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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W09
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W09
管理番号 1368302 
審判番号 無効2019-890005 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-01-29 
確定日 2020-10-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5926420号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5926420号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり,「DUCO」の欧文字を横書きしてなり,平成28年8月17日に登録出願,第9類「眼鏡型携帯情報端末,眼鏡用レンズ,眼鏡用枠,眼鏡,眼鏡(光学用のもの),コンタクトレンズ,コンタクトレンズ用容器,眼鏡用容器,サングラス,3D眼鏡,眼鏡用鎖,眼鏡用ひも」を指定商品として,同29年1月31日に登録査定,同年2月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において,商標法第4条第1項第19号及び同項第7号に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおり,「DUCO」の欧文字を横書きした構成からなり,請求人が「眼鏡,サングラス,運動用ゴーグル,眼鏡用枠」などの眼鏡及びその関連商品について使用しているとするものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 請求の理由(要点)
本件商標は,商標法第4条第1項第19号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により,その登録は無効にすべきものである。
2 具体的理由
(1)商標法第4条第1項第19号について
ア 商標の同一性
本件商標と引用商標とを比較すると,本件商標は欧文字「DUCO」の4文字からなり,引用商標も欧文字「DUCO」の4文字からなるため,互いに外観を共通にし,その書体にも大きな違いはなく,外観上,両商標は同一である。
本件商標からは,その欧文字のつづりから「デュコ」という称呼が生じ,一方,引用商標からも,その欧文字のつづりから「デュコ」という称呼が生じる。
よって,称呼上,両商標は同一である。
本件商標から本来的には特定の観念が生じず,引用商標からも本来的には特定の観念が生じない。しかしながら,引用商標は,請求人の業務に係る商品に使用されているものとして需要者の間で広く認識されており,請求人の業務に係る商品のブランドを想起させるものである。
よって,観念上,両商標は同一である。
以上より,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいて互いに同一のものであり,両商標は同一である。
イ 引用商標の周知性
(ア)請求人及びその商標権について
請求人は,中国の法人であり,眼鏡,サングラス,運動用ゴーグル,眼鏡用枠などの世界的なメーカーであり,かつ,世界的な卸売・小売業者である。請求人は,これらの商品に引用商標を付して販売している(甲4,甲5)。請求人の更なる情報は,そのウェブサイトに記載されている(甲6)。
請求人は,引用商標に係る商標権を,請求人の本国である中国を含む米国,英国,欧州連合で所有している(甲3,甲7?甲9)。これらの商標については,いずれもその出願日が本件商標の出願日よりも前のものである。
なお,各国登録証に記載されている出願人(権利者)の住所は,請求人の住所と異なるが,それぞれ,各国における出願時あるいは登録時の請求人の住所である。
(イ)引用商標の使用開始時期
請求人は,引用商標を2012年より,米国,英国,ドイツ,イタリア,スペイン,オーストラリア,カナダ及び日本において,眼鏡及びその関連商品(以下「請求人商品」という。)について使用を開始し,以来,継続して使用している。なお,甲第10号証において2015年7月に,甲第11号証において2015年2月に,眼鏡及びその関連商品が日本国内で販売されていたことが確認できる。
(ウ)日本での販売
上述したとおり,日本においては,遅くとも本件商標の出願日よりも前の2015年2月には使用されていることが確認できる(甲10)。また,甲第11号証に示すAmazon在庫管理のページは,権利者だけがアクセスできるページであり,請求人がこれらの商品を販売していることを証明するものとなる。
(エ)引用商標の使用範囲
甲第12号証は,引用商標を付した請求人商品のパンフレットであり,その商品説明及び取り扱い説明について,様々な言語の翻訳がなされていることからも,請求人が世界各国で引用商標を使用していることがうかがえる。なお,日本語訳も含まれており,ここからも日本において販売されていることがうかがえる(甲12,甲13)。
(オ)日本における売上高
2016年10月における売上高は約25万円,2016年11月における売上高は約23万円,2016年12月における売上高は約35万円,2017年1月における売上高は約36万円であり(甲14),月平均29万円とすると,ここから推測される年間売上げは約350万円である。
ウ 諸外国における引用商標の周知性
(ア)米国において
