• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
管理番号 1371797 
審判番号 取消2018-300874 
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-11-19 
確定日 2021-02-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5700061号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5700061号商標の指定役務中、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5700061号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成26年3月26日に登録出願、「コンピュータデータベースへの情報編集,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類、第37類及び第40類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年9月5日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成30年12月5日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成27年12月5日から同30年12月4日までを、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「取消請求役務」という。)について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標は、薄青で塗りつぶされた略正方形の枠内に、白抜きで「スマート」及び「介護」の文字を二段表記したものである。ここで、「スマート」と「介護」の文字とは結合しておらず、完全に分離しており、かつ、「介護」の文字は「スマート」の文字に比べて大きなサイズで表示されている。また、「介護」は漢字表記であり、「スマート」は片仮名表記であるため、需要者は、本件商標について、「介護」の文字と「スマート」の文字とを完全に分離して認識し、「スマート介護」のように一体的には認識しない。
一方、被請求人が、自己の業務に係る介護・福祉施設向けデリバリーサービス(以下「本件サービス」という。)のカタログ「スマート介護カタログ vol.5」(以下「本件カタログ」ということがある。)の表紙等に付している「スマート介護」の文字を横書きしてなる商標(以下「使用商標1」という。:別掲2)は、「スマート介護」の文字を一段で各文字を同サイズで表示した文字商標である。
したがって、両商標における外観の差異は大きく、自他役務識別標識として異なる機能を果たし、両商標は社会通念上同一の商標とは認められない。
(2)被請求人は、乙第1号証の530頁、乙第3号証の530頁を証拠として、「電池の販売を行っており」と主張するが、当該証拠の530頁には、本件商標を使用している箇所はなく、本件カタログの頁であるか不明である。
(3)被請求人は、乙第7号証を証拠として、「平成30年7月31日発行の請求書は、本件サービスの販売店に対して発行されたものである。」と主張するが、本件カタログと請求書との関係を示す記載はなく、本件カタログとの関係は不明である。
(4)以上述べたように、乙第1号証ないし乙第9号証は、被請求人が、要証期間内に日本国内において、取消請求役務について、本件商標を使用しているとの証拠にはならない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、答弁書及び回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用について
ア 被請求人は、使用商標1を、本件カタログの表紙等に付している(乙1)。
本件商標は、青色略正方形図形内において、「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなるところ、使用商標1は、本件商標と称呼及び観念を共通にする社会通念上同一と認められる商標である。
イ 被請求人は、使用商標1を、本件サービスの公式ウェブサイト及び同ウェブサイトに表示されたデジタルカタログに付している(乙2、乙3)。
デジタルカタログは、紙媒体の本件カタログと同一内容の情報で構成された電子媒体であり、本件サービスの利用者は、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる。
ウ 被請求人は、青色略正方形図形内において、「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなる商標(以下「使用商標2」という。)を、本件サービスを利用する際のアイコンとして使用しており(乙4、乙5)、使用商標2は、本件商標と同一の構成からなる商標である。
本件サービスの利用者は、スマートフォンの画面などに作成及び表示されたアイコン(使用商標2)をタップすることにより、本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる(乙4、乙5)。
エ 被請求人は、使用商標1及び使用商標2を、本件サービスの告知用ウェブサイトに付している(乙6)。
