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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W39
管理番号 1368196 
審判番号 取消2017-300740 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-09-27 
確定日 2020-10-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5643132号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5643132号商標の指定役務中、第39類「全指定役務」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5643132号商標(以下「本件商標」という。)は、「キャラバン」の文字を標準文字で表してなり、平成25年7月23日に登録出願、第39類「地域観光に関する情報の提供,観光地・観光施設に関する旅行情報の提供,企画旅行の実施又はこれに関する情報の提供,産業観光に関する情報の提供,自然観光に関するツアーの企画・運営又は開催に関する情報の提供,主催旅行の実施及びコンピューターネットワークを利用した主催旅行の実施に関する情報の提供,名所・旧跡に関する情報の提供を含む旅行情報の提供,旅行に関する(宿泊に関するものを除く。)情報の提供,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎに関する情報の提供」及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同26年1月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成29年10月13日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成26年10月13日から同29年10月12日までを、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第39類「全指定役務」(以下「取消請求役務」という。)について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の使用は立証されていない。
乙第1号証ないし乙第5号証はいずれも本件商標が要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標の使用を証明するに足りるものではない。
(2)被請求人の提出に係る乙各号証について
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、本件商標に係るウェブサイト(以下、URLを「http://www.caravan-net.jp/」とするウェブサイトを「本ウェブサイト」という。)のコピーであるとされるが、これをもって要証期間内に日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用にも該当しない。
本ウェブサイトにおいて、サイト運営者の記載は一切確認することができないため、被請求人とどのような関係があるウェブサイトであるのか特定することができない。
なお、被請求人は答弁書において「小林秀樹(被請求人)は、ふるさとリンク株式会社に所属しています。ふるさとリンク株式会社は、医療法人樹会小林医院(長野市中御所4-7-23)と同じ建物内に事務所があり、業務を行っています。」(以下「ふるさとリンク株式会社」を「ふるさとリンク社」という。)と主張しているが、その点について、何ら立証がされていない。
(イ)要証期間における使用に該当しない。
同号証中の記事において、「2014年5月20日」の日付を3か所確認することができるが、この日付は要証期間より前であることは明らかであり、要証期間内の本件商標の使用を何ら立証するものではない。
(ウ)社会通念上同一の商標ではない
本件商標は、「キャラバン」を片仮名で表してなるところ、同号証中に使用されている商標は「キャラバン」と「探検隊」の語を二段書きしてなるものである。また、「キャラバン」と「探検隊」は横幅を同一にしてまとまりよく表されているため、「キャラバン探検隊」全体で「探検をする一団」程の意味合いを認識するとみるのが自然である。したがって、「キャラバンタンケンタイ」の称呼のみが生じるというべきであって、殊更「キャラバン」の文字部分のみが分離抽出して認識され、自他役務識別標識として機能を発揮するものではない。
そのような場合、本件商標と使用標章とは、観念・称呼において明らかに相違するものであり、社会通念上同一性を有する商標とはいい得ないものである。
また、登録商標に他の文字を付加して使用する場合、使用商標全体の構成態様や付加された語により、登録商標から生じる称呼及び観念とは異なる称呼及び観念を生じ、社会通念上同一の商標とは認められないと判断された審判例が複数存在する(甲3、甲4)。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は、被請求人が所属するふるさとリンク社がサポートするMRI人間ドックの案内と観光案内であるとされるが、これをもって要証期間内に日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)要証期間における使用に該当しない。
同号証中からは、要証期間内に発行されたことが客観的に明らかとなる日付等の記載は見当たらないだけではなく、頒布されたという事実が何ら証明されていないため、本件商標の使用を何ら立証するものではない。
(イ)商標的使用態様ではない。
同号証中から「『キャラバン』におまかせ下さい。」の語を2か所確認することができるが、ここにおける使用は、いずれも人間ドックの受診を推奨することを主な目的としており、指定役務における使用とはいえないから、商標法第2条第3項第3号ないし同第5号の使用に該当しない。
さらに、同号証中の3葉目についてみると、印刷の濃淡が統一されていない。特に当該葉の下部については文字が薄く、解読が困難な部分が存在するのに対し、当該部分に隣接する「『キャラバン』におまかせ下さい」の語ははっきりと印刷されている。通常の印刷においてこのような濃淡の差は生じないと考えられるため、同号証に当初から「『キャラバン』におまかせ下さい」の語が印字されていたかどうか、極めて不自然である。
(ウ)同号証の信頼性について
同号証は、両面コピーと片面コピーが混在しており、一般的なパンフレットとしての体をなしているとはいえない。また、同号証を構成する用紙の色及び質がそれぞれの頁で差異がある。例えば、1葉目は厚めの比較的丈夫な用紙であるが、2葉目の用紙は薄く、もろいものである。さらに、「『キャラバン』におまかせ下さい」の記載を確認することのできる2葉目と3葉目においても明らかに用紙が異なる。
加えて、同号証の後ろから2葉目にはMRI人間ドック報告書が添付されているが、同号証は、MRI人間ドックの案内と観光案内であるとしているものの、個人的な報告書が添付されていることに違和感を覚えざるを得ない。したがって、同号証自体に疑義が生じるばかりか、同号証は、本件審判請求がされたことを被請求人が知った後に作成されたものである蓋然性が極めて高い。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証には、本件商標の記載すらどこからも確認することができない。また、同号証の内容も取消請求役務に該当しない、無関係なものであるため、商標法第2条第3項第3号ないし同第5号の使用に該当しない。したがって、これをもって要証期間内に日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
エ 乙第4号証について
乙第4号証の内容は、人間ドックのMRI画像を納める際に用いられるCDであり、取消請求役務ではなく、無関係なものであるため、商標法第2条第3項第3号ないし同第5号の使用に該当しない。さらに、要証期間内に頒布されたことが客観的に明らかとなる日付等の記載は見当たらず、本件商標の使用を何ら立証するものではない。
オ 乙第5号証について
乙第5号証には、本件商標の記載すらどこからも確認することができない。また、同号証の内容も取消請求役務に該当しない、無関係なものであるため、商標法第2条第3項第3号ないし同第5号の使用に該当しない。さらに、要証期間内に頒布されたことが客観的に明らかとなる日付等の記載は見当たらず、本件商標の使用を何ら立証するものではない。
3 上申書(令和元年9月4日付け)
(1)被請求人の提出した乙第6号証ないし乙第23号証(証拠番号は、令和元年7月18日の口頭審理における修正後のもの。)は、本件商標が、要証期間内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって、取消請求役務について使用されていたことを証するものではない。
