していることは明らかである。
キ 小括
このように、申立人は、引用商標に係る「BACKSTAGE」商品につき、日本における2015年の発売から現在に至るまで、「BACKSTAGE」に化体した高い信用、評判、名声等が損なわれぬよう、「BACKSTAGE」の広告宣伝方法に工夫を凝らしたり、専用カウンターを設け、継続的に「BACKSTAGE」の新商品を発売する等、不断の努力を続けている。申立人による創立当初から変わらない高品質と大々的な宣伝活動等が功を奏し、引用商標に係る「BACKSTAGE」は、現在もその発売当初から継続した高い人気を安定して保っている。実際、高い売上を誇っており、数々の化粧品分野でベストアワードやベストコスメに輝いている(甲4の179、甲4の184、甲4の188、甲4の193、甲4の198、甲4の205、甲4の209、甲4の211、甲4の223、甲4の224、甲4の228、甲4の232、甲4の373、甲4の382、甲4の389、甲4の459、甲4の644、甲9)。
したがって、申立人の「BACKSTAGE」は、申立人の商品「メイクアップ化粧品、化粧用具」等を表示するものとして幅広く周知・著名な商標となっているものである。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、「BACKSTAGE」と「PASS」の文字との間にスペースをもって表されていることから、視覚上分離して看取されやすいものであるばかりでなく、両者が常に不可分一体のものとしてのみ認識され把握されるとみるべき格別の理由もない。むしろ、「BACKSTAGE」と「PASS」の各語からなるものと容易に認識させるものである。そして、当該構成においては、「BACKSTAGE」部分が、申立人が高い広告費をかけて発売以降、日本のみならず世界各国で使用し続けた結果、「メイクアップ化粧品」や「化粧用具」を標示するものとして、本件商標の出願時には、高い周知著名性を獲得するに至っている事実に鑑みれば、その構成中「BACKSTAGE」部分が、取引者及び需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部となるというべきである。
審判決例(甲11)も鑑み、本件商標においても、その構成中、周知著名な「BACKSTAGE」部分をその要部とし、かかる要部たる「BACKSTAGE」部分と引用商標との類否判断を行うべきであり、その場合、両者は共通の称呼「バックステージ」及び著名な申立人の引用商標に係る「BACKSTAGE」ブランドという共通の観念を生じさせるものであるから、互いに類似することは明らかである。
(イ)本件商標の外観・称呼・観念
本件商標は「BACKSTAGE PASS」の欧文字を標準文字で書した態様よりなるが、「BACKSTAGE」部分が出所表示標識として強い印象を生ずる部分であるから、「BACKSTAGE」部分より「バックステージ」の称呼が生じ、かつ、申立人の引用商標に係る「化粧品」や「化粧用具」等の商標として周知・著名な「BACKSTAGE」の観念をも生ずる。
イ 引用商標について
引用商標1は、欧文字「BACKSTAGE」及び片仮名「バックステージ」の上下二段の構成よりなり、引用商標2は、「BACKSTAGE」の欧文字から構成され、これらの引用商標は、いずれも「バックステージ」の称呼を生じ、かつ、申立人の周知著名なブランドである「バックステージ」の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標の称呼・観念・外観の類否
本件商標においては、「BACKSTAGE」部分が要部となり、そこから「バックステージ」の称呼を生じ、申立人が「メイクアップ化粧品」及び「化粧用具」等に使用して周知著名となった「バックステージ」との観念が生じる。したがって、本件商標と引用商標とは称呼・観念において類似するものである。
また、本件商標に係る指定商品中「携帯用化粧道具入れ」は、引用商標1の第35類の指定役務中「つけづめ・つけまつげ・ひげそり用具入れ・ペディキュアセット・マニキュアセット・耳かき・貴金属製コンパクト・携帯用化粧用具入れ・化粧用具(電気式歯ブラシを除く。)・つけあごひげ・つけ口ひげ・ヘアカーラー(電気式のものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び引用商標2の第21類の指定商品中「スポンジ,化粧用ブラシ,まゆ毛用ブラシ,マスカラ用ブラシ,くし,化粧用具又は化粧キット,化粧用具,香水用噴霧器,おしろい入れ,化粧用パフ」と同一又は類似する。
エ 小括
上述のとおり、本件商標は、本件商標の登録出願日前の商標登録出願に係る申立人の先行登録商標である引用商標と類似する商標である。さらに、本件商標は引用商標に係る指定商品・役務と同一又は類似の商品について使用する商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の著名性及び独創性
引用商標は、申立人が「メイクアップ化粧品」及び「化粧用具」等に使用する商標として2015年以降継続して使用され、遅くとも、本件商標の登録出願時である平成31(2019)年1月21日までには、我が国の取引者及び需要者の間で、周知著名となっている。また、引用商標は、申立人のファッションショーのバックステージ(舞台裏)を支えるメイクアップから誕生したものであって、これが化粧品や化粧用具の分野の品質を表示するものでないから独創性があることは明らかである。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標と引用商標との間の類似性の程度を検討すると、引用商標は、「BACKSTAGE」又は「バックステージ」の文字からなるため、その構成文字に相応して「バックステージ」の称呼が生じ、申立人の引用商標に係る「化粧品」及び「化粧用具」等についての周知著名なブランドである「バックステージ」との観念が生じる。