本件サービスの利用者は、本件サービスの告知用ウェブサイトに表示されたURLをクリックすることにより、本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる(乙2、乙3)。
告知用ウェブサイトのとおり、本件カタログが平成30年5月10日に40,000部発行されており(乙6)、カタログの頒布は、要証期間内である。
また、デジタルカタログは、紙媒体のカタログと同一内容の情報で構成された電子媒体であるから、その公表時期は、紙媒体のカタログの配布時期と共通し、要証期間内である。
(2)指定役務についての使用について
ア 本件サービスには、文具・生活用品、レクリエーション・リハビリ用品の販売サービスが含まれ、被請求人は、電池の販売を行っており、カタログにおいて、電池の画像とともに、商品の価格が表示されている(乙1の530頁、乙3の530頁)。
電池の販売は、本件商標の指定役務中の「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に包含される「電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」である。
イ 電池の販売は、介護・福祉施設などの利用者に対して直接販売する場合のほか、被請求人の取引先である販売店を通じて利用者に対して販売する場合があるところ、平成30年7月31日発行の請求書(以下「本件請求書」という。)は、本件サービスの販売店(一夢堂株式会社)に対して発行されたものであり(乙7)、被請求人の販売店を通じて利用者に対して販売される場合、利用者は、販売店から商品を受け取ることになる。
本件請求書には、同年7月6日の項目に、「30*892-843 ミツビシ 三菱電機アルカリ乾電池 単4形 40本」の記載があり、同月9日の項目に、「30*366-069SV アルカリ乾電池 単4×40本 N124J-4P-10」の記載があるとおり、被請求人は、要証期間内に、電池の販売を行っている。
上記「30*892-843 ミツビシ 三菱電機アルカリ乾電池 単4形 40本」の「892-843」は、本件カタログの「三菱電機アルカリ乾電池 単4形(40本人)」の商品コードと一致し、上記「30*366-069SV アルカリ乾電池 単4×40本 N124J-4P-10」の「366-069」及び「N124J-4P-10」は、本件カタログの「スマートバリュー アルカリ乾電池 単4形(40本入)」の品番及び商品コードと一致する(乙1、乙3)。
(3)カタログ及び請求書の作成者について
本件カタログに記載された「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」は、被請求人の社内の一部署名にすぎない社内カンパニーの名称であり、本件請求書に記載された「プラス株式会社JTX」は、「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」のうちの「ジョインテックスカンパニー」の表示部分を「JTX」と略語で表示したものであるから、本件カタログ及び本件請求書の作成者は、いずれも被請求人である(乙8、乙9)。
(4)使用商標1と本件商標の同一性について(補足)
使用商標1及び本件商標は、「スマート介護」の文字に相応して、同一の「スマートカイゴ」の称呼を生ずる。また、「スマート」の文字は、「からだつきや物の形が細くすらりとして恰好がよいさま。身なりや動作などが洗練されているさま。装置・機器などが情報処理機能を具えること。」の意味合いを有し、「介護」の文字は、「高齢者・病人などを介抱し、日常生活を助けること。」の意味合いを有する文字として慣れ親しまれているから(「広辞苑第七版」株式会社岩波書店)、両商標は、全体として「洗練された介護」又は「情報処理機能を具えた介護」という同一の観念を生ずる。
そうすると、両商標は、同一の称呼及び観念を生ずる商標である。
他方で、両商標は、外観において、文字が横書きされているか二段書きされているかという差異、青色略正方形図形の有無の差異がある。
しかし、本件商標の「スマート介護」の文字部分は、「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなるところ、その文字は、太く大きく表示されており、本件商標において、取引者、需要者に対し自他役務識別標識として強く支配的な印象を与える部分であることは明らかである。そして、商取引の実際において、本件商標のように二段書きで書された文字を、使用商標1のように横一連に書されている文字に変更して使用されることは普通に行われており、両商標の文字の書体は共通する。
本件商標において、自他役務の識別標識としての機能は、「スマート介護」の文字部分にあり、この文字部分が取引者、需要者の記憶に強く印象付けられるものであって、両商標は、前述のとおり、同一の称呼及び観念を生ずることに加え、その文字の書体も共通することからすれば、自他役務識別標識として同一の機能を果たし、文字部分につき共通した印象を与えるものといえる。これに対し、本件商標の青色略正方形図形は、極めて単純なありふれた図形であり、格別特徴的なものではなく、本件商標の青色略正方形図形は、「スマート介護」の文字の背後に配されていることより、単なる背景図形とみるのが相当である。仮に何らかの図形であると連想できたとしても、近年、スマートフォンなどの普及により、画面中にアイコンが用いられることは一般的であり、そのアイコンには同じ略正方形図形が採用されていることも顕著な事実であることを考慮すると(乙5の2頁)、アイコンを表したものと容易に理解できる本件商標の図形部分は、取引者、需要者に特に顕著な印象を与えるものとはいい難い。それゆえ、本件商標においては「スマート介護」の文字以外に自他役務の識別標識としての機能を見いだせない。
