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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2016900235 審決 商標
異議2015900307 審決 商標
無効2011890023 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W39
管理番号 1369117 
審判番号 無効2017-890047 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-07-20 
確定日 2020-11-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5860284号の1の1商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5860284号の1の1の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5860284号の1の1商標は、「マリカー」の片仮名を標準文字により表してなり、平成27年5月13日登録出願、第12類、第35類及び第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年9月9日に登録査定、同28年6月24日に設定登録された登録第5860284号商標の商標権の分割に係るものであって、第39類「船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供」を指定役務として平成29年3月29日を受付日とする商標権の分割の登録がされたものである。
そして、当該登録商標に係る商標権の権利者の表示は、その後、平成30年6月12日受付で「株式会社MARIモビリティ開発」に変更され、更に、令和元年5月30日受付で分割及び権利移転がされた結果、以下のとおりの指定役務及び権利者となった。
1 登録第5860284号の1の1の1の1商標(以下「本件商標1」という。)
指定役務:第39類「船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供但し、船舶・航空機・乗物・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供を除く但し、フロントカウル及びフロントフェアリング及びサイドポンツーンを備え、かつ高さが750mm以下で、かつ乗車定員が1名の、4輪乗用自動車(またがり式座席、又はバーハンドル、又はヘッドレスト、又はフェンダーを備えるものを除く)の貸与(訪日客向けを除く)及びこれに関する情報の提供を除く」
権利者 :ドライブスーパーカー株式会社
2 登録第5860284号の1の1の1の2商標(以下「本件商標2」という。)
指定役務:第39類「フロントカウル及びフロントフェアリング及びサイドポンツーンを備え、かつ高さが750mm以下で、かつ乗車定員が1名の、4輪乗用自動車(またがり式座席、又はバーハンドル、又はヘッドレスト、又はフェンダーを備えるものを除く)の貸与(訪日客向けを除く)及びこれに関する情報の提供」
権利者 :株式会社MARIモビリティ開発
3 登録第5860284号の1の1の2商標(以下「本件商標3」という。)
指定役務:第39類「船舶・航空機・乗物・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供」
権利者 :ドライブスーパーカー株式会社
以下、本件商標1ないし本件商標3をまとめていうときは、「本件商標」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証(枝番号を含む。なお、枝番号全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 無効理由の根拠条文
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号並びに同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とすべきである。
2 審判請求の利益
請求人は、昭和22年11月に設立され、娯楽用具、運動具、音響機器及び乗物の製造及び販売、ゲーム、映像及び音楽等のコンテンツの制作、製造及び販売、キャラクター商品の企画、製造及び販売並びに知的財産権の許諾等を業とする株式会社である(甲2)。
請求人は、全世界での累計販売本数が平成26年12月末日時点で1億本を超えるゲームソフトシリーズである「マリオカート」シリーズを平成4年8月27日に発売して以来、現在までに全9作を開発・発売をしており、シリーズ名称としての「マリオカート」は周知・著名性を獲得している。
そして、本件商標を構成する「マリカー」は、遅くとも平成8年頃から現在に至るまでの長期にわたって様々なメディア(ゲーム雑誌、テレビ番組、大学の調査報告、漫画作品等)や多数のユーザーにおいてシリーズ名称「マリオカート」シリーズの略称として広く一般に使用されていることから、本件商標をその指定役務に使用する場合、当該役務が請求人と経済的に又は組織的に何等かの関連性があると取引者及び需要者に誤認させるおそれがあり、かつ、かかる本件商標の使用は請求人が開発・販売している「マリオカート」シリーズに化体されている信用にフリーライドするとともにかかる信用を希釈化するものであることから、請求人は本件審判の請求をすることにつき利害関係を有している。
3 無効理由
(1)はじめに
本件商標を構成する片仮名「マリカー」は、請求人が開発・販売している「ゲームシリーズ名」として周知・著名性を獲得している商標「マリオカート」の略称としてゲーム業界では広く知られている。そして、かかる略称について、「レースゲームソフト」と関連性のあるサービスが含まれている本件商標の指定役務において、請求人以外の第三者が商標登録を取得し、それを独占的に使用することは著名商標「マリオカート」との間でその出所につき誤認・混同を生じるおそれがある。その上、著名商標「マリオカート」の略称である「マリカー」の無断使用は「マリオカート」に蓄積されている信用にフリーライドをするものであり、本件商標の指定役務に含まれる「公道カートレンタルサービス名称」として著名商標「マリオカート」の略称である「マリカー」をあえて採択し、使用することは、信義則に反するばかりではなく商標法の目的に反するものである。
(2)請求人が開発・販売している「マリオカート」シリーズがゲーム業界において著名性を獲得していることについて
請求人は、ゲーム史上最も有名なゲームキャラクターとしてギネス・ワールド・レコーズに発表されたキャラクター「マリオ」が登場するゲームソフトシリーズを開発・販売している(甲4)。
「マリオ」は、請求人を代表するゲームキャラクターであり、世界的なイベントであるリオデジャネイロオリンピックの閉会式において、日本が生み出したキャラクターの代表として大きく扱われるなど、世界的に著名な存在となっている(甲5)。
そして、「マリオカート」は、「マリオ」シリーズに登場する「マリオ」を始めとして、請求人が生み出した様々なキャラクターがレースを繰り広げるレースゲームであり、請求人は、平成4年8月27日に発売されたスーパーファミコン用ソフト「スーパーマリオカート」を第1作目として、Nintendo Switch用ソフト「マリオカート8デラックス」(平成29年4月28日発売)に至るまで、9本の「マリオカート」シリーズのゲームソフトを開発販売している(甲6)。
このうち、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(以下「コンピュータエンターテインメント協会」という。)が年1回発刊している「2015年CESAゲーム白書」(甲7)によれば、平成26年12月31日の時点で、最初の作品である「スーパーマリオカート」(甲6の1)は、国内出荷本数382万本、世界累計出荷本数876万本を記録しているが、これはスーパーファミコン用の全ソフト中、最高の販売本数である。また、NINTENDO64用ソフト「マリオカート64」(甲6の2:平成8年12月14日発売)は、国内出荷本数224万本、世界累計出荷本数987万本を記録しているが、これはNINTENDO64用の全ソフト中、最高の販売本数である。さらに特筆すべきは、Wii用の「マリオカートWii」(甲6の6:平成20年4月10日発売)の販売本数であり、国内出荷本数383万本、世界累計出荷本数3526万本を記録しており、同作品は、世界における歴代ミリオン出荷タイトルの3位にランクインしている。そして、最近では、Wii U用ソフト「マリオカート8」(甲6の8:平成26年5月29日発売)が、平成26年12月末時点で、国内出荷本数103万本、世界累計出荷本数477万本を記録している。
このように、「マリオカート」シリーズの全世界での累計販売本数は、平成26年12月末時点で1億本を超えており、同作品が世界有数のゲームシリーズであることは明らかである。
上記に加えて、「マリオカート」シリーズの各ゲームソフトは、その発売前から発売後約2、3か月の時期で、ゲーム雑誌の人気ランキングにおいて、上位にランクされており、かかる事実は、「マリオカート」シリーズが大変な人気を集めていることを示すものである(甲9、甲10)。
また、「マリオカート」シリーズの各ゲームソフトは、ゲーム雑誌のみならず、一般雑誌のゲームに関する記事においても、請求人のゲーム機における「大本命」のゲーム作品であり、また、「誰もが一度はプレイしたことがある」ゲームシリーズとして取り上げられている(甲11)。
さらに、「マリオカート」シリーズの各ゲームソフトは、ゲーム作品としての価値も、社会的に高く評価されており、例えば、コンピュータエンターテインメント協会が主催する日本ゲーム大賞において、「マリオカートWii」が、日本ゲーム大賞2009年(平成21年)の年間作品部門において大賞を受賞して大々的に表彰されている(甲12の1)。「マリオカート」シリーズの他の作品も同様であり、日本ゲーム大賞においては、例えば、「マリオカートDS」が日本ゲーム大賞2006(平成18年)の年間作品部門優秀賞(甲12の2)、「マリオカート7」が日本ゲーム大賞2012年(平成24年)の年間作品部門優秀賞(甲12の3)、そして、「マリオカート8」が日本ゲーム大賞2015(平成27年)の年間作品部門優秀賞を受賞している(甲12の4)。
また、週刊ファミ通2017年7月13日号に掲載された「レース&スポーツゲーム総選挙」でのランキングにおいても、「スーパーマリオカート」が1位に選ばれたほか、5位に「マリオカート8デラックス」が、7位に「マリオカート64」が、17位に「マリオカート7」が、19位に「マリオカートDS」が、それぞれランクインしている(甲12の5)。
以上述べたとおり、「マリオカート」シリーズは、きわめて高い人気を誇るゲームシリーズであり、また、一般雑誌においても「誰もが一度はプレイしたことがある」ゲームシリーズとして掲載されるほどの高い知名度を獲得している。
かかる請求人の主張は、2013年(平成25年)6月26日にニュースリリースされた東京工芸大学による「ウェアラブル・コンピュータに関する調査」で紹介されている「メガネ・ゴーグル型端末向けに制作されたらプレイしたいゲームタイトル」の上位15位中の第2位に「マリオカート」がランクされており、男性では第4位、女性では第2位にランクされていることからも裏付けられる(甲13)。
このように、「マリオカート」はゲームのシリーズ名称を特定する商標としての知名度を我が国のみならず世界においても本件商標の登録出願時及び登録査定時において既に確立している。
(3)著名商標「マリオカート」の商品化事業等について
請求人が開発・販売している「マリオカート」シリーズは、その獲得した著名性に基づき、国内有数の大企業を含む多数の企業との間で、「マリオカート」シリーズについて、多岐にわたるコラボレーション商品・ライセンス商品が展開されている。
ア 株式会社タカラトミー、株式会社バンダイナムコエンターテインメント、株式会社サンアート及びスケーター株式会社のライセンス商品(甲15の1?4、甲15の19?24)。
イ 日本マクドナルド株式会社、メルセデス・ベンツ日本株式会社、Pennzoil社(ペンゾイル)、京都府警察、京都府並びに日本道路公団中部支部及び名古屋高速道路公社との間でのコラボレーション活動(甲15の5?18)。
上記の極めて多岐にわたるライセンス商品の広告・宣伝並びにコラボレーション活動は、「ゲームシリーズ名」として著名性を獲得している「マリオカート」の知名度がゲーム業界に留まることなく非常に広範な領域において浸透しているからこそ行われるものである。特に、自動車や自動車用品メーカーであるメルセデス・ベンツ日本株式会社やPennzoil社とのコラボレーションや京都府警察との自動車関連犯罪防止ポスター・チラシ及び防犯イベントに関するコラボレーション、京都縦貫自動車道開通直前フリーウォークイベントにおけるコラボレーション、日本道路公団中部支部及び名古屋高速道路公社との国道23号の夜間通行止めに関するテレビコマーシャルにおけるコラボレーションが行われた事実は、「マリオカート」が自動車等でレースを繰り広げるゲームであることによる「マリオカート」と自動車関係の領域との親和性の高さや、「マリオカート」が自動車関係の業界での高い著名性を獲得していることを裏付けるものである。
さらに、本件商標の指定役務に属する「公道カートレンタルサービス」業界においては、「公道カートでゲームの世界を体験しよう!」といった宣伝文句のもと、公道カートを貸与することでゲームソフト「マリオカート」の世界を現実に体験させるサービスが行われていることが示すとおり、同サービスが属する業界においても商標「マリオカート」は高い著名性を獲得している。
(4)本件商標を構成する片仮名「マリカー」が商品「ゲームソフトウェア」が属する取引業界においてはもちろんのこと本件商標の指定役務が属するサービス分野においても著名商標「マリオカート」の略称として認識されていることについて
言語学上、独立性を持つ語どうしが結合してできる大きな単語である複合語は、二語が結合している分だけ一語より長くなることから、短縮される可能性が高くなるところ、複合語の各要素の語頭から二拍ずつを採るパターンは、部分結合形式の短縮形の中では最も基本的なものとされ、人名、地名、会社名から普通名詞まで広範囲に観察されており(甲16の1)、特に、外来語の略語としてこのパターンに分類される多くの例があることが指摘されている(甲16の2)。