(2)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者による本件商標の使用がないこと
被請求人は、ふるさとリンク社や医療法人樹会が運営する小林医院における本件商標の使用を主張するが、ふるさとリンク社も医療法人樹会も、本件商標の商標権者である被請求人とは別の法人格である。不使用審判請求の対象となった登録商標が第三者によって使用されていても、その第三者が専用使用権者や通常使用権者であることが立証されない限りは、商標権者は、その商標登録の取消しを免れない(商標法第50条第2項)。
本件において、被請求人は、ふるさとリンク社や医療法人樹会に対する本件商標の通常使用権の許諾の事実を一切立証していない。
したがって、ふるさとリンク社や医療法人樹会における本件商標の取消請求役務についての使用の有無は、本件商標に係る不使用取消の成否には何ら影響を与えない。
(3)乙第6号証ないし乙第23号証はいずれも取消請求役務についての使用証拠とはいえないこと
そもそも、ふるさとリンク社や医療法人樹会による本件商標の使用が、本件商標の通常使用権者による使用であることは立証されていないが、これに加え、乙第6号証から乙第23号証は、いずれも、要証期間内に本件商標の商標権者である被請求人が日本国内において本件商標を取消請求役務に使用していた事実を立証するものではない。
ア 乙第6号証の1について
乙第6号証の1は、医療法人樹会とドリームネットデザイン株式会社(以下「ドリームネットデザイン社」という。)との間で作成された制作委託契約書とされ、第1条部分には「キャラバン探検隊ポータルサイト」との記載があるが、「キャラバン探検隊」との表示は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないから、同号証は本件商標の使用証拠となるものではない。
なお、ポータルサイトの制作委託契約書において「キャラバン探検隊」との表示がされていることからしても、被請求人はもともと「キャラバン探検隊」との表示の使用を予定しており、「キャラバン」単体での表示ではないことが推認される。
イ 乙第6号証の2について
乙第6号証の2は、作業工程や作業期間の記載された作業工程表とされるが、同号証と被請求人との関連性は明らかではなく、また、本件商標の記載はどこからも確認することはできない。さらに、同号証は、月日についての記載はあるものの、いつの年であるかについての記載がなく、本件商標の使用証拠となるものではない。
ウ 乙第6号証の3について
乙第6号証の3は、ドリームネットデザイン社宛ての発注書及びXenosphere製品使用許諾契約書とされるが、その内容をみても、本件商標の記載はどこからも確認することはできず、また、同号証と他の証拠との関連性も明らかではない。したがって、本件商標の使用証拠となるものではない。
エ 乙第7号証について
乙第7号証は、「caravan-net.jp」のドメイン名を「WHOIS」に登録した際の記録書類とされ、「ドメイン情報」との記載部分に「caravan-net.jp」との表示がなされているが、以下の点から、本件商標の使用証拠となるものではない。
(ア)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用にも該当しない
同号証は、被請求人が「お名前.com」の情報公開代行サービスに申し込み、その手続が完了したことを被請求人個人に対して知らせるメールにすぎず、他の証拠との関連性も明らかではなく、本件商標が実際に使用されていた事実を立証することはできない。
(イ)本件商標の使用ではない
「caravan-net.jp」は、本件商標と同一ではないし、そもそもドメイン名であってインターネット上の所在を示すものにすぎず、本件商標と同一の標章が使用されているとは認められない。
(ウ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証は、情報公開代行サービスの申込手続に関するメールにすぎず、その内容からは、かかるドメイン名が取消請求役務に使用されていたことは明らかにならない。
オ 乙第8号証について
乙第8号証は、KTrick合同会社(以下「ケートリック社」という。)の担当者と被請求人との間で取り交わされたメールとされるが、その内容をみても、本件商標の記載はどこからも確認することはできず、本件商標を使用していた証拠を見いだすことはできない。また、他の証拠との関連性も明らかではないから、本件商標の使用証拠となるものではない。
カ 乙第9号証について
乙第9号証は、「caravan-net.jp」のドメイン名の検索結果を表示したものであるが、以下の点から、本件商標の使用証拠となるものではない。
(ア)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用にも該当しない
同号証は、「caravan-net.jp」のドメイン名が、2013年6月19日に登録され、2018年8月6日に最終更新が行われ、現在かかるドメイン名が「Active」の状態にあることを示すのみであり、その内容から、被請求人が「caravan-net.jp」のドメイン名を要証期間内に使用していたことは立証されない。また、他の証拠との関連性も明らかではない。
(イ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証は、ドメイン名の検索結果を示したものにすぎず、かかるドメイン名が、取消請求役務に使用されていたことは明らかとなっていない。
(ウ)本件商標の使用とはいえない
「caravan-net.jp」は、本件商標と同一ではないし、そもそもドメイン名であってインターネット上の所在を示すものにすぎず、本件商標と同一の標章が使用されているとは認められない。
キ 乙第10号証について
乙第10号証は、ふるさとリンク社の履歴事項全部証明書にすぎず、これにより被請求人が本件商標を使用していた事実が証明されるものではなく、本件商標の使用証拠となるものではない。
ク 乙第11号証について
乙第11号証は、ふるさとリンク社の入口を撮影したものとされ、その写真には「CARAVAN」との表示がなされているが、そもそもふるさとリンク社が本件商標の通常使用権者であることが立証されておらず、ふるさとリンク社における本件商標の使用が立証されたとしても、本件商標に係る商標登録の不使用取消は免れ得ない。
さらに、以下の点から、同号証は、本件商標の使用証拠とはなり得ない。
(ア)要証期間内の使用の事実を立証し得るものではない
同号証の写真は、実際にふるさとリンク社の入口で撮影されたものであるかは証拠からは明らかになっていない。また、被請求人によれば、平成25年9月2日に撮影したものとされるが、実際に同日に撮影されたものであるかは証拠からは明らかではない。被請求人は、同号証にある表示は平成25年6月から表示中としているが、その内容からは、要証期間内に同表示がなされていたかは明らかではない。
(イ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証の内容は、同表示が建物の入口と思われる場所に掲げられている写真にすぎず、同表示が取消請求役務に使用されていたことは明らかとなっていない。
(ウ)同号証の信用性について
同号証の写真は、「CARAVAN」の表示を主題とする構図の写真であるが、どのような経緯でこのような写真が撮影されたのかは明らかにはされていない。この写真が撮影されたとする平成25年9月2日には本件審判請求は開始しておらず「CARAVAN」の使用の有無が問題となっていたわけではなかったのだから、この時期に「CARAVAN」の表示を主題とした写真が撮影されていたというのはいかにも不自然である。このことからすれば、同号証の写真は、本件審判請求がされたことを被請求人が知った後に撮影されたものである蓋然性が高く、信用性に欠けるものである。
ケ 乙第12号証について
乙第12号証は、「ふるさとリンク社の建物内の入ロドア」と題する写真、「ふるさとリンク社の建物外側からの入ロドア」と題する写真及び「CARAVAN受付から、MRIゾーンヘの入口表示」と題する写真を内容とするものであるが、そもそもふるさとリンク社が本件商標の通常使用権者であることが立証されておらず、ふるさとリンク社における本件商標の使用が立証されたとしても、本件商標に係る商標登録の不使用取消は免れ得ない。
さらに、以下の点から、同号証は、本件商標の使用証拠とはなり得ない。
(ア)要証期間内の使用の事実を立証し得るものではない
同号証の全ての写真は、平成26年1月7日に撮影したものとされるが、実際に平成26年1月7日に撮影されたものであるかは明らかではない。また、被請求人は、これらの表示が平成26年1月7日から表示中としているが、その内容からは、要証期間内に同表示がされていたかは明らかではない。したがって、同号証は、要証期間内における本件商標の使用の事実を立証し得るものではない。
