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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1368283 
審判番号 取消2018-300577 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-07-30 
確定日 2020-10-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4782569号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4782569号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4782569号商標(以下「本件商標」という。)は,「EOBBD」の文字を標準文字で表してなり,平成15年11月7日に登録出願,第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品として,同16年7月2日に設定登録がされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成30年8月13日である。
以下,本件審判の請求の登録前3年以内の期間(平成27年8月13日ないし同30年8月12日)を「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者によって使用された事実がない。また,専用使用権者又は通常使用権者の存在も認められず,その指定商品について本件商標が使用されないことについて正当な理由もないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証について
乙第1号証からは,写真の撮影者・撮影場所・撮影日等が不明であり,浴場施設で使用するアロマ商品(以下「アロマ商品」という。)が要証期間に存在した事実を確認することができない。また,被請求人は,アロマ商品を開発し,包装容器に「EOBBD」を付したと主張するが,それらを裏付ける客観的証拠を何ら提出していない。
仮に,被請求人がアロマ商品を製作したのであれば,アロマ商品の製作に関する書類,例えば,アロマ商品の包装容器は外部から購入し,また,包装容器に貼付するラベルについては,そのデザインを含めて外部に作成を依頼し納品したはずであるから,それらの取引書類が存在するはずである。それにも関わらず,そのような書類は一切提出されていない。
このように,被請求人はアロマ商品が要証期間に製作されたものであることを何ら証明しておらず,乙第1号証によって,要証期間に本件商標がアロマ商品に付されたと認めることはできない。
(2)乙第2号証の1ないし乙第2号証の3について
一般的な商取引においては,商品の購入者と販売者との間で,複数回にわたり見積書,注文書(発注書),受領書,請求書,領収書等の書類のやり取りが行われる。そして,これら取引書類のうち,「注文書(発注書)」,「受領書」は購入者が作成し,「見積書」,「請求書」,「領収書」は販売者によって作成されるものである。すなわち,取引書類の「領収書」は,商品の販売者である被請求人が作成するものであり,被請求人によっていかようにも作成することが可能である。
したがって,「領収書」のみでは,実際に取引があったことを客観的に証明することはできない。
本件の場合,相手方(請求書の名宛の者)が発行した書類(例えば,「発注書(注文書)」,「受領書」)の提出があって初めて,実際に取引が行われていたことを証明できるものである。仮に,アロマ商品の販売において,相手方から上記のような書類が提出されていなかったとしても,何の説明もなくアロマ商品を販売することはあり得ないし,配送業者を使わずに自ら商品を配達するようなことも考え難い。
そうとすれば,アロマ商品の販売に際し,少なくとも,被請求人と購入者との間で何らかの書類やメール等のやり取りはあったはずであるし,また,アロマ商品を発送したのであれば,配送業者が発行する伝票等があるはずである。しかしながら,そのような書類も一切提出されていない。
次に,乙第2号証の1ないし乙第2号証の3の領収書を見ると,但し書きに本件商標が記載されている。領収書の但し書きは,どんな商品を購入し金銭を支払ったのかを特定するためのものであり,「書籍代」「文房具代」等のように具体的な商品を特定できるように記載することが必要である。そのため,具体的な商品を示すものでない商標は,基本的に領収書の但し書きに必要のない表示であり,一般的に領収書の但し書きに商標を記載することはない。
また,被請求人の主張によれば,アロマ商品は,平成29年8月に製作されたものであり,答弁書の「アロマ商品の評価を得るべく・・個別に販売した」との記載から,領収書が発行された平成29年8月の時点では,まだアロマ商品は一般販売されていなかったと考えられることから,このような一般販売されていない商品の商標を,敢えて領収書の但し書きに記載することはあまりにも不自然である。
「領収書」は,上記したように被請求人が意図的に作成することが可能な書類であることを考えると,乙第2号証の1ないし乙第2号証の3は,本件商標の取消しを免れるために,意図的に作成されたものではないかとの強い疑念を抱かざるを得ない。