その具体例としては、普通名詞では「エンジンストール」が「エンスト」等、固有名詞でも「ランドクルーザー」が「ランクル」、新語でも「アラウンドサーティ」が「アラサー」と略され(甲16の2?4)、同様に、ゲーム機やゲームソフトの分野における複合語は、例えば、「プレイステーション」が「プレステ」、「ドラゴンクエスト」が「ドラクエ」等といったように、複合語からなるゲーム機やゲームソフトのシリーズ名称は、複合語を構成する各要素の語頭から二拍ずつをとるパターンで略称されており(甲16の5?22)、ゲームソフトのシリーズ名である著名商標「マリオカート」も「マリオ」と「カート」の二語が結合してなる複合語であることから、「マリオカート」を構成する各要素の語頭から二拍ずつを採り、「マリ」と「カー」とを組み合わせた構成からなる「マリカー」と略されている。
そして、本件商標を構成する「マリカー」は、著名なゲームソフトのシリーズ名である「マリオカート」の略称として、ゲーム業界では周知・著名性を獲得し、ゲーム雑誌において「マリオカート」の略称として「マリカー」と記載されている(甲17)。
また、ゲーム関係の雑誌等に限らず、複合語の「ゲームソフトのシリーズ名」を各要素の語頭から二拍ずつを採る略称で特定することが広く一般に行われていることは、小説(甲18)においてゲームのタイトルであることの説明の記述はもとより、何らの注釈もなく用いられていることからも明らかである。
同様に、「マリカー」は「マリオカート」の略称として様々なメディアにおいて用いられ(甲19)、また、2013年6月26日付の東京工芸大学の「ウェアラブル・コンピュータに関する調査」においても、メガネ型端末でプレイしたいゲームタイトルとしてシリーズ名称である「マリオカート」ではなく同シリーズ名称の略称である「マリカー」が用いられ(甲13)、さらに、「マリオカート」を何らの注釈なしに「マリカー」と表記する例は、一般の読者を対象とした著名な漫画作品やテレビアニメなどにも見られる(甲20)。
このように、一般の視聴者や読者を対象としたテレビ番組、著名な漫画作品やテレビアニメにおいても何らの注釈なしに片仮名「マリカー」が表示され、音声「マリカー」がテレビを通じて流されているのは、「マリカー」が請求人の著名登録商標「マリオカート」の略称であることが視聴者や読者に自明であることを前提としているものである。
かかる請求人の主張は、多くの一般需要者による情報発信においても「マリカー」の名称が「マリオカート」シリーズの略称として広く使用されている事実からも裏付けられ、例えば、Web上において一短文のつぶやき(ツイート)の投稿を共有する情報サービス(ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNSサービス))であるTwitterにおいて、「マリカー」の語を含む多数のツイートがなされており、その数は、本件商標の登録出願日前日である平成27年5月12日では、一日当たり約600件にも上り(甲21の1)、請求人が「マリオカート8」を発売した同26年5月29日には一日当たり約3000件にも上った(甲21の2)。なお、Twitterのアンケート機能により「あなたはマリカーがなんのゲーム名の略か知ってますか?」というアンケートには、3万6246人の回答者のうち、95パーセントの回答者が「知ってる」と回答し(甲21の3)、「あなたは『マリカー』と聞いて、任天堂のレースゲーム『マリオカート』を連想しますか?」というアンケートには、684人の回答者のうち、94パーセントの回答者が「はい」と回答している(甲21の4)。
これに加えて、動画共有サービス「YouTube」においても、「マリカー」の語をタイトルに含む動画が7万件以上も投稿されており、その中には100万回を超えて再生されている動画も含まれている(甲21の5)。
また、一般ユーザーが開設している「マリオカート」シリーズのゲーム作品の攻略サイトにおいても、「マリカーの館」という題名が付され(甲21の6)、さらに、不特定かつ極めて多数の読者がいることが想定される、人気の高い著名人の発言においても「マリカー」の使用例が存在する(甲21の7?10)。
このように、「マリカー」の名称が、「マリオカート」シリーズの略称として広く一般に認知され、使用されている名称であることは、遅くとも平成8年(甲17の1)から現在までの20年以上の長期にわたり、上述した様々なメディア(ゲーム雑誌、テレビ番組、大学の調査報告、漫画作品等)や、著名人を含むTwitterでの多数のユーザーにより「マリカー」の語が使用されていることから裏付けられる。
これらの証拠資料は、片仮名「マリカー」の語は、商品「ゲームソフト」が属するゲーム業界の取引者及び需要者間ではもちろんのこと、商品「ゲームソフト」と関連性がある商品及び役務の取引者及び需要者間においても著名商標「マリオカート」と同義であって、商標「マリオカート」から生じる「任天堂株式会社によるマリオを始めとするキャラクターがレースを繰り広げるゲーム」という観念が本件商標を構成する片仮名「マリカー」からも生じ、著名商標「マリオカート」に化体されている信用が「マリカー」に化体されていることを示しており、「マリカー」は著名商標「マリオカート」で特定される提供元である任天堂株式会社と同一の提供元を特定する識別標識として機能していることを示すものである。
同様に、本件商標の指定役務をそのサービス内容の一部とする「公道カートレンタルサービス」業界においても、商標「マリオカート」が著名性を獲得していることから、「マリオカート」の略称である「マリカー」は著名商標「マリオカート」を容易に想起、観念させるものである。
(5)本件商標の権利者及び関係者について
ア 本件商標の権利者の代表取締役は平成29年1月まで、住所を東京都品川区北品川とされ(甲22の1)、本件商標の権利者と代表取締役を同じくする本件商標の権利者の関連会社である「マリカーホールディングス株式会社」の本店所在地も、東京都品川区北品川とされているところ(甲22の2)、当該場所と本店又は支店の所在地を同じくし、本件商標の権利者と事実上同一であるか、少なくとも極めて密接な関係が存在することが推認される法人等として、A社ほか4社(甲22の3?7)など多数が存在しているが、これらの関係者によっても、不正競争に該当するようなドメイン名の取得、ひょう窃的な商標登録出願、濫用的な不使用取消審判の請求が多数行われている。
イ 本件商標の権利者は、自ら運営するウェブサイトのタイトルを、平成28年8月時点においては「【マリカー】日本最大級レンタル公道カート&ツアー|リアルマリオカートを楽しもう!」とし、また、「選べるコスプレ」と題する項目では、「みんなでコスプレして走れば、リアルマリオカートで楽しさ倍増。」と記載していた(甲23の1)。しかし、平成29年2月10日時点においては、本件商標の権利者のウェブサイトにおける「リアルマリオカート」という記載が「リアルマリカー」に変更されている(甲23の2)。記載の変更前後で記載の客観的な意味内容が変わらないはずであることに鑑みれば、本件商標の権利者自身も「マリカー」が「マリオカート」シリーズの略称であることを認識した上で上記のような表示の変更をしているといえる。また、平成29年1月6日時点において、Google.Incが提供する「Googleマップ」において、「リアルマリオカート」を検索すると、本件商標の権利者の住所が表示され、本件商標の権利者のウェブサイト及び電話番号が表示されていた(甲24の1)ことから、本件商標の権利者は、自らの店名として「リアルマリオカート」を登録していたことは明らかであり、このことも、本件商標の権利者自身が、「マリカー」が「マリオカート」シリーズの略称であることを認識していることを示すものである。
また、「マリカー」という単語は、一般的な辞書には掲載されておらず(甲25)、ゲームソフトシリーズ「マリオカート」の略称として以外にはそれ自体一般的な意味を有しない単語であり、ましてや「船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供」の指定役務において一般的に使用されるような単語ではないことは明らかであるところ、本件商標の権利者は、本件商標を使用して、請求人の開発販売する著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」に登場するキャラクターのコスチュームを貸し出した上、「スーパーマリオのコスプレをして乗れば、まさにリアルマリオカート状態!!」や「みんなでコスプレして走れば、リアルマリオカートで楽しさ倍増」といった宣伝文句で、「マリオカート」の世界観にフリーライドした公道カートのレンタルサービスを営んでいる(甲23の1、甲26の1)。加えて、本件商標の権利者についての現地報告書(甲26の2)が示すとおり、本件商標の権利者は、顧客に対して有償でカート、コスチュームその他の機器、物品等をレンタルする営業を行うに際して、従業者にも「マリオカート」シリーズに登場するキャラクターのコスチュームを着用させて公道カートの先導等の接客業務を行わせているほか、同権利者の店舗に巨大な「マリオ」の人形を設置している。
かかる権利者の行為は、請求人が長年の営業努力により築き上げた「マリオカート」、「マリカー」及び「マリオ」に化体した高いブランドイメージにフリーライドすることによって、高い信用・名声・評判を有するに至った請求人の著名な商標とそれを使用してきた請求人との結びつきを弱め、「マリオカート」等の著名な商標の価値を毀損してしまうおそれがある。この点、本件商標の権利者は「マリカー」の表示を使用して公道カートレンタルサービスを展開しているが、本件商標の権利者の営む公道カートのレンタルサービスにおいて事故が相次いでいることや、事故実態に関して国土交通省が調査を行うことが報道されており、本件商標の権利者に関するこれらの報道に際して「マリオカート」、「マリカー」や「マリオ」といった語が使用されることで、あたかも請求人が交通事故を起こした主体であるか、請求人のゲーム作品である「マリオカート」が当該事故と何らかの関係があるかのように思われ、請求人が築き上げた「マリオカート」、「マリカー」及び「マリオ」に化体した高いブランドイメージは明らかに毀損され始めている(甲27)。
ウ 小括
本件商標を構成する片仮名「マリカー」は、請求人の開発販売する著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」の著名な略称である「マリカー」と同一であること、本件商標の権利者自身も「マリカー」が「マリオカート」の略称であることを認識していたと推認されること、本件商標の「マリカー」という文字構成は、一般的な辞書には掲載されておらず、ましてや「船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供」の指定役務において、一般的に使用されるような言葉ではなく「マリオカート」の略称として以外に当該役務に属する業界において採択する理由がなく、現に、本件商標の権利者が本件商標を使用して「マリオカート」の世界観にフリーライドした営業を行っており、かかる本件商標の権利者の行為によって、請求人が築き上げた「マリオカート」、「マリオ」及び「マリカー」に化体した高いブランドイメージが毀損されていること、更には所在地を同じくするなど、本件商標の権利者と事実上同一であるか、少なくとも極めて密接な関係が存在することが強く推認される法人等により、請求人をはじめとする他社が使用する商標と同一又は類似の商標をひょう窃的に出願したとしか考えられない商標が多数出願されたり、不正競争に該当するようなドメイン名の取得及び保有が行われたりしており、その中には「マリオカート」を初めとした請求人の知的財産に関するものも多数含まれていること、以上の事実を総合考慮すると、本件商標は、請求人の著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」の著名な略称である「マリカー」と同一の商標を独自に選択して出願したものとは考えられず、むしろ、本件商標の登録出願日の時点においても、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」の略称である「マリカー」の著名性を知りつつ、これが正当な権利者というべき請求人によって商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、「マリカー」の著名性に乗じて不正の利益を得る目的又は請求人に損害を加える目的その他の不正の目的でひょう窃的に出願したものといわざるを得ない。
(6)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
ア 本件商標と請求人の著名商標「マリオカート」との類似性の程度について
本件商標を構成する「マリカー」は請求人の著名商標「マリオカート」を直ちに想起させることから、両者は同一の観念を有しているものであり、両者は類似する。
つまり、本件商標の指定役務が属する取引業界の取引者及び需要者間においても、請求人の著名商標「マリオカート」が広く知られており、ゲーム業界において「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く知られていることから、著名商標「マリオカート」と同様に「マリカー」も「ゲームソフト」の提供元として「任天堂株式会社」を特定するものであり、本件商標「マリカー」と請求人の著名商標「マリオカート」との類似性は極めて高いものといえる。
イ 本件商標が本件商標の権利者が創作した語ではないことについて
本件商標を構成する片仮名「マリカー」は、請求人の著名商標「マリオカート」の著名な略称であり、本件商標の権利者自身も「マリカー」が「マリオカート」シリーズの略称であることを認識していた。そして、「マリカー」という単語は、一般的な辞書には掲載されておらず(甲25)、ゲームソフトシリーズ「マリオカート」の略称として以外には、それ自体一般的な意味を有しない単語であることは明らかであって、本件商標「マリカー」は権利者の商標として周知・著名性を獲得したものではなく、かつ、次に述べるように「ゲーム業界」と本件商標の指定役務に含まれる「公道カートレンタルサービス」とが密接な関係性を有していることに鑑みても、本件商標は権利者の独創による創作語でなく、むしろ著名商標「マリオカート」の略称が登録されていないことを奇貨としてその名声に乗じようとしたことは明らかである。
