• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W43
管理番号 1367046 
審判番号 不服2019-11728 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-06 
確定日 2020-09-17 
事件の表示 商願2018-79153拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成30年6月15日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は,「本願商標は,縦軸に金額と目盛りを有する料金を表し,横軸に目盛りを有する品数を表し,3000円の料金の所で右上がりから水平となる折れ線グラフの中に『3000円を超えて飲食した代金は頂きません!』及び『食べて飲んだ分だけお会計!』の文字を表してなるところ,これは,料金と品数の数量を表したと認められる折れ線グラフと『3000円を超えて飲食した代金は頂きません』『食べて飲んだ分だけお会計』等の文字を認識させ,取引者,需要者は,本願商標を指定役務の『飲食物の提供』の特性や宣伝広告を表す際に使用される語句及び図の一種と理解するにとどまり,本願商標をその指定役務に使用しても,自他役務の識別標識としての機能を有するものとはいえないことから,本願商標は需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができない商標と認める。よって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋
当審において,請求人に対し,令和2年4月2日付けで,別掲2ないし別掲4に係る証拠を示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当する旨の審尋を発し,相当の期間を指定して,請求人に回答を求めた。

4 審尋に対する請求人の意見(要旨)
(1)本願商標中の文字の意味から,その指定役務の広告宣伝と需要者に認識させる余地はあっても,本願商標に含まれる折れ線グラフは,看者に対して強い印象を与えるものであり,一種の創作的なデザイン(ウイットに富んだ面白い図形)として認識される。よって,当該折れ線グラフは,「宣伝広告」として需要者に認識させ得るものだが,それだけにとどまらず,自他識別力を有する。
(2)「従量課金上限制」の料金システムは,通信サービス分野で広く採用されているものの,「飲食物の提供」の分野では,一般的でなく,この料金システムは,請求人が他社に先駆けて使用開始し,同業他社がグラフ表示するよりも前から,出願人がその運営する飲食店の店舗を紹介する際に自他役務識別標識として使用しているものである。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号について
本願商標は,別掲1のとおり,縦軸を料金,横軸を品数としたグラフ上に,料金(縦軸)の3000円の目盛りまで品数(横軸)の目盛りが増えるごとに料金が上がる様子を右肩上がりの斜線で示し,3000円の目盛りから横軸と水平となる赤色の折れ線を表示した折れ線グラフからなる図形において,その右肩上がりの斜線及び横軸と水平な直線上に,オレンジ色で着色した2つの吹き出し形状の図形を配し,それぞれの図形内に「食べて飲んだ分だけお会計!」及び「3000円を超えて飲食した代金は頂きません!」の文字を白抜きで表した構成からなるものである。
ところで,別掲2によると,サービスで用いられる料金システム(課金方式)の一つとして「一定の上限を定め,その額に達するまでは従量制で課金され,上限額を超過する利用分については定額制が適用される課金方式」があり,そのような料金システムは「従量課金上限制(キャップ制)」と指称されている。
そして,実際に,料金システムに「従量課金上限制(キャップ制)」を採用しているサービス分野(例えば,インターネットの接続や携帯電話などの通信サービス)において,当該料金システムをわかりやすく示すために,折れ線グラフが使用されている(別掲3)。
また,本願の指定役務の分野においても,料金システムが「従量課金上限制(キャップ制)」であることをわかりやすく示すために,本願商標の構成中の文字と同趣旨の文字やグラフが,宣伝広告の一種として使用されている事例が見受けられる(別掲4)。
以上からすると,折れ線グラフと「食べて飲んだ分だけお会計!」及び「3000円を超えて飲食した代金は頂きません!」の文字を組み合わせてなる本願商標をその指定役務に使用した場合,これに接する需要者は「3000円に達するまではその品数に応じた代金を支払うが,3000円を超えた利用分については3000円という定額制が適用される」程度の意味合いを容易に認識し,その役務の宣伝広告に一般的に使用される文字やグラフの一種と理解するにとどまり,自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当である。
したがって,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない商標というべきであるから,商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,「従量課金上限制」の料金システムは,通信サービス分野で広く採用されているものの,「飲食物の提供」の分野では一般的なものではない旨主張している。
しかしながら,「従量課金上限制」の料金システム自体は,実際に本願の指定役務「飲食物の提供」の分野で採用されている事実が見受けられ,また当該分野において,たとえ本願商標と同様の折れ線グラフを使用している事例が少ないとしても,本願商標は,これに接する需要者をして,当該料金システムを単に文字とグラフでわかりやすく表した広告宣伝の一種として理解されるにとどまるというのが相当である。
イ 請求人は,「飲食物の提供」の分野において,この料金システムは,請求人が他社に先駆けて使用開始し,同業他社がグラフ表示するよりも前から,出願人がその運営する飲食店の店舗を紹介する際に自他役務識別標識として使用しているものである旨主張している。
しかしながら,請求人が他社に先駆けて使用を開始していることが,本願商標の識別力の判断に影響を及ぼすものではない。
ウ 請求人は,本願商標は,一種の創作的なデザインとして認識されるものであり,また,過去の登録例からも,本願商標は登録されるべきである旨主張している。
しかしながら,本願商標が,一種の創作的なデザインとして需要者に認識されていることを示す証拠の提出はなく,また,請求人の挙げる登録例は,本願商標とは,構成文字や構成態様が異なるものであって,かつ,具体的事案の判断においては,過去の登録例に拘束されることなく,当該商標登録出願の査定時又は審決時において,当該商標の構成態様と取引の実情に応じて個別的に判断されるべきであるから,これらの登録例の存在によって,上記(1)の判断が左右されるものではない。
エ よって,請求人の主張は,いずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲1 本願商標(色彩は原本参照。)


