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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W29
管理番号 1367060 
審判番号 取消2018-300836 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-11-05 
確定日 2020-09-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5520086号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5520086号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5520086号商標(以下「本件商標」という。)は,「和牛侍」の文字を横書きしてなり,平成24年4月9日に登録出願,第29類「和牛肉,和牛肉を使用した肉製品」を指定商品として,同年9月7日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成30年11月19日である。
以下,本件審判の請求の登録前3年以内の期間(平成27年11月19日ないし同30年11月18日)を「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品,第29類「和牛肉,和牛肉を使用した肉製品」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)株式会社マイシン(以下「マイシン社」という。)が被請求人の経営する飲食店「Zelkova」に牛肉を納品しており,その納品書(乙1の1・2)に本件商標が使用されているので,契約書あるいは通常使用権設定登録がされていなくても,当然に肉卸業者マイシン社に被請求人が通常使用権を許諾しているとする被請求人の主張は失当である。被請求人とは直接関係していない単なる一卸売業者であるマイシン社の納品書の品名に本件商標が付記されているとしても本件商標の使用にはならない。
すなわち,肉卸売業者であるマイシン社が,被請求人が経営すると主張する飲食店に納めた納品書の品名欄に本件商標が付されていたとしてもこれをもって,マイシン社が通常使用権を許諾されていること及び本件商標を使用していることが証明されるものではなく,マイシン社が通常使用権者でないことは明白である。
また,牛肉を主体とした飲食店「Zelkova」が実在し,同飲食店の経営者が被請求人と同一であることを立証する証拠も提出されていない。
したがって,乙第1号証の1及び乙第1号証の2が本件商標を使用しているとの証拠とはなり得ない。
さらに,乙第1号証の3ないし乙第1号証の5には本件商標の表示が全く見当たらない。
(2)乙第2号証のちらしには「熊本和牛さむらい」の表示があるが,被請求人も自認しているように,このちらしが本件商標の使用を証明するための証拠でないことは自明である。
また,被請求人の答弁書中には「…ちらしに『熊本和牛さむらい』と表示して『和牛侍』ブランドを使用していることを宣伝していますが…」,あるいは「…このちらしから,『Zelkova』は『和牛侍』と『石垣牛』ブランドの肉を使用したステーキを提供していることが理解できます。」と述べているが,ステーキ用にカットされた牛肉,石垣牛のシールを貼ったステーキ用の肉,調理済みのステーキの写真及び「Wagyu Beef 熊本和牛さむらい」の文字は認められるも,乙第2号証,乙第3号証が何を立証せんとするか不明である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の使用状況
(1)乙第1号証の1及び乙第1号証の2並びに登録商標の使用説明書に記載のとおり,本件商標は商品「黒毛和牛リブロース,黒毛和牛サーロイン」の和牛肉について使用されている。本件商標の使用者は,本件商標の通常使用権者であるマイシン社である。マイシン社は肉卸売業者である。乙第1号証の1及び乙第1号証の2の納品書のあて先は「Zelkova」であり,この「Zetkova」は,沖縄県石垣市石垣2-5所在の牛肉を主体とした飲食店であり,経営者は本件商標権者である。前記納品書には黒毛和牛サーロイン又は黒毛和牛リブロースの商品名のすぐ後ろに「和牛侍」の商標が付されており,この表示によって納品された黒毛和牛サーロイン又は黒毛和牛リブロースの銘柄が「和牛侍」であることが明瞭に示されている。この和牛肉は,ブロックの状態でパッケージされ,冷蔵された状態で納品される。
本件商標権者は,マイシン社に本件商標の使用を許諾しているが,契約書は作成していない。また,請求人の主張どおり,通常使用権の設定登録はしていない。