他方、本件商標は、「BACKSTAGE PASS」の欧文字を標準文字で書した態様よりなるが、本件商標においては、「BACKSTAGE」部分からは「バックステージ」の称呼が生じ、申立人の引用商標に係る「メイクアップ化粧品」及び「化粧用具」等についての周知著名なブランドである「バックステージ」との観念が生じる。
したがって、本件商標は、申立人の引用商標と称呼・観念において類似するというべきである。よって、本件商標は、申立人がメイクアップ化粧品や化粧用具等に使用して周知著名な引用商標と類似することは明らかである。
また、仮に、本件商標が引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号における類似とまではいえないとしても、なお極めて強い出所識別機能を有する「BACKSTAGE」の部分が共通するのであり、その類似性の程度は極めて高いというべきである。
ウ 本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性
本件商標は、申立人が使用し著名性を有する引用商標に係る指定商品「化粧用具」と同一又は類似する商品「携帯用化粧道具入れ」について使用される商標であるから、商品の性質等及び商品の取引者及び需要者において互いに共通性が高いことは明らかである。
エ 周知著名商標をその構成中に含む商標についての異議決定・審判決例
平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決以降、審判決例においても、他人の周知著名な商標をその構成中に含む商標については、当該他人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当するとの判断(甲12)が定着している。
上記異議決定・審判決例に鑑みても、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当することが明らかである。
オ 小括
以上述べたとおり、本件商標と引用商標との称呼及び観念上の類似性、申立人の引用商標が周知著名性を獲得していること、「BACKSTAGE」商標の独創性の高さ、申立人が著名性を獲得している化粧品や化粧用具分野に関して本件商標が指定商品としている点等の取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者及び需要者は、あたかも申立人若しくは申立人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、1947年に化粧品及び香料類の製造販売を業とする企業として設立された。
(イ)申立人の「BACKSTAGE」の専門ウェブサイトとされるものには、各ページの上部中央に「DIOR」の文字が表示されており、「Dior」と大きく表示されている化粧品及び化粧用具の写真とともに「DIOR BACKSTAGE」の文字が表示されている(甲5の1)。また、申立人の「BACKSTAGE」ブランドのウェブサイト(甲5の2)には、「今まで以上にディオールのファッション クリエイションと密接に関わるディオールのメイクアップは、ファッションショーのバックステージから誕生しました。・・・美しさを瞬時に最大限まで引き出すために、幅広い専門的な製品が作られました。それが、ディオール バックステージです。」の記載がある。
(ウ)2018年6月から2019年11月までの間に日本国内で発行された、複数のファッション雑誌(甲4の1?甲4の28)、2018年5月から2019年12月までの間に日本国内で公開された、当該雑誌及び化粧品情報等のウェブサイト(甲4の29?甲4の389、甲4の397、甲4の455?甲4の470、甲4の472?甲4の477)及び2018年6月から2019年12月までの間に公開された、Instagram・Twitter・Facebookの記事(甲4の478?甲4の645、甲4の666、甲4の667)によれば、「バックステージ」又は「BACKSTAGE」の文字が「Dior」の文字が表示されたメイクアップ化粧品及び化粧用具の写真等とともに表示されているところ、その大半は「ディオール バックステージ」又は「DIOR BACKSTAGE」のように「ディール」又は「DIOR」の文字とともに表示されている。
(エ)申立人の最高財務責任者及び最高執行責任者は、以下の事実を主張し、宣誓している(甲6)。
a パルファン クリスチャン ディオールは、2015年から日本を含む世界中で、メイクアップ製品「バックステージ」(以下「バックステージ製品」という。)を継続的に商業化し、宣伝してきたこと。
b 日本で2015年から2019年までに発売された「バックステージ製品」の売上高及び売上規模として、上記期間中に売上高約約2.8億円から約8.7億円に推移したこと。
c 2013年から2019年にかけてパルファン クリスチャン ディオールは世界中でバックステージ製品のキャンペーンの作成及び製作、販売促進及び宣伝のため、総額8億円規模の費用をかけてきたこと。
(オ)2018年7月23日から27日までの間、表参道の地下鉄駅構内において、「DIOR BACKSTAGE」の文字及び「Dior」の文字が表示された6種類の大きな壁面ポスターが掲示されたことがうかがわれる(甲7)。
