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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
管理番号 1365197 
異議申立番号 異議2016-685004 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-22 
確定日 2020-03-12 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1248060号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1248060号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1248060号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,2014年(平成26年)12月30日に国際商標登録出願,第14類「Ingots of precious metals;jewelry cases[caskets];jewelry;wristwatches;watches;clocks;straps for wristwatches;watch chains;watch cases;watch glasses.」を指定商品として,平成27年12月11日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は,以下の3件であり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,まとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第1934618号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,昭和58年4月15日に登録出願,第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同62年2月25日に設定登録され,その後,平成19年2月28日に,第9類「眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」及び第14類「時計,時計の部品及び附属品」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第1992219号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,昭和55年6月10日に登録出願,第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同62年10月27日に設定登録され,その後,平成19年10月24日に,第9類「眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」及び第14類「時計,時計の部品及び附属品」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第2268727号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,昭和62年7月16日に登録出願,第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成2年9月21日に設定登録され,その後,同22年9月29日に,第14類「身飾品,宝玉及びその模造品」及び第26類「衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,ボタン類」のほか,第3類,第8類,第10類,第18類,第21類,第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号違反
(1)本件商標について
本件商標は,二段に配置した正方形状の枠に囲まれた図形と,欧文字「EBOHR」により構成され,その文字部分から特定の意味合いは看取されないが,一般的な外国語の発音規則にしたがって,「エボール,エボーア」の称呼を生じる。
そして,上段の正方形の枠内には,「EBOHR」の頭文字から採用したと思われる,丸みを帯びた「E」の文字状の図形を背中合わせ(左右対称)に配置し,ゆえにその接合部分が短い横線,あるいはくさび状に看取される。
(2)引用商標について
引用商標1は図形,引用商標2及び3は二段に配置した図形と申立人の名称・ブランド(後記参照)を表す欧文字「EBEL」(エベル)により構成される。
引用商標中の図形は,文字部分「EBEL」の頭文字である,丸みを帯びた「E」の文字状の図形を背中合わせ(左右対称)に配置したブランドの象徴であり,本件商標と同じくその接合部分が短い横線,あるいはくさび状に看取される。
(3)本件商標と引用商標の類似性
ア 引用商標1との類似性