(イ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証の内容をみても、これらの表示が取消請求役務に使用されていたかは明らかではなく、同号証は、本件商標が取消請求役務に使用されていたことを立証し得るものではない。
(ウ)乙第12号証の信用性について
被請求人は、平成26年1月7日に写真が撮影されたと主張するが、いずれも「キャラバン」又は「CARAVAN」の表示がなされることを示すためにのみ撮影されたと思わせるような構図となっており、このような写真が本件商標に関する紛争が生じる前に撮影されていたとは通常考えにくい。このことからすれば、同号証の写真は、本件審判請求がされたことを被請求人が知った後に撮影されたものである蓋然性が高く、信用性に欠けるものである。
コ 乙第13号証について
乙第13号証は、ふるさとリンク社が運用する車両の写真及びその車検証とされるが、そもそもふるさとリンク社が本件商標の通常使用権者であることが立証されておらず、ふるさとリンク社における本件商標の使用が立証されたとしても、本件商標に係る商標登録の不使用取消は免れ得ない。
さらに、以下の点から、同号証は、本件商標の使用証拠とはなり得ない。
(ア)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用にも該当しない
同号証の写真は、いずれも「CARAVAN」又は「キャラバン」との表示がなされているのみであり、被請求人とこれらの表示との関連性は明らかではない。また、同号証と他の証拠との関連性も明らかではない。
(イ)要証期間内の使用の事実を立証し得るものではない
同号証の写真は、いずれも平成26年3月8日に撮影したものとされるが、実際に平成26年3月8日に撮影されたものであるかは明らかではない。また、被請求人は、これらの表示が平成26年1月から表示中としているが、その内容からは、要証期間内にこれらの表示がなされていたかは明らかではない。
(ウ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証の写真は、いずれも車両の車体を撮影したものにすぎず、その内容をみても、これらの表示が取消請求役務に使用されていたかは明らかではなく、本件商標が取消請求役務に使用されていたことを立証し得るものではない。
(エ)同号証の信用性について
被請求人は、平成26年3月8日に写真が撮影されたと主張するが、いずれの写真も「CARAVAN」又は「キャラバン」の表示がなされていることを示すためにのみ撮影されたと思わせるような構図となっており、このような写真が、被請求人が主張するように、本件商標に関する争いが生じる前の平成26年3月8日の時点で撮影されたとは通常考えにくい。
したがって、同号証の写真は、本件審判請求がされたことを被請求人が知った後に撮影されたものである蓋然性が高く、信用性に欠けるものである。
サ 乙第14号証について
乙第14号証は、「迷子防止用の携行表示板のぼり」と題する写真、「案内用、善光寺ツアー3点セット(キャップ、拡声器、携行表示板)とツアー参加者のバッグ等に貼付および胸部に貼付用のCARAVAN表示」と題する写真及び「CARAVAN」との表示があるステッカーであるが、これをもって要証期間内の日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用にも該当しない
いずれも、「CARAVAN」又は「キャラバン」と表示されているのみであって、被請求人とこれらの表示との関連性は明らかではない。また、他の証拠との関連性も明らかではない。
(イ)要証期間内の使用の事実を立証し得るものではない
被請求人によれば、同号証の写真は、いずれも平成26年2月8日に撮影されたものであり、また、これらの写真に掲載されている物は、平成26年3月から継続使用しているものとされている。しかし、写真が実際に平成26年2月8日に撮影されたものであるかは明らかではなく、また、写真からは実際にこれらの物が要証期間内に使用されていたか明らかにはならない。
さらに、「CARAVAN」及び「キャラバン」の表示のあるステッカーについても、これらのステッカーが実際に要証期間内において使用されていたものであるかは明らかではない。
(ウ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証の写真からは、実際に同表示が取消請求役務に使用されていたことは明らかにはならない。
(エ)同号証の信用性について
被請求人は、平成26年2月8日に写真が撮影されたと主張するが、これらの写真は、いずれも「CARAVAN」又は「キャラバン」の表示がなされていることを示すためにのみ撮影されたと思わせるような構図となっている。そして、このような写真が、被請求人が主張するように、本件商標に関する争いが生じる前の平成26年2月8日の時点で撮影されたとは通常考えにくい。したがって、これらの写真は、本件審判請求がされたことを被請求人が知った後に撮影されたものである蓋然性が高く、信用性に欠けるものである。
シ 乙第15号証について
乙第15号証は、医療法人樹会の中にあるツアーデスクを撮影した写真、特定施設新築等届出書及び建物設計図の写しとされるが、そもそも医療法人樹会が本件商標の使用権者であることが立証されておらず、医療法人樹会における本件商標の使用が立証されたとしても、本件商標に係る商標登録の不使用取消は免れ得ない。
また、これをもって要証期間内の日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用にも該当しない
被請求人は、これらの写真は小林医院内のエレベーターホール前の受付で撮影されたものであるとし、それに加えて特定施設新築等届出書及び建物設計図の写しを提出しているが、これらの証拠からは、実際に同写真が小林医院内で撮影されたものであるかは明らかとならない。また、同写真内には、「CARAVAN」との表示があるのみであって、被請求人と同表示との間の関連性も明らかではない。
(イ)要証期間内の使用の事実を立証し得るものではない
被請求人によれば、これらの写真は、平成26年9月10日に撮影したものとされるが、実際にこの日時に撮影されたものであるかは明らかではない。また、被請求人は同写真内の「CARAVAN」との表示が平成25年9月から表示中としているが、実際に要証期間内においても同表示がなされていたかは明らかではない。
(ウ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証の写真からは、実際に同表示が取消請求役務に使用されていたかは明らかとはなっていなく、本件商標が取消請求役務に使用されていたことを立証し得るものではない。
(エ)乙第15号証の信用性について
被請求人は、平成26年9月10日に写真が撮影されたと主張するが、これらの写真は、いずれも「CARAVAN」の表示がなされていることを示すためにのみ撮影されたと思わせるような構図となっている。このような写真が、被請求人が主張するように、本件商標に関する争いが生じる前の平成26年9月10日の時点で撮影されたとは通常考えにくく、これらの写真は、本件審判請求がされたことを被請求人が知った後に撮影されたものである蓋然性が高く、信用性に欠けるものである。
ス 乙第16号証について
乙第16号証は、被請求人によれば、サイクリング用自転車(貸出用)を撮影した写真とされるが、これをもって要証期間内の日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用にも該当しない
同号証の写真の内容によれば、サイクリング用自転車に「CARAVAN」との表示がなされているが、かかるサイクリング用自転車が被請求人の所有物であるかは明らかではなく、被請求人と同表示との関連性も明らかではない。
(イ)要証期間内の使用の事実を立証し得るものではない
これらの写真は、平成26年10月12日に撮影したものとされるが、実際に平成26年10月12日に撮影されたものであるかは明らかではない。また、被請求人は、同表示が平成26年7月から表示中としているが、実際に要証期間内に同表示が使用されていたかは、その内容からは明らかではない。
(ウ)取消請求役務についての使用とはいえない
同号証の内容は、自転車を撮影した写真のみであり、その内容から、同表示が取消請求役務に使用されていたかは明らかとはならない。
(エ)同号証の信用性について
被請求人は、平成26年10月12日に写真が撮影されたと主張するが、これらの写真は、自転車に「CARAVAN」の表示がなされていることを示すためにのみ撮影されたと思わせるような構図となっている。そして、このような写真が、被請求人が主張するように、本件商標に関する争いが生じる前の平成26年10月12日の時点で撮影されたとは通常考えにくく、これらの写真は、本件審判請求がされたことを被請求人が知った後に撮影されたものである蓋然性が高く、信用性に欠けるものである。