ウ 本件商標の指定役務と商品「ゲームソフトウェア」との関連性、取引者及び需要者の共通性その他の取引の実情について
(ア)関連性について
請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」が自動車等でレースを繰り広げるゲームであり、自動車との親和性が高いことから、本件商標の指定役務「自動車の貸与及びその情報の提供」に含まれる「公道カートレンタルサービス」においても、しばしば「マリオカート」と関連付けて宣伝や紹介がされている(甲32の1、2)。
本件商標の権利者自身も、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオ」シリーズのキャラクターである「マリオ」や「ルイージ」などのコスチュームを貸し出した上で本件商標を使用して「一人乗りの公道カートのレンタカー&ツアーサービス」を行っており(甲23の1)、同権利者提供のチラシにおいて「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状態!」といった宣伝文句が記載されているほか、同権利者の品川店のウェブサイトにおいても「スーパーマリオのコスプレをして乗ったらマリオカート状態!!」であるとか、「みんなでコスプレして走れば、リアルマリオカートで楽しさ倍増。」といった宣伝文句を記載し、「マリオカート」シリーズのメインのキャラクターである「マリオ」や「ルイージ」のコスチュームを着て同社の「公道カートレンタルサービス」を受けている人々の写真画像を紹介するなど(甲26の1)、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」の世界観にフリーライドしたサービスを提供し、本件商標の指定役務である第39類の「自動車の貸与及びその情報の提供」に本件商標を使用している。
そして、これらの例にみられるような「自動車の貸与及びその情報の提供」の役務と「マリオカート」とを関連付けて宣伝や紹介を行うことは、本件商標の登録出願日前から行われていた(甲32の3、4)。
このように、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」を前提に、「マリオカート」に登場するキャラクターに扮してカートで走ることでレースゲームである「マリオカート」の世界を現実に体験させるサービスが本件商標の登録出願日以前から存在していたこと自体、本件商標の登録出願日の時点においても商標「マリオカート」が「乗物・自動車の貸与及びその情報の提供」の役務分野において著名性を獲得していたことを示すものであるほか、「乗物・自動車の貸与及びその情報の提供」等の役務が「レースゲーム」と密接な関連性を有していたことを示すものである。
したがって、「マリオカート」で特定される「レースゲームソフト」と本件商標の指定役務である第39類の「乗物・自動車の貸与及びその情報の提供」とは関連性がある。
(イ)取引者及び需要者の共通性その他の取引の実情について
本件商標の指定役務が属する取引分野、特に「乗物・自動車の貸与及びその情報の提供」が属する取引分野である公道カートのレンタルサービスにおいて、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」と関連付けた宣伝や紹介が行われていることからも、著名商標「マリオカート」が、かかるサービスが属する取引分野において顧客吸引力を獲得しており、本件商標の指定役務に属する「マリオカート」に登場するキャラクターにふんしてカートで走ることでレースゲームである「マリオカート」の世界を現実に体験できるサービスは、「マリオカート」を知っており、「マリオカート」の世界を現実に体験したいと考えている需要者にとってこそ存在価値がある。
したがって、請求人のゲームソフトシリーズと「乗物・自動車の貸与及びその情報の提供」等の役務の主たる需要者層は共通している。
エ 小括
以上のとおり、本件商標の登録出願当時においても、その指定役務中の特に「乗物・自動車の貸与及びそれらに関する情報の提供」が属する取引分野においては、本件商標を構成する「マリカー」の語は、請求人の提供に係る「ゲームソフト」のシリーズ名称である「マリオカート」の略称として周知・著名な「マリカー」に密接に関連するものとの認識を生じさせることは明らかである。
そして、本件商標の指定役務中、特に「乗物・自動車の貸与及びそれに関する情報の提供」が「マリオカート」の略称「マリカー」で特定される「レースゲームソフト」と関連性を有していることをも併せて考慮すると、本件商標をその指定役務、特に「乗物・自動車の貸与及びそれに関する情報の提供」に使用する場合、その需要者及び取引者において、かかる役務が請求人から本件商標についての使用許諾を受けた者など、請求人又は請求人の経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務又は商品であると誤認し、役務又は商品の出所につき、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある。
上記請求人の認識は、請求人による本件商標の権利者に対する訴訟提起(甲3)についてなされたTwitterでのツイートからも裏付けられ(甲33の1?6)、同様に、このニュースについて取り上げたインターネット上の各ニュースサイトも、各種コメント(甲33の7?12)を行っている。
これらのツイート及び記事は、「マリカー」が「マリオカート」の略称として周知・著名性を獲得していることを示すとともに、本件商標の権利者が「マリカー」の商標を使用していたことにより、実際に混同が生じていたことを示すものである。これらのツイート及び記事自体は本件商標の登録出願日以後の資料ではあるが、請求人は、これらのツイート及び記事が本件商標の出願時における著名商標「マリオカート」に化体されている信用が「マリカー」にも化体されていたこと、ひいては本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することを推認させる資料として十分な適格性を有していると考える。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(7)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当することについて
ア 本件商標が著名商標「マリオカート」に類似することについて
本件商標を構成する「マリカー」は、請求人の著名商標「マリオカート」と同一の提供元を特定する機能を発揮するものであり、本件商標の使用は明らかに不正の目的を有していることから、本件商標「マリカー」は著名商標「マリオカート」に類似する。
イ 本件商標が不正の目的をもって使用するものであること
本件商標は、請求人の開発販売する著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」の著名な略称である「マリカー」と同一であること、本件商標の権利者自身も「マリカー」が「マリオカート」の略称であることを認識していたこと、本件商標の「マリカー」という文字構成は、一般的な辞書には掲載されておらず、「マリオカート」の略称として以外にはそれ自体意味を有する一般的な単語ではなく、ましてや「船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供」の指定役務において一般的に使用されるような言葉ではなく、「マリオカート」の略称として以外に当該役務に属する業界において採択する理由がなく、現に、本件商標の権利者が本件商標を使用して「マリオカート」の世界観にフリーライドした営業を行っており、かかる本件商標の権利者の行為によって、請求人が築き上げた「マリオカート」、「マリオ」及び「マリカー」に化体した高いブランドイメージを毀損していること、更には所在地を同じくするなど、本件商標の権利者と事実上同一であるか、少なくとも極めて密接に関係していることが強く推認される法人等により、請求人をはじめとする他社が使用する商標と同一又は類似の商標をひょう窃的に出願したとしか考えられない商標が多数出願されたり、不正競争に該当するようなドメイン名の取得及び保有が行われたりしており、その中には「マリオカート」を初めとした請求人の知的財産に関するものも多数含まれていること、以上の事実を総合考慮すると、本件商標は、請求人の著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」の著名な略称である「マリカー」と同一の商標を独自に選択して出願したものとは考えられず、むしろ、本件商標の登録出願日の時点においても、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」の略称である「マリカー」の著名性を知りつつ、これが正当な権利者というべき請求人によって商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、「マリカー」の著名性に乗じて不正の利益を得る目的又は請求人に損害を加える目的その他の不正の目的でひょう窃的に出願したものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(8)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することについて
本件商標は、請求人の著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」の著名な略称である「マリカー」と同一の商標を独自に選択して出願したものとは考えられず、むしろ、本件商標の登録出願日の時点においても、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」の略称である「マリカー」の著名性を知りつつ、これが正当な権利者というべき請求人によって商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、「マリカー」の著名性に乗じて不正の利益を得る目的又は請求人に損害を加える目的その他の不正の目的でひょう窃的に出願したものといわざるを得ない。
かかる本件商標の権利者の商標出願行為は社会的妥当性を欠くものであり、商標登録出願について先願主義を採用している我が国の法制度を前提としても、健全な法感情に照らし条理上許されないものというべきであり、また、商標法の目的(商標法第1条)にも反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであるから、本件商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 弁駁における主張の要旨
(1)本件商標に係る需要者等について
被請求人は、本件において、周知・著名性を判断する前提となる「需要者」は、本件商標に係る車両を含むレンタル事業(以下「本事業」という。)におけるサービスの提供を受けている者、すなわち、公道を走行することができる車両等を借りて公道を運転する運転免許を保有する、主に、日本へ観光目的で来た外国人、在日米軍関係者、在日大使館員など外国人(以下「訪日外国人」という。)である旨を主張している。
上記被請求人の主張は、商標法第4条第1項第15号の「混同を生ずるおそれ」や周知・著名性の判断主体は、本件商標の指定役務の一般的、恒常的な需要者ではなく、被請求人が本件商標を現在使用している役務の需要者と主張する「訪日外国人」に限られる旨をいうものと解される。
しかしながら、「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべき」(最高裁平成12年7月11日判決言渡、平成10年(行ヒ)第85号)ものであり、また、「商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すのであって、単に該商標が現在使用されている特殊的、限定的なものを指すものではない」(最高裁昭和49年4月25日判決言渡、昭和47年(行ツ)第33号)ものであるところ、被請求人の役務「公道カートのレンタルサービス」の需要者が「訪日外国人」であることを前提とする主張は、「混同を生ずるおそれ」の判断主体とすべきは「本件商標の指定役務の取引者及び需要者」ではなく、現在における特殊的、限定的な該商標の使用の実情であると主張するものであって、かかる主張が失当であることは明らかである。
また、本件において周知・著名性の判断時期は、本件商標の登録出願日である平成27年5月13日であるが(商標法第4条第3項)、被請求人の設立は、平成27年6月4日であり(甲22の1)、この事実は、本件商標の登録出願時においては、被請求人の事業は開始されてはいないことを示すものである。
したがって、本件における周知・著名性判断の主体は、本件商標の登録出願時における被請求人の事業である「公道カートのレンタルサービス」をも含んだ「船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供」の一般的、恒常的な需要者であると解さざるを得ないが、被請求人は、この一般的、恒常的な需要者が訪日外国人であるとの主張・立証を行っておらず、上述した「公道カートのレンタルサービス」の需要者が「訪日外国人」であるとの被請求人の主張は失当である。
さらに、被請求人のウェブサイト(甲23)の記載並びに被請求人のチラシ、その他の文書等(甲26)の言語、内容、店舗の所在地等に照らせば、被請求人の「公道カートのレンタルサービス」の需要者には日本語を解する者も当然に含まれることが明らかであり、この点からも被請求人の主張は失当である。
なお、アンケート(乙3)は、本件商標の登録出願日以降の平成29年2月から4月頃にかけて回収されたものであり、本件商標の登録出願日以前の事実を推認させる証拠としては証拠価値の乏しいものであり、さらに、当該アンケートの集計結果は、平成29年2月から平成29年4月頃までの3か月間の間に利用者に記入させた、ごく限られた期間における任意のアンケートの結果であるほか、当該アンケートにおいても、人数的には相当数の日本人が利用者としてアンケートに答えていることが示されているだけでなく、上述のとおり、被請求人の役務である「公道カートのレンタルサービス」の宣伝のために日本語による複数のウェブサイトが開設され、日本語のチラシやアンケートが使用されているのであるから、被請求人の「公道カートのレンタルサービス」の需要者には日本語を解する者も当然に含まれることが明らかであり、この点からも被請求人の主張は失当である。