本件商標は,上記(1)のとおり,図形と文字を二段に配置した構成からなるが,図形と文字を一体不可分にみなければならない事情はないから,その構成及び態様に照らし,文字部分と分離して,図形部分も独立して自他商品識別標識としての機能を果たすとみるべきである。なお,本件商標権者による外国における使用例をみても,当該権利者は,図形部分のみをもって取引にあたっている(甲9)。
本件商標の図形部分は,正方形状の枠内に,(「EBOHR」の頭文字と思われる)丸みを帯びた「E」の文字状の図形を背中合わせ(左右対称)に配置し,その接合部分が短い横線,あるいはくさび状に看取させる。
他方,引用商標1も,本件商標と同じく,(申立人の「EBEL」ブランドの頭文字である)丸みを帯びた「E」の文字状の図形を背中合わせ(左右対称)に配置し,その接合部分が短い横線,あるいはくさび状に看取される商標で,本件商標と構成の軌を一にする。このことは,本件商標と引用商標1に対して同じ図形分類コードを特許庁が付与していることからも裏付けられる。
なお,本件商標を子細にみると,引用商標1とは異なり,その「E」の文字の先端がフォーク(鋤)状になっており,かつ「E」の文字が引用商標1よりも若干丸みが少ない。
しかし,特に,本件商標の指定商品である「時計・腕時計(時計バンド,時計鎖,時計側,時計のガラスを含む)」や,「身飾品(貴金属製インゴット,宝石箱(小箱),宝飾品)」においては,「商標を商品に刻印することがしばしば行われ・・・刻印は小さく,彫りが浅いため,極めて判読しにくいものが多い。そのような場合に・・・細かいニュアンスは十分には表現されず,大まかな構成の類似性が大きく影響する」取引の実情があることは,特許庁及び裁判所においても認めるところである(甲7,甲8)。
したがって,本件商標と引用商標1が,丸みを帯びた「E」の文字状の図形を背中合わせ(左右対称)に配置し,接合部分が短い横線,あるいはくさび状に看取させる構成において共通している以上,本件商標の「E」の文字の先端がフォーク(鋤)状になっている点や若干の丸みの相違は細部の差異点にとどまり,本件商標と引用商標1の類似性を否定するものではない。
以上のとおり,本件商標と引用商標1は,外観において類似する商標である。また,本件商標の図形部分と引用商標1からは,いずれも「E」の文字を背中合わせに組み合わせた商標として「イーイー」の称呼が生じる可能性があるとともに,「ブランド名の頭文字を組み合わせた」商標との観念も生じうる点で共通する。
したがって,本件商標と引用商標1とは,外観,称呼,及び観念において共通するから,本件商標は,引用商標1と類似する。
イ 引用商標2及び3との類似性
本件商標の図形部分と,引用商標2及び3の図形部分(「EEロゴ」)の類似性については,上記アで述べたとおりである。いずれも,丸みを帯びた欧文字「E」を背中合わせに配置し,接合部分が短い横線,あるいはくさび状に看取させる点に特徴のある図形であり,両図形は,類似する。
また,本件商標の欧文字「EBOHR」と,引用商標2及び3の欧文字「EBEL」は,同一ではないものの,両者の図形部分の高い類似性,全体の構成(図形と文字の大きさの比率を含めた配置)の類似性,及び一般に文字商標においては,語頭の部分が強い印象を与えるところ,両者の文字部分は,語頭の「EB」において共通であることから,本件商標と引用商標2及び3とを全体としてみた場合,外観において相紛らわしく,混同を生じうる類似商標である。
また,称呼についても,本件商標は,その文字部分から「エボール,エボーア」といった称呼を生じる一方で,引用商標2及び3の文字部分からは「エベル」の称呼を生じ,長音を除くと,両者の称呼は,最初の文字を含め三文字中二文字が同一である。また,異なる称呼が生じる中間音(「ボ」と「べ」)についても,いずれも濁音のハ行の音であり,全体として近似した印象を与える。なお,上記アで述べたとおり,本件商標と引用商標2及び3の図形部分からは,「E」の文字を背中合わせに組み合わせた図形としていずれも「イーイー」の称呼が生じる可能性がある。
さらに,本件商標と引用商標2及び3の図形部分は,いずれも,ブランド名の頭文字である「E」の文字を組み合わせたものであり,同一の意味合いを有するものであるから,本件商標と引用商標2及び3は,観念においても類似する。
よって,本件商標と,引用商標2及び3を全体で比較した場合,外観,称呼及び観念において類似しうるから,本件商標と引用商標2及び3は,類似する。
さらに,本件商標及び引用商標2及び3は,いずれも図形と文字を分離して観察しうる商標であり,いずれも図形部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たすとみるべきであるところ,両者をそれぞれの図形同士で比較した場合も類似することは,上記アで述べたとおりであるから,本件商標と,引用商標2及び3は,結合商標を分離して観察した場合においても類似の商標である。
