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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y33 |
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管理番号 | 1371022 |
審判番号 | 取消2019-300100 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2019-02-08 |
確定日 | 2021-02-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4915760号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4915760号商標(以下「本件商標」という。)は、「安心院蔵」の文字を標準文字で表してなり、平成17年4月7日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年12月16日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、平成31年2月25日であり、その請求の登録前3年以内の同28年2月25日から同31年2月24日までの期間を以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、継続して3年以上日本国内において、「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」(以下「請求に係る指定商品」という。)について本件商標の使用をしていないものであるから、商標第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 請求人は、被請求人の答弁に対して、要旨次のとおり弁駁した。 (1)大分銘醸(株)の商品と縣屋酒造(株)(本件商標権者)の商品とは明確に区別されていて、本件商標権者が焼酎「安心院蔵」を製造していることを認める記述は存在しない(乙1、乙2)。 また、本件商標権者は焼酎の「小売」、つまり、大分銘醸株式会社が醸造した「安心院蔵」を販売しているだけである(乙3?乙6)。 焼酎の醸造は大分銘醸株式会社であって、本件商標権者が焼酎「安心院蔵」を製造(醸造)している事実を認めることはできない(乙4?6)。 さらに、焼酎「安心院蔵」(商品)のラベル(乙1?乙6)には、醸造元が「大分銘醸株式会社」であることが明記され、大分銘醸株式会社の印を付されている(甲3)。 以上のことから、本件商標権者が焼酎「安心院蔵」を製造(醸造)している事実及び本件商標権者が本件商標を使用していると認めることはできない。 認められるのは、本件商標を「大分銘醸株式会社」が使用しているという事実だけではある。 (2)本件商標について、本件商標権者から許諾された通常使用権者である大分銘醸株式会社が使用している旨の主張について 本件商標の設定登録日である平成17年12月16日において、本件商標権者の代表取締役は不在期間であるため(甲4-2)、商法(平成17年法律第87号での一部改正前、以下「旧商法」と記載する。)第258条第1項の規定により、Aが代表取締役としての権利義務を有していた。そして、Aは、大分銘醸株式会社の取締役であったことが明らかである(甲5-2)から、平成17年12月16日の時点において、本件商標権者が大分銘醸株式会社に通常使用権を許諾する行為は、利益相反行為に該当する。このため、本件商標権者及び大分銘醸株式会社は、取締役会において、当該通常使用権の許諾についての承認を受けなければならず(旧商法第256条第1項)、当該承認については、議事録を作成し、本店に10年間備置くことが求められている(旧商法第260条の4第1項・同条第5項)。しかしながら、平成17年12月16日の前後に、大分銘醸株式会社において、当該通常使用権の許諾に対し、取締役会での承認が行われた事実は存在しない(甲6)。 したがって、大分銘醸株式会社は、本件商標権者の通常使用権者の地位を有していない。そして、本件商標について、本件商標権者から許諾された通常使用権者が存在する事実も見受けられない。 よって、本件商標について、本件商標権者から許諾された通常使用権者が使用している事実は存在しない。 (3)なお、大分銘醸株式会社は、昭和59年7月12日に有限会社江本商店、本件商標権者、有限会社常徳屋酒造の3者合同で設立し、設立当初は、有限会社常徳屋酒造の敷地内に本店を置いていた(甲5-3)。