(2)「マリカー」の周知・著名性について
ア 被請求人は、本事業の需要者が訪日外国人であると主張しているが、かかる被請求人の主張は失当である。さらに、被請求人は、請求人の著名なゲームシリーズ名「マリオカート」は「マリカー」の他に「マリカ」とも略称される(乙4)旨主張しているが、かかる請求人の主張は、「マリオカート」が「マリカー」の他に「マリカ」とも略称されることをいうものにすぎず、「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く認識されていないことを何ら証明するものではない。
被請求人は、乙第4号証の1を引用して、動画配信サイトYouTubeにおいて、「マリカ」で検索すると11万5千件の「マリカ」を略称と表示する「マリオカート」の動画が検索される、と主張しているが、YouTubeの検索窓を使用して「マリカ」を検索すると、「マリカ」の文字を含む動画が全て検索結果として表示される結果、語中に「マリカ」の文字を含む「マリカ」以外の語も検索結果から除外されずに検索件数に算入されてしまい、さらに、それらの検索結果がいずれも「マリオカート」の動画であることについての証明もないことから、乙第4号証の1は「マリオカート」の略称として「マリカ」を使用し、「マリカー」を使用していない動画の数を証明するものではない。
また、被請求人が提出した乙第4号証の2ないし乙第4号証の13は、いずれも個人のブログなどの中で「マリオカート」が「マリカー」の他に「マリカ」とも略称される例があることを示すものにすぎないばかりか、これらの証拠のうち、乙第4号証の2、乙第4号証の3及び乙第4号証の8の各証拠中においても、ユーザーが「マリカー」の語を「マリオカート」の略称として用いている例が見受けられること、さらには、乙第4号証の12において著者が行っている「皆さんはマリカ派ですか?それともマリカー派ですか?」という問いかけも、「マリカー」という略称が広く用いられていることを前提とするものであることからすれば、これらの証拠は「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く認識されていることを示すものではあっても、「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く認識されていないことを何ら証明するものではない。さらに、乙第4号証の1ないし乙第4号証の13のうち、本件商標の登録出願時前の証拠は、乙第4号証の4及び乙第4号証の11のみに限られ、これらの証拠は本件商標の登録出願日以前の事実を推認させる証拠としては証拠価値の乏しいものである。
以上のとおり、被請求人による上記主張は、「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く知られているとの請求人の立証を覆すものではなく、「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く知られている点については、請求人が提出した証拠によって、「マリカー」がゲームソフト「マリオカート」の略称として、遅くとも平成8年頃にはゲーム雑誌において使用されていたこと(甲17)、少なくとも平成22年頃には、ゲームとは関係性の薄い漫画作品においても何らの注釈を付することなく使用されることがあったこと(甲20)、本件商標の登録出願日の前日である平成27年5月12日には、その一日をとってみても、「マリオカート」を「マリカー」との略称で表現するツイートが600以上投稿されたこと(甲21の1)、本件商標の登録出願後においても、平成29年2月24日に不正競争行為及び著作権侵害行為の差止等及びこれらの行為から生じた損害賠償を求める訴訟(以下「本訴訟」という。)の提起に係る報道が出された後には、複数の一般人やニュースサイトが、被請求人の社名である「マリカー」(審決注:本件商標の権利者は前記第1に記載のとおり、表示変更並びに分割、権利移転により、現在の権利者は、「株式会社MARIモビリティ開発」及び「ドライブスーパーカー株式会社」である。)が請求人のゲームシリーズ「マリオカート」を意味するにもかかわらず、被請求人が請求人から許可を得ていなかったことに驚く内容の投稿をしたこと(甲33)、さらに、平成28年6月4日にTBS系列で放映されたテレビ番組において、人気アイドルグループのK氏が、子供の頃から請求人のゲームシリーズである「マリオカート」の略称として「マリカー」を使用していたと発言していたこと(甲35)から十分に立証できている。
イ 被請求人は、甲第16号証に基づく請求人の主張について、「マリオカート」の略称を「マリカ」と認識している者も多いことから、請求人の主張は何ら根拠をなさないものと主張している。
しかしながら、請求人は、これら甲各号証により、商取引の経験則上、「マリオカート」は「マリカー」と略称され易いことを主張したものであって、「マリカー」以外に「マリカ」が「マリオカート」の略称であると認識している者がいるとの被請求人の主張は、そもそも請求人の主張に対する反論になっていない。
さらに、被請求人は、被請求人が本件商標を現在使用している役務の需要者は「訪日外国人」であるとして、欧文字「MariKar」や「MariKa」の周知・著名性についても言及しているが、既に述べたとおり、被請求人が本件商標を現在使用している役務の需要者であると主張する「訪日外国人」を周知・著名性の判断主体とする被請求人の主張は、現在における特殊的、限定的な該商標の使用の実情に関する主張であって、かかる主張が失当であることは明らかである。
請求人が提出した、甲第16号証ないし甲第21号証、甲第33号証及び新たに提出した甲第35号証により、「マリカー」が「マリオカート」の略称として本件商標の登録出願時に広く知られているとの主張が、十分に立証できている。
(3)本件商標と「マリオカート」との類似性について
被請求人は、本件商標「マリカー」と「マリオカート」とは外観において明確に区別でき、称呼においても明瞭に聴別ができること、観念においても本件商標が特定の観念を生じるとはいえないものであって、「マリオカート」が請求人商品を認識するものであるから観念においても類似しない旨述べている。
しかしながら、本件商標を構成する片仮名「マリカー」が請求人の著名商標「マリオカート」の略称として広く知られていることから、観念上、「マリカー」と「マリオカート」とは類似する。そして、氷山事件(最三小判昭和43・2.27民集22巻2号399頁)の判断基準に従い、片仮名「マリカー」の外観、観念、称呼等によって本件商標の指定役務に含まれる「公道カートのレンタルサービス」の取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察し、しかも、その具体的な取引状況に基づいて判断を行えば、本件商標「マリカー」と「マリオカート」とは出所の混同が生じるおそれがあることから、類似する。
さらに、商標法第4条第1項第15号に関する商標審査基準(甲36)において、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」の考慮事由として、(i)出願商標とその他人の標章との類似性の程度、(ii)その他人の標章の周知度、(iii)その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか等が掲げられているところ、(i)本件商標「マリカー」と「他人の標章」たる請求人の標章「マリカー」は同一であること、(ii)「マリカー」が請求人の著名商標「マリオカート」の略称として広く知られた標章であること、(iii)造語である「マリオカート」の略称である「マリカー」も、それ自体造語であることからすれば、本件商標が請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であることは明らかである。
(4)出所の混同について
被請求人は、以下の理由から本件商標と請求人の引用する商標において出所の混同を生ずる余地はないと主張している。
ア 被請求人は、「マリカー」の周知度の判断主体は訪日外国人を基準とすべきであると主張しているが、この被請求人の主張が失当であることについては、上記(1)及び(2)で既に述べたことがそのまま妥当である。
イ 被請求人は、請求人が示した「マリカー」に関する証拠は、全て請求人以外の第三者による行為であって、請求人自身が「マリカー」表示を自ら使用していることについて何らの主張も立証もしておらず、請求人が「マリカー」という表示について信用・名声・評判を得るために、請求人自身がどういった営業努力を長年にわたって行ってきたのかについても全く主張も立証もされていないと主張している。
しかしながら、請求人が「マリカー」を自ら使用していることは、例えば、「マリオカート」シリーズの最新作「マリオカート8 デラックス」の全国で放映されたコマーシャルにおいて、「マリカーやろうぜ」という言葉を使用している事実からも明らかである(甲37)。さらに、既に請求人が証拠として提出したとおり、「マリカー」は、請求人の開発・販売するゲーム機の名前を冠し、請求人などの商品やサービスの紹介や広告を内容としている「ファミマガ64」(甲17の1、2)、「電撃GBアドバンス」(甲17の3、4)、「電撃ゲームキューブ」(甲17の5?8)の各ゲーム雑誌において「マリオカート」シリーズの略称として「ゲームソフト」を特定するために用いられているところ、これらの雑誌の記事において請求人のゲームソフトの記事が掲載される場合には、記事の内容を請求人が監修し、必要に応じて修正するという過程を経ることになっており、そのような過程を経た上で制作されたゲーム雑誌において、「マリカー」が「マリオカート」シリーズの略称として使用されていることは、請求人が、これらの雑誌において「マリオカート」シリーズの商品「ゲームソフト」を特定するために、その略称としての「マリカー」が使用されることを積極的に容認していることの表れであるといえる。
かかるゲーム雑誌での「マリカー」の使用は、いわば、実質的に請求人が、「マリカー」が商標として使用されることを許諾しているに等しく、「マリカー」にも商品「ゲームソフト」との関係で保護に値する信用が化体されているといえる。
そもそも、周知表示又は著名表示へのただ乗り(フリーライド)及び当該表示の希釈化(ダイリュージョン)防止を目的とする商標法第4条第1項第15号が、商品又は役務の出所識別標識として通常使用されるものではない氏名(芸名等を含む)、商号等の名称、肖像等との関係でも、それらが広く知られている場合にも適用されると解されていることに鑑みると、商標登録の無効理由の存否の判断に当たって、他人の業務に係る商品又は役務との混同を生ずるおそれの有無の判断基準として、当該他人自身が標章を商品又は役務に使用していることや、その者自身の営業努力等により当該標章の周知著名性が獲得されたことを必要とするという被請求人の主張は、「レールデュタン事件」の判旨や商標審査基準でも示されていない新たな要件を設けようとする独自の議論にすぎず、法文上の根拠を欠くものである。
そして、「レールデュタン事件」の判決において、「周知又は著名な商品等表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきだからである」と判示されているように、他人の業務に係る商品又は役務の出所を表示するものとして広く知られた標章たり得るには、当該他人がこれを使用ないし宣伝した結果、当該他人の商品又は役務であることを示す標章として広く認識されるに至った標章のみならず、当該他人の使用と実質的に同一視し得る使用、すなわち、第三者により特定の者の商品又は役務であることを示す標章として用いられ、周知標章として広く認識されるに至ったものも含まれるものと解するのが相当である。
そして、「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く知られていることは、既に述べたとおりである。
かかる請求人の主張は、広義の混同が生じるおそれのある商標の登録の未然防止を目的とする商標法第4条第1項第15号と同様に広義の混同防止の観点から広く認識されるに至った表示についての判断を示した、(旧)不正競争防止法第1条第1項第2号に関する「アメックス事件」(最高裁平成5年12月16日判決言渡、平成5年(オ)第1507号)の「不正競争防止法1条?項二号にいう広く認識された他人の営業であることを示す表示には、営業主体がこれを使用ないし宣伝した結果、当該営業主体の営業であることを示す表示として広く認識されるに至った表示だけでなく、第三者により特定の営業主体の営業であることを示す表示として用いられ、右表示として広く認識されるに至ったものも含まれるものと解するのが相当である。」との判示の趣旨に沿うものである。
以上よりすれば、既に述べたとおり、「マリカー」が請求人のゲームソフト「マリオカート」の略称として広く知られている以上、被請求人の主張は失当である。
ウ 被請求人は、ゲームソフトウェアの業界とレンタル車両の業界においては、経済的又は何らかの組織的な関係性が生じることがない実情にあることから出所の混同が生じる余地がないなどと主張している。
しかしながら、「混同を生ずるおそれ」とは、出願商標をその指定役務等に使用したときに、他人の商標にかかる商品等と混同する蓋然性(抽象的なおそれ)があれば足り、現実の混同や混同の危険性は必要ではないとされており(甲38)、被請求人による上記主張は、商標法第4条第1項第15号所定の「混同を生ずるおそれ」の解釈に反しており失当である。
さらに、被請求人は、他人の業務にかかる商品の属する業界と当該商品と混同を生ずるおそれがある商標の指定役務(商品)が属する業界とが経済的又は何らかの組織的な関係性が生じないと商標法第4条第1項第15号で規定されている「混同のおそれ」があるとはいえないと主張している点でも失当である。
「レールデュタン事件」の判示においては、商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、広義の混同を生ずるおそれがある商標を含むものと解するのが相当とされているところ、広義の混同が、商品の出所相互や営業相互の「関係」に関する誤認をいうことから、仮にゲームソフト業界とレンタル車両業界との間で経済的又は組織的に何らかの関係性が生じていないとしても、「マリオカート」及びその略称である「マリカー」で特定される請求人のゲームソフトシリーズが自動車等でレースを繰り広げる内容のものであることから、「公道カートのレンタルサービス」を含む本件商標の指定役務との間に密接な関連性が認められ、「マリカー」から構成される本件商標を被請求人が上記役務に使用すると、かかる使用を請求人が許諾したかのような誤認を生じることとなり、ひいては出所の「混同を生ずるおそれ」が生じることとなる。