別掲2 従量課金上限制(キャップ制)について
(1)「IT用語辞典バイナリ」において「従量課金上限制」(読み方:じゅうりょうかきんじょうげんせい 別名:従量上限制,キャップ制,プライスキャップ制)の見出しの下「従量課金上限制とは,インターネットや携帯電話などのサービスにおける課金方式のうち,課金額の上限があらかじめ定まっている方式のことである。従量課金上限制は,従来の『定額制』と『従量制』とを組み合わせたものといえる。一定の上限を定め,その額に達するまでは従量制で課金され,上限額を超過する利用分については定額制が適用される。」の記載がある。
(https://www.sophia-it.com/content/%E5%BE%93%E9%87%8F%E8%AA%B2%E9%87%91%E4%B8%8A%E9%99%90%E5%88%B6)
(2)IT用語辞典「e-Words」において「キャップ制(従量課金上限制)」の見出しの下,「『30時間まで3分5円,それ以上いくら利用しても月額3000円』のように,基本は利用実績に応じた料金(従量制)だが,期間毎の請求額の上限があらかじめ決まっているような課金方式を『キャップ制』(従量課金上限制)という。定額制従量制を組み合わせた料金体系の一つで,携帯電話のパケット通信料金などに採用例がある。」の記載がある。
(http://e-words.jp/w/%E5%BE%93%E9%87%8F%E5%88%B6.html)
(3)「ASCII.jpデジタル用語辞典」において「キャップ制」の見出しの下,「通信回線を使ったサービスを利用した際に払う料金体系のひとつ。基本的には従量制であるが,支払う料金に上限が設定されている。従量上限制とも呼ばれる。」の記載がある。
(https://yougo.ascii.jp/caltar/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%97%E5%88%B6)
(4)「サイオス株式会社」のウェブサイトにおいて「課金対応パターン」の一つとして掲載されている「従量課金上限制(キャップ制)」の見出しの下,「一定期間または一定量までは,期間や量に応じた課金,設定された上限値に達した時点からは一定価格を定額で課金するパターン」及び「(例)駐車場の1日最大料金」の記載とともに以下のグラフが掲載されている。

(https://sios.bilink.jp/?gclid=EAIaIQobChMI7Im0g5KP6AIVS2oqCh0_TQkZEAAYAiAAEgIDkPD_BwE)

別掲3 料金システムに「従量課金上限制(キャップ制)」を採用しているサービス分野において,当該料金システムをわかりやすく示すために折れ線グラフが使用されている事例
(1)「ITmediaマーケティング」のウェブサイトにおいて「月額ワンコインから利用可能,データ転送料フリーのクラウド・エヌ」の見出しの下,「月額上限従量課金」の文字が付された以下のグラフとともに「・・・中でも好評なのは,同社が打ち出している従量課金と月額定額制を組み合わせた料金体系だ。一般にクラウドサービスでは従量課金/定額のどちらかを選択するケースが多いが,どちらを選んでも割高になることが多い。しかし,クラウド・エヌの場合,最短1時間から利用可能な月額上限付き従量課金を採用しており,月額で上限値を設定してるため,定額以上の料金はかからない。」の記載がある。

(https://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/1502/18/news009.html)
(2)「株式会社IDCフロンティア」のウェブサイトにおいて「料金」の見出しの下,以下のグラフとともに「1時間1円,1ヵ月500円から。もう従量/定額で迷わせません。初期費用無料。短期間の利用なら使った分だけお支払い。どんなに使っても月額上限付き(定額)だから,予算を超えることなく安心して使えます。」の記載がある。