現在の大分県宇佐市安心院町折敷田204番地の2には、平成14年11月1日に移転しているが(甲5-1)、これは、敷地の問題が生じたためであり、大分銘醸株式会社は毎年の地代を支出している(甲6)。また、平成15年から平成26年までは、有限会社江本商店及び本件商標権者社は、交代で大分銘醸株式会社の代表取締役を選出している(甲5-1、甲5-2)。 本件商標権者や大分銘醸株式会社のAは、答弁書(乙10)において、あたかも、大分銘醸株式会社は、本件商標権者とのみ密接な協力関係があるような記載をしている。しかし、前述のとおり、遅くとも平成26年までは大分銘醸株式会社は、商標権者以外にも利害関係者が存在し、「文書がなくても大分銘醸株式会社に本件商標の使用許諾がなされていたことに疑いの余地がない」ということはない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出している。 1 答弁の理由 (1)本件商標は、本件商標権者及び大分銘醸株式会社によって、請求に係る指定商品中「焼酎」に継続して使用している。 大分県宇佐市2018年2月発行の小冊子「宇佐ブランド認証品カタログ2018ウサノチカラ」(乙1)及び同2019年1月発行の「宇佐ブランド認証品カタログ2019ウサノチカラ」(乙2)にはそれぞれ本件商標権者の名と共に大分むぎ焼酎「安心院蔵」が宇佐ブランド認証品として掲載されており、この事実から本件商標が本件商標権者によって、少なくとも前記カタログ発行日である平成30年2月から現在に至るまで焼酎に継続的に使用されていることは明らかである。 なお、本件商標権者は醸造を主とする酒造メーカーであるが、同社は施設内に小売店舗を有しており、ここにおいて大分むぎ焼酎「安心院蔵」の小売販売も行っている(乙3)。 さらに、この焼酎「安心院蔵」の本件商標権者による過去3年間の継続的な使用は、製品のビン詰めを委託している大分銘醸株式会社発行の本件商標権者あての「2018年3月30日付納品書(写し)」(乙4)、同「2017年3月28日付納品伝票(写し)」(乙5)、同「2016年3月28日付納品伝票(写し)」(乙6)にそれぞれ「安心院蔵」と記載されている事実からも裏付けることが出来る。 (2)一方、前記納品伝票を発行した大分銘醸株式会社は、同社発行「陳述書」(乙10)にも記載されているとおり、本件商標権者ほか2社の共同瓶詰場、として発足した会社であるが、現在では酒類の販売も行っており、本件商標権者から得た本件商標「安心院蔵」の使用許諾のもと、本件商標「安心院蔵」を付して焼酎の販売を行っている(乙7、乙8)。同社の少なくとも過去3年間の継続的な使用実績は、日本盛株式会社発行の「大分銘醸株式会社あて出荷台帳(写し)」(乙9)に出荷日と共に同社から出荷された焼酎「安心院蔵」の数量が明記されていることからも明らかである。 なお、大分銘醸株式会社を通常使用権者とした通常使用権の設定登録は特に行われていないが、大分銘醸株式会社による「陳述書」(乙10)及び本件商標権者による「陳述書」(乙11)の陳述内容から、両社間に本件商標「安心院蔵」の使用許諾についての合意が成立しており、大分銘醸株式会社が本件商標「安心院蔵」についての通常使用権を保有していることは明らかである。 ちなみに、大分銘醸株式会社は、実質的に商標権者の敷地内に所在しており(乙12)、大分銘醸株式会社の社長のAは本件商標権者の社長Bの夫君であり、このような事情からも明らかなとおり、両社は密接な協力関係にあり、許諾契約書などの明文化された文書がなくとも、大分銘醸株式会社に本件商標の使用許諾がなされていたことに疑いの余地はなく、本件商標はこの通常使用権者である大分銘醸株式会社によって、過去3年の間、継続して使用されていたことは明らかである。 第4 当審の判断 1 事実認定 (1)被請求人が提出した証拠によれば、次の事実を認めることができる。 ア 乙第1号証は、大分県宇佐市2018年(平成30年)2月発行の小冊子「宇佐ブランド認証品2018 ウサノチカラ」の写しであって、そこには「江戸時代から続く酒蔵で製造・貯蔵を行う大分銘醸(株)。安心院盆地の自然を感じてほしいと造られた焼酎『安心院蔵』は、クセの無い飲みやすさで人気です。」の記載、「大分むぎ焼酎」、「安心院蔵(高精白)」、「大分むぎ焼酎」及び「安心院蔵(黒麹仕込)」の説明と共に、毛筆体風の文字で縦書きに「安心院蔵」(別掲1 以下「使用商標」という。)と表示されたラベルが付された「焼酎」(以下「使用商品」という場合がある。)の写真が掲載されていて、さらに「大分銘醸株式会社」(以下「大分銘醸」という。)の名称、同社の住所等も併せて記載されている。 イ 乙第2号証は、大分県宇佐市2019年(平成31年)1月発行の小冊子「宇佐ブランド認証品2019 ウサノチカラ」(以下「宇佐ブランド認証品2018 ウサノチカラ」と併せて「宇佐市のカタログ」という。)