ウ 本件商標と引用商標との類似性は,2014年にスイス,バーゼルで行われた世界最大の宝飾と時計の展示会「バーゼルワールド」においても認められている。すなわち,本件商標権者がバーゼルワールドに出品した商品のうち,本件商標と同一の商標(あるいは本件商標の図形部分と同一の商標)を使用した商品(以下「本商品」という。)に対して,申立人は,引用商標と同一のスイスにおける登録商標(登録番号 2P-328336及び登録番号 2P-299591,以下「スイス登録商標」という。)の商標権を侵害するとして,バーゼルワールドの委員会(弁護士や専門家により構成されているパネル)に対して異議を申し立てたところ,同委員会は,本件商標と同一の商標(あるいは本件商標の図形部分と同一の商標)とスイス登録商標とは類似商標にあたるため,本商品は,申立人のスイス登録商標を侵害する物品であると判断した(甲9)。これに対し,本件商標権者は,本商品が,委員会の意見において,申立人のスイスにおける商標を侵害する物品であることを確認し,当該展示会においてこれらの商標を使用した商品,リーフレット,ディスプレイ,書面の使用を停止すること,委員会の行為(判断)に関して求償権を放棄すること及びこれらの手続にかかった費用を支払うことに同意している(甲10)。かかる対応からすれば,本件商標権者としても,本件商標と引用商標の類似性を認めた委員会の判断を受け入れたとみられ,本件商標と引用商標の類似性についても,これを争わないものと推認される。
エ 指定商品の同一・類似性
類似商品・役務審査基準において明らかなように,本件商標の指定商品中「wristwatches; watches; clocks; straps for wristwatches; watch chains; watch cases; watch glasses」(腕時計,時計,時計,時計バンド,時計鎖,時計側,時計のガラス)は,引用商標1及び2の指定商品「時計,時計の部品及び附属品」と,また,「jewelry」(宝飾品)は,引用商標3の指定商品のうち「第14類 身飾品,宝玉及びその模造品」と,それぞれ同一又は類似する商品である。
また,本件商標の指定商品のうち「Ingots of precious metals; jewelry cases[caskets]」(貴金属製インゴット,宝石箱(小箱))についても,引用商標3の指定商品「第14類 身飾品,宝玉及びその模造品」と類似する商品である。
本件商標の指定商品である「貴金属製インゴット」は,引用商標3の指定商品「身飾品や宝玉その模造品」の部品又は材料として,また,「宝石箱(小箱)」は,同商品を収納するものとして,いずれも高い関連性を有する商品であり,多数の身飾品・宝飾品等を製造及び販売する店舗(営業主)において,「身飾品や宝玉及び模造品」とあわせて「貴金属製インゴット」や「宝石箱(小箱)」が取り扱われている(甲11?甲13)。
したがって,本件商標の指定商品中「Ingots of precious metals;jewelry cases[caskets]」(貴金属製インゴット,宝箱(小箱))と,引用商標3の指定商品「第14類 身飾品,宝玉及びその模造品」に,同一又は類似の商標が使用された場合,それらの商品が同一営業主の製造又は販売にかかる商品であると消費者が誤認することは避けられず,両者は,類似の商品である。
オ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似し,かつ,その指定商品も類似するから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号違反
(1)引用商標(EBEL商標及びEEロゴ)の著名性
ア 申立人の「EBEL」ブランドは,1911年にスイスにおいて創設された腕時計ブランドで,以後100年以上にわたり,「高品質と優雅さ」の理念のもと,スポーツウォッチから宝飾時計まで,美しいフォルムと安定した高品質な時計を世界各国において提供している(甲14)。
日本においても,遅くとも1975年(昭和50年)頃から,EBELブランド製品の輸入を開始し,以後,約40年間にわたり,継続的に宣伝・販売がなされている。その結果,「EBEL」ブランドは,「スイスの時計メーカー,同社製の腕時計・懐中時計などのブランド」として,「英和商品名辞典」にも掲載されている(甲26)。そして,平成10年12月1日の東京高等裁判所判決では,「EBEL」ブランドは,「原告(決定注:申立人)が製造販売する高級腕時計を表示するものとして,少なくとも高級腕時計の取引者・需要者の間で相当程度知られていたと認めるのが相当である」と判断されている(甲15)。
したがって,引用商標2及び3の文字部分は,申立人を表示するものとして,少なくとも腕時計の取引者・需要者の間で著名な商標である。
イ この「EBEL」ブランドにおいて,申立人は,ブランド名の頭文字である欧文字「E」を背中合わせに組み合わせた「EEロゴ」(引用商標1並びに引用商標2及び3の図形部分)を遅くとも1960年頃から現在に至るまで約60年間にわたって使用している(甲16)。この「EEロゴ」は,後述するとおり,「EBEL」ブランドの定番商標として,非常に多くの商品に使用されてきただけでなく,「EBEL」ブランドのカタログの表紙や背表紙にも多数使用される等,ブランドを象徴する商標として機能している。
したがって,「EBEL」ブランドが上記のとおり需要者に広く知られた著名な商標となるのと同様に,「EEロゴ」もまた,それと同時期又は遅くとも本件商標の国際商標登録出願時には,腕時計の取引者・需要者の間で広く知られた商標となっている。
