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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W30
審判 全部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1370278 
異議申立番号 異議2020-900150 
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-28 
確定日 2021-01-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第6236086号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6236086号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6236086号商標(以下「本件商標」という。)は、「COOKIE MONSTA」の文字を標準文字で表してなり、平成30年12月17日に登録出願、第30類「チョコレート,菓子,キャンデー,ビスケット,ケーキ,洋菓子,パスタ,マカロニ,めん類,即席麺,スパゲッティの麺,バーミセリ,酵母,ベーキングパウダー,料理用重曹,食用粉類,ドレッシング,マヨネーズソース,食酢,ケチャップソース,ソース(調味料),即席パンのもと,冷凍パン生地,冷凍揚げパン,アイスクリーム,乳製品を含まない冷凍菓子,氷菓,コーヒー,茶,ココア,砂糖,米,タピオカ,サゴ,代用コーヒー,食パン,糖みつ,食塩,マスタード,穀物から作られた食用穀粉,香辛料,穀物・ハーブを含む茶飲料,グレービーソース,ハーブティー,はちみつ」を指定商品として、令和2年1月31日に登録査定され、同年3月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり、以下、これらをまとめて「引用商標」という。また、引用商標1ないし引用商標6は、現に有効に存続しているものである。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 「MONSTER」(標準文字)
指定商品 第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
登録出願日 平成22年7月8日
設定登録日 平成22年12月24日
2 登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲1のとおり
指定商品 第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」
登録出願日 平成18年6月9日
設定登録日 平成19年6月22日
3 登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 「MONSTER ENERGY」(標準文字)
指定商品 第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
登録出願日 平成22年7月8日
設定登録日 平成23年2月25日
4 登録第6176531号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 「MONSTER REHAB」(標準文字)
指定商品 第32類「炭酸飲料・エナジードリンク・その他のアルコール分を含有しない飲料,炭酸飲料・エナジードリンク・その他の飲料を製造するためのシロップ・濃縮物・粉末・その他の飲料製造用調製品,ビール,ビール製造用ホップエキス」並びに第5類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成30年8月27日
設定登録日 令和元年8月30日
5 登録第6096929号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 「MONSTER ENERGY ULTRA」(標準文字)
指定商品 第32類「炭酸飲料・エナジードリンク・その他のアルコール分を含有しない飲料,炭酸飲料・エナジードリンク・その他の飲料の製造用シロップ・濃縮物・粉末及び調製品,ビール,ビール製造用ホップエキス」並びに第5類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成29年10月16日
設定登録日 平成30年11月9日
6 登録第6138055号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 「MONSTER DRAGON TEA」(標準文字)
指定商品 第32類「アルコール分を含有しない飲料」及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
優先権主張 2018年7月3日 カナダ
登録出願日 平成30年12月26日
設定登録日 平成31年4月12日
7 申立人主張の全趣旨から、合議体が引用商標と認めたもの
「モンスター」の片仮名からなる商標(以下「引用商標7」という。)

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第471号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人の使用に係る「MONSTER」(以下「申立人商標」という場合がある。)の周知性について
(1)申立人の使用に係る商標と取扱い商品
ア 申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、創業以降、アルコールを含有しない飲料、すなわち、炭酸飲料、フルーツジュース、エネルギー補給用飲料等の様々な飲料製品の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事していたが、2015年(平成27年)6月からはエネルギー補給飲料(エナジードリンク)の事業に注力している(甲2、甲58)。
イ 申立人の使用に係る「MONSTER」は、申立人が2002年(平成14年)に創設した「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドの製品シリーズの出所識別標識としてブランド創設時から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものであり、同ブランドのエナジードリンク(以下「MONSTERエナジードリンク」という。)は、2002年(平成14年)に米国で最初に販売を開始後、日本では2012年(平成24年)5月から販売を開始し、現在では日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。申立人は2002年(平成14年)以降、現在まで継続して、MONSTERエナジードリンクには一貫して「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名が採用されており、各々の個別製品の包装容器には、特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字(甲416)を独立してみる者の目を弾き付ける態様で顕著に表示している(別紙1、別紙2)。
このように、「MONSTER」の文字及び申立人の使用に係る爪の図柄(以下「申立人図形商標」という。)を付した包装容器と個別製品名を使用したMONSTERエナジードリンク事業の成功は、経済界でも高い評価を受けている(甲2?甲33、甲51?甲58)。
ウ 2012年5月以降に、我が国において販売されたMONSTERエナジードリンク(リニューアル製品及び季節限定製品を含む。以下、「本件申立人商品」という。)は次のとおりである。
(ア)「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー 缶355ml)」(甲5、甲7、甲12、甲258、甲264)、「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー ボトル缶473ml)」(甲353?甲356)
(イ)「MONSTER KHAOS(モンスターカオス 缶355ml)」(甲6、甲7、甲14、甲128、甲130、甲259、甲264)
(ウ)「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)」(甲10、甲13、甲15、甲252?255、甲260、甲264)