(https://www.idcf.jp/cloud/price.html)
(3)「GMOインターネット株式会社」のゲームアプリ専用クラウドサービス「GMOアプリクラウド」のウェブサイトにおいて「特長」の項に「ゲームビジネスの特性を考えた料金体系」の見出しの下,以下のグラフとともに「仮想サーバーは月額上限付き(定額)で50GB×500 IOPS(SSD)のディスクが無料」及び「仮想サーバーやブロックストレージは,月額上限付き(定額)のため,月の日数に依存することなく安心してご利用いただけます。1ヶ月に満たない場合は,時間単位の課金分が自動的に適用され,ご利用分のみの料金になるように計算されます。さらに50GB×500 IOPS(SSD)は無料でご利用いただくことができ,仮想サーバー1台に対して1つまでご使用いただけます。」の記載がある。

また,「ネットワーク料金(データ転送量料金)に上限キャップを設定」の見出しの下,以下のグラフとともに「ネットワーク料金(データ転送料金)に対して,13円/GBの従量課金を設定しています。但し青天井ではなく,料金が3万円/月に達した時点でご請求はストップさせていただきます。もちろん,その後も帯域制限なくご利用いただけます。ゲームがどんなにヒットしても安心してご利用いただくことができます。」の記載がある。

(https://cloud.gmo.jp/feature/)
(4)「ソフトバンク株式会社」のウェブサイトにおいて「パケット定額サービスのご利用イメージ」の見出しの下,以下のグラフが掲載されている。

(https://www.softbank.jp/mobile/price_plan/white-plan/keitai/)
(5)「シニア携帯スマホ倶楽部」のウェブサイトにおいて「ワイモバイルで完全かけ放題の『通話専用ガラケー』にした時の料金」の項に「パケット定額サービス」の見出しの下,以下のグラフが掲載されている。

(https://tansu-keitai.jp/garaho/kakeho-dai-garake-cheapest/)

別掲4 本願の指定役務の分野において,料金システムが「従量課金上限制(キャップ制)」であることをわかりやすく示すために,本願商標の構成中の文字と同趣旨の文字やグラフが,宣伝広告の一種として使用されている事例
(1)「お会計上限3000円!大衆定額酒場 豊田市駅前店」のウェブサイトにおいて,以下のグラフとともに「注文した分だけお会計」及び「上限3000円 ※3000円を超えた飲食代は頂きません。」の記載がある。
また,「当店ではお通しや席代などのチャージ代を一切頂いておりません!実際に食べて飲んだ分のみのお会計になります。3,000円未満の場合は実際に食べて飲んだ分だけ!3,000円を超えた場合でもお会計上限3,000円!超お得な料金システム!」の記載がある。

(https://nbhn316.gorp.jp/)
(2)「イタリアン THANK YOU 金山店」のウェブサイトにおいて,以下のグラフとともに「3000円(税抜)以上は頂きません!」,「3000円以上のご飲食は無料」,「3000円未満は食べて飲んだ分だけお支払い」等の記載がある。

(https://thankyou-kanayama.owst.jp/)
(3)「プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMES」のウェブサイトにおいて,以下の図とともに「『トサカモミジ池袋店』ではどれだけ食べても飲んでも2800円を超えた分のお会計は頂きません!!をコンセプトにしたお店を2018年9月3日(月)よりNEWOPENいたします!」の記載がある。
また,「・・・もちろん,2800円に届かなかった場合のお会計はそのままのお会計でいいので,食べ飲み放題のように無理して注文しなくていいのもポイント!」の記載がある。

(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000137.000029602.html)
(4)「定額酒場 豊田コモスクエア店」のウェブサイトにおいて,以下の画像並びに「お会計が2980円(税抜)超えたら自動定額制!!」及び「どれだけ食べて飲んでもお一人様2980円(税抜)」の記載がある。

(https://toyota-komosukuea.owst.jp/)
(5)「ホットペッパーグルメ」のウェブサイトにおいて,以下の画像とともに「どんなに食べても呑んでも『3000円以上いただきません!』お一人様単価が3000円を下回れば,その金額で頂戴します♪」の記載がある。

(https://www.hotpepper.jp/strJ000027573/)

審理終結日 2020-07-06 
結審通知日 2020-07-07 
審決日 2020-07-22 
出願番号 商願2018-79153(T2018-79153) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 勉 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 浜岸 愛
小松 里美
商標の称呼 サンゼンエンオコエテインショクシタダイキンワイタダキマセン、タベテノンダブンダケオカイケー 
代理人 磯野 富彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