以上述べたことから、本件商標「マリカー」と「マリオカート」において出所の混同を生ずる余地はないとの被請求人の主張は失当である。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記で述べたことから、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないとの被請求人の主張は失当である。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 被請求人は、「マリカー」は「マリオカート」の略称として需要者の間において広く知られていたとは認められない、また、「マリカー」と「マリオカート」とは非類似であることを主張しているが、この被請求人の主張が失当であることについては、上記(1)ないし(3)で述べたとおりである。
イ 被請求人は、「マリカー」が「マリオカート」を連想、想起するものでない以上、本件商標をその指定役務に使用するとしても、「マリオカート」の出所表示機能の希釈化又はその名声及び信用力にフリーライドするものとはいえないと主張しているが、「マリカー」が「マリオカート」を連想、想起するものであることは、上記(2)及び(3)で述べたとおりである。また、「マリカー」が請求人の商品であるゲームソフトシリーズ「マリオカート」の略称として広く知られていること、造語である「マリオカート」の略称である「マリカー」も、それ自体造語であること、そして、甲第23号証の1及び甲第23号証の2並びに甲第26号証の1及び甲第26号証の2が示すとおり、被請求人が「株式会社マリカー」の名称で「マリオカート」の名声及び信用力にフリーライドした「公道カートのレンタルサービス」を営んでいたことなどからすれば、被請求人の主張は事実に反しており、失当である。
ウ 被請求人は、本件商標を不正の目的をもって使用することを意図して登録出願したものということもできないと主張している。
しかしながら、本件商標を構成する片仮名「マリカー」は請求人の開発販売する著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」の著名な略称である「マリカー」と同一であること、被請求人自身も「マリカー」が「マリオカート」の略称であることを認識していたと推認されること、本件商標の「マリカー」という文字構成は、一般的な辞書には掲載されておらず、ましてや本件商標の指定役務において一般的に使用されるような言葉ではなく「マリオカート」の略称として以外に当該役務に属する業界において採択する理由がなく、被請求人が本件商標を使用して「マリオカート」の世界観にフリーライドした営業を行っており、かかる被請求人の行為によって、請求人が築き上げた「マリオカート」、「マリオ」及び「マリカー」に化体した高いブランドイメージが毀損されていること、更には所在地を同じくするなど、被請求人と事実上同一であるか、少なくとも極めて密接な関係が存在することが強く推認される法人等により、請求人を始めとする他社が使用する商標と同一又は類似の商標をひょう窃的に出願したとしか考えられない商標が多数出願されたり、不正競争に該当するようなドメイン名の取得及び保有が行われたりしており、その中には「マリオカート」を初めとした請求人の知的財産に関するものも多数含まれていること、以上の事実を総合考慮すると、本件商標は、請求人の著名なゲームソフトシリーズ「マリオカート」の著名な略称である「マリカー」と同一の商標を独自に選択して出願したものとは考えられず、むしろ、本件商標の登録出願日の時点においても、請求人のゲームソフトシリーズ「マリオカート」の略称である「マリカー」の著名性を知りつつ、これが正当な権利者というべき請求人によって商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、「マリカー」の著名性に乗じて不正の利益を得る目的又は請求人に損害を加える目的その他の不正の目的でひょう窃的に出願したものといわざるを得ない。
そして、被請求人は、本件商標を不正の目的をもって使用することを意図して登録出願したものということはできないと抽象的に主張するのみで、請求人の主張に対する具体的な反論を行っておらず、何らの証拠資料を示すことなく単に請求人の主張を否認しているにすぎない。
以上よりすれば、本件商標を不正の目的をもって使用することを意図して登録出願したものということはできないとの被請求人の主張は失当である。
(7)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 被請求人は、本件商標は、被請求人の名称である「株式会社マリカー」の略称であり、自社の商号の略称について商標登録を行うことは、事業の運営上、当然のことであり、何ら社会的妥当性を欠くものではないと主張しているが、被請求人が「株式会社マリカー」の名称で「マリオカート」の世界観にフリーライドした営業を行っていることは上記(6)で述べたとおりである。
また、商品等表示「マリカー」等を使用する被請求人の行為は不正競争行為となり、本件商標に係る権利を有すると主張することは権利の濫用として許されない場合があるところ、会社法第8条が、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用することを禁じている趣旨からすれば、被請求人が「株式会社マリカー」の商号を使用していたこと自体、社会的妥当性を欠くものであることから、被請求人の主張は失当である。
なお、現時点では、被請求人は自らの名称を「株式会社マリカー」から変更しており、被請求人の主張は既に前提を欠いている。
イ 被請求人は、本件商標は請求人が意図的に出願していないのであるから、他人が商標を取得することは公益に反するものであるとはいえないと主張している。
しかしながら、請求人が「マリカー」標章を使用していないという主張は誤りであることに加え、被請求人は「マリカー」標章につき商標登録出願がされていないことを奇貨として、これについてひょう窃的な登録出願を行って商標登録を取得したものであることから、このような、被請求人が、本件商標は請求人が意図的に出願していないものであると主張したり、他人が商標を取得することは公益に反するものであるとはいえないなどと主張したりすることは、公序良俗に反するといわざるを得ない。
5 上申の要旨
請求人は、本件商標の権利者による本件商標の使用等に対し、本訴訟を東京地方裁判所に提起しており、平成30年9月27日付で、東京地方裁判所において、判決が下され、本訴訟の控訴審につき、令和元年5月30日付で、知的財産高等裁判所において、中間判決が下され(甲40)、令和2年1月29日付けで、知的財産高等裁判所から、本訴訟の控訴審における終結判決が下された(甲43)。
当該判決で示された判断は、本件商標が商標法第4条第1項第15号、同項第19号又は同項第7号に違反して登録されたものであるとの請求人の主張の正当性を裏付けるものであることから、本件商標は、商標法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由の要旨
(1)本件商標権者について
本件商標は、被請求人である株式会社マリカー(審決注:本件商標の分割前の権利者の変更前の表示。)の商号の略称であって、被請求人は、「マリカー(MariCAR)」という名称のカート車両の販売を行っている事業者であり、サービスとしては車両のメンテナンスも行っている。
また、本件商標に係る車両を含むレンタル事業(本事業)については、被請求人の取引先及び提携先が行っており、当該取引先では被請求人が販売を行っているカート車両の他に、日本ではさほど流通していない三輪自動車やスーパーカー、クラッシックカー、飛行機などのレンタルを行っており(乙1)、それらの取引先及び提携先が行うレンタルサービスに関し、上記車両と同名の「マリカー」及び「MariCAR」の名称を使用するための商標権の管理などを被請求人が行っている。
(2)本件商標に係る需要者等について
本事業は、日本に来日する多数の訪日外国人をターゲットにして開始された事業であり、取り扱っている車両も上記のとおり、観光地に移動をするための車両ではなく、乗ること(ツーリング)自体が観光となることを目的としている。
その結果、本事業の顧客のほとんどすべてが外国人であり、旅行情報コンテンツサイトとして世界最大の閲覧数を持つTripAdvisorでは、評価の点数が5点満点中ほぼ5点と相当高い評価を得ている(乙2)。
すなわち、本件において、周知・著名性を判断する前提となる「需要者」は、本事業におけるサービスの提供を受けている者、すなわち、公道を走行することができる車両等を借りて公道を運転する運転免許を保有する外国人(訪日外国人)である。
このことは、アンケート(乙3)からも明らかである。このアンケートは取引先等が本事業の顧客に対して行っているアンケート(乙3の2)であって、平成29年2月から4月頃の期間中に2131件が回収できたものであり、乙第2号証の1は、この集計結果を示したものである。乙第2号証の2の「Q3」の欄は「出身国」を示すが、これが「日本」で、かつ「Q10」「免許証のタイプ」が「日本の免許証」であるものについては、訪日外国人ではない者であると推定できるところ、これに該当する回答は99件にすぎない。つまり、この結果は本事業の顧客の95.4%以上が訪日外国人であることを示している。また、乙第2号証のTripAdvisorにおいて、平成29年12月28日現在、本事業に関する口コミが1332件投稿されているが、日本語による投稿はわずか28件(全体の約2%)にすぎず、残りは英語を中心とする日本語以外の言語による投稿である。
このように、本事業の顧客のほぼすべてが訪日外国人である以上、需要者は「訪日外国人」であって、また役務の性質上、少なくとも運転免許を所有することができる成人以上の者が本件商標に係る役務の需要者であるといえる。
(3)「マリカー」の周知・著名性について
ア 請求人は雑誌、テレビ、漫画、Twitter、YouTubeなどの一部のメディアにおいて、請求人の「マリオカート」の略称として「マリカー」が使用されていることを示して、「マリカー」についても請求人の商標として周知・著名であると主張する。
しかしながら、上記(2)で示したとおり、本事業の需要者は訪日外国人であるから、請求人は訪日外国人において、「マリカー」表示が請求人の商標として周知・著名であることを立証する必要があるが、そのような主張も立証も全くなされていない。すなわち請求人が示した証拠はすべて日本語で表記され、日本人向けに発信されたメディアによるものであり、そのコンテンツは主に日本国内に提供されていることからすれば、本事業の主たる需要者である「訪日外国人」においては、何ら知られることはない語であるといえる。
さらに、請求人の「マリオカート」については、その略称を「マリカ」と認識している者も多くみられ、特定の略称で認識されていないのが実情である(乙4)。例えば、動画配信サイトYouTubeにおいて、「マリカ」で検索すると11万5千件の「マリカ」を略称と表示する「マリオカート」の動画が検索され、その他大手のゲームサイトやブログ、FaceBook等においても「マリオカート」を「マリカ」と表示している。さらに、Wikipediaなどの辞書や百科事典のサイトにおいても「マリカ」が「マリオカート」の略称と説明している他、登録を維持すべきと決定した請求人を登録異議申立人とする本件商標に係る異議申立の評釈を行っているウェブサイト等でも「マリカ」について言及した上で、異議の決定は妥当であると結論づけていることからも、ゲームソフトウェアの需要者の認識としては、少なくとも請求人の「マリオカート」の略称を「マリカー」と認識することがあったとしても「マリオカート」の略称として広く認識されていたとはいえないことがうかがえる。
イ 請求人は「マリオカート」表示が周知かつ著名であって、ゲームタイトルが二単語からなるゲームソフトは、当該二単語の冒頭二文字を組み合わせて略称とする、とした外来語の略語のパターンを適用すれば「マリカー」表示も請求人の「マリオカート」の略称として周知・著名であると主張する。
しかしながら、上述したように「マリオカート」の略称は「マリカ」と認識している者も多く、上記の主張は何ら根拠を成さないものといえる。
さらに、請求人の「マリオカート」は「MarioKart」と表記されているが、この欧文字に請求人が主張する略語のパターンを適用すると、その略称の欧文字は「MariKar」又は「MariKa」となる。しかし、これらの文字列について、インターネット検索エンジンであるGoogleにおいて検索してみても、これらの表示が請求人の商標であるとした表示は一切見当たらない。すなわち、請求人に係る商標として周知かつ著名であると主張する「マリカー」表示の欧文字である「MariKar」又は「Marika」ですら、請求人の商標として周知性や著名性はない。そうである以上、片仮名表記による「マリカー」表示が本事業の需要者である訪日外国人にとって周知・著名の商標として認識されているといえるはずがない。
(4)本件商標と「マリオカート」との類似性について
本件商標「マリカー」と「マリオカート」を対比するに、両者は、構成態様及び構成文字数において明らかに相違するものであるから、外観においては、判然と区別し得るといえ、また、称呼においては、本件商標から生じる「マリカー」の称呼と「マリオカート」から生じる「マリオカート」の称呼とは、その構成音数を明らかに異にするものであるから、称呼上、明確に聴別し得るものであり、さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じるとはいえないものであって、「マリオカート」は、請求人の商品を認識するものであるから、観念において、類似するとはいえない。なお、本件商標は、その需要者を訪日外国人としているが、本件商標は「MariCAR」の欧文字で取引を行っており、その欧文字の構成「Mari」「CAR」の組み合わせから、「マリの自動車」等といった観念も想起し得る。これに対し、「マリオカート」及びその略称として主張する「マリカー」は、それぞれ「MarioKart」及び「MariKa」又は「MariKar」の表記となるところ、「マリオカート」からは「マリオのカート」の観念が生じるものの、「Marika」や「MariKar」からは特定の観念は生じない。