(カ)申立人は、最新のディオール メイクアップ製品を展開するほか、店舗限定品をはじめ、メイクアップレッスンやリップの刻印サービスを行うメイクアップカウンター「ディオール バックステージ ストゥーディオ」を東京、大阪、博多において、5店舗展開している(甲8)。
(キ)申立人のウェブサイトによれば、「ディオール バックステージ アイ パレット」が「ベストコスメ受賞アイテム」として「@cosmeベストコスメアワード2019ベストパレット第1位」と紹介されている(甲9)。
(ク)ウェブサイトの掲載記事には、申立人に係る商品の限定店舗の開設やポップアップイベント等のイベント開催についての情報が掲載されており、これらには、「ディオール バックステージ」と表示されている(甲10)。
イ 上記アの各事実によれば、以下のことが判断できる。
申立人は、1947年に化粧品及び香料類の製造販売を業とする企業として設立され、その取り扱いに係る商品は、化粧品及び服飾関係を主として幅広い分野に及ぶという実情がうかがえる。
しかしながら、申立人が提出した全証拠をみても、我が国における「BACKSTAGE」の文字の使用についてメイクアップ化粧品及び化粧用具の取引全体に占めるマーケットシェアを把握することができず、かつ、我が国における2015年から2019年までの売上高として示された数字にしても、これを裏付ける客観的な資料は提出されていないから、客観的なマーケットシェアや売上高に基づいて、引用商標の周知性の程度を推し量ることができない。
また、広告宣伝活動については、ファッション雑誌、化粧品情報等のウェブサイト等において、「BACKSTAGE」及び「バックステージ」の文字は、「パルファン・クリスチャン・ディオール」又は「Dior」若しくは「ディオール」の文字(これらと同一視できる態様のものを含む。以下「Dior等」という。)とともに表示されていることから、Dior等の文字を有することにより、申立人の業務に係る商品を表すものであると印象付けているにすぎないものというべきである。
さらに、Instagram、Twitter、Facebookといったソーシャルメディアを使用した広告宣伝及び屋外広告においても「BACKSTAGE」又は「バックステージ」の文字が単独で使用されていることを認めるに足る証拠は見いだすことができない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠においては、「BACKSTAGE」及び「バックステージ」の文字は、いずれも、Dior等の文字とともに使用されていることからすれば、需要者は、「BACKSTAGE」又は「バックステージ」の文字のみをもって申立人の業務に係る商品の出所表示として認識し、理解するということはできないものである。
加えて、申立人は、SNSの配信に2018年の1年間だけで2500万円以上費やし、「BACKSTAGE」ブランドの商品について全世界で、広告宣伝のために投じた費用において、2013年ないし2019年の各年に投じた金額を示し巨額を費やした旨を主張するが、その商品写真やプロモーション動画等において、「BACKSTAGE」又は「バックステージ」の文字のみが単独で使用されている証拠は見いだせない。
なお、申立人は、2015年以降、我が国において、メイクアップ化粧品及び化粧用具ブランドとして「BACKSTAGE」を使用した商品を販売している旨主張しているが、申立人の提出に係る証拠は2018年5月以降のものしかなく、2015年以降に発売したことは確認できない。
以上によれば、引用商標が、申立人に係る商品「メイクアップ化粧品、化粧用具」の出所を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、当該商品の出所を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり「BACKSTAGE PASS」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中に1文字程度の空白を有するものの、各構成文字は同じ書体、同じ大きさでまとまりよく表されており、また、これから生じる「バックステージパス」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、「舞台裏」の意味を有する「BACKSTAGE」(株式会社小学館発行「プログレッシブ英和中辞典」)の文字と「通過する」の意味を有する「PASS」(同上)の文字からなるものであるが、その構成中いずれかの文字部分が取引者及び需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めるに足りる事情は見いだせない。なお、「BACKSTAGE」の文字が、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできないことは、前記(1)のとおりである。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「バックステージパス」のみの称呼を生じ、「BACKSTAGE PASS」の文字は、辞書等に掲載のない語であるから、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1は、「BACK STAGE」の欧文字と「バック ステージ」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、下段の片仮名が上段の欧文字の読みを特定したものと容易に理解できることから、引用商標1は「バックステージ」の称呼を生じるものである。