セ 乙第17号証について
乙第17号証には、本件商標の記載すらどこからも確認することはできない。また、同号証は、人間ドックの受診者情報であるが、取消請求役務とは無関係なものであるため、商標法第2条第3項第3号ないし同第5号の使用に該当しない。
ソ 乙第18号証について
乙第18号証は、「外国人向けの英文フォーマットの人間ドック返信の見本」とされ、その1頁目の下部には「CARAVAN」との表示があるが、日付等の記載がないため、要証期間内に使用されたものであるかは不明である。
また、その内容は、人間ドックに関するものであり、取消請求役務とは無関係であるため、同表示がなされていることは、商標法第2条第3項第3号ないし同第5号の使用には該当しない。
タ 乙第19号証について
乙第19号証は、「キャラバン探検隊ポータルサイト技術支援・保守サポートサイト運営代行」等を依頼したケートリック社からの請求書とされるが、同号証には「キャラバン探検隊」との表示があるものの、かかる表示は本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
そのため、その内容をみても、本件商標が使用されている証拠を見いだすことはできない。また、他の証拠との関連性も明らかではない。
チ 乙第20号証について
乙第20号証は、被請求人によれば、ドリームネットデザイン社との打合せに用いられたデザイン書面とされており、「キャラバン探検隊」との表示があるものの、かかる表示は本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
そのため、その内容をみても、本件商標を使用している証拠を見いだすことはできない。また、同号証と他の証拠との関連性も明らかではない。
ツ 乙第21号証について
乙第21号証は、被請求人によれば、ふるさとリンク社及び小林医院内部から撮影された写真のファイル情報の写しとされており、写真ファイルのタイトルには「キャラバン」との表示がある。しかし、かかる表示は単にファイルに付したタイトルにすぎず、商標として使用されているとはいえない。 したがって、これをもって要証期間内の日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
テ 乙第22号証について
乙第22号証は、小林医院が以前人間ドックを受診した者に対して発送した往復はがきのダイレクトメールのうち返信されたはがきとされるが、小林医院は医療法人樹会が運営する医院とのことであり、医療法人樹会が本件商標の使用権者であることは立証されていないから、小林医院における本件商標の使用を主張したとしても、本件商標に係る商標登録の不使用取消は免れない。
また、いずれのはがきにおいても、下部に「キャラバン」との表示があるが、はがきは医療法人樹会が運営する小林医院から送付されていることからすれば、医療サービスに関するはがきであり、かかるはがきに本件商標が使用されていたとしても、取消請求役務についての使用とはいえない。実際に、その内容は、人間ドックの勧誘に終始しており、旅行及び観光とは関係性がない。
したがって、本件商標が取消請求役務について使用されていたとはいえず、これをもって要証期間内の日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたといえない。
ト 乙第23号証について
乙第23号証は、FTPサーバーでのファイル情報の写しとされ、ファイル名には「CARAVAN」との表示がなされているが、かかる表示は単にファイルに付したタイトルにすぎず、商標としての使用ということはできない。
したがって、これをもって要証期間内の日本国内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(4)不使用についての正当な理由は存在しない
被請求人は、本件商標を取消請求役務に使用していないことについて「正当な理由」(商標法第50条第2項)があることを何ら主張立証しておらず、かかる正当理由は認められない。
(5)結語
以上のとおり、乙第1号証ないし乙第23号証は、要証期間内に本件商標が日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって取消請求役務について使用された事実を立証するものではない。また、乙第1号証から乙第23号証を総合してみてもなお、前記事実が立証されたと認めることはできない。さらに、被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを何ら主張立証してはいない。よって、本件商標は商標法第50条第1項の規定によって指定役務のうち、第39類「全指定役務」についての登録を取り消すべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、答弁書及び上申書等において、その理由を要旨次のように述べて、「ふるさとリンク社が本件商標を使用して長野市の観光情報の提供、人間ドックの受診者に対する観光ツアーの提供を行っている」旨主張し(以下、これらの役務を「使用主張役務」ということがある。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証(枝番号を含む。)を提出した(審決注:被請求人の提出に係る乙各号証については、令和元年7月18日の口頭審理において、調書記載のとおり、証拠番号を振り直しており、本審決では振り直した証拠番号に基づき記載する。)。
1 答弁の理由
(1)ふるさとリンク社の活動内容について
被請求人は、ふるさとリンク社に所属している。ふるさとリンク社は、年間2,000人が人間ドックを受診する医療法人樹会小林医院(長野市中御所4-7-21)と同じ建物内に事務所があり、業務を行っている。
年間1,200名は、日本全国及び海外からの来訪者であり、ふるさとリンク社は交通案内や観光案内及び人間ドック予約等についての電話対応、メール対応、インターネット表示についての業務を行っている。人間ドックの予約時間に合わせた北陸新幹線の時刻案内、タクシーの手配、宿泊予約、長野市の観光についての情報提供など、顧客の要望に対してコンシェルジュ的立場で業務を行っている。
外国人の受入れにも積極的で、1年間に約80名の外国人が訪れ、旅行案内や通訳手配、日程調整を行っている。小林医院の検査装置には、英語、中国語ほか12か国語の外国語対応の放送装置が備えられている。
医療法人は、法律的規制で行えない業務が多く、ふるさとリンク社が数多くの実務を担当している。
長野市に来訪する観光客に親和性を高めてもらうための地域音楽CDも作成し、平成28年7月7日に音楽CD「長野を奏でる」を発表した(乙5)。
さらに、地方の情報を発信するための本ウェブサイトを平成27年に用意、情報収集と発信サイトとして構築されている(http://www.caravan-net.jp/)。
(2)商標「キャラバン」について
当初、日産キャラバン車両を用いてふるさとリンク社が行っていた手持物の移動サービス等が発端になり、本件商標の使用を開始し、日々の業務において、同社が行う業務を「キャラバン」と呼称し、日々の業務を行っている。
本ウェブサイト構築に当たり、これまでの日常使用した「キャラバン」の呼称状況を守ること、本ウェブサイトのサイト名称を継続して使用することを目的にして商標登録を行った。
情報収集と発信サイトとして平成27年より構築中の本ウェブサイト(http://www.caravan-net.jp/)中においても本件商標を使用している(乙1)。
以上より、本件商標を日々使用している状況であり、取消事由には該当せず、本件審判請求は成り立たない。
2 平成30年7月24日付け審尋に対する回答(同年8月25日付け証拠説明書)
(1)被請求人とふるさとリンク社の関係について
被請求人は、設立時から取締役をしていた(乙10)。
(2)本ウェブサイトにおける商標の使用に係る主張について
本件商標の使用は、商標法第2条第3項第7号及び同第8号に該当する。
(3)本ウェブサイトの取引書類等について
本ウェブサイトのシステムは、無料利用が基本になっており、アクセス増加に伴う掲載宣伝費用等から収益を予定したシステムモデルである。乙第6号証に示した契約以外にメンテナンス費用が生じている。
(4)審判事件弁駁書の主張に対する意見
「キャラバン」と「探検隊」を二段書きしていて「キャラバン」が分離抽出して認識できないとの主張について反論する。
乙第1号証において、「キャラバン」から改行されている「探検隊」の文字は、字体、色彩、デザインが全く異なり、本ウェブサイトの内容に興味を持ってもらう、キャッチフレーズ的な言葉として本件商標の下段に記載している。
本ウェブサイト内の表示では、本件商標を独立した表示として使用している。「探検隊」の文字は、本ウェブサイトにさらに興味を持ってもらうための表記としてドリームネットデザイン社がデザインした。