なお,マイシン社が「和牛侍」ブランドの和牛肉をほかにどの業者に納品したかは不明であり,被請求人がマイシン社に他社の状況を尋ねることはできないので,そのような納品書は提出できない。
(2)本件商標権者は,乙第1号証の1及び乙第1号証の2のとおり,平成29年10月と同年11月に「和牛侍」ブランドの和牛肉を通常使用権者から仕入れて「Zelkova」で肉料理として提供したが,売り上げが芳しくなかったために,この肉料理の提供を一時中断した。その後,平成30年4月から「和牛侍」ブランドの肉料理の提供再開を決定し,マイシン社に「和牛侍」の和牛肉を注文した(乙1の3?5)。しかし,これらの証拠に示されているように,ここには納品者の入力ミスで「侍和牛」の商標が付されている。
(3)乙第2号証のちらしは,飲食店「Zelkova」の宣伝用ちらしであって,石垣空港にこのような地元企業のちらしを主に観光客用に置いておく場所があり,店の広告のために遅くとも平成29年8月から12月まで置いていたものである。
このちらしには,中央に「石垣牛」の商標が付された真空パックの肉の写真が表示されているが,これは「Zelkova」が他の肉卸業者から仕入れた和牛肉である。この石垣牛の楕円形のシールは登録第5181072号商標と同一であり(乙3),権利者は沖縄県農業協同組合である。沖縄県農業協同組合はこのシールを作成し,石垣牛を販売する業者に配布し,石垣牛に使用することとしている。
ちらしにはこの石垣牛の左側にステーキ肉の写真が表示されているが,これが和牛侍ブランドの和牛肉である。通常使用権者であるマイシン社からブロック状態で仕入れた肉をステーキの大きさにカットして,ちらしに「熊本和牛さむらい」と表示して「和牛侍」ブランドの肉を使用していることを宣伝している。石垣牛の写真の右側にある肉料理が「熊本和牛さむらい」すなわち「和牛侍」を調理したステーキであることを示したものである。このちらしから「Zelkova」は「和牛侍」と「石垣牛」ブランドの肉を使用したステーキを提供していることが理解できる。
2 結び
以上のとおり,本件商標は,要証期間内にその指定商品中「和牛肉」について日本国内で使用されている。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)本件商標権者とマイシン社との関係
被請求人は,マイシン社に本件商標の使用を許諾している旨主張するが,これを裏付ける通常使用権許諾契約書等の提出はない。
(2)本件商標権者と「Zelkova」との関係
被請求人は,飲食店「Zelkova」の経営者は本件商標権者である旨主張するが,これを裏付ける証拠の提出はない。
(3)「Zelkova」のちらしについて
「Zelkova」のステーキのメニューのちらしには,「Wagyu Beef 熊本和牛さむらい」の表示と,カットした牛肉,「石垣牛」のシールが貼られた牛肉,調理済みのステーキの写真が掲載されている。
(4)他に,本件商標権者又は使用権者が,本件商標を使用したことを証する証拠の提出はない。
2 判断
本件商標の使用者について
(1)マイシン社について
上記1(1)のとおり,本件商標権者とマイシン社との間において,本件商標に関する通常使用権許諾契約書等は確認できず,他にマイシン社が本件商標の通常使用権者であることを推認させるような証拠の提出はなされていないから,マイシン社は,本件商標の通常使用権者であると認めることはできない。
(2)本件商標権者と「Zelkova」について
上記1(2)のとおり,本件商標権者と「Zelkova」との関係は明らかでなく,飲食店「Zelkova」の経営者は本件商標権者であると認めることはできないから,仮に「Zelkova」のちらしに本件商標が使用され,これが頒布されているとしても,当該チラシの頒布は,通常使用権者又は本件商標権者による本件商標の使用と認めることはできない。
(3)その他に,被請求人が提出した証拠からは,本件商標権者,専用使用権者又通常使用権者が,本件商標を使用している事実を認めることはできない。
3 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-07-21 
結審通知日 2020-07-28 
審決日 2020-08-11 
出願番号 商願2012-27950(T2012-27950) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安達 輝幸北口 雄基 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
平澤 芳行
登録日 2012-09-07 
登録番号 商標登録第5520086号(T5520086) 
商標の称呼 ワギューサムライ、ワギューザムライ、サムライ 
代理人 伊藤 浩平 
代理人 田辺 敏郎 
代理人 田辺 恵 

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