甲第15号証に示すように,米国における請求人の商品購人者から相当数のレビューが寄せられており,そのレビュー数が例えば62ページにわたって615件,71ページにわたって704件寄せられていることからも,多くの消費者に購入され,引用商標が周知であることを裏付けている。また,本件商標の出願日よりも前のレビューが多く確認できることから,本件商標の出願日よりも前に引用商標が周知であったことがうかがえる。
(イ)カナダにおいて
甲第16号証に示すように,カナダにおける請求人の商品購入者からレビューが寄せられており,当該レビューは本件商標の出願日よりも前にされたものである。
(ウ)英国において
甲第17号証に示すように,英国における請求人の商品購入者から相当数のレビューが寄せられており,そのレビュー数が31件や463件とされていることからも,多くの消費者に購入され,請求人の商標が周知であることを裏付けている。また,本件商標の出願日よりも前のレビューが多く確認できることから,本件商標の出願日よりも前に引用商標が周知であったことがうかがえる。
(エ)ドイツにおいて
甲第18号証に示すように,ドイツにおける請求人の商品購人者から相当数のレビューが寄せられており,そのレビュー数が214件や52件とされていることからも,多くの消費者に購入され,引用商標が周知であることを裏付けている。また,本件商標の出願日よりも前のレビューが多く確認できることから,本件商標の出願日よりも前に引用商標が周知であったことがうかがえる。
不正の目的
本件商標は,日本国内及び外国において周知な引用商標と同一のものであり,「不正の目的」があったことは明らかである。なお,本件商標及び引用商標は,互いに本来的には特定の観念を生じないものの,生来的な出所識別力の強い造語であることから,本件商標と引用商標とが偶然に同じ商標となったとは考え難い。
また,引用商標は,本件商標の出願日よりも前に,日本国内及び外国において請求人の業務に係る商品に使用されるものとして広く認識されており,中国・米国・英国・欧州において引用商標の出願日は,いずれも本件商標の出願日よりも前とされていることからも,本件商標の出願人がこれらの出願に係る商標を知ったうえで当該商標と同一の本件商標を日本において出願し,商標権を取得したものであると考えるのが妥当である。それだけでなく,このような周知でかつ辞書に掲載されていない造語からなる商標と同一の商標を出願し登録することは,当該商標の周知性,名声,顧客吸引力にただ乗りし,また,その出所識別力を稀釈化するものであり,「不正の目的」があったことは明らかである。なお,中国,米国及び欧州においては,本件商標の出願日よりも前に出願されているだけでなく,その登録がなされている。
さらに,商標の構成だけでなく,本件商標に係る指定商品が,引用商標に係る商品と極めて類似することからも,本件商標の出願人は,引用商標に係る商品と同一又は類似する商品に対して意図的に同一の商標を取得しており,「不正の目的」があったことは明らかである。
また,請求人は,本件商標の出願日よりも前の2015年2月には日本国内において引用商標の使用を開始しており,本件商標の出願人が,引用商標を知っていた可能性は十分に考えられる。
以上のことから,本件商標の出願人が,諸外国で出願(中国・米国・欧州においては登録)された引用商標を知ったうえで,当該外国で周知な引用商標と同一又は類似の商標が我が国において登録されていないことを奇貨として,請求人の国内参入を防止する等の目的で先取り的に出願したことは疑いないものである。
オ したがって,本件商標は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするもの」であり,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標が引用商標と同一であることは既に述べたとおりである。引用商標が日本国内及び外国において周知な商標であり,かつ世界中において請求人の名義で商標登録されていることも既に述べたとおりである。
よって,本件商標の商標権者は,引用商標がその指定商品につき我が国において商標登録されていないことを奇貨として,先取り的に商標登録出願し,商標権を取得したものとみるのが相当である。
してみれば,本件商標の商標権者が,本件商標を商標登録出願し商標権を取得した行為は,公正な商取引の秩序を乱すおそれがあり,ひいては公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。
したがって,本件商標は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であり,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,請求人の主張に対し,何ら答弁していない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 引用商標の周知性について
請求人は,中国における眼鏡,サングラス,運動用ゴーグル,眼鏡用枠などのメーカーであり,引用商標を,米国,英国,ドイツ,イタリア,スペイン,オーストラリア,カナダ及び日本において,商品に付して販売し,2012年より継続して使用しているなどと主張し,証拠として,「DUCO」の文字が表示された眼鏡等の使用上の注意が記載された書面(甲12,甲13)及びAmazonの「DUCO」の文字が表示された眼鏡等のウェブサイトであって,日本,米国,カナダ,英国及びドイツにおける商品購入者からのレビューが記載されたページ(甲10,甲15?甲18)を提出した。
しかしながら,これらの証拠には商品「眼鏡」の画像とともに「DUCO」の文字が表示されていることは確認し得るものの,当該商品が請求人の業務に係る商品であることを示す記載はない。
また,甲第3号証,甲第7号証ないし甲第9号証において「DUCO」の文字からなる商標を,本件商標の出願日前に,第9類「眼鏡」等を指定して,中国,米国,英国及び欧州において商標出願又は登録されていることがうかがえるが、これが引用商標の周知性を直接的に裏付ける証拠とはいえない。
