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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W33 |
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管理番号 | 1368396 |
異議申立番号 | 異議2020-900166 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-06-26 |
確定日 | 2020-11-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6243134号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6243134号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6243134号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成31年2月22日に登録出願、第33類「ウィスキー」を指定商品として、令和元年12月5日に登録査定、同2年4月7日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標について、商標法第4条第1項第16号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1項第1号により、その指定商品中、第33類「スコッチウィスキー以外のウィスキー」についての登録は、取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第31号証を提出した。 1 申立人について 申立人は、1940年に英国で設立されたスコッチウィスキー産業を代表する非営利団体であり、世界的なスコッチウィスキーの品位及び品質の保持や、模倣品の対策等を目的として、スコットランド国内外を問わず積極的な監視活動を行なっている(甲2、甲3)。 そして、申立人は、出願・登録されている商標について、スコッチウィスキーの品位・品質に誤解を生じさせるおそれが強いと判断するものが発見された場合には、指定商品や使用対象商品を適切に制限するよう出願人や権利者に交渉を申し入れる、さらには異議申立て等を行なって登録の取消を求めるといった活動を鋭意遂行している。 2 商標法第4条第1項第16号が適用されるべき点について (1)本件商標について ア 本件商標は、「ドラムザ」の片仮名文字及び「DRAM ZA」の欧文字を、ありふれた一般的な書体で略同大に横書きし、これら文字を二段書きで表した構成よりなる商標である。「ドラムザ」については、スペースを空けることなく略等間隔で表してなるが、「DRAM ZA」については、「DRAM」と「ZA」の間に明確なスペースが設けられていることから、「DRAM」と「ZA」は切り離して看取される。 「DRAM ZA」は、英語に関する我が国一般の知識を踏まえれば、「ドラムザ」あるいは「ドラムズィーエー」ほどに発音する、と容易に理解されるものである。してみれば、本件商標の構成中、「ドラムザ」については、「DRAM ZA」の読み方を表したものと考えるのが自然である。また、両文字「ドラムザ」と「DRAM ZA」は、二段書きで表してなるものの、明確に離れた位置に配されていることから、視覚上分離して把握される態様である。両文字は、発音上の共通点を除き、格別に強い結びつきを想起させる他の事情はうかがえず、両文字を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。 そのため、本件商標は、「ドラムザ」あるいは「DRAM ZA」の一方のみをもって取引に資する場合も決して少なくないといえる。そして、「DRAM ZA」については、「DRAM」と「ZA」の間にスペースが設けられている点、及び「ZA」はアルファベット二文字のため付記的な印象を与える点を考慮すれば、本件商標に接した需要者が、「DRAM」の文字部分に着目する可能性はきわめて高い。 イ 「DRAM(ドラム)」という語は、例えば、サントリー社の、「ウィスキーあれこれ辞典」(甲4)に、「ドラム(Dram)」とは、「スコットランドで、ウィスキーの一杯分を指す用語。・・・いうならば、物理的メジャーでなく、感覚的メジャーであるが、最近のスコットランドでは、25ml、または35mlをワン・ドラムとして提供する酒場が多いという。」との記述及びペルノ・リカール・ジャパン社が手掛けるスコッチウィスキー「ザ グレンリベット」のウェブサイト「ウィスキー用語」(甲5)の、「ドラム 伝統的なウィスキーの出し方。典型的なスコットランド人に偏見なく聞いたとしても、ドラム大きさの定義はありません。通常、愛情を込めて頼む時は、“ウィー(少量の)”ウィスキーのことです。」との記述がある等、スコットランドにおいて、ウィスキーの分量「一杯(One-shot)」ほどを意味するものとして我が国の需要者等に知られており、スコットランド及びスコットランドを原産とするスコッチウィスキーと、きわめて強い結びつきを有する語である(甲4?甲15)。 (2)スコッチウィスキーとその取引の実情 ア スコッチウィスキーは、我が国でも世界5大ウィスキーの一つと数えられており、長年その人気が支持されてきたものである。 「スコッチウィスキー」の定義は、英国の2009年スコッチウィスキー規則によって細かく定められているが、該規則の第3条(1)において、「スコッチウィスキー」と称するには、「スコットランドにおいて製造されたウィスキーであること」が必要とされている(甲16)。 イ 現在、スコッチウィスキーには多くの銘柄が存在しているが、前述のように「スコッチウィスキー」とは、必ず「スコットランドにおいて製造されたウィスキー」を意味することから、間違いなくスコットランド産であることや、スコットランド産であること等を強く訴求する目的で、スコッチウィスキーのブランドには、例えば、スコットランドのゲール語で「息子」という意味を持つ「MAC(マック、マク)」、ゲール語で「峡谷、谷間」という意味を持つ「GLEN(グレン)」、ゲール語で「一族、氏族」を意味する「CLAN(クラン)」の語や、多色糸で綾織りにした格子柄でありタータンチェックとしても有名なTARTAN(タータン)の柄等、スコットランドに所縁の深い又はスコットランドを象徴する文字や図形が多数採用されている(甲17?