上下二段に分かれているにもかかわらず、幅が同じならば「キャラバン」の文字部分が自他役務識別標識として機能を発揮しないとの主張には無理がある。
商標「ライン」(甲3)及び商標「RAFFIN circle」(甲4)に係る取消審判は、連続して表記された商標についての事案であり、本件審判の事案とは比較できる内容ではない。
3 上申書(令和元年8月5日付け)
(1)口頭審理陳述要領書に対する反論
ア 乙第19号証の1(請求書)の内容についての反論
乙第19号証の1は、「caravan-net.jp」が平成26年10月13日ないし同29年10月12日の期間中に継続して動いていたことを示す証拠として提出している。
キャラバン探検隊の表示は、連続した表現におけるロゴ的な図形あるいは文字十図形あるいは記号の商標であれば、改行においても連続表示と認識される可能性がある。しかし、本件商標は文章(テキスト)としての登録商標となっている。
イ 乙第20号証について
乙第20号証は、ふるさとリンク社とドリームネットデザイン社が交渉を行い、実際に契約をして、「caravan-net.jp」を運営したことを示すために提出した書類である。
ウ 乙第21号証について
乙第21号証は、乙第11号証の写真、乙第12号証の写真、乙第13号証の写真、乙第14号証のデジタル写真について、それぞれ写真の撮影時期、撮影条件を示したものである。商標法に該当する商標使用について、写真との関連を以下に述べる。
(ア)商標法第2条第3項第4号に該当する本件商標の使用を示す写真として、車両写真(乙8左上キャラバン正面のほか3枚)、自転車(乙11自転車全体ほか1枚)を示している。
(イ)商標法第2条第3項第8号に該当する本件商標の使用を示す写真として、階段前のキャラバン受付写真(乙10右下階段前のほか2枚)を示している。写真内の展示物には、乙第2号証で示した「キャラバン」が記載された内容のパンフレットが含まれている。
(ウ)商標法第2条第3項第5号に該当するキャラバンの登録商標使用を示す写真として、「4点セット」及び「はた」(乙9)を示している。善光寺ツアー時に参加者が迷子にならずに誘導するため使用中の本件商標が表記された案内用の道具セットであり、外国人対策として「CARAVAN」表記も同時に行っている。
写真内容は、いずれも平成26年10月13日ないし同29年10月12日の期間において、継続して展示され、継続的に使用されている。
(2)「caravan-net.jp」と第39類、第42類について
キャラバンの取消事由について「第39類 全指定役務」との記載があるが、被請求人が「第39類と42類を含む全指定役務」と誤認識をしたために、「caravan-net.jp」についての証拠を当初より提出していた。
令和元年7月18日の口頭審理直前に、本件商標の取消事由について「第39類 全指定役務」のみであることを初めて認識した。
「caravan-net.jp」に関する活動の証拠を複数提出してきたが、第42類に属する役務の使用内容になるため、第39類「全指定役務」の判断には直接に関与しない証拠と考える。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及びその主張によれば、以下のとおりである。
(1)本ウェブサイトについて
ア 掲載内容
平成29年12月1日作成の本ウェブサイトとされる画面の写し(乙1)は、その1葉目ないし6葉目に「www.caravan-net.jp」の表示があり、その1葉目ないし3葉目及び6葉目には、画面内の左上、右上、右中程の3か所に、また、5葉目には、画面内の左上の1か所に、それぞれ「キャラバン」の文字の表示があり、その下に赤色、青色、黄色の円の中にそれぞれ白抜きで表した「探」、「検」、「隊」の文字の表示がある。
そして、1葉目には、中央下に「お出かけ情報検索」のタイトルの下、日本地図を簡略化した図形及び都道府県の名称の表示があり、2葉目、3葉目及び6葉目には、それぞれ中央下に「ピックアップ!! Pickup」のタイトルの下、「特別名勝・特別天然記念物に指定された日本初の山岳リゾート」及び「2014年5月20日」の記載並びに山岳風景の写真と共に、「上高地」についての記事(2葉目)、「長野ナニココスポット!【奥津神社】(審決注「奥」は、「さんずい」に「奥」からなる。)」及び「2014年5月20日」の記載並びに当該神社と思われる看板の写真と共に、「奥津神社」についての記事(3葉目)、「信州の銘菓『まほろばの月』」及び「2014年5月20日」の記載並びにまんじゅうの写真と共に、「まほろばの月」についての記事(6葉目)がある。
また、5葉目には、中央下に「オステリア トリオンフォ」のタイトルの下、「スーパーソムリエの○○が長野に凱旋/ワインと長野県内外の食材を駆使して、作り上げられるお酒と食事のマリアージュを 堪能下さい。」の記載及び店舗の看板の写真と共に、レストランについての記事がある。
イ 作成の経緯
(ア)「キャラバン探検隊ポータルサイト」の作成委託及び保守
a 制作委託契約書
「制作委託契約書」と題する書面(乙6の1)は、その「序文」に「委託者【医療法人樹会】(以下、『甲』という)と、受託者 ドリームネットデザイン(株)(以下、『乙』という)は、甲から乙へ下記業務の委託について次のとおり契約を締結する。」の記載があり、「本業務の内容」として「第1条/本契約に基づき甲が乙に委託する業務(以下、『本業務』という)は、甲の【キャラバン探検隊ポータルサイト】(以下、『本サイト』という)の制作とする。」との記載がある。また、「製作期間」として「第3条/1.完成は【2013年12月末日】とする。」との記載がある。
そして、同契約書の末尾(5葉目)には、「本契約の成立」として「平成25年8月31日」の記載の下、「委託者(甲)」として、「医療法人 樹 会」及び「理事長 小林秀樹」の記名並びに理事長印の押印と共に、その住所として「長野市中御所4丁目7番23号」の記載があり、また、「受託者(乙)」として「ドリームネットデザイン株式会社」及びその代表取締役の記名及び押印、住所の記載がある。
b 発注書
「発注書」と題する書面(乙6の3のA)は、1葉目には、右上に日付「2013年08月29日」の記載、左上の宛先の部分に「ドリームネットデザイン株式会社/担当者名」及びその住所の記載があり、その右に「医療法人 樹 会」の住所及び記名、「理事長」として被請求人の記名と共に、理事長印の押印があり、「以下の通りの作業を発注致します。」及び「金額 ¥2,819,250」の記載があり、さらに、1葉目ないし5葉目にポータルサイト制作に係る作業の内訳、数量、単価、金額等の記載がある。
c 被請求人と作成委託会社との間で作成された打合せ書面
被請求人と作成委託会社との間で平成25年10月に作成されたとする打合せ書面(乙20)は、その1葉目には「サイトマップを元にレイアウト案を検討しました。」の記載と共に「キャラバン探検隊」のタイトルの下、日本地図を簡略化したような図形が表示され、2葉目には「キャラバン探検隊」のタイトルの下、「ピックアップ/特集情報」、「目的から探す」、「遊ぶ」、「食べる」、「見る」、「買う」等の記載がある。
d 「Re:メンテナンスも提示条件でよろしく」と題するメール
「Re:メンテナンスも提示条件でよろしく」と題するメール(乙8)は、「差出人」として、ケートリック社の担当者の氏名及びメールアドレスの記載、「日付」として「2014年6月26日(木)5:20pm」の記載があり、本文には、「小林様:/・・・>これで、最初のβ版完成とのことで、残金の請求を願います。/ありがとうございます。ドリームネットより残金の請求を手配させていただきます。」等の記載がある。
e 「キャラバンHP」技術支援、保守サポートサイト運営代行費用請求書等
「『キャラバンHP』技術支援、保守サポートサイト運営代行費用請求書」とされる書面(乙19の1)は、「請求書」のタイトルの下、日付として「平成28年1月4日」の記載、「ふるさとリンク株式会社 御中」の記載、「ケートリック株式会社」の記名及び押印があり、「下記の通りご請求申し上げます。」、「御請求金額 ¥437,130」、「お支払期日 2016年2月末日」の記載がある。そして、その下の表中の「品名」の欄に「キャラバン探検隊ポータルサイト技術支援・保守サポートサイト運営代行」の記載がある。
また、「銀行支払い記録」とされる書面(乙19の2)は、「お振込依頼(振込の受付)」のタイトルの下、「振込のご依頼を下記の内容で受付けました。」の記載があり、「受付日時」として「2016年01月07日 08時18分」、「ご依頼人名」として「フルサトリンク.カ」、「お受取人名」として「ケートリック (カ」、「振込金額」として「437,130円」の記載がある。
(イ)ドメイン名
「[お名前.com]Whois情報公開代行 完了通知caravan-net.jp」と題するメール(乙7)には、「上記ドメイン名のWhois情報公開代行が完了した事をお知らせいたします。」との記載があり、[ドメイン情報]の項目中に「ドメイン名」として「caravan-net.jp」が、「情報更新日」として「2014年01月01日」の記載があり、「登録者情報」の項目中に「氏名」として「hideki kobayashi」の記載がある。