したがって、本件商標「マリカー」と「マリオカート」は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(5)出所の混同について
審査基準における「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断にあたっては、(i)引用商標の周知度(広告、宣伝等の程度又は普及度)、(ii)引用商標がハウスマークであるかどうか、(iii)企業における多角経営の可能性、(iv)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性等を総合的に考慮するものとされている。
これらの観点を本件に当てはめるに、請求人の商品「マリオカート」の略称と主張する「マリカー」の周知度については、本件商標の需要者(訪日外国人)における周知度であるところ、前述したとおり、請求人が示した証拠は、いずれも日本人向けに示されたものであって、需要者である訪日外国人が請求人の商標であることを示す主張・立証は何ら行われていない。さらには、請求人が示した「マリカー」に関する証拠は、全て請求人以外の第3者による行為であって、請求人自身が「マリカー」表示を自ら使用していることについて何ら主張も立証もしておらず、請求人が「マリカー」という表示について信用・名声・評判を得るために、請求人自身がどういった営業努力を長年にわたって行ってきたのかについても、全く主張も立証もされていない。
また、請求人の商品「マリオカート」及びその略称として主張する「マリカー」は、少なくとも請求人のハウスマークではなく、上述のとおり、請求人は「マリカー」という文字を商品に使用していたとする主張及び立証は何らしていない。
さらに、企業における多角経営の可能性について、請求人は、創業当初、玩具の製造を経て、現在の家庭用ゲーム機器の製造に進出しているが、請求人のホームページに関連会社として掲載されている会社を含め、本件商標の指定役務のようなレンタル車両の分野に進出してきた経緯はない(乙5)。さらに、例えばコナミホールディングス株式会社など、ゲームの開発の他、スポーツ事業などの多角的な事業を行っている企業においても、レンタル車両などのサービスを提供している事例もなく(乙6)、オリックスグループなどのレンタル車両を含む多角的な事業を行っている企業においても、ゲームソフトウェアの販売についての事業を行っていることはない(乙7)。すなわち、ゲームソフトウェアの業界とレンタル車両の業界においては、経済的又は何らかの組織的な関係性が生じることがない実情にあるのであって、そのような関係性を有する商品・役務間において、出所の混同が生じる余地はないといえる。
このことは、請求人が主張するコラボレーションの事実(甲15)について、本件商標に係る指定役務(レンタル車両などを主とする役務)に係る分野におけるコラボレーションに関する証拠は何ら示されていないことからも明らかであり、請求人はレンタル車両の役務の分野については、商品・役務における関連性が低いとの認識から、コラボレーション等の宣伝を行っておらず、この事実をもってしても本件商標に係る役務と請求人の商品との関連性は低いといえる。
したがって、上記(i)ないし(iv)のいずれの基準によっても本件商標と「マリオカート」において、出所の混同を生ずるおそれが生じる余地はない。
(6)商標法第4条第1項第15号の該当性について
上述したとおり、本件商標に係る役務の主たる需要者は、「訪日外国人」であり、日本在住の日本人ではなく、訪日外国人であるため、請求人が示した証拠は、請求人の商品が本件商標に係る役務における需要者において広く認識していることを何ら立証・主張してない。そして、本号の規定における商標審査基準の基準に照らしてみても、何らの要件も満たしてないことは明白であり、かかる基準に照らせば、請求人の商標と本件商標が出所の混同が生じるおそれも生じていないことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(7)商標法第4条第1項第19号の該当性について
上述のとおり、「マリカー」の文字は、「マリオカート」の略称として需要者の間において広く知られていたとは認めることができない。また、「マリオカート」と本件商標についても外観・称呼及び観念のいずれも異にする非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、「マリオカート」を連想、想起するものでない以上、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用するとしても、「マリオカート」の出所表示機能の希釈化又はその名声及び信用力にフリーライドするものとはいえず、また、不正の目的をもって使用することを意図して登録出願したものということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとはいえない。
(8)商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、被請求人の名称である「株式会社マリカー」の略称である。自社の商号の略称について商標登録を行うことは、事業の運営上、当然のことであり、何ら社会的妥当性を欠くものではない。
また請求人は、上記で示したとおり、請求人自身が「マリカー」表示を自ら使用していることについて何ら主張も立証もしていないことから、請求人は「マリカー」を商品に付して使用していないことが推認される。
さらには、周知の名称となったゲームソフトウェアについては、略称についても商標を登録するのが通例であり、当該ゲームの提供者を権利者とする商標が登録されており、当該事業者のウェブサイトにおいてその略称が使用されているのが実情である。
請求人は数千件にわたる多数の出願を行っており、このような商標管理を重視している企業において、出願されていない状況を加味するのであれば、請求人は「マリカー」について自ら使用する意思を有していなかったことがうかがえる。
してみれば、意図的に取得していない権利に関して、他人が商標を取得することが公益に反するものであるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するとはいえない。
2 答弁書(2)(提出者は本件商標2の権利者)の要旨
(1)本件商標に係る需要者等について
請求人は、最高裁などの判例を示した上で、公道用カートの需要者が「訪日外国人」であることを前提にする被請求人の主張について、現在における特殊的、限定的な該商標の使用の実績であることを主張するものであって、「混同を生ずるおそれ」の判断主体とすべきは「本件商標の指定役務の取引者及び需要者」であるから、失当であると主張する。
しかしながら、乙第2号証及び乙第3号証に示すとおり、被請求人の事業開始の当初から少なくとも公道用カートを利用するのは訪日外国人であって、いわゆる日本人ではない。そして、代価を払ってサービスの提供を受けるものが「需要者」であり、ウェブサイトや公道用カートに関する報道においてその内容を見聞きする者や路上で公道用カートを見た者は需要者ではなく、事実として実際に公道用カートのレンタルサービスを利用している者(需要者)は訪日外国人であって、日本語を理解するものではない。
また、請求人は、被請求人の設立が本件商標の登録出願日よりも後であることから、本件商標の登録出願時に被請求人の事業は開始されていないことを示した上で、乙第2号証及び乙第3号証の証拠が本件商標の出願以前の事実を推認させる証拠としては証拠価値が乏しいなどと主張しているが、商標法第4条第3項の規定は「出願に係る商標が一項各号に掲げる商標に該当するかどうかの判断の時点は査定時であることを前提にし・・」(工業所有権法逐条解説第20版)とあるように、判断基準時は査定時である前提の上で、出願時にも要件を満たさない場合は該規定に該当しないとする規定であって、出願時のみを基準に判断されるものではない。
(2)マリカーの周知・著名性について
請求人は、被請求人の主張に対し、各証拠を示し主張を行っているが、「公道用カートのレンタル」に関する需要者は「訪日外国人」であって、示されている証拠はいずれも訪日外国人とは何ら無関係の者による証拠であり、該規定の周知・著名性の証拠としては採用できない。
すなわち、周知・著名であると認識する主体はあくまで当該指定役務における需要者等であって、需要者において出所の混同が生じるおそれがないにもかかわらず、該規定を適用する理由は存在しない。また、訪日外国人が「MarioKart」を認識することはあっても、外国において全く使用されていない「マリカー」を「マリオカート」の略称と認識する余地はなく、被請求人は、「MariCAR」の欧文字表記でも使用を行っているが、この「Mari」「CAR」の組み合わせから、「マリの自動車」等といった観念が生じることはあっても「MarioKart」が想起される余地はなく、したがって出所混同のおそれも生じないことは明らかである。
(3)本件商標と「マリオカート」との類似性について
請求人は、被請求人の主張に対し、本件商標の指定役務に含まれる「公道用カートのレンタルサービス」の取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想などを総合して全体的に考察し、しかもその具体的な取引状況に基づいて判断を行えば、出所混同が生じるおそれがある、と主張する。
しかしながら、具体的な取引状況に基づいて判断を行う場合、その需要者は「マリカー」が「マリオカート」の略称として使用されていない外国から訪日した「訪日外国人」であって、「マリカー」が「マリオカート」の略称であると認識していない。そのような場合、実際の使用態様等によりその観念を連想・想起するのが通常であるところ、使用されている欧文字の「MariCAR」の表記より「マリの自動車」等の連想が生じるとしても「マリオカート(MarioKart)」の観念が連想される余地はない。また、そのような取引状況において、外観・称呼として具体的又は一般的な出所の混同が生じる余地はなく、非類似の関係にあることは明白である。
(4)出所の混同について
請求人は、被請求人の主張に対し、該規定の出所の混同が「広義の混同」であることを示した上で、被請求人が請求人のゲームソフトシリーズが自動車等でレースを繰り広げる内容のものであることから「公道カートのレンタルサービス」等との関係において密接な関連性が認められ、本件商標を被請求人がこれらの役務に使用すると、かかる使用を請求人が許諾したかのような誤認を生じることになり、ひいては出所の混同を生じることになる、と主張する。
しかしながら、ゲームソフトに関心を有する層であっても、運転免許がなければ、上記役務の提供を受けることはできないのであるから、本件指定役務の需要者にはなり得ない。そしてゲームは基本的にインドアで行うアクティビティであるのに対し、公道用カートのレンタルサービスはアウトドアで行うアクティビティであり、真逆の性質を持つものであり、真逆の性質を持つ以上、通常は、どちらか一方のみに関心を有し、その両方に関心を有する者はごく一部に限られるから、単純に後者が前者に含まれるとするのは困難である。
また、請求人は、映画やゲームといった二次元の世界をテーマパーク等において現実のアトラクションとして再現し集客するビジネスが数多く存在することを踏まえ、本件商標「マリカー」と「マリオカート」の間には強い関連性がある、と主張する。
しかしながら、上記テーマパークはあくまで娯楽施設内で提供される役務であって、公道という強い法規制を有する場所において提供される役務とは明らかに異なるものであって、請求人は主張のすり替えを行っているといえる。請求人が主張する「マリオカート」は、レースを行うゲームソフトであって、単に公道で使用するカートをレンタルするサービス事業において公道においてレースを行うこともなく、道路交通法の規則に沿って提供されるものであるから、何らの関連性を有するものではない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
公道用カートのレンタルサービスの需要者は「訪日外国人」であって、これらの需要者において本件商標は「マリオカート」の略称として認識されないこと、また、これらの需要者において「マリカー」と「マリオカート」が類似しないことは、すでに述べたとおりである。
そして、被請求人は本件商標登録時においては「株式会社マリカー」の商号を有しており、商号名の略称を出願・登録することは何ら不正の利益を得る目的とはいえない。なお、被請求人は商号名を「株式会社MARIモビリテイ開発」に変更しているが、このことが出願・登録査定時において不正の目的があったとする根拠にはならない。
また、請求人が被請求人と所在地を共通にする会社が請求人などの使用する商標に関する出願を行っているとして、あたかも被請求人と関係を有すると推認されると主張しているが、その事実について何ら立証されていない。
このように、被請求人は、自らの商号「株式会社マリカー」の略称「マリカー」を出願したにすぎず、需要者との関係から「マリオカート」の略称として認識され得ない「マリカー」の名称を出願・登録することが、公道用カートのレンタルサービスにかかる需要者(訪問外国人)におけるフリーライド希釈化を意図したものとすることはできない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人は、自らが使用していると主張しているが、例えばコマーシャルの一部のセリフや一般の雑誌などでの使用等、他社が使用している事実のみを主張しているのみであり、何ら請求人自らが使用している事実を証明していない。
してみれば、意図的に取得していない権利に関して、他人が商標を取得することが公益に反するものであるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するとはいえない。
3 答弁書(3)(提出者は本件商標1及び3の権利者)の要旨
(1)商標権の分割申請及び特定継承による移転
被請求人は、令和元年5月30日付けの商標権の分割移転申請により、商標登録第5860284号の1の1について、前記第1に記載のとおりの役務を指定役務とする本件商標1及び本件商標3の権利を譲り受けた。具体的には、いわゆる公道で走行可能なカートの対象となる車両を示す「フロントカウル及びフロントフェアリング及びサイドポンツーンを備え、かつ高さが750mm以下で、かつ乗車定員が1名の、4輪乗用自動車(またがり式座席、又はバーハンドル、又はヘッドレスト、又はフェンダーを備えるものを除く)」(以下「本件権利範囲」という場合がある。)を含まない範囲での車両の貸与及びこれに関する情報に関する権利を譲り受けており、被請求人は、上記権利の範囲内において、以下のとおり答弁する。