甲20)。 ウ このようなスコッチウィスキーのブランドにまつわる背景事情が、まさしく本件の「DRAM(ドラム)」にも当てはまる。 現に「DRAM」を使用しているスコッチウィスキーには、「Kingsbarns Dream to Dram(キングスバーンズ ドリーム・トゥ・ドラム)」をはじめ、「GLENGOYNE TEAPOT DRAM(グレンゴイン ティーポット ドラム)」、「Dalmore Dee Dram(ダルモア ディー ドラム)」、「GLENELGIN Manager’sDram(グレンエルギン マネジャーズドラム)」、「DRAMFOOL(ドラムフール)」や「BestDram(ベスト ドラム)」などがある(甲21?甲27)。 (3)商品の品質の誤認を生じるおそれ 以上のように、スコッチウィスキーは、英国スコッチウィスキー規則によって産地、品質、原材料等が厳然と定義されているのであり、スコットランド産以外のスコッチウィスキーは存在しないこと、スコッチウィスキーのブランドにはスコットランドに所縁のあるものや、スコットランドを象徴するものが圧倒的に多数採択されているという事実があること、「DRAM(ドラム)」は、ゲール語で一定の意味合いをもつ、スコットランドにおいて由緒正しい歴史のある語であって、スコットランドに所縁の深いものであること等を総じて鑑みれば、「DRAM(ドラム)」を顕著に有する本件商標が付されたウィスキーを目にした需要者や取引者は、該ウィスキー商品が、あたかも「スコッチウィスキー」あるいは「スコットランドを産地とするウィスキー」であるかのごとく、産地、品質、原材料等について誤認するおそれがきわめて強いといわざるを得ない。 本件商標は、第33類に属する商品である「ウィスキー」を指定しているところ、本件商標権者がこれを「スコッチウィスキー以外のウィスキー」に使用するときは、該商品の需要者や取引者に「スコッチウィスキー」あるいは「スコットランドを産地とするウィスキ-」であるかのごとく商品の産地、品質、原材料等の誤認を生じさせるおそれがあるものである。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 第3 当審の判断 1 「DRAM」の文字について 申立人が提出した証拠等によれば、「DRAM」の文字は、ヤード・ポンド法における体積又は質量の単位であり、少量の液体、また1杯の酒(特にスコッチウイスキー)という意味でも用いられる語であるところ、スコットランドで、ウィスキーの一杯分を指す場合、何mlといった細かい規定はなく、酒場により、また時代により、その量はまちまちであるとされている(甲4、甲6)。 そして、特定の伝統的な製造方法に従ってスコットランド国内で製造されたウィスキー(甲3)であるスコッチウィスキーには、「DRAM」及び「Dram」の文字を商品名に含むものが複数あり、それらの商品がインターネットにおいて紹介又は販売されている(甲21?甲27)。 しかしながら、「DRAM」及び「Dram」の文字は、本件商標の登録査定時において、商品「ウィスキー」の産地(スコットランド産)を表すものとして使用されている事実を見いだすことができず、該商品の取引者、需要者が、商品「ウィスキー」の品質、原材料等を表すものとして認識するものとすべき事情も見当たらない。 また、当審において職権により調査するも、該文字が、「スコットランド産のウィスキー」を表すものとして我が国の取引者、需要者に認識されているとすべき実情は見いだせない。 そうすると、「DRAM」の文字は、商品「ウィスキー」の産地、品質及び原材料等を表示するものということはできない。 2 商標法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は、別掲のとおり、「ドラムザ」の片仮名と、「DRAM ZA」の欧文字とを二段に表したものである。 しかしながら、上記1の事実からすれば、本件商標の構成中の「DRAM」の文字は、商品の産地、品質、原材料等を表示するものとはいえない。 そうすると、本件商標は、これをその指定商品である第33類「ウィスキー」について使用しても、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 3 申立人の主張について 申立人は、本件商標の構成中の「DRAM」の文字部分について、スコットランドにおいて、ウィスキーの一杯分を意味するものとして我が国の需要者等に知られており、スコットランド及びスコットランドを原産とするスコッチウィスキーと、きわめて強い結びつきを有する語である旨主張する。 しかしながら、上記1のとおり、申立人が提出した証拠等からは、「DRAM」及び「Dram」の文字が、商品「ウィスキー」の産地(スコットランド産)、品質及び原材料を表すものということはできないから、たとえ、「DRAM」及び「Dram」の文字が、複数のスコッチウィスキーの商品名として使用されたとしても、そのことをもって、直ちにウィスキーを取り扱う業界において、商品の産地、品質、原材料を表示するものとして使用されているともいい難く、申立人のかかる主張は採用することはできない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標の指定商品中、第33類「スコッチウィスキー以外のウィスキー」についての登録は、商標法第4条第1項第16号に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 |
異議決定日 | 2020-11-17 |
出願番号 | 商願2019-34082(T2019-34082) |
審決分類 |
T
1
652・
272-
Y
(W33)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 太野垣 卓 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
大森 友子 石塚 利恵 |
登録日 | 2020-04-07 |
登録番号 | 商標登録第6243134号(T6243134) |
権利者 | スペンサー・マーク |
商標の称呼 | ドラムザ、ドラムゼットエイ、ドラム |
代理人 | 木村 吉宏 |
代理人 | 伊東 美穂 |
代理人 | 特許業務法人不二商標綜合事務所 |