そうすると、本件商標において、自他役務の識別標識としての機能は、「スマート介護」の文字部分にあり、当該文字部分が取引者、需要者の記憶に強く印象付けられるものであり、両商標は、「スマートカイゴ」の称呼、「洗練された介護」又は「情報処理機能を具えた介護」の観念をもって取引に資させるものというのが商取引の実際に照らし相当である。
したがって、両商標における外観の差異は、文字部分における共通した印象からすれば微差の範囲にとどまるものであって、使用商標1は、本件商標と商標本来の機能である自他役務識別標識としての実質的な差異はなく、社会通念上同一と認められる商標である。
上記被請求人の主張が正しいことは、審決例(乙10?乙12)からも明らかである。
(5)結語
以上によれば、被請求人は、要証期間内に日本国内において、取消請求役務中の「電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のカタログ及びウェブサイトについて、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標1及び使用商標2を付して頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供しているといえる(商標法第2条第3項第8号)。
したがって、本件商標に係る商標権者は、要証期間内に日本国内において、その請求に係る指定役務について、本件商標の使用をしているものである。
2 回答書における主張
(1)本件商標と使用商標1との同一性について
両商標は、「スマート介護」の文字に相応して、同一の「スマートカイゴ」の称呼を生じ、「洗練された介護」又は「情報処理機能を具えた介護」という同一の観念を生ずる。
両商標は、たとえ、外観において、「スマート」と「介護」を二段書きした構成か「スマート介護」を横書きした構成かの差異、青色略正方形背景の有無の差異があるとしても、共通する「スマート介護」の文字が取引者、需要者に対し自他役務識別標識として強く支配的な印象を与える部分であることは明らかであるから、自他役務識別標識として同一の機能を果たし、共通した印象を与える。
したがって、両商標における外観の差異は、文字における共通した印象からすれば微差の範囲にとどまるものであって、使用商標1は、本件商標と商標本来の機能である自他役務識別標識としての実質的な差異はなく、社会通念上同一と認められる商標である。
(2)乙第1号証について
乙第3号証のデジタルカタログは、乙第1号証のカタログと同一内容の情報で構成された電子媒体であるところ、請求人は、弁駁書の提出時に、少なくとも乙第3号証の内容は全て容易に確認できたはずであり、乙第1号証ないし乙第6号証からは、乙第1号証の530頁に「アルカリ乾電池」が掲載されていないという方が不自然といわざるを得ない。
(3)乙第7号証について
乙第7号証には、「一夢堂株式会社(スマ介)」との記載があり、「スマ介」が「スマート介護」の略語として自然に理解できるのみならず、「注文コード/商品名」の記載とカタログ記載の「品番・商品コード」の記載も整合する。
(4)乙第6号証について
乙第6号証は、「スマート介護Vol.5」と称するカタログの発刊の告知を掲載したウェブサイトの写しであり、その告知が要証期間内である平成30年5月10日になされていることは明らかである。乙第6号証は、本件サービスに関する広告(商標法第2条第3項第8号)であり、乙第6号証には、「アルカリ乾電池」その他の商品が掲載されている「スマート介護Vol.5」と称するカタログ(乙1、乙3)が表示されており、同カタログは「アルカリ乾電池」を含む各種商品の小売等役務に関するカタログであって、その表紙等には使用商標1が付されている。
「スマート介護公式ウェブサイト」(乙2)、報告書(乙4、乙5)を併せてみると、少なくとも使用商標1は、要証期間内に、乙第6号証において使用されていたものであり、上記カタログの内容を踏まえると、使用商標1の使用は「電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての使用といえる。
乙第6号証の2頁目の下方から3頁目の上方にかけて「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」なる項目があるが、その項目名の右側には使用商標1とともに、使用商標2が付されている。「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」なる項目には、乙第2号証の「スマート介護公式ウェブサイト」のURLが表示されており、このURLをクリックすることにより、本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる(乙2、乙3)。