(エ)「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)」(甲59、甲61、甲127、甲129、甲131、甲261、甲264)、「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 缶160ml)」(甲361)
(オ)「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー 缶250ml)」(甲60、甲62)
(カ)「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ 缶355ml)」(甲101?甲103、甲118、甲262、甲264)
(キ)「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ缶355ml)」(甲256、甲257、甲263、甲264)
(ク)平野歩夢コラボ缶 「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー スペシャルデザイン缶355ml)」及び「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ スペシャルデザイン缶355ml)」(甲58、甲291)
(ケ)「MONSTER CUBA LIBRE(モンスターキューバリブレ 缶355ml)」(甲323?甲326)
(コ)「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ 缶355ml)」(甲353、甲357?甲360)
(2)広告及び販売促進活動
申立人によるMONSTERエナジードリンクの広告及び販売促進活動は、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、本件申立人商品サンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む)、申立人図形商標と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている(別紙3?別紙7、別紙9)。
(3)ライセンスによる申立人商標の使用
申立人は、2002年(平成14年)から、ブレスレット、ラペルピン、キーホルダー、Tシャツ、スウェットシャツ、帽子、レーシングジャケット、手袋などのアパレル製品、運動用ヘルメット、バッグ類、ステッカー、傘、ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品はライセンシー等を通じてネットショッピングサイトでも販売されているほか、申立人がスポンサー参加するスポーツイベント等の会場で販売したり、イベント来場者に無料配布したり、本件申立人商品の販売キャンペーンの応募者・当選者に景品・商品として配布することもしている。(甲47、甲48、甲58、甲92?甲100、甲134?甲137、別紙7)。
これらのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?甲224、別紙8)。
(4)世界における商標出願及び登録
申立人は、エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について、引用商標をはじめとして、様々な構成の商標について日本を含む世界150を超える国及び地域で商標出願し、登録を取得している(甲432?甲469)。
(5)申立人のMONSTERエナジードリンクの国内市場占有率など
第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、2013年(平成25年)時点で申立人のMONSTERエナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており、それ以降も着実に売上げを伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、女性層にも知名度、人気を拡大している。また、実際の市場で申立人のエナジードリンクは「モンスター」と呼ばれ、「モンスター」の表記で認知されている(甲311?甲322、甲383?甲386 ほか)。
(6)小括
以上の事柄に照らせば、申立人の使用に係る「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品、とりわけ商品「エナジードリンク」の出所識別標識として国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標の構成文字「COOKIE MONSTA」は辞書等に採録されていない語であるところ、「COOKIE」は「ビスケットに類する洋菓子」等を意味する「クッキー(cookie)」として一般に知られているから、本件商標は「COOKIE」と「MONSTA」の2語からなるものと理解される(甲470、甲471)。
本件商標の指定商品はチョコレート、キャンディー等といった菓子を含む飲食料品であるから、これらに「COOKIE」の文字を使用しても、単に商品「クッキー」の普通名称、又は「クッキー」を使用した商品であるといった商品の品質又は特性に関わる表示として認識、理解されるにとどまり、自他商品識別標識としては機能しない。仮に、「COOKIE」の文字が自他商品識別標識として機能し得る場合があるとしても、「MONSTA」の文字と比較して、その出所識別力が極めて弱い。
そうすると、本件商標において自他商品識別標識として取引者、需要者に強い印象を与え商品の出所識別標識として機能するのは「MONSTA」の文字部分であり、当該文字部分と申立人の使用に係る「MONSTER」とは、外観、称呼において相紛らわしいものであるから、本件商標は申立人の使用に係る「MONSTER」と類似する。
加えて、本件商標を構成する「COOKIE MONSTA」は、申立人が「MONSTER」を使用している本件申立人商品の個別製品名と類似する方法で構成されたものであり、「MONST」の5文字及び「モンスタ」の4音を包含する点で本件申立人商品の個別製品名と一致する。
よって、本件商標と申立人の使用に係る「MONSTER」の類似性の程度は高い。
(2)本件指定商品は、コーヒー、茶、ココアなどの飲料製品、菓子類、スナック類を含む飲食料品であり、本件申立人商品と同一又は類似、あるいは、これと使用目的、効能、原材料、販売場所、提供場所、需要者の範囲が一致ないし重複し、関連性が極めて密接なものである。
本件商標の指定商品の最終的な需要者は一般消費者を含むから、通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
(3)申立人の使用に係る「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていた。
(4)したがって、本件商標が本件指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人の使用に係る「MONSTER」及び申立人を想起連想し、申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るもの(例えば、申立人商標のライセンシーの取り扱いに係る商品)であると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがある。
また、本件商標の使用は、申立人の商品の出所識別標識として広く認識されている申立人図形商標の出所識別力希釈化するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年(平成24年)5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、12月には累計157万箱となった(甲7?甲9)。
イ 申立人は、我が国において2013年(平成25年)5月に「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」(甲10、甲13、甲15)、2014年(平成26年)8月に「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジー M3)」(甲59、甲61)、同年10月に「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー)」(甲60、甲62)、2015年(平成27年)7月に「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ)」(甲101?甲103、甲118、甲262、甲264)、2017年(平成29年)6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ)」(甲256、甲257、甲263、甲264)、2018年(平成30年)4月に「MONSTER CUBA-LIBRE(モンスターキューバリブレ)」(甲323?甲326)、2019年(平成31年)4月に「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ)」(甲353、甲357?甲360)の販売を開始し、製品によってはリニューアルしたり、コラボ缶の製品を販売した(甲127、甲128、甲291 ほか)(以下、これら商品と上記アの商品をまとめて「申立人商品」という。)。