の写しであって、そこには上記アと同様の記載及び使用商標が表示されたラベルが付された「焼酎」の写真が掲載されている。 ウ 乙第10号証は、大分銘醸の代表取締役による「陳述書」の写しであり、大分銘醸は、商標権者が製造する焼酎を平成12年頃から「安心院蔵」の名称で焼酎を販売し、平成17年に本件商標権者が「安心院蔵」の商標登録を受けた後、「安心院蔵」の商標の使用を認められて、現在までその名称で焼酎を販売していること、「安心院蔵」の使用許諾に関する契約書の取り交わしは行っていないことを、陳述している。なお、陳述書に記載の大分銘醸の住所は、宇佐市のカタログに記載された住所と同一である。 エ 乙第11号証は、本件商標権者の代表取締役による「陳述書」の写しであり、本件商標権者は、本件商標「安心院蔵」を、その商標登録と同時に大分銘醸に使用許諾を行い、現在まで継続していることを陳述している。 オ 上記アないしエからすれば、大分銘醸は、使用商標を付した自社の製造による「焼酎」について、2018年(平成30年)2月及び2019年(平成31年)1月発行の宇佐市のカタログに広告を掲載したことが認められる。そして、大分銘醸と本件商標権者の陳述によれば、大分銘醸は本件商標権者から本件商標について黙示の許諾を受けているものと認められる。 2 判断 (1)使用商標について 本件商標は、「安心院蔵」の文字を標準文字で表した構成からなり、一方、使用商標は、上記1(1)ア及びイ(別掲1)のとおり、「安心院蔵」の文字を縦書きで表した構成からなるものであり、両者は、書体及び横書きと縦書きの相違があるものの構成文字を共通にするから、社会通念上同一と認められる。 (2)使用商品について 使用商品は「焼酎」であり、これは、本件審判の請求に係る指定商品「日本酒」の範ちゅうに含まれる商品である。 (3)使用時期について 大分銘醸が広告を掲載した宇佐市のカタログは、大分県宇佐市によって2018年(平成30年)2月及び2019年(平成31年)1月に発行されたものであって、カタログ等は発行後に展示又は頒布されることが一般的であり、また、カタログの発行月以降は、いずれも要証期間内であることからすれば、宇佐市のカタログは、いずれも要証期間内に展示又は頒布されたことが容易に推認できる。 そうすると、本件商標の使用期間は要証期間内と認められる。 (4)使用者について 大分銘醸は、使用商標が表示されたラベルが付されている使用商品の製造元であって、宇佐市のカタログにおいて使用商品の広告を行っているから、本件商標の使用者は大分銘醸である。 そして、大分銘醸は本件商標権者から本件商標について黙示の許諾を受けているものであるから、本件商標の通常使用権者である。 (5)小括 上記(1)ないし(4)からすれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間内に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品「日本酒」の範ちゅうに含まれる商品に関する広告に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して展示又は頒布したと認められ、この行為は商標法第2条第3項第8号に該当する。 3 まとめ 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標の通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したというべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 使用商標(色彩は原本参照) |
審理終結日 | 2020-07-21 |
結審通知日 | 2020-07-28 |
審決日 | 2020-08-17 |
出願番号 | 商願2005-30656(T2005-30656) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Y33)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 矢澤 一幸 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
岩崎 安子 大森 友子 |
登録日 | 2005-12-16 |
登録番号 | 商標登録第4915760号(T4915760) |
商標の称呼 | アジムグラ、アンシンイングラ、アンシンインゾー |
代理人 | 藤吉 繁 |
代理人 | 籾倉 了胤 |
代理人 | 特許業務法人安倍・下田国際特許事務所 |