ウ 「EEロゴ」の日本国内における著名性について
(ア)「EEロゴ」を使用した商品・宣伝広告素材について
申立人は,「EEロゴ」を遅くとも1960年より非常に多くの腕時計に使用している(甲16?甲19)。特に,「EBEL」ブランドのブランド・リーダーモデルとなった,1977年発売の「wave」モデルや1982年発売の「クロノグラフ」,あるいは最近では2012年発売の「Onde(オンド)」モデルや2014年発売の「EBEL Wave」モデル等,ブランドを象徴する人気商品に「EEロゴ」が使用されている。
また,「EEロゴ」は,EBELブランドのカタログやパンフレットにも多数使用されている。例えば,1985年,1993年,1996年,2015年のカタログやパンフレットには,その表紙や背表紙に「EEロゴ」が大きく使用されている(甲16?甲18)。
さらに,「EEロゴ」は,例えば,プロテニスプレーヤーやプロゴルファー等を起用した広告にも多数使用されている(甲14)。
このように,「EEロゴ」は,「EBEL」ブランドを象徴する商標として,「EBEL」ブランドの認知度と同様に,特に腕時計の取引者・需要者に広く知られた著名商標となるに至っている。
(イ)使用開始時期,使用期間,使用地域(店舗数),売上(仕入金額)
申立人は,全世界的にみると遅くとも1960年以降,日本においては,ブランドの取り扱いが開始された,遅くとも1975年以降,「EEロゴ」を,ブランドを象徴する定番マークとして商品や広告等において使用している。現在,「EBEL」ブランドの商品は,日本の正規総代理店である株式会社ムラキを通じ,全国34店舗において取り扱われている(甲20)。なお,株式会社ムラキが新しく総代理店に就任した2012年6月以降,同社による「EBEL」ブランド商品の仕入金額は,2012年(半年間のみ)で約8970万円,2013年で約1億1000万円に及んでいる(仕入れ金額がスイスフランのものについては,便宜上1スイスフラン=110円で換算)。
(ウ)「EBEL」ブランドの宣伝広告活動
a 申立人の「EBEL」ブランドの商品は,日本国内において,定期的に時計雑誌だけでなくファッション雑誌にも取り上げられている。これらの雑誌のうち,最近のもの(2012?2014年)の中から代表的なものを年間約30件に絞って提出する。
そして,「EBEL」ブランド(「EEロゴ」を含む)は,「GQ JAPAN」等の主に男性をターゲットとする雑誌から,「SPRING」,「Sweet」,「MORE」,「美スト」,「STORY」等,20代の女性から50代の女性をターゲットとする,発行部数の多い人気ファッション雑誌にも広く掲載されている。
b 「EBEL」ブランドでは,2012年から女性フリーキャスターを日本におけるイメージキャラクターとして採用し,雑誌広告やイベントの開催等,大々的にキャンペーンを行い,特に女性をターゲットとした宣伝広告活動に注力し,注目を集めた(甲21?甲23)。
c 株式会社ムラキが新しくEBELブランドの正規総代理店に就任した2012年6月以降の半年間の広告宣伝費は約1626万円であった。さらに,2013年度(2013年2月?2014年1月)で約2296万円,2014年度(2014年2月?2015年1月)で約1462万円である。
上記からすれば,(既に裁判所において著名性が認められている)「EBEL」ブランドだけでなく,「EEロゴ」も,少なくとも本件商標の国際商標登録出願時までに日本の腕時計の取引者・需要者の間で広く知られた商標となるに至っていることは明白であり,引用商標が,著名商標であったことが客観的に認められる。
(2)「出所混同のおそれ」について
ア 本件商標が,引用商標と類似することは上記1のとおりである。特に,本件商標の図形部分と引用商標1並びに引用商標2及び3の図形部分である「EEロゴ」は極めて高い類似性を有している。
イ また,引用商標は,腕時計の需要者・取引者に高い認知度があるところ,本件商標の指定商品のうち「wristwatches;watches;clocks;straps for wristwatches;watch chains;watch cases;watch glasses」(腕時計,時計,時計,時計バンド,時計鎖,時計側,時計のガラス)は,「腕時計」と指定商品が同一である。また,その他の,「Ingots of precious metals;jewelry cases[caskets];jewelry」(貴金属製インゴット,宝石箱(小箱),宝飾品)についても,身飾品・宝飾品等と,腕時計をいずれも取り扱っている店舗(営業主・ブランド)が多数あること(甲24,甲25)からすれば,これらの商品は極めて緊密な関連性を有しているといえる。
(3)したがって,申立人の商標として腕時計の需要者に広く知られた引用商標と類似する本件商標を,腕時計と同一の商品(腕時計,時計,時計,時計バンド,時計鎖,時計側,時計のガラス)あるいは極めて密接な関連性を有する商品(貴金属製インゴット,宝石箱(小箱),宝飾品)に使用すれば,本件商標を使用した商品が,申立人の業務に係る商品と混同されるおそれがあることは明白である。