ウ 申立人商品のうち、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」(2016年(平成28年)5月から)、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」及び「MONSTER PIPELINE PUNCH」の容器には、別掲2のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲2商標」という。)又はこれと共に申立人図形商標が表示されている(甲7、甲10、甲59、甲101、甲130、甲257?甲263、甲357 ほか)。
また、「MONSTER COFFEE」の容器にはその中央に別掲2商標の上段のデザイン化された「MONSTER」の文字部分(以下「MONSTERロゴ」という。)と「COFFEE+ENERGY」の文字が2段に表示され、「MONSTER CUBA-LIBRE」の容器には、「MONSTERロゴ」が表示されており、さらにこれらの文字と共に申立人図形商標も表示されている(甲60、甲324 ほか)。
エ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲2商標又はこれと共に申立人図形商標を表示している(甲73?甲80、甲82 ほか)。
オ 我が国において、別掲2商標又はこれと共に申立人図形商標が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98 ほか)。
カ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標権(国際登録第1048069号など)を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169?甲224、別紙8)。
キ JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年(平成26年)7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。また、同消費者調査 No.232「エナジードリンク(2016年(平成28年)8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲312)。
ク 飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。
ケ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTER ENERGY」であった(甲319)。
コ JMR生活総合研究所による消費者調査データ No.269「エナジードリンク(2018年(平成30年)5月版)」には、「モンスター、レッドブル、リアルゴールド 寡占化すすむエナジードリンク市場」のタイトルのもと、「今回の調査では、『リアルゴールド(日本・コカコーラ)』『レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)・・・』『モンスターエナジー(アサヒ飲料)』の3ブランドがほとんどの項目で上位3位を独占した。」の記載がある。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking269.html)
また、同消費者調査データ No.293「エナジードリンク(2019年(令和元年)5月版)」には、「リアルゴールド、レッドブル、モンスターエナジー。3強上位独占」のタイトルのもと、「エナジードリンクの市場は、2桁の伸びの後に、2016年(平成28年)は対前年比5%増、2017年(平成29年)は同じく8%増とやや落ち着いたものの、依然として成長を続けている。」の記載がある。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking293.html)
サ 申立人及びアサヒ飲料株式会社は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスター」と表示しているものが見受けられ、また、両社以外のウェブページにおける当該キャンペーンについてのポスターやその他の記事においても「MONSTER」及び「モンスター」の文字が表示されているところ、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、申立人商品の画像又は別掲2商標若しくは「モンスターエナジー」の文字若しくはこれらの文字と共に申立人図形商標が表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101?甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124 ほか)。
(2)上記(1)のとおり、申立人は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで、計9種の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと推認できることに加え、2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)の調査において、いずれも申立人商品はエナジードリンクで3強の一つとされ、また、エナジードリンクの市場は2017年(平成29年)において成長を続けているとされていることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の登録出願の日(平成30年12月17日)前から、登録査定日(令和2年1月31日)はもとより現在においても継続して、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
そして、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に、「MONSTER ENERGY」の文字が別掲2のとおりの態様で表示されていること、常にこれと共に申立人図形商標が表示されていること、さらに、ニュースリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」と称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字並びに別掲2のとおりの態様に申立人図形商標を加えた態様は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料株式会社の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。
そうすると、「MONSTER ENERGY」の文字からなり、指定商品中に「エナジードリンク」を含む引用商標3、また、別掲2のとおりの態様に申立人図形商標を加えた態様からなり、指定商品中に「エナジードリンク」を含む引用商標2は、いずれも申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものというべきある。
しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における申立人商品の清涼飲料に対する市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品は、幅広い需要者層を有する一般的な清涼飲料の分野においてまでも、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
また、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているものがほとんどであり、MONSTERロゴのみが表示されている商品についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。
