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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41 |
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管理番号 | 1370189 |
審判番号 | 取消2019-300207 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2019-03-15 |
確定日 | 2020-12-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4775913号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4775913号商標の指定役務中、第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4775913号商標(以下「本件商標」という。)は、「クレデンシャル」の片仮名を標準文字で表してなり、平成14年4月4日に登録出願、「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与」を含む第41類、第35類、第38類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同16年6月4日に設定登録され、更新登録が同26年7月8日になされたものである。 なお、本件審判の請求の登録(予告登録)は、平成31年4月8日になされたものであり、本件審判の請求の登録前3年以内を、以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書及び弁駁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「乙第○号証」を「乙○」のように省略して記載する。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務中、第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与」(以下「請求に係る役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していないものであるから、商標法第50条第1項の規定により、その役務についての登録は取り消されるべきものである。 2 弁駁書の要旨 被請求人が提出した証拠(乙1?乙4)によっては、以下のとおり、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認められない。 (1)乙1の1ないし乙1の4及び乙4の1ないし乙4の4は、表紙に「クレデンシャル(R)」((R)は、○内に「R」の文字が付されていることを表す。以下同じ。)の文字、下部に本件商標権者の名称、及び日付の記載がある。 さらに表紙の下部には「クレデンシャル(R)は、株式会社トムスの登録商標です」との記載がある。 そして、乙1の1ないし乙1の4は、DVD-RにPDF形式で記録されている。 「電子出版物」とは、「CD-ROM等の記録媒体やインターネットなどで提供される電子化された出版物」であり、また、「電子出版物の提供」とは、「電気通信回線を通じて電子出版物を供覧させるサービス」である(特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説(国際分類第10版対応)」参照)。 すなわち、「インターネットなどで提供されるダウンロード可能な電子出版物」や「(CD-ROM等の)記憶媒体に記録された電子出版物」は、第9類に属する商品となり、また、「インターネットなどで提供されるダウンロードすることができない電子出版物」は、第41類の「電子出版物の提供」に属する役務となる。 乙1の1ないし乙1の4は、DVD-RにPDF形式で記録されているので第9類の「電子出版物」に属する商品にはなり得るが、第41類の「電子出版物の提供」に属する役務となることはない。 したがって、乙1の1ないし乙1の4及び乙4の1ないし乙4の4によっては、被請求人が、本件商標を第41類「電子出版物の提供」について使用している事実を証明したものとは認められない。 (2)乙2及び乙3は、本件商標権者が平成29年10月31日に、株式会社ピース(以下、「ピース社」という。)に宛てた納品書(乙2)及びピース社が同日付けで本件商標権者に宛てた受領書(乙3)であり、件名の項に「クレデンシャル(R) vol.001?vol.004」、摘要の項に 「クレデンシャル(R)」、数量の項に「1」の記載があるが、代価の記載がない。 商標法でいう「役務」は、他人のためにする労務又は便益であって、付随的ではなく独立して市場において取引の対象となり得るものであるから、対価と引き換えに取引されるのが一般的である。代価の記載なく提供された電子出版物は、本件商標権者の何らかの商品・役務の宣伝広告のために納品されたものといわざるを得ない。 したがって、乙2及び乙3によっては、被請求人が、本件商標を第41類「電子出版物の提供」について使用している事実を証明したものとは認められない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、審判事件答弁書、上申書及び回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙9(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁書及び上申書の要旨 被請求人は、要証期間内に日本国内において、その請求に係る第41類の指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与」中、「電子出版物の提供」について本件商標を使用している。 (1)乙1は、乙1の1ないし乙1の4が格納されたDVD-Rである。乙1の1から乙1の4は、サービスマークとしての本件商標「クレデンシャル(R)」を使用した電子出版物「Vol.001」ないし「Vol.004」の内容を示す電子データである(乙1の1ないし乙1の4の電子出版物をまとめていうときは、「本件電子出版物」という。)