以上より,アロマ商品を販売した事実として提出する証拠は「領収書」のみであり,それ以外に取引の事実を示す客観的な証拠は何ら提出されておらず,その「領収書」においても,上記のように信ぴょう性が疑わしいものであることから,乙第2号証の1ないし乙第2号証の3によって,要証期間にアロマ商品が販売されたと認めることはできない。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は,単に本件チラシの作成の事実を示すのみであり,本件チラシが要証期間に頒布された事実を何ら証明するものではない。また,本件チラシが何部作成され,いつ,どこで,誰に対して何部頒布されたのか等,本件チラシを頒布した具体的な事実について一切不明である。
したがって,乙第3号証によって,本件チラシが要証期間に作成され,頒布されたと認めることはできない。
(4)乙第4号証について
乙第4号証には本件商標がどこにも記載されておらず,そもそも,将来の使用の予定は,本件審判において何ら関係のない事項である。
したがって,乙第4号証は,本件商標が使用された事実を何ら立証するものではない。
(5)まとめ
以上のとおり,被請求人の主張及び提出する乙第1号証ないし乙第4号証は,本件商標が要証期間に使用されていたことを何ら立証するものではなく,要証期間において,被請求人が本件商標を本件指定商品に使用していたものと認めることはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人の出資会社である株式会社草隆社は,日本全国にある公衆浴場の利用促進事業を手掛けている企業である。そこで,被請求人は,当該出資会社の事業機能を活用して業績をあげるプロジェクトを企画した。その企画が,「EOBBD」プロジェクトである。「EOBBD」とは,「いい,お湯,ビッグ,バス,ドリーム」の略称である。
被請求人は,平成29年(2017年)8月に,アロマ商品を開発し,「EOBBD」を付した(乙1)。そのアロマ商品は,天然香料である精油であり,乙第1号証は,被請求人代理人が平成30年9月15日に撮影・印刷したものである。
そして,被請求人は,アロマ商品の評価を得るべく,浴場業界で影響力が大きい者や,協業が見込め,かつ,販売力がある異業種の複数の者にアロマ商品を個別に販売した。
なお,乙第2号証の1の有限会社東京信和社H氏は,東京都の公衆浴場業界に繋がりを持つ人物であり,乙第2号証の2の株式会社カーボンフリーコンサルティングI氏は,銭湯とエコロジーをテーマにした企画を提案している人物である。また,乙第2号証の3のK氏は,都内で銭湯を経営している人物である。販売の内の一例を示すものが各領収書(乙2の1?乙2の3)であって,記載されている住所は,被請求人の営業所の住所であり,被請求人の登記住所とは異なる。
この時点において,EOBBD(アロマオイル)は,市場のニーズや評価を探るマーケティング段階であった。
これは,EOBBD(アロマオイル)の販売個数(2個,5個,8個の合計15個)からも明らかである。
このような段階では,商品の販売者が見込需要者に対して,自ら依頼して商品を購入・使用してもらうことが通常であって,「発注書(注文書)」や「受領書」が取り交わされることはないのが一般的である。
そこで,株式会社カーボンフリーコンサルティングのI氏と有限会社東京信和社のH氏が,乙第1号証に示されたEOBBD(アロマオイル)を確かに購入したことの購入確認書を乙第5号証の1及び乙第5号証の2として提出する。
また,EOBBD(アロマオイル)の取引が確かに行われたことを立証するため,そのときの売上が被請求人の総勘定元帳に計上されていることを示す乙第6号証も提出する。
さらに,被請求人は,アロマ商品の販売促進用の資料として,乙第3号証のチラシを作成し,配布している。
アロマ商品の評価が高かったことを受け,被請求人は,平成30年(2018年)10月7日に開催される第3回銭湯サポーターフォーラム,及び同年10月中旬より株式会社草隆社が運営するインターネット上の商品販売サイト「ゆっポくんストア」(乙4)でアロマ商品のさらなる拡販を予定している。
上記より,被請求人が本件商標を少なくとも香料類に使用していたことが証明される。
2 以上のとおり,本件商標は,その指定商品について,本件審判の請求登録前3年より現在に至るまでの間に,被請求人により使用されていたことは,乙各号証により立証されている。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)商品写真について
浴場施設で使用するアロマ商品(以下「本件使用商品」という。)の包装用容器の写真(乙1)には,正面に「EOBBD」の表示と「いい,お湯,ビッグ,バス,ドリーム」及び「シトラスジンジャー」の表示が記載され,また,背面に「EOBBD(いい,お湯,ビッグ,バス,ドリーム)」,「シトラスジンジャー」,「精油-天然香料100%ジンジャースイートオレンジ,グレープフルーツ,レモン,ラベンダー」及び被請求人の名称と住所が記載されているが,住所は商標登録原簿に記載の住所とは異なる。
被請求人は,当該写真の撮影者・撮影日について,被請求人代理人が平成30年9月15日に撮影・印刷した旨主張するが,当該日付は要証期間外である。
(2)本件商標権者と購入者との取引について
ア 本件商標権者が有限会社東京信和社H氏,株式会社カーボンフリーコンサルティングI氏,K氏に宛てた平成29年8月16日,同月26日,同年9月18日付け領収書(控)(乙2の1?乙2の3)は割印がされ,但し書きとして,「EOBBD(アロマオイル)」が記載されているが,一般的な商取引において商品の購入者と販売者との間での取引書類(注文書,納品書,請求書,領収書,物品受領書等)の提出はなく,領収書(控)に記載された被請求人の住所は商標登録原簿に記載の住所とは異なる。