さらに、「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として表示又は掲載が見受けられるとしても、常に申立人商品又は「モンスターエナジー」若しくは別掲2商標の文字と共に表示又は掲載されていることからすれば、これに接する需要者は、そこに表示又は掲載された「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字を、申立人商品(「モンスターエナジー」)の一連の名称として使用されていることを前提に、申立人商品(「モンスターエナジー」)を指称する文字として理解するというべきである。
そうすると、申立人商品又は「モンスターエナジー」の文字若しくは別掲2商標と関連なく表示されている「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。
したがって、「MONSTER」の文字からなる引用商標1及び「モンスター」の文字からなる引用商標7は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
さらに、引用商標4ないし引用商標6は、いずれもそれらが使用された指定商品についての販売実績及び取引実績が確認できないから、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性について
本件商標の指定商品は、飲料や菓子などの飲食料品の一種であるから、申立人商品とは、飲食料品店を通じて一般消費者に向けて流通する商品である点で、販売部門や流通経路に関連性があり、需要者層も一部重複するものといえる。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人は、引用商標1「MONSTER」との関係で出所の混同を生ずるおそれがある旨主張していると認められるので、まず、その点について検討する。
ア 本件商標と引用商標1との類似性の程度
(ア)本件商標は、「COOKIE MONSTA」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中にスペースを有するとしても、本件商標を構成する文字は、同じ書体、同じ大きさにより、全体をまとまりよく一体的に表したものといえる。
また、本件商標は、その構成文字に相応して全体から生じる「クッキーモンスタ」の称呼は、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに、本件商標は、その構成中「MONSTA」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるとか、当該文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、かかる構成、称呼及び上記事情から、構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されると判断するのが相当である。
よって、本件商標は、たとえ、その構成中「COOKIE」の文字が「クッキー(ビスケットに類する洋菓子)」を意味する語であるしても、これに接する取引者、需要者は、該文字部分が指定商品の品質等を表示したものとして認識するというよりは、むしろ、本件商標の構成文字全体をもって特定の意味合いを有しない造語と認識するというべきであるから、これより特定の観念を生じない。
したがって、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「クッキーモンスタ」のみの称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標1は、「MONSTER」の文字からなり、該文字に相応し「モンスター」の称呼を生じ、「怪物」の観念を生じるものである。
なお、「MONSTER」の文字は、上記1のとおり申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、当該「MONSTER」の文字が「怪物」の意味を有する我が国で広く親しまれた英単語であることから、申立人商標は、上記のとおり「怪物」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
(ウ)そこで、本件商標と引用商標1との類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「COOKIE MONSTA」と引用商標1の構成文字「MONSTER」の比較において、両者は「MONST」の部分を共通にするとしても、その前後における「COOKIE」の有無及び「T」に続く欧文字の差異を有し、これらの差異が両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。 次に、本件商標から生じる「クッキーモンスタ」と引用商標1から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、両者は「クッキー」の音の有無という差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標1からは「怪物」の観念が生じるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれがない非類似の商標であって、その類似性の程度も極めて低い別異の商標というべきものである。
イ 出所混同のおそれ
上記2のとおり、本件商標の指定商品と申立人商品とは、販売部門や流通経路、需要者層においてある程度関連性があるとしても、上記1のとおり、引用商標1は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記アのとおり、本件商標と引用商標1は相紛れるおそれがない非類似の商標であって、類似性の程度も極めて低い別異の商標というべきものであること、引用商標1は、その構成文字「MONSTER」が我が国で広く親しまれた英単語であって独創性の程度が低いことから、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標1を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(2)また、本件商標は、引用商標2ないし引用商標7との関係において、出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標は引用商標1「MONSTER」の出所表示力を希釈化するおそれが高いなどとして、本件商標は、商標法の精神及び国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、引用商標1は需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記3(1)アのとおり、本件商標と引用商標1とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、類似性の程度も極めて低い別異の商標というべきものであり、また、本件商標は引用商標1を連想又は想起させることのないものである。
そうすると、本件商標は、引用商標1の出所表示力を希釈化する、その名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、商標法の精神及び国際信義に反するものであるなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲
1 引用商標2




2 申立人の商品の容器に表示されている商標


異議決定日 2021-01-05 
出願番号 商願2018-153988(T2018-153988) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W30)
T 1 651・ 271- Y (W30)
最終処分 維持  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 岩崎 安子
大森 友子
登録日 2020-03-16 
登録番号 商標登録第6236086号(T6236086) 
権利者 インターナショナル フードスタッフス シーオー エルエルシー.
商標の称呼 クッキーモンスタ、モンスタ 
代理人 ▲吉▼川 俊雄 
代理人 柳田 征史 

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