。 Vol.001はcredential-vol1.pdfとして、Vol.002はcredential-vol2.pdfとして、Vol.003はcredential-vol3.pdfとして、Vol.004はcredential-vol4.pdfとして上記DVD-Rに格納されている。 乙1の1に係る電子出版物Vol.001のデータcredential-voll.pdfは平成29年4月28日に作成され、乙1の2に係る電子出版物Vol.002のデータcredential-vol2.pdfは同年6月30日に作成され、乙1の3に係る電子出版物Vol.003のデータcredential-vol3.pdfは同年8月28日に作成され、乙1の4に係る電子出版物Vol.004のデータcredential-vol4.pdfは同年10月31日に作成されたものである。 (2)乙2は、乙1の1ないし乙1の4に係る電子出版物をピース社に納品した事実を示す平成29年10月31日付の納品書である。 (3)乙3は、前記納品書に応じてピース社が被請求人に発行した同日付けの受領書である。 (4)乙5は、乙1の1ないし1の4に係る電子出版物をピース社に納品した事実を示す平成29年10月31日付の請求書である。 なお、乙1の1ないし乙1の4に係る電子出版物のハードコピーが、乙4の1ないし乙4の4である。 したがって、本件商標は、その指定役務である「電子出版物の提供」について予告登録日前3年以内に日本国内において使用していたことは明らかである。 2 審尋に対する回答 当審において、DVD-Rに格納された電子出版物を譲渡する行為は、インターネット等を通じて提供する役務についての本件商標を使用する行為とは認められない、並びに納品書(乙2)及び請求書(乙5)に記載の被請求人の住所は商標登録原簿に記載の商標権者の住所と一致しない、とする審尋に対し、被請求人はこの認定を認めるとともに、新たに乙6ないし乙9を提出し、次のとおり回答した。 (1)納品書(乙2)及び請求書(乙5)に記載された被請求人の住所は、被請求人の事業所であり、証左として事業所の賃貸契約書(乙6)を提出する。 (2)乙7の図は、令和2年7月17日時点におけるレンタルサーバー(「Loli Pop」(GMOペパボ株式会社))に保存されている被請求人のホームページ情報の、平成25年5月13日から令和元年5月31日までの変更履歴であり、本件電子出版物は、平成25年5月13日の時点でレンタルサーバーにアップロードされ、令和元年5月31日の更新時においても当該データは削除されておらず、閲覧に供される状態にあった。 (3)本件電子出版物の見積書の通信欄の記載から、本件電子出版物は、少なくとも2017年(平成29年)10月16日頃、ウェブ上に有償閲覧されることを前提にアップロードされていた(乙8)。 (4)本件商標の使用は、商標法第2条第3項第7号の「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」に当たる。 なお、ウェブサイトには電子出版物としての本件電子出版物について、ダウンロード機能を用意しておらず、また、当該ファイルにはコピーガードが施してあり、何人もウェブ上の本件電子出版物をダウンロードできないし、表示されたファイルの内容の一部又は全部をコピー・ペーストすることもできず、本件商標は、「電子出版物の提供」をする際のサービスマークとして使用されている。 乙9は、平成25年5月13日にレンタルサーバー「Loli Pop」にアップロードしたクレデンシャル(R)Vol.001の内容を画面表示した際のキャプチャ画像であり、これから「クレデンシャル(R)」が電子出版物であるクレデンシャル(R)Vol.001の供覧にサービスマークとして使用されていたことは明らかである。 第4 当審の判断 1 被請求人の立証責任 商標法第50条による商標登録の取消しの審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。 すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、(1)本件要証期間に、(2)日本国内において、(3)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、(4)請求に係る役務のいずれかについての、(5)本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることを全て証明する必要がある。 2 本件電子出版物を譲渡することについて (1)被請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば、以下のとおり認めることができる。 ア 乙1の1から乙1の4は、表紙の上部に「クレデンシャル(R)」、「Vol.001、2017.4 株式会社トムス」、下部に「クレデンシャル(R)は、株式会社トムスの登録商標です」と記載され(乙1の1)、同様に、「Vol.002 2017.6」(乙1の2)、「Vol.003 2017.8」(乙1の3)、「Vol.004 2017.10」(乙1の4)と記載された電子出版物(本件電子出版物)であり、これらのデータがDVD-Rに格納されている(乙4)。 イ 本件電子出版物のデータは、平成29年4月28日、同年6月30日、同年8月28日、同年10月31日にそれぞれ作成された(被請求人の主張)。 ウ 乙2は、被請求人からピース社宛ての平成29年10月31日付けの納品書であり、件名として「クレデンシャル(R)vol.001?vol.004」、数量「1」の記載がある。 エ 乙3は、ピース社が被請求人宛てに発行した平成29年10月31日付けの受領書であり、件名、数量は乙2の納品書と一致する。 オ 乙4の1ないし乙4の4は、それぞれ電子出版物Vol.001?Vol.004のデータファイルcredential-voll.pdf、credential-vol2.pdf、credential-vol3.pdf、及びcredential-vol4.pdfのハードコピーである(被請求人の主張)。 