引用商標2は、「BACKSTAGE」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「バックステージ」の称呼を生じるものである。
また、「BACK STAGE」の文字は、「BACKSTAGE」の文字と同様に上記アのとおり、「舞台裏」の意味を有する英語であるから、引用商標からは、「舞台裏」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、それぞれ上記のとおりの構成態様からなるものであり、その構成において、「PASS」の文字の有無及び本件商標と引用商標1との関係においては片仮名の有無という差異があるから、外観上、相紛れるおそれはない。
また、本件商標から生じる「バックステージパス」の称呼と引用商標から生ずる「バックステージ」の称呼とは、「パス」の音の有無という顕著な差異により、明瞭に聴別することができるから、両称呼は相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであり、「舞台裏」の観念を生じる引用商標とは、観念において相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、両商標の指定商品又は指定役務の類否について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また、本件商標と引用商標とは、上記(2)ウのとおり、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない別異の商標といえるものであるから、類似性の程度は高いとはいえない。
さらに、引用商標を構成する「BACK STAGE(BACKSTAGE)」の文字は、「舞台裏」を意味する成語であることから、引用商標の独創性が高いとはいえない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれを本件指定商品中、第18類「携帯用化粧道具入れ」について使用しても、これに接する取引者及び需要者が、本件商標の「BACKSTAGE」の文字部分のみに着目して、申立人に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標権者が本件商標を本件異議申立てに係る指定商品「携帯用化粧道具入れ」に使用しても、これに接する取引者及び需要者をして、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係のある者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について、誤認混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)申立人の主張について
申立人は、「審判決例においても、他人の周知著名な商標をその構成中に含む商標については、当該他人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当するとの判断が定着している」旨述べ、審判決例及び異議決定例を提出し、その妥当性を主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質等を総合的に勘案して、個別具体的に判断すべきものであって、申立人の主張に係る判決及び異議決定例が存在するからといって、上記判断を左右するものでない。そして、本件においては、引用商標が、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないことは、前記(1)のとおりであり、申立人の主張は、その前提を欠くものであるから、採用することができない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第18類「携帯用化粧道具入れ」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでなく、その登録は同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、他にその登録が同法43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2021-03-24 
出願番号 商願2019-14183(T2019-14183) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W18)
T 1 652・ 262- Y (W18)
T 1 652・ 263- Y (W18)
T 1 652・ 261- Y (W18)
最終処分 維持 
前審関与審査官 内田 直樹中山 寛太 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 馬場 秀敏
板谷 玲子
登録日 2020-01-07 
登録番号 商標登録第6214037号(T6214037) 
権利者 株式会社パワードバイパーソンズ
商標の称呼 バックステージパス、バックステージ 
代理人 宮川 美津子 
代理人 田中 克郎 
代理人 池田 万美 
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