商標法第50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきであるところ(知財高裁平成26年(行ケ)第10234号)、上記のように本件サービスを利用することができ、本件サービスを利用することにより「アルカリ乾電池」を含む各種商品を購入できることからすると、「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」の右側に付された使用商標1及び使用商標2も、要証期間内に、「電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について具体的に使用されていたといえる。

第4 当審の判断
1 認定事実
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、「スマート介護カタログ vol.5」の抜粋の写しであるところ、当該カタログの表紙の上部に使用商標1が表示されている。そして、2葉目の右下には、頁数とおぼしき「530」の表示があり、最上部の「アルカリ乾電池」の表示の下、乾電池の画像とともに、アルカリ乾電池の種別、品番、商品コード及び価格が表示されている。また、3葉目の下部には、郵便番号、住所、電話番号、FAX番号、インターネットアドレスとともに、「プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー」の表示がある。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
乙第2号証は、被請求人が本件サービスの公式ウェブサイトと主張するものであるところ、1葉目の左上部には、「プラスから生まれた/スマート介護/介護・福祉施設向けデリバリーサービス(「スマート介護」の文字が大きく表示されている。)」の表示があり、2葉目には、「デジタルカタログ」の見出しの下、乙第1号証の表紙に似た画像が表示されている。
乙第3号証は、被請求人が、乙第2号証に係るウェブサイトに表示されたデジタルカタログと主張するものであり、その体裁は、乙第1号証と同一である。
(3)乙第4号証について
乙第4号証は、被請求人代理人の記名押印のある報告書であり、「報告書(1)」のタイトルの下、右上に「平成31年1月16日」の記載があり、スマートフォンの画面に表示されるアイコン(使用商標2)の作成、表示に係る手順が記載されている。
(4)乙第5号証について
乙第5号証は、被請求人代理人の記名押印のある報告書であり、「報告書(2)」のタイトルの下、右上に「平成31年1月16日」の記載があり、アイコン(使用商標2)をタップすると、被請求人が運営している「スマート介護」と称するウェブサイトへ飛び、そのウェブサイトからデジタルカタログへリンクすること、当該デジタルカタログの530頁に電池に関する記載がある旨が記載されている。
(5)乙第6号証について
乙第6号証は、被請求人が本件サービスの告知用ウェブサイトと主張するものであるところ、1葉目には、「プラス、『スマート介護』vol.5カタログ発刊」の見出しの下、「2018.05.10」、「介護・福祉施設向けデリバリーサービス」、「■介護スタッフ向けにレクリエーション・リハビリPickUP版を同時発刊」、「■カタログ掲載約2万アイテム、WEB掲載約1,000万アイテム以上に拡充」の記載とともに、乙第1号証の表紙に似た画像が表示されている。そして、説明文中には、「プラス株式会社(略)は、介護・福祉施設向けデリバリーサービス『スマート介護』のvol.5カタログを本日、2018年5月10日に発刊いたしました。」の記載がある。そして、2葉目の下部には、「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」の記載があり、その右側には使用商標1(色彩は異なる。)及び使用商標2が表示されている。
2 判断
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、青色のグラデーションが施された隅丸四角形(以下「図形部分」という場合がある。)内に白抜きで「スマート」の文字と「介護」の文字を二段書きで表してなるものである。
(2)使用商標について
ア 使用商標1について
(ア)被請求人が、「スマート介護カタログ vol.5」及びそのデジタルカタログに付していると主張する使用商標1は、別掲2のとおり、青地に白抜きで「スマート介護」の文字を横書きしてなるものである(乙1、乙3)。
(イ)本件商標と使用商標1の社会通念上の同一性について
本件商標と使用商標1は、それぞれ前記(1)、上記(ア)のとおりの構成からなるものであるから、外観において顕著な差異を有している。
したがって、使用商標1は、本件商標と相違し、かつ、社会通念上同一の商標であるともいえない。
イ 使用商標2について
(ア)被請求人が使用していると主張する使用商標2は、別掲1のとおり、青色のグラデーションが施された隅丸四角形内に白抜きで「スマート」及び「介護」の文字を二段書きしてなるものである(乙4、乙5)。
(イ)本件商標と使用商標2の社会通念上の同一性について
本件商標と使用商標2を比較すると、それぞれ前記(1)、上記(ア)のとおりの構成からなるものであり、外観において同視されるものであるから、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
(3)使用商標2の使用役務について
ア 乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証及び乙第5号証は、使用商標2を使用している内容の報告書であるが、各報告書の作成日は、平成31年1月16日であり、要証期間外に作成されたものであるから、要証期間内に使用商標2を取消請求役務に使用した事実を直ちに証明するものではない。