また、「ドメイン名登録状況の検索」とされる書面(乙9)には、「WHOIS検索/ドメイン名の登録者を検索する」のタイトルの下、「検索結果」及び「caravan-net.jp」の記載があり、「登録年月日」として「2013/06/19」、「有効期限」として「2019/06/30」、「状態」として「Active」、「最終更新」として「2018/08/06 12:26:37(JST)」の記載がある。、
さらに、「caravan-net.jpの運用サーバーのアーカイブ」とされる書面(乙23)には、「FTPサーバー」の記載の下、パソコンの画面と思われる内容が表示され、その右側に「名前」を「caravan-net.jp」とするフォルダの「更新日時」に「2018/07/19」の記載がある。
以下、上記(ア)及び(イ)に係る乙号証を「本ウェブサイトに関連する証拠」という。
(2)医療法人樹会小林医院における観光案内とMRI人間ドック案内(印刷物)
ア 乙第2号証
「ふるさとリンク社作成の観光案内印刷物と小林医院のMRI人間ドック案内印刷物」(乙2)は、被請求人が小林医院内の待合室等に置いていると主張するものであり、全体として8葉の書面からなり、両面印刷されたものと片面印刷されたもの、カラー印刷されたものと白黒印刷されたものが混在し、それぞれの記載内容や紙面の構成が異なるものである(以下、これらの印刷物を「本印刷物」という。)。
(ア)1葉目の「MRI人間ドック/?放射線を使用しない全身断層撮影ドック?」と題する書面及び5葉目の「MRI人間ドック/?放射線なしの全身検査?」と題する書面は、いずれも両面、カラーで表示されたものであり、小林医院における人間ドック受診時の注意事項の記載や人間ドックのコースと料金についての記載があり、1葉目の裏面の下部には、「医療法人樹会 小林医院」の名称、住所、電話番号の記載、「20160826」の記載があり、5葉目の裏面の下部には、「小林医院」の名称、住所、電話番号の記載があり、さらにその下部に「20170608」の記載がある。
また、7葉目の「MRI人間ドック報告書」と題する書面は、片面、カラーで表示されたものであり、「あなたの健康を支援します/-放射線を全く使用しない全身断層撮影-」等の記載があり、その下部には「医療法人樹会」の名称、住所の記載があり、8葉目は片面、カラーで表示されたものであり、「MRI人間ドック 県別の来院数(2007年まで)」の記載と共に、都府県別の円グラフの表示がある。
(イ)2葉目の「当院ドック受診後の日帰り観光プラン1」と題する書面及び3葉目の「当院ドック受診後の日帰り観光プラン2」と題する書面は、いずれも片面、カラーで表示されたものであり、2葉目には「川中島古戦場(八幡原史跡公園)・長野市博物館」についての記事及び公園内の画像が記載又は表示され、3葉目には「松代城下町 自然で歴史あふれる町並みを」の記載の下、「太鼓門(松代城跡)」についての記事及びその画像、「真田邸(国指定史跡)」の記載及びその画像、その他美術館や温泉等の記事及びその画像が記載又は表示され、小林医院や観光地の場所を示した略地図、バス時刻表等の表示がある。そして、いずれも、その下部には「医療法人樹会」の名称、住所、電話番号の記載と共に「『キャラバン』におまかせ下さい ふるさとリンクKK」の記載がある。
(ウ)4葉目の「東京方面新幹線 時刻表」と題する書面は、片面、白黒で表示されたものであり、長野発東京行きの新幹線の時刻表が掲載され、下部には「キャラバン ふるさとリンクKK」の記載がある。また、6葉目の「長野駅から善光寺マップ」と題する書面は、片面、カラーで表示されたものであり、JR長野駅から善光寺までの地図が掲載され、下部には、JRのロゴマークと共に、「JR東日本/長野支社」の記載がある。なお、同書面中に矢印が付され「ココ」、「小林医院」の手書きのメモの記載がある。
イ 英文表記返信とCARAVANの宣伝
「英文表記返信とCARAVANの宣伝」とされる書面(乙18:以下「CARAVAN英文宣伝」という。)は、第1頁には「MRI Ningen Dock」の記載の下、「Whole Body Magnetic Resonance Imagings」の記載、「小林医院」の記載、「www.mri-labo.net」の記載、「Name Test様」の記載及び「Examination Date」の記載があり、下部には、「Tourist information service by CARAVAN」の文字及び電話番号が記載されている。そして、第2頁ないし第5頁までは、人間ドック検査の結果記載欄があり、6頁目の末尾には、「M.D.Hideki Kobayashi」の記載、「Tourist information service by CARAVAN(登録商標)」及び電話番号が記載されている。
(3)証拠写真
ア 小林医院
「建物入口の表示」の写真とされる画像(乙11)は、ガラス扉に「MRI/人間ドック/入口/小林医院」と表示された大きな長方形の看板及び「CARAVAN」と表示された小さな長方形の看板が掲げられている画像があり、その下には「当院入口のドア横表示/上部のMRI表示は平成14年から表示中/CARAVAN表示は、平成25年6月から表示中」との記載がある。
イ ふるさとリンク社
「ふるさとリンク株式会社」の写真とされる画像(乙12)は、次の3つの画像がある。1)左側には、建物内部と思われるドアに「キャラバン」及び「ふるさとリンク株式会社」と表示された長方形の表示板が掲げられている画像があり、その下には「ふるさとリンク社の建物内の入口ドア/平成26年1月7日から表示中」との記載がある。2)中央には、建物外部と思われるドアに「CARAVAN」と表示された長方形の表示板が掲げられている画像があり、その下には、「ふるさとリンク社の建物外部からの入口ドア/平成26年1月7日から表示中」との記載がある。3)右側には、建物内部に「CARAVAN」の文字が表示された長方形の表示板が掲げられている画像があり、その下に、「CARAVAN 受付から、MRIゾーンへの入口表示」との記載がある。
ウ 車両
(ア)自動車
「ふるさとリンク株式会社が運用する、キャラバン車両と車検証」(乙13の1、乙13の2)中、乙第13号証の1には、次の3つの写真とされる画像がある。1)左側には、車両番号を「長野 830/す 11-09」とする車両前面のフロントガラス内側、向かって右側に「CARAVAN」及び「キャラバン」と表示された小さな長方形の表示板が掲げられている画像、2)右側上には、車両側面に「MRI人間ドック」及び「林医院」(写真からは「小」の文字は確認できない。)と大きく表示され、その右横に「CARAVAN」と小さく表示されている画像、3)右側下には、車両側面のドアに「CARAVAN」と小さく表示されている画像がある。
同号証の上部には、「日産キャラバン車両に対する CARAVANの表示」、「MRI人間ドックの表示、平成25年6月から表示中」及び「CARAVAN の表示、平成26年1月から表示中」の記載がある。
乙第13号証の2は、「自動車検査証」の写しであり、「平成29年5月26日」の日付で、「自動車登録番号又は車両番号」として「長野 830 す 1109」の記載と共に「初年度登録月日」として「平成14年11月」、「所有者の氏名又は名称」として「医療法人 樹会」の記載があり、乙第13号証の1の写真に撮影された車両は、要証期間内に医療法人樹会が所有するものであることがわかる。
(イ)自転車
「キャラバン表示のサイクリング自転車」の写真とされる画像(乙16)は、自転車の車体の全体を横から撮影した写真とされる画像とその一部を拡大したと思われる画像があり、自転車の車体の一部に小さく「CARAVAN」の文字が表示されている。そして、その下に「CARAVAN表示は、平成26年7月から表示中」の記載がある。
エ 案内版、ステッカー及び受付
(ア)「キャラバン表示 案内版等」とされる証拠(乙14の1、乙14の2)は、乙第14号証の1には、左側に、「キャラバン」及び「CARAVAN」と表示されたのぼりの写真とされる画像があり、その下に、「迷子防止用の携行表示板のぼり/平成26年3月から継続使用中」の記載がある。また、右側には、「キャラバン」及び「CARAVAN」と表示されたのぼり並びに「CARAVAN」と表示された拡声器及びステッカーの写真とされる画像があり、その下に「案内用、善光寺ツアー3点セット(キャップ、拡声器、携行表示板)とツアー参加者のトランク、バックにおよび参加者の胸部に貼付用のCARAVANの表示/平成26年3月から継続使用中」の記載がある。
乙第14号証の2は、「キャラバン標章の入った表示ステッカー」とされるものであり、ステッカーに「CARAVAN」及び「ふるさとリンクKK」の文字、連絡先電話番号の記載がある。