(2)請求人の弁駁について
請求人は、本訴訟において、本件商標をその指定役務中の公道用カート貸与サービスに使用する場合に請求人又は請求人と関係があると誤信させるか否か等の争点が判断されたとしているが、商標法における類似と不正競争防止法における類似の解釈は当然に異なるものであり、また、本件商標「マリカー」とは構成態様及び構成文字数及び構成文字から生じ得る観念などのいずれの観点からも類似すらしていない「マリオカート」について類似していないことは、前記1の答弁で述べたとおりである。
してみれば、上記で主張された裁判所の判断は、本件権利範囲とは事案を異にするものであって本件審判の判断における根拠とはなり得ない。
また、請求人は、本訴訟は請求人の商品であるゲームソフトと公道用カートの貸与の間に関連性が認められるか否か等の争点が判断されたとしているが、上記権利範囲は、いわゆる公道用カートとの関係性との判断であって、本件商標の権利範囲(指定役務)は、公道用カートを含まない範囲での貸与を前提としており、本訴訟における指定役務とはその権利範囲を異にするものである。
すなわち、これら一連の本訴訟における判断は、本件権利範囲外における判断であることから、本訴訟における裁判所の判断は、上記権利範囲とは事案を異にするものであって、本件審判の判断における根拠とはなりえない。
また、請求人が主張する本件商標を略称とするテレビゲーム「マリオカート」は、その名称のとおり「カート」の語を含むものであり、いわゆるカート(KART)を含まない上記指定役務については、請求人の主張は成り立たない。
すなわち、請求人が主張するテレビゲーム「マリオカート」は、需要者及び取引者を含む認識としてレーシング用のカートに関するテレビゲームであって、カート以外の自動二輪車、自動車、自転車、船舶、航空機、鉄道、馬車、人力車、乳母車における貸与といった指定役務について、広く一般に認識され得るほどの著名性をもって認識されているものではなく、そのような立証もされていない。
(3)まとめ
以上述べたとおり、本件権利範囲に係る本件商標の登録は、請求人が主張するいずれの規定にも違反してされたものではない。

第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求することについては、当事者間に争いがないので、以下、本案に入って判断する。
1 「マリオカート」及び「マリカー」の周知性について
(1)請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人及び同人の業務に係るゲームソフト「マリオカート」シリーズ(以下「請求人商品」という場合がある。)について
請求人は、「マリオ」が登場するゲームソフトシリーズを製造・販売しているところ、「マリオ」は当該ゲームソフトのキャラクターとして広く知られており、「マリオカート」は、「マリオ」シリーズに登場する「マリオ」を始めとする様々なキャラクターがカートに乗ってレースを繰り広げるゲームソフトシリーズである。
そして、請求人は、「スーパーマリオカート」を平成4年8月27日に発売して以降、「マリオカート64(発売:平成8年12月14日)」、「マリオカートアドバンス」(発売:平成13年7月21日)、「マリオカートダブルダッシュ!!(発売:平成15年11月7日)」、「マリオカートDS(発売:平成17年12月8日)」、「マリオカートWii(発売:平成20年4月10日)」、「マリオカート7(発売:平成23年12月1日)」、「マリオカート8」(平成26年5月29日発売)及び「マリオカート8デラックス」(平成29年4月28日発売)」の9本のレーシングゲームソフトウェアを発売している(甲6)。
イ 請求人商品の販売状況について
「2015CESAゲーム白書」(コンピュータエンターテインメント協会:平成26年12月31日時点)によれば、「国内歴代ミリオン出荷タイトル」には、「スーパーマリオカート/Super Mario Kart」は国内出荷数382万本、「マリオカートDS/Mario Kart DS」は402万本、「マリオカートWii/Mario Kart Wii」は383万本、「スーパーマリオカート/Super Mario Kart」は382万本、「マリオカート7/Mario Kart7」は254万本、「マリカート64/Mario Kart64」は224万本、「マリオカート8/Mario Kart8」は103万本、同「世界歴代ミリオン出荷タイトル(国内+海外)」には、「マリオカートWii/Mario Kart Wii」は3526万本の出荷で、第3位となっている。また、「マリオカートDS/Mario Kart DS」は2354万本、「マリオカート7/Mario Kart7」は1142万本の出荷であり(甲7)、「マリオカート」シリーズの全世界での累計販売本数は、平成26年12月末時点で1億本を超えている。
ウ 請求人商品のゲーム雑誌におけるランキングについて
(ア)第1作の「スーパーマリオカート」と第8作の「マリオカート8」の我が国のゲーム雑誌における発売日前後の人気ランキングは、以下のとおりである。
a 「スーパーマリオカート」(平成4年8月27日発売)について
週刊ファミコン通信((株)アスキー発行)において、1992年9月4日号(甲9の1)で第6位、同月25日号(甲9の2)で第1位、同年10月2日号(甲9の3)で第1位、同月9日号(甲9の4)で第1位、同月16日号(甲9の5)で第1位、同月23日号(甲9の6)で第2位。
b 「マリオカート8」(平成26年5月29日発売)について
週刊ファミ通((株)KADOKAWA発行)において、2014年5月22日号(甲10の1)で第2位、同月29日号(甲10の2)で第3位、同年6月5日号(甲10の3)で第4位、同月26日号(甲10の4)で第1位、同年7月3・10日号(甲10の5)で第2位、同月10日増刊号(甲10の6)で第1位、同月17日号(甲10の7)で第2位。
(イ)本件商標の登録査定後に発行された週間ファミ通(カドカワ(株)発行)2017年7月13日号に掲載された「レース&スポーツゲーム総選挙」においてのランキングは、「スーパーマリオカート」が1位、「マリオカート8デラックス」が5位、「マリオカート64」が7位、「マリオカート7」が17位、「マリオカートDS」が19位(甲12の5)。
エ 一般雑誌における記載について
「monoマガジン」((株)ワールドフォトプレス発行)2011年12月2日号(甲11の1)及び2014年6月2日号(甲11の2)には、「お待たせ! ニンテンドー3DSの大本命タイトル『マリオカート7』が、ついに発売される。」及び「誰もが一度はプレイしたことがある『マリオカート』シリーズの8作目が、Wii Uで発売される。」と記載され、ゲームシリーズとして取り上げられている。
オ 請求人商品に係るライセンス商品及びコラボテーション企画について
請求人は、請求人商品に関するライセンス商品及びコラボレーション企画を展開してところ、その内容は以下のとおりである。
(ア)株式会社タカラトミーヘのライセンス商品
「チョロQハイブリッド!マリオカートWiiシリーズ」(平成22年6月19日発売)(甲15の1)、「ドリームトミカ マリオカート8マリオ」(平成26年5月29日発売)(甲15の2)。
(イ)株式会社バンダイナムコエンターテインメントヘのライセンス商品
「マリオカート アーケードグランプリ2」(平成19年3月中旬発売)(甲15の3)、「マリオカートアーケードグランプリDX(デラックス)」(平成25年夏発売)(甲15の4)。
(ウ)株式会社サンアートヘのライセンス商品
「マリオカート8シューズバッグ」(甲15の19)、「マリオカート8ナップサック」(甲15の20)、「マリオカート8レッスンバッグ」(平成26年)(甲15の21)。
(エ)スケーター株式会社へのライセンス商品
「マリオカート8ランチボックス」(甲15の22)、「マリオカート8レジャーシート」(甲15の23)、「マリオカート8水筒」(平成27年)(甲15の24)。
(オ)日本マクドナルド株式会社との間のコラボレーション活動
「ハッピーセット『マリオカート8』」(平成26年)(甲第15の5)。
(カ)メルセデス・ベンツ日本株式会社との間のコラボレーション活動
「Mercedes Cup inマリオカート8」、(平成26年)(甲15の6、7、9?12)。
(キ)Pennzoil社とのコラボレーション活動
「Mario Karting Reimagined」(平成26年)(甲15の13、14)。
(ク)京都府警察との間のコラボレーション活動
自動車関連犯罪防止ポスター・チラシ及び防犯イベント(平成26年)(甲15の15)。
(ケ)京都府との間のコラボレーション活動
京都縦貫自動車道開通直前フリーウォークイベント(平成27年)(甲15の17)。
(コ)日本道路公団中部支部及び名古屋高速道路公社とのコラボレーション活動
国道23号の夜間通行止めに関するテレビコマーシャル(平成14年)(甲15の18)。
カ 請求人商品の受賞歴について
コンピュータエンターテインメント協会が主催する日本ゲーム大賞において、「マリオカートWii」が、日本ゲーム大賞2009年(平成21年)の年間作品部門において大賞を受賞(甲12の1)、また、日本ゲーム大賞においては、「マリオカートDS」が日本ゲーム大賞2006(平成18年)の年間作品部門優秀賞(甲12の2)、「マリオカート7」が日本ゲーム大賞2012年(平成24年)の年間作品部門優秀賞(甲12の3)、「マリオカート8」が日本ゲーム大賞2015(平成27年)の年間作品部門優秀賞を受賞している(甲12の4)。
キ ゲーム雑誌における「マリカー」の記載について
(ア)「ファミマガ64」1996年12月13日号(徳間書店インターメディア(株)発行)には「MARIOKART/マリオカート/64 Perfect Guide」の表題のもと「システムガイド」の説明文に「カート操作の特徴からゲームモードやアイテムまで、プレイに必要な『マリカー』のシステムをすべて解説するぞ。」の記載があり、同月27日号には「MARIOKART/マリオカート/64」の表題のもと「『マリカー』最速の法則を発見!!」、「全国の『マリカー』プレイヤーに」などの記載がある(甲17の1、2)。
(イ)「電撃GB(ゲームボーイ)アドバンス」2001年9月号(メディアワークス発行)には、「マリオカートアドバンス/MARIOKART ADVANCE」と大きく表示され、欄外に「任天堂公認/『マリカー』大会開催」、「ソフト発売直後の7/22から全国で『マリカー』のレース大会が開催されるぞ。」などの記載があり、同年10月号には「売り上げ総合ランキング」として第2位に「マリオカートアドバンス」が表示され、その説明文に「・・・今までの『マリカー』シリーズの売れ方を考えると、次号では発売累計本数で『マリオカート』が上回ることだってありえそう。」との記載がある(甲17の3、4)。
(ウ)「電撃GAME CUBE」2003年11月号(メディアワークス発行)には、「マリオカート ダブルダッシュ!!」の説明として「『マリカー』シリーズ最新作」及び「1人乗りだったマシンが『マリカーDD』では2人乗りに大きく変更された。」などの記載があり、また、同年12月号には、「・・・歴代の任天堂ハードで好評だった『マリオカート』シリーズその最新作『マリオカートダブルダッシュ!!』(以下「マリカーDD」)の最新情報・・・」のように記載され、さらに、2004年1月号及び同年2月号には、「日本一の『マリカー』プレイヤーを決める!!」及び「マリカーDD」の記載がある(甲17の5?8)。
(エ)「ニンドリ Nintendo DREAM」2006年9月号及び2007年8月号の((株)毎日コミュニケーションズ発行)の別冊付録「完全保存版DSソフトオールカタログ」には、「マリオカートDS」の項に「Wi-Fi搭載の『マリカー』シリーズ最新作」の記載があり、同年10月号には、読者投稿欄に「マリカー最ッ高!!」の記載がある(甲17の9?11)。
ク 漫画作品等における「マリカー」の記載
「マリカー」の文字は、平成22年から平成28年に発行された漫画作品において、「マリカーの訓練を」、「マリカーのキラー状態」、「マリカーだっけ」、「マリカー大会」などのように、使用されている(甲20の3、7、10、12)。
ケ SNS等における「マリカー」の記載
(ア)ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるツイッターにおいて、「マリカー」の語を含むツイートは、本件商標の登録出願日の前日(平成27年5月12日)では1日当たり約600件(甲21の1)、「マリオカート8」を発売した平成26年5月29日には、「マリカー」や「マリカー8」の語のツイートは約3000件(甲21の2)である。
(イ)ツイッターのアンケート機能で「・・・あなたはマリカーがなんのゲーム名の略か知ってますか?」とのアンケートに対する3万6246人の回答者のうち、「知ってる」との回答は95%であり(甲21の3)、「あなたは『マリカー』と聞いて、任天堂のレースゲーム『マリオカート』を連想しますか?」のアンケートに対する684人の回答者のうち、「はい」の回答が94%であった(甲21の4)。
(ウ)本件商標の登録査定後の平成29年6月14日に印刷されたウェブサイトによれば、動画配信サービス「YouTube」において、「マリカー」の語をタイトルに含む動画が7万件以上投稿された(甲21の5)。
(エ)東京工芸大学の2013年(平成25年)6月26日付け「調査結果ニュースリリース」において、「ウェアラブル・コンピュータに関する調査」として、「メガネ型端末でプレイしたいゲームタイトル/男性は『バイオ』『DQ』『FF』、女性は『マリオ』『マリカー』『ぶつ森』」との表題の下、「・・・女性は1位『スーパーマリオ』(35.0%)、2位『マリオカート』(32.5%)」との記載がある(甲13)。
(2)上記(1)によれば、請求人は、平成4年から現在まで9本の「マリオカート」を冠したレーシングゲームに係る一連のゲームソフトを製造、販売している。
そして、請求人商品のゲームソフトの販売実績は、平成26年12月末時点で、世界で1億本を超えており、当該ゲームソフトは、コンピュータエンターテインメント協会が主催する日本ゲーム大賞において、平成21年には年間作品部門において大賞を受賞し、平成18年、平成24年及び平成27年には年間作品部門優秀賞を受賞している。