カ 乙5は、被請求人からピース社宛ての平成29年10月31日付けの請求書であり、件名として「クレデンシャル(R)vol.001?vol.004」、数量「1」の記載がある。納品書(乙2)及び請求書(乙5)に記載された被請求人の住所は、被請求人の事業所の住所である(乙6)。 (2)本件商標の使用の判断 「電子出版物の提供」とは、「電子出版物の内容を電気通信回線(例えばインターネット)を通じて供覧する」ものと解されるところ、前記(1)によれば、被請求人が要証期間内にピース社に、「クレデンシャル」の文字を使用した本件電子出版物を譲渡(販売)したことが認められるものの、上記行為は、商品としての「電子出版物」を譲渡する行為に該当するとはいい得るとしても、乙1ないし乙5の証拠からはインターネット等を通じて電子出版物を供覧するものとはいえず、「電子出版物の提供」について本件商標を使用したものとは認められない。 なお、被請求人は、審尋に対する回答において、DVD-Rに格納された電子出版物を譲渡(販売)する行為は、本件商標の指定役務「電子出版物の提供」に使用する行為とは認められないことについては、認める旨述べている。 3 電子出版物の提供について (1)被請求人は、電子出版物としてのクレデンシャル(R)Vol.001?Vol.004のファイル(以下、これらをまとめて「本件ファイル」という。)が、平成25年5月13日から令和元年5月31日までの期間、レンタルサーバーにアップロードされ、閲覧に供される状態にあったことから、本件商標の使用は、商標法第2条第3項第7号の「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」にあたる旨主張し、新たな証拠を提出しているので、以下検討する。 ア 乙7は、「LOLI POP! RENTAL SERVER FTP」のタイトルの下、パソコンの画面上にフォルダ名「toms」、更新日「2019/5/31/00:00:00」、種類「フォルダ」、その下にフォルダの中のファイル名「credential」の記載(乙7の1頁)、フォルダ名「credential」、更新日「2013/5/13/00:00:00」、種類「フォルダ」、その下にフォルダの中のファイル名「credential01.html」?「credential04.html」の記載(乙7の4頁)がある。 なお、乙7はパソコン画面の写しであるが、パソコン画面上の日付は「2020/07/17」と表示されている。 イ 被請求人からピース社宛ての2017年10月16日付け見積書(乙8)には、件名「クレデンシャル(R) vol.001?vol.004」、通信欄に「クレデンシャル(R)情報サービスでは、企業、個人、教育機関が最適に連携する事により得た情報を基に人材育成支援及び採用活動支援のためのビデオや電子冊子をWEB上で有料公開し又は格納CDを販売しております。」との記載がある。 ウ レンタルサーバー(乙7)にアップロードしたクレデンシャル(R)Vol.001の画面とされるもの(乙9)には、「クレデンシャル(R)」の文字、下部に「vol.001 2009/10/07」の記載があり、「Credentials事始」を表題とする文章が掲載されている。なお、乙9はパソコン画面の写しであるが、パソコン画面上の日付は「2020/07/18」と表示されている。 (2)本件商標の使用の判断 前記(1)アのレンタルサーバーの画面(乙7)は、本件ファイルのファイル名が表示されているにすぎないものであり、同画面において被請求人が電子出版物の閲覧に係る役務を具体的に提供していた事実は認められない。 また、乙7のレンタルサーバーに2013年(平成25年)5月13日にアップロードされたクレデンシャル(R)Vol.001の画面とされる乙9は、電子出版物を提供するためのウェブサイト画像ではなく、電子出版物自体を表示した画面であると認められる。 そうすると、たとえ乙9の画面に「クレデンシャル」の文字が表示されているとしても、当該表示は電子出版物自体への表示であって、電子出版物を提供するためのウェブサイト画面への表示ではないから、映像面を介した「電子出版物の提供」に当たりその映像面に本件商標を表示していると認めることはできない。 加えて、被請求人発行の見積書(乙8)の「通信欄」の記載からは、被請求人が、「クレデンシャル(R)情報サービス」の表示の下、ビデオや電子冊子をWEB上で有料公開していることがうかがえるものの、「クレデンシャル(R)情報サービス」なるサービスを提供するウェブサイト画面に係る証拠の提出がないから、当該サービスの提供にあたりその映像面に本件商標を表示しているものと認めることもできない。 したがって、被請求人が要証期間内に「クレデンシャル」の文字を使用して、請求に係る役務である「電子出版物の提供」を行ったことを認めることができない 4 小括 以上のことから、被請求人の提出に係る乙各号証によっては、被請求人である本件商標の権利者が要証期間に本件商標をその請求に係る役務に使用した事実を認めることができない。 5 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その請求に係る指定役務について、本件商標を使用していることを証明したものということができない。 また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定役務中、「結論掲記の指定役務」について、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-10-26 |
結審通知日 | 2020-10-28 |
審決日 | 2020-11-11 |
出願番号 | 商願2002-27232(T2002-27232) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(Y41)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
中束 としえ |
特許庁審判官 |
山田 啓之 木村 一弘 |
登録日 | 2004-06-04 |
登録番号 | 商標登録第4775913号(T4775913) |
商標の称呼 | クレデンシャル |
代理人 | 中村 幸雄 |
代理人 | 義村 宗洋 |
代理人 | 中尾 直樹 |