(イ)「CARAVAN表示の受付(ツアーデスク)」の写真とされる画像(乙15の1)は、左側に、建物内部に置かれた小さな机に「CARAVAN/Tourist Service」と表示された長方形の紙が張られ、その背後の棚には「長野」、「NAGANO」等の文字や寺院とおぼしき建築物が掲載された印刷物が展示されている。右側には、建物内部エレベータの前に置かれた小さな机に「CARAVAN/Tourist Service」と表示された長方形の紙が張られ、その背後の棚には「長野」、「NAGANO」等の文字や寺院とおぼしき建築物が掲載された印刷物が展示されている。
同号証の上部には、「CARAVAN 院内受付/当院のエレベーターホール前の受付。外国人に対応するために 『CARAVAN』を、平成25年9月から表示中」の記載がある。
乙第15号証の2は「特定施設新築等届出書」と題する書面であり、「H16年1月」の日付で、「医療法人 樹会」から長野市長宛に、特定施設の新築等の内容を届け出る旨の記載があり、「特定施設の所在地」として「長野市中御所四丁目・・・」の記載があり、「特定施設の名称」として「医療法人 樹会」の記載がある。
乙第15号証の3は、「建築物設計図」とされる書面であり、1級建築士の氏名の記載及び押印のある建築物設計図中「エレベーターホール」周辺を黄色で囲み、当該黄色部分に向けた矢印と共に「CARAVAN受付」の鉛筆書きと思われるメモの記載がある。
以下、上記アないしエにおいて写真とされる画像をまとめて「本画像」という。
オ 写真ファイル情報
「乙号証の写真の撮影者、対象、日時および場所についての写真ファイル情報」とされる書面(乙21)は、本画像の撮影場所、撮影日時に関する情報が記載され、「撮影日時」として、いずれも要証期間前の日付が記載されている。
(4)はがき
「小林医院が送付しているダイレクト往復はがき中で返信のあったハガキ」(乙22:以下「本はがき」という。)は、1葉目には「往復はがきの返信 消印 平成27年12月28日 鎌倉 II様返信/当院からの送付 平成27年11月下旬 キャラバンの 案内記載あり」の記載の下、はがきの表面及び裏面が表示されており、表面には、「郵便はがき」、郵便番号、「小林医院/MRI人間ドック係」の記載があり、その下に「【リピーター様限定のご案内です】」として「骨密度測定・動脈の硬さチェック・眼圧測定の3検査が無料」、「さらに!!/オプション検査 5,000円分が無料」等の記載があり、消印中に「27/12.28/12-18」の表示がある。また、その裏面には、人間ドックについての記載があり、下部に小さな文字で「旅行案内・ご予約はキャラバンへどうぞ」の記載及び電話番号の記載がある。
2葉目には、「往復はがきの返信 消印 平成27年12月3日 さいたま IT様返信/当院からの送付 平成27年11月下旬 キャラバンの 案内記載あり」の記載の下、はがきの表面及び裏面が表示されており、表面及び裏面には、1葉目と同様の記載がある。また、表面には消印中に「27」、「8-12」の表示がある。
3葉目には、「往復はがきの返信 消印 平成27年12月8日 前橋中央 HH様 返信/当院からの送付 平成27年11月下旬 キャラバンの 案内記載あり」の記載の下、はがきの表面及び裏面が表示されており、表面及び裏面には、1葉目と同様の記載がある。また、表面には消印中に「27」、「18-24」の表示がある。
(5)その他
ア 「キャラバンが対応した外国人一覧」とされる書面(乙17)は、「ドック受診者情報」として「氏名」、「年齢」、「検査日」等の人間ドック受診者に関する12名分の情報の記載及び、パソコン画面上に表示された「ドックNo」、「氏名」、「生年月日」、「S MRI」等の項目が記載された40名分のリストがある。
イ 「ふるさとリンク社の履歴事項全部証明書」とされる書面(乙10)は、「履歴事項全部証明書」の記載の下、商号として「ふるさとリンク株式会社」の記載、本店として「長野市中御所四丁目7番23号」の記載、会社設立の年月日として「平成26年1月7日」の記載、目的として「1.インターネットを介した地方の情報発信/2.ポータルサイトの運営」等の記載があり、取締役として被請求人の氏名の記載がある。
2 判断
(1)本ウェブサイトにおける商標の使用について
ア 乙第1号証として示された本ウェブサイトには、1葉目ないし3葉目、5葉目及び6葉目に「キャラバン」の文字の表示があり、本件商標を構成する「キャラバン」の文字と共通することから、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されているということができる。
そして、同号証には、2葉目、3葉目及び6葉目に2014年5月20日付けで長野市の地域観光情報の記事が掲載されていることが認められる。
しかしながら、上記日付は要証期間前のものであり、同号証には、要証期間内の日付で長野市の地域観光に関する情報が提供されたことを示す記載や、同号証の掲載内容が要証期間内に存在していたことを示す記載を見いだすことはできない。また、ウェブサイトの運営者に関する記載もない。
イ 本ウェブサイトに関連する証拠について
(ア)平成25年(2013年)8月31日(要証期間前)に医療法人樹会がドリームネットデザイン社に「キャラバン探検隊」なるポータルサイトの制作を依頼し(乙6)、2014年6月頃にポータルサイトのβ版と称されるものが完成し運用を開始したことがうかがえる(乙8)。
(イ)平成28年(2016年)1月7日(要証期間内)にふるさとリンク社が、「キャラバン探検隊」なるポータルサイトの保守等の代金をケートリック社に振り込んだことが認められる(乙19)。
(ウ)平成25年10月時点での「キャラバン探検隊」なるポータルサイトのレイアウト案には、「キャラバン探検隊」のタイトルの下、日本地図と思われる図形が表示され、「ピックアップ/特集情報」、「目的から探す」、「遊ぶ」、「食べる」、「見る」、「買う」等の記載があり(乙20)、「キャラバン探検隊」のタイトル、日本地図の図形、「ピックアップ」の文字等、同ポータルサイトのレイアウト案と本ウェブサイトのレイアウトには一定の共通性がある。
(エ)平成25年(2103年)6月19日(要証期間前)に被請求人が本ウェブサイトと同一のドメイン名「caravan-net.jp」を取得し、平成26年(2014年)1月1日(要証期間前)に本ウェブサイトが公開され、平成30年(2018年)8月6日時点(要証期間後)で存続していたことがうかがえる(乙7、乙9、乙23)。
(オ)以上によれば、「キャラバン探検隊」なるポータルサイトについては、要証期間前に医療法人樹会がレイアウト案等の作成を第三者に依頼し、要証期間内にふるさとリンク社が上記ポータルサイトにつき保守等の代金を振り込んだものであり、また、「キャラバン探検隊」なるポータルサイトのレイアウト案と本ウェブサイト構成とは一定の共通性があることから、「キャラバン探検隊」なるポータルサイトは本ウェブサイトであると推認することができる。
加えて、ドメイン名の登録、公開等の経緯を踏まえれば、本ウェブサイトは、要証期間内に存在したことを推認し得るものである。
しかしながら、本ウェブサイトが要証期間において存在していたことが推認できるとしても、要証期間内に乙第1号証の掲載内容と同一の掲載内容であったことを客観的に示す証拠はなく、乙第1号証に掲載された長野市の地域観光に関する情報が、要証期間内に本ウェブサイトにおいて存在していたことを認めることはできない。
また、本ウェブサイトのドメイン名取得者が被請求人、作成依頼者が医療法人樹会、保守料を支払った者がふるさとリンク社であり、本ウェブサイトには複数の者が関わっているといえることから、本ウェブサイトの運営者がこれらのうちいずれの者であるか特定することはできず、本ウェブサイトにおける商標の使用者は、不明であるといわざるを得ない。
(2)「ふるさとリンク社作成の観光案内印刷物と小林医院のMRI人間ドック案内印刷物」等における商標の使用について
ア 本印刷物における使用について
本印刷物中、「当院ドック受診後の日帰り観光プラン1」と題する書面(3葉目)及び「当院ドック受診後の日帰り観光プラン2」と題する書面(4葉目)において、長野市内の観光地の情報が記載され、その下部に「『キャラバン』におまかせ下さい ふるさとリンクKK」の記載があり、また、「東京方面新幹線時刻表」と題する書面(4葉目)の下部には「キャラバン ふるさとリンクKK」の記載があるものの、本印刷物の1葉目から8葉目の記載内容は、「東京方面新幹線時刻表」と題する書面(4葉目)を除き、常に「医療法人樹会小林医院」や「小林医院」の名称、住所、電話番号が記載されていることからすれば、本印刷物は、医療法人樹会小林医院の提供する「MRI人間ドック」についてのもの又は同医院に関するものであることが認められ、同医院で提供される「MRI人間ドック」に付随して提供されたものというのが相当であるから、仮にこれらの本印刷物を同医院内に配置又は人間ドック受診者に郵送していたとしても、使用主張役務のいずれかが独立した役務として実際に提供されていたことを裏付けるものということはできない。