さらに,請求人は,請求人の商品の日本における売上を示す資料であるとする甲第14号証から,日本における売上高を年間約350万円であると推測しているが,この証拠の出典はもとより商標及び商品名等の記載はなく、請求人の商品に関するものであることを示す内容やその詳細は不明であり,仮に,この証拠が請求人の主張のとおりの資料であって,請求人の推測する金額が正しいものであるとしても,かかる金額が請求人の業務に係る商品の周知性を基礎付けるほど多額なものであると認めるに足りる証拠はない。
その他,請求人は,「DUCO」の文字からなる商標を使用した商品「眼鏡」等について,販売場所、販売時期、販売数等は具体的に示されておらず,さらに市場シェアなどの事業規模、宣伝広告の程度等といった,日本国内及び外国における周知性を推しはかるための具体的資料は何ら提出していない。
そうすると,請求人が提出した証拠によっては,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
2 本件商標と引用商標との類否
(1)本件商標は,前記第1のとおり,「DUCO」の欧文字からなり,引用商標は,前記第2のとおり,「DUCO」の欧文字からなるものであるから、両商標は、「デュコ」の称呼を共通にするものであり、また、外観については、同一又は類似のものである。
そして、観念については、両商標は構成文字を同一にするものであるから、生じる観念に異なるところはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
3 本件商標の指定商品と請求人商品との類否
本件商標の指定商品と,請求人商品とは同一又は類似の商品であり,需要者も共通するといえる。
4 商標法第4条1項19号該当性について
上記1のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そうすると,引用商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の利益を得る目的をもって使用されるとする請求人の主張は、その前提を欠くものである。
また,他に本件商標の登録出願時及び登録査定時において,商標権者が不正の目的を持って本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
上記2及び3のとおり,本件商標は引用商標と類似し,本件商標の指定商品は請求人商品と同一又は類似するものであるとしても,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標ということはできず,また,不正の目的をもって使用をするものであるということもできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決)。
これを本件についてみると,本件商標は,「DUCO」の文字により構成されているものであって,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的など他人に不快な印象を与えるような構成のものではないことから,上記(a)に該当しないことは明らかであり,また,その指定商品に使用することが,社会の一般的道徳観念に反するものや,法律により禁止されているもの又は国際信義に反するといった,(b)ないし(d)に該当するものとすべき事情も見あたらない。
そして,請求人は,本件商標と引用商標はその構成態様が同一であり,引用商標が周知であることから,本件商標の商標権者は,その指定商品について我が国において引用商標が商標登録されていないことを奇貨として,先取り的に商標登録出願し,商標権を取得したものであり,本件商標の商標権者が,本件商標を商標登録出願し商標権を取得した行為は,公正な商取引の秩序を乱すおそれがあり,ひいては公の秩序を害するおそれがある旨主張している。
しかしながら,上記1のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり,被請求人による本件商標の使用が,その著名性に便乗するものということはできない。
また,請求人の提出に係る全証拠を勘案しても,本件商標が先取り的に出願されたものであり,公正な商取引の秩序を乱すおそれがあるなど,本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠く,又は本件商標をその指定商品について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものとすべき具体的事情等を見いだすことができない。
その他,本件商標が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標というべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲1
本件商標



別掲2
引用商標






審理終結日 2020-05-20 
結審通知日 2020-05-25 
審決日 2020-06-16 
出願番号 商願2016-89460(T2016-89460) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (W09)
T 1 11・ 222- Y (W09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 小俣 克巳
小松 里美
登録日 2017-02-24 
登録番号 商標登録第5926420号(T5926420) 
商標の称呼 デュコ、ズコ 
代理人 安達 友和 
代理人 八神 真由 

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