また、請求人商品は、人気ゲームとしてゲーム雑誌に取り上げられ、さらに、一般の雑誌にも誰もが一度はプレイしたことがあるゲームシリーズとして取り上げられている。
そして、請求人商品に関して、他社とのライセンス商品、コラボレーション企画が多数なされており、その中には、ゲームのキャラクターが広く使用されることの多いおもちゃや文房具のみならず、自動車でレースを繰り広げるレーシングゲームとは関連性の薄い自動車や道路に関するものが含まれていることから、「マリオカート」の文字(以下「請求人標章」という。)は、請求人の製造、販売に係るゲームソフトである請求人商品を表すものとして、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、ゲームの需要者のみならず、我が国の一般の需要者の間に広く知られていたものと認められる。
また、「マリカー」の文字は、請求人が請求人標章の略称として使用していたとはいい難いものの、その略称として、遅くとも平成8年には、ゲーム雑誌において使用され、また、平成22年頃には、ゲームとは関連性が高いとはいえない漫画作品においても使用されており、さらに、平成27年5月頃には、ツイッターで「マリカー」の文字が注釈もなく使用され、かつ、ツイッターのアンケートにおいての認知度も約95%であること、本件商標の登録査定後ではあるもののYouTubeに「マリカー」の語を含む投稿が相当数されたことからすれば、それ以前においても相当数の投稿がされたものと推認し得ることなどを総合勘案すれば、「マリカー」の文字は、本件商標の登録出願時には、請求人のレーシングゲームシリーズであるゲームソフト「マリオカート」を表すものとして、我が国の一般の需要者の間において、広く認識されていたものといえ、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
そうすると、「マリカー」の文字は、請求人商品及び請求人標章の略称を表示するものとして、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、ゲームに関連した分野においてはもとより、我が国の一般の需要者の間に広く認識されるに至っていたというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人標章及び「マリカー」の周知性について
上記1(2)のとおり、請求人標章は、請求人商品を表すものとして、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、我が国の一般の需要者の間に広く認識されていると認められるものであり、また、「マリカー」の文字についても、請求人標章の略称を表示するものとして、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において我が国の一般の需要者の間に広く認識されていたと認められるものである。
(2)請求人標章及び「マリカー」の独創性
請求人標章である「マリオカート」の文字は、辞書等に掲載されていないものであり、いわゆる造語であって、その独創性は高いものであり、その略称である「マリカー」の文字も辞書等に掲載のない造語であって、独創性が高いといえるものである。
(3)本件商標と請求人標章との類似性について
本件商標は「マリカー」の文字よりなるものであり、請求人標章は「マリオカート」の文字からなるところ、外観においては、本件商標は、語頭の「マリ」の文字を請求人標章の前半部の「マリオ」の文字と2文字を共通にし、後半の「カー」の文字も請求人標章の後半部の「カート」の文字と長音を含め2文字を共通にしており、本件商標は、請求人標章と前半及び後半のそれぞれに類似している点があることから、外観上、一定程度の類似性を有するものといえ、近似した印象を与えるといい得るものである。
また、称呼においては、本件商標からは「マリカー」の称呼を生じ、請求人標章からは、「マリオカート」の称呼を生じるところ、両者は、印象に残りやすい語頭の「マリ」の音及び後半において「カー」の音を共通にしていることから、一定程度類似するといえるものである。
さらに、観念においては、請求人標章は、レーシングゲームシリーズを表すものとして、広く認識されており、当該ゲームシリーズである「マリオカート」の観念を生じ、「マリカー」の文字はその略称として広く認識されていることから、「マリカー」の文字からなる本件商標からも同じ観念が生じるといえる。
そうすると、本件商標と請求人標章とは、外観において、近似した印象を与えるといい得るものであり、また、称呼においても一定程度類似し、同一の観念を生じるものであることからすれば、その類似性の程度は高いものである。
(4)本件商標の指定役務と請求人標章に係る請求人商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定役務は、前記第1に記載のとおり、その権利は本件商標1、本件商標2及び本件商標3に分割されているところ、本件商標1の指定役務は、第39類「船舶・航空機・乗物・自動車・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供但し、船舶・航空機・乗物・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供を除く但し、フロントカウル及びフロントフェアリング及びサイドポンツーンを備え、かつ高さが750mm以下で、かつ乗車定員が1名の、4輪乗用自動車(またがり式座席、又はバーハンドル、又はヘッドレスト、又はフェンダーを備えるものを除く)の貸与(訪日客向けを除く)及びこれに関する情報の提供を除く」であるところ、上記指定役務は、いわゆる公道で走行可能なカートの対象となる車両を示す「フロントカウル及びフロントフェアリング及びサイドポンツーンを備え、かつ高さが750mm以下で、かつ乗車定員が1名の、4輪乗用自動車(またがり式座席、又はバーハンドル、又はヘッドレスト、又はフェンダーを備えるものを除く)」(以下「4輪乗用自動車」という。)の日本在住者向けの貸与及びその情報の提供を除く自動車の貸与とその情報の提供と解されるものである。
本件商標2の指定役務は、第39類「フロントカウル及びフロントフェアリング及びサイドポンツーンを備え、かつ高さが750mm以下で、かつ乗車定員が1名の、4輪乗用自動車(またがり式座席、又はバーハンドル、又はヘッドレスト、又はフェンダーを備えるものを除く)の貸与(訪日客向けを除く)及びこれに関する情報の提供」であるところ、当該役務は、4輪乗用自動車の訪日客向けを除く役務、すなわち、4輪乗用自動車の日本在住者向けの貸与及びその情報の提供と解されるものである。
本件商標3の指定役務は、第39類「船舶・航空機・乗物・オートバイ・自転車・乳母車・人力車・そり・手押し車・荷車・馬車・リアカーの貸与及びこれらに関する情報の提供」である。
そうすると、本件商標2の指定役務には、4輪乗用自動車に係る訪日外国人向けの役務は含まれていないとはいえるものの、本件商標1、本件商標2及び本件商標3の指定役務は、いずれも、訪日外国人向けの4輪乗用自動車の貸与及びその情報の提供に限定した役務とはいえないものである。
そして、上記本件商標の指定役務と請求人商品であるレーシングゲームソフトとは、その提供者及び流通経路を共通にするとはいい難いものの、請求人は、請求人商品について、自動車関連、自動車が走行する高速道路を含め様々な業界において、コラボレーション等をしていることからすれば、請求人商品がコラボレーション等を行っている分野における役務の提供者等においては、関連性が一定程度あるものといえる。また、本件商標の指定役務の需要者は、主に運転免許を有する一般消費者といえ、これに対し、請求人商品のようなゲームソフトの需要者は男女を問わず子供から大人まで広く一般消費者といえることからすれば、請求人商品の需要者には本件商標の指定役務の需要者が含まれているといえ、本件商標の指定役務と請求人商品とは、需要者において共通性を有するものというべきである。
(5)出所の混同
上記(1)のとおり、請求人標章は、請求人商品を表すものとして我が国の一般の需要者の間において広く知られており、また、「マリカー」の文字も請求人標章の略称として我が国の一般の需要者の間において広く知られていると認められるものであって、ゲームソフト分野の需要者のみならず、広く一般消費者においても認識されていたといえるものである。そして、請求人標章及びその略称「マリカー」の文字は造語であるからその独創性は高く、また、本件商標と請求人標章との類似性の程度は高いものであり、さらに、本件商標の指定役務と請求人商品との関連性は一定程度あり、需要者においても共通性を有するといえるものである。
そうすると、本件商標をその指定役務に使用した場合に、これに接する需要者が請求人商品を表示する「マリオカート」ないしは請求人を連想、想起し、請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標というべきものである。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 被請求人の主張について
被請求人(分割前の本件商標の権利者)は、本件商標に係る本事業の主たる需要者は、外国から訪日した「訪日外国人」であり、日本在住の日本人ではなく、訪日外国人であるため、請求人の示した証拠は、請求人の商品が本件商標に係る役務における需要者において広く認識していることを何ら立証、主張していない旨、請求人は「マリカー」という文字を使用していない旨、及びゲームソフトウェアの業界とレンタル車両の業界においては、経済的又は何らかの組織的な関係性が生じることがない実情にあるので、そのような関係性を有する商品・役務間において、出所の混同が生じる余地はない旨主張している。また、被請求人(本件商標2の権利者)は、代価を払ってサービスの提供を受けるものが「需要者」であり、本件商標に係る本事業の主たる需要者は、外国から訪日した「訪日外国人」であって、日本語を理解するものではなく、「マリカー」を「マリオカート」の略称と認識する余地はなく、出所混同の生じるおそれもないことは明らかである旨及び請求人商品はレースを行うゲームソフトであって、本事業は単に公道で使用するカートをレンタルするサービス事業において公道においてレースを行うこともなく、道路交通法の規則に沿って提供されるものであるから、何らの関連性を有するものではない旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号で規定する「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべき」(最高裁平成12年7月11日判決言渡、平成10年(行ヒ)第85号参照)と解されるところ、本件商標に係る本事業の主たる需要者が訪日外国人であるとの被請求人の主張は、本件商標の指定役務中の特定の役務の実情についての限定的な使用の実情にすぎないものであって、本件商標の指定役務の一般的な取引の実情ということはできないものである。
また、被請求人の本件商標の指定役務は、前記第1に記載のとおりであるところ、当該役務は、上記(4)に記載のとおり、いずれも、訪日外国人を対象とする役務に限定されているものではなく、その需要者には、我が国に在住している者を含むものであり、本件商標の登録査定後の日付ではあるものの、本事業のウェブサイト(甲23の1、2)及びチラシ等(甲26の1、2)は、日本語で作成されたものであるから、被請求人の提供する役務が日本語を解する者を対象としていることは明らかであり、さらに、当該チラシ等において、請求人商品に関連づけた宣伝広告を行っていることからすれば、被請求人は、当該業務の分野においても、著名商標である「マリオカート」が知られており、その需要者を共通にしていることを自認していたものといえる。
加えて、たとえ、請求人自身の使用によって「マリカー」の文字が広く認識されるに至ったとはいえないとしても、当該文字が本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、我が国の一般の需要者に広く認識され、その周知性は、本件商標の指定役務中の4輪乗用自動車に係る役務以外の指定役務の需要者にも及ぶものといえることは、上記1(2)のとおりである。
なお、被請求人(本件商標1及び3の権利者)は、その権利範囲にいわゆる4輪乗用自動車に係る役務を含んでいない旨主張しているが、上記(4)に記載のとおり、本件商標1の役務は4輪乗用自動車の日本在住者向けの貸与及びその情報の提供を除く自動車の貸与及びその情報の提供であり、本件商標3はその指定役務に「乗物の貸与及びその情報の提供」を含むものであるから、上記役務に4輪乗用自動車に係る役務が含まれていないということはできないものである
したがって、被請求人の上記主張は、いずれも認めることができないものである。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
なお、請求人は、本件商標が、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号にも該当する旨主張しているが、提出された証拠によっては、本件商標が上記条項に該当すると認めることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2020-09-14 
結審通知日 2020-09-17 
審決日 2020-10-19 
出願番号 商願2015-45116(T2015-45116) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W39)
最終処分 成立 
前審関与審査官 齋藤 貴博 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 小松 里美
中束 としえ
登録日 2016-06-24 
登録番号 商標登録第5860284号の1の1(T5860284-1-1) 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 小菅 一弘 
代理人 工藤 莞司 
代理人 正林 真之 
代理人 林 栄二 
代理人 浜田 廣士 
代理人 林 栄二 
代理人 黒川 朋也 
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