また、1葉目裏側に「20160826」の記載及び5葉目裏側に「20170608」の記載があり、これらの記載が年月日として「2016年8月26日」及び「2017年6月8日」を表すものであるとしても、「2016年8月26日」は要証期間外である。
さらに、5葉目の記載が要証期間内の「2017年6月8日」の日付を表すものであるとしても、同号証は全体として、両面印刷されたものと片面印刷されたもの、カラー印刷されたものと白黒印刷されたもの、様々な記載が混在しているものであり、必ずしも一体のものとはいえないから、当該日付をもって3葉目及び4葉目の「観光案内印刷物」が作成された日付であるとはいい難い。
そして、上記の他に、いつ、どこで、誰がどのようにして本印刷物を作成し、第三者に提供したかを具体的に確認できる証拠の提出がないことに加え、本印刷物において、ふるさとリンク社がいつ、いかなる役務を提供したかがわかる具体的な記載はない。
そうすると、本印刷物により、被請求人(商標権者)、ふるさとリンク社又は医療法人樹会小林医院が、第三者に対して使用主張役務を提供したものと認めることはできない。
イ CARAVAN英文宣伝における商標の使用について
CARAVAN英文宣伝とされる書面は、小林医院で提供される人間ドックの結果返信用の英文フォーマットであり、第1頁及び第6頁に「Tourist information service by CARAVAN」等と記載されているとしても、本書面の主たる目的は、人間ドックの受診者に対して検査の結果を提供することであるから、上記記載があることをもって独立した役務として観光情報が提供されているとみることはできない。
また、CARAVAN英文宣伝には、第1頁に「Tourist information service by CARAVAN」及び電話番号の記載が、第6頁には、「Tourist information service by CARAVAN(登録商標)」及び電話番号が記載されているとしても、要証期間内に当該宣伝を外国の人間ドック受診者に送付したことを示す事実は不明である上、その記載内容は、全て小林医院の提供する人間ドックに関するものであって、使用主張役務についての具体的な記載は一切見当たらないことから、要証期間内に使用主張役務についての広告を行ったとはいい難いものである。
(3)本画像における商標の使用について
本画像に表示されたそれぞれの写真の撮影日は、2014年1月16日、2014年1月18日又は2014年7月11日のいずれかであるとされるところ(乙21)、これらの日付は全て要証期間前のものであり、他に、本画像に写されたものと同一の表示が要証期間内にも変わらず存在していたことを裏付けるような証左は見いだせないから、本画像中に「キャラバン」又は「CARAVAN」の文字が表示されていたとしても、これにより要証期間内に本件商標が使用されたものと認めることはできない。
また、本画像には、小林医院内外に掲げられた看板や表示板に「小林医院」及び「MRI人間ドック」の表示、また、自動車にも「MRI人間ドック」の表示があることから、同医院において人間ドックが提供されていたことは推認できるものの、車両や自転車の用途は不明であり、さらに、「ふるさとリンク社のドア」とされる写真の画像や同医院の建物内のエレベータ前に「CARAVAN」と表示された小机の画像があるとしても、同社が長野市の観光情報の提供や善光寺ツアーを提供したことを示す具体的な証拠はなく、本画像により、要証期間内に、ふるさとリンク社が本件商標を使用して、第三者に対して本件商標の使用主張役務を提供していたことを認めることはできない。
(4)本はがきにおける商標の使用について
本はがきのうち、少なくとも1葉目のはがきには、平成27年12月28日の消印があり、はがきの裏面の下部に小さく「旅行案内・ご予約はキャラバンへどうぞ」の記載及び電話番号の記載があるものの、本はがきの記載内容は、専ら小林医院の提供する「MRI人間ドック」についてのものである上、「旅行案内・ご予約」の役務についての具体的な記載は一切見当たらないから、これを人間ドック受診者に郵送していたとしても、これにより、使用主張役務が独立した役務として実際に提供されていたことを裏付けるものということはできない。
そうすると、本はがきに「旅行案内・ご予約はキャラバンへどうぞ」の記載及び電話番号の記載があるとしても、当該はがきにより、本件商標を使用して、第三者に対して本件商標に係る使用主張役務を提供していたものということはできない。
(5)その他の証拠における商標の使用について
その他、被請求人の提出した乙各号証(乙3?乙5、乙17)は、いずれも本件商標の表示を確認することができないか、あるいは使用主張役務を提供したことを示す具体的な記載がないものであり、これらの内容を検討しても、要証期間内に、本件商標を使用して、第三者に対して本件商標に係る使用主張役務を提供していたものということはできない。
(6)ふるさとリンク社又は医療法人樹会小林医院による商標の使用について
被請求人は、「ふるさとリンク社は、医療法人樹会小林医院と同じ建物内に事務所があり、医療法人は法律的規制で行えない業務が多く、ふるさとリンク社が数多くの実務を担当し、人間ドック受診者に対して、観光案内、インターネット表示、宿泊予約、長野市の観光についての情報提供等の業務を行っており、本ウェブサイトの実務もふるさとリンク社が担当している」旨主張している。
しかしながら、被請求人は、ふるさとリンク社及び医療法人樹会小林医院(以下「両法人」という。)とは法人格が異なり、事務所の住所が同じことや、被請求人が、医療法人樹会の理事長及びふるさとリンク社の取締役であることをもって直ちに被請求人とこれらの法人を同一人と認め、両法人に係る業務についての商標の使用を、商標権者(被請求人)による商標の使用と認めることはできない。
一方で、被請求人は、本印刷物(乙2)及び本はがき(乙22)において「キャラバン」又は「CARAVAN」の文字からなる商標が使用されることについて、ふるさとリンク社及び医療法人樹会小林医院の使用を認識しつつ、特段の異議を申し立てておらず、被請求人と両法人との間には、小林医院における人間ドックの提供等において緊密な関係がうかがえることも考慮すれば、被請求人は両法人に対して、本件商標を本印刷物及び本はがきに使用することについて黙示の許諾を与えていたといい得るものである。
(7)小括
以上からすれば、日本国内で、本ウェブサイト(乙1)において、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標が表示され、長野市に関する地域観光情報が表示又は記載されたとしても、本ウェブサイトにおいては、要証期間内に長野市の地域観光に関する情報が提供されたこと及び乙第1号証の掲載内容が要証期間内に存在していたことを認めることができない上に、商標の使用者も不明である。
さらに、本印刷物(乙2)及び本はがき(乙22)における長野市の観光情報は、人間ドックの提供に付随して提供されたものであって、独立して役務の提供がされたとはいえず、その他、証拠写真に表示された画像(乙11?乙16)によっても、被請求人又は使用権者が要証期間内に使用主張役務の提供を行ったことを裏付けることはできない。
そうすると、被請求人(商標権者)がふるさとリンク社及び医療法人樹会小林医院に本件商標の使用を許諾していたことを推認し得るとしても、要証期間内に、本件商標を使用して、長野市の観光情報、人間ドックの受診者に対する観光ツアーが提供されたということはできない。
その他、要証期間内において、本件商標の指定役務中、取消請求役務のいずれかについて、本件商標に係る商標権者又は使用権者が本件商標の使用をしたことを認めるに足りる証拠の提出はない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の指定役務中、第39類「全指定役務」について本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、結論掲記の役務について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-07-21 
結審通知日 2020-07-28 
審決日 2020-09-03 
出願番号 商願2013-57226(T2013-57226) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W39)
最終処分 成立  
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
山田 正樹
登録日 2014-01-17 
登録番号 商標登録第5643132号(T5643132) 
商標の称呼 キャラバン 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 栗下 清治 
代理人 石田 昌彦 
復代理人 波田野 晴朗 
復代理人 森本 久実 
復代理人 松本 陸 

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