(4)特許庁の商標審査基準に従えば,引用商標1との関係でみると,申立人の著名な商標(引用商標1の「EEロゴ」)と類似する商標と,他の文字(すなわち「EBOHR」)を結合した本件商標は,引用商標1の「EEロゴ」と商品の出所の混同を生じるおそれがあるものとして取り扱われるべきものである。
(5)以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号違反
(1)上記2のとおり,引用商標は,申立人の商品を表示する商標として日本を含む世界各国において需要者に広く認識されている商標である。
(2)また,本件商標と引用商標が類似する商標であることは上記1のとおりである。
(3)加えて,上記1のとおり,2014年4月の「バーゼルワールド」において,本件商標と同一の商標を使用した商品が,申立人のスイス登録商標を侵害すると判断され,本件商標権者は,同展示会において,当該商品の販売を中止することに同意したにもかかわらず,本件商標権者は,その翌月にあえて本件商標を国際商標登録出願している。かかる対応からすると,本件商標権者が,申立人の有する引用商標の著名性を利用し,引用商標と混同を生じさせることで,不正の利益を得ようとしているものと考えざるを得ない。
(4)したがって,本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,日本及び外国において需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標を,不正の目的をもって使用(登録)したものであり,商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,四角形の内側に,縦長の半円状の図形の円弧を長く接合して左右対称に表し,その接合部分の中程に横線を配し,かつ,半円状の図形及び中央の横線部分のそれぞれの先端部分に鍵状の装飾を施して一体的に表した図形(以下「本件図形」という。)と,本件図形の下に「EBOHR」の欧文字とを横書きした構成からなるものである。
そして,本件商標の構成中,本件図形部分と「EBOHR」の欧文字部分とは,視覚上,分離して把握されるものであって,本件図形部分からは,特定の称呼及び観念を生じないものであり,また,「EBOHR」の欧文字部分は,特定の意味を想起させない一種の造語といえるものであるから,本件商標は,「EBOHR」の欧文字部分から「エボール」及び「エボーア」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1について
引用商標1は,別掲2のとおり,半円状の図形の円弧を一部を接合して左右対称に表し,その接合部分に短い横線を配した図形(以下「引用図形」という。)からなるものであり,これからは,称呼及び観念を生じないものである。
イ 引用商標2及び3について
引用商標2及び3は,別掲3のとおり,引用図形と,その下に,デザイン化した「EBEL」の欧文字(以下「EBEL文字」という。)を表した構成からなるものである。
そして,引用商標2及び3の構成中,引用図形部分とEBEL文字部分とは,視覚上,分離して把握されるものであり,引用図形部分は称呼及び観念を生じるものではなく,また,EBEL文字部分は,特定の意味を想起させない一種の造語といえるものであるから,引用商標2及び3は,EBEL文字部分から「エベル」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標と引用商標1との類否
本件商標は,上記(1)のとおり,本件図形と,その下に「EBOHR」の欧文字を横書きした構成からなるものであり,引用商標1は,上記(2)アのとおり,引用図形のみからなるものであるから,両商標は,「EBOHR」の欧文字の有無において明確な差異を有するものである。
そして,本件図形と引用商標1(引用図形)とを比較しても,両者は,正方形の枠の有無において明らかに相違するものであり,また,本件図形の四角形の内側の図形部分と引用図形についてみても,半円の丸みの形状,左右の図形の接合部分の長さ,横線の長さ,各先端の鉤状の装飾等において差異を有するものであるから,かかる差異により,両者が需要者に与える視覚的印象は,異なるものというのが相当である。
そうすると,本件商標と引用商標1とは,外観上,十分に区別し得るものである。
また,本件商標は,「エボール」及び「エボーア」の称呼を生じるのに対し,引用商標1は,特定の称呼を生じないものであるから,両者は,称呼において相紛れるおそれはなく,本件商標及び引用商標1は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念において比較することができない。
してみれば,本件商標と引用商標1とは,外観及び称呼において相違し,観念において比較することができないものであるから,これらを総合すれば,両商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。
イ 本件商標と引用商標2及び3との類否
本件商標は,上記(1)のとおり,本件図形と,その下に「EBOHR」の欧文字を横書きした