イ 有限会社東京信和社H氏,株式会社カーボンフリーコンサルティングI氏による購入確認書(乙5の1,乙5の2)は,証拠説明書によれば,その作成日は令和2年7月9日であるところ,当該購入確認書には,予めパソコン等で作成されたものに,氏名の横に押印されたものであり,「株式会社ナチュールヴィバンから提案された企画遂行のため平成29年8月26日(16日)に下記の画像と同じ商品であるEOBBD(アロマオイル)を確かに購入しました。」の記載がある。
ウ 2017年8月1日から2018年7月31日までの総勘定元帳(乙6)には,日付「8月16日」,摘要「EOBBD H」,貸方「5,050」,日付「8月26日」,摘要「EOBBD I」,貸方「2,020」の記載があり,他はぼかしの加工がされている。
(3)チラシについて
本件商標権者のチラシ(乙3)には,「銭湯生まれのポカポカアロマ」「EOBBD」「いい,お湯,ビッグ,バス,ドリーム」「\天然アロマでポカポカになろう/」の記載と,中段に本件使用商品の写真(瓶)が掲載されている。
しかしながら,当該チラシの作成日,頒布数,頒布場所,頒布方法等は不明である。
(4)株式会社草隆社に係る「ゆっポくんストア」のウェブサイトについて
当該ウェブサイト(乙4)の印刷日である2018年(平成30年)9月18日は要証期間外であり,かつ,本件商標が表示された商品の掲載はない。
2 判断
(1)商品写真について
商品写真(乙1)が撮影された平成30年9月15日は,要証期間外であるから,当該商品(精油)に「EOBBD」の欧文字が付されているとしても,当該証拠によっては,本件商標権者が要証期間内に,当該商品(精油)に本件商標(本件商標と社会通念上同一のものを含む。以下同じ。)を使用したということはできない。
(2)本件商標権者と購入者との取引について
ア 領収書(控)(乙2の1?乙2の3)に対応する注文書,納品書,請求書,領収書(割印された一方のもの),物品受領書等の提出はなく,領収書に記載された「EOBBD(アロマオイル)」の商品が商品写真(乙1)の商品(精油)であることを立証していないから,当該商品に本件商標が付されていたということはできない。
また,有限会社東京信和社H氏,株式会社カーボンフリーコンサルティングI氏による購入確認書(乙5の1,乙5の2)は,予めパソコン等で作成されたものに,住所,氏名が記入され,押印されたものであり,H氏及びI氏が3年近く前の受領をいかなる具体的事実に基づき証明しているか不明である。
さらに,被請求人は,各領収書(乙2の1?乙2の3)に記載されている住所は,被請求人の営業所の住所であり,被請求人の登記住所とは異なる旨主張するが,これを裏付ける証拠の提出はない。
イ 総勘定元帳(乙6)には,摘要の項に「EOBBD」が記載されているが,被請求人作成に係るものか不明であるうえに,2017年(平成29年)8月1日から2018年(平成30年)7月31日までの期間にも関わらず,平成29年9月18日付け領収書(控)(乙2の3)に対応する記載はないことから,当該総勘定元帳は,信ぴょう性に欠けるものといわざるを得ず,上記アのとおり,領収書(控)以外の取引書類の提出はないことからすれば,本件商標を付した商品の取引があったとは認めることができない。
(3)本件商標権者のチラシについて
当該チラシ(乙3)には,「EOBBD」の文字と本件使用商品の写真(瓶)が掲載されているが,その作成日,頒布数,頒布場所,頒布方法等が不明であるから,当該チラシが,要証期間内に作成され,頒布されたものとは認めることができない。
(4)株式会社草隆社に係る「ゆっポくんストア」のウェブサイトについて
当該ウェブサイト(乙4)の印刷日である2018年(平成30年)9月18日は要証期間外であり,かつ,本件商標が表示された商品の掲載はなく,本件商標権者と株式会社草隆社との関係も明らかでない。
(5)小括
以上(1)ないし(4)のとおり,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に,本件商標権者が,本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標を使用したことを認めるに足る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者及び通常使用権者が請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-08-25 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-18 
出願番号 商願2003-98730(T2003-98730) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y03)
最終処分 成立  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 平澤 芳行
岩崎 安子
登録日 2004-07-02 
登録番号 商標登録第4782569号(T4782569) 
商標の称呼 イイオオビイビイデイ、イオブッド、エオブッド 
代理人 亀卦川 巧 
代理人 柴田 雅仁 
代理人 柴田 雅仁 
代理人 木下 洋平 

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