イ 乙第6号証について
乙第6号証は、「スマート介護Vol.5」と称するカタログの発刊の告知を掲載したウェブサイトの写しであり、「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」の項目の右側に使用商標2の表示が確認できるものの、当該ウェブサイトには「電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る記載はないから、使用商標2を上記役務について使用したものとみることはできない。
ウ その他、使用商標2を要証期間内に取消請求役務について使用をした事実は認められない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標とは認めることはできず、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標であるとしても、これを要証期間内に取消請求役務について使用をしたものと認めることができない。
その他、被請求人が提出した乙各号証において、被請求人(商標権者)が、要証期間内に取消請求役務について、本件商標の使用をした事実を認めるに足りる証拠を見いだせない。
(5)被請求人の主張について
ア 被請求人は、過去の審決例(乙10?乙12)を挙げるとともに、「本件商標のように二段書きで書された文字を、使用商標1のように横一連に書されている文字に変更して使用されることは普通に行われており、両商標の文字の書体は共通する。また、本件商標の青色略正方形図形は、単なる背景図形とみるのが相当であるから、本件商標において、自他役務の識別標識としての機能は、『スマート介護』の文字部分にあり、両商標における外観の差異は、文字部分における共通した印象からすれば微差の範囲にとどまるものであって、使用商標1は、本件商標と商標本来の機能である自他役務識別標識としての実質的な差異はなく、社会通念上同一と認められる商標である。」旨主張する。
しかしながら、本件商標は、青色のグラデーションが施された隅丸四角形内に文字部分を白抜きで表してなるところ、図形部分と文字部分がまとまりよく一体的に表されており、構成全体としてアイコンと認識させるものであるから、「スマート介護」の文字を横一連に表した使用商標1とは、明らかにその外観が相違するものである。
そうすると、使用商標1と本件商標は、社会通念上同一の商標とはいえないものとみるのが相当である。
さらに、被請求人が挙げた審決例は、図形部分が文字部分の背景図形であるかどうか、文字の一部がモノグラム化しているかどうかの審決例であって、本件のように構成中の図形部分と文字部分が一体となって表されている商標とは事案を異にするものというべきである。
イ 被請求人は、乙第6号証の「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」の右側には使用商標1とともに、使用商標2が付されており、「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」の項目には、乙第2号証の「スマート介護公式ウェブサイト」のURLが表示されており、このURLをクリックすることにより、本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用して(乙2、乙3)、「アルカリ乾電池」を含む各種商品を購入できることからすると、「<「スマート介護」カタログVol.5概要>」の右側に付された使用商標1及び使用商標2も、要証期間内に、「電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について具体的に使用されていたといえる旨主張する。
しかしながら、アイコン(使用商標2)は、「スマート介護公式ウェブサイト」へ飛ぶための役目を果たすにすぎず、アイコン(使用商標2)が「電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について具体的に使用されていたとみることはできない。
ウ したがって、被請求人の主張はいずれも採用することはできない。
(6)むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、取消請求役務について、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定役務中「結論掲記の指定役務」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
【別掲1】
本件商標及び使用商標2(色彩は原本参照。)


【別掲2】
使用商標1(色彩は答弁書参照。)




審理終結日 2020-12-03 
結審通知日 2020-12-07 
審決日 2020-12-25 
出願番号 商願2014-23132(T2014-23132) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邉 あおい 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2014-09-05 
登録番号 商標登録第5700061号(T5700061) 
商標の称呼 スマートカイゴ、スマート、カイゴ 
代理人 藤森 裕司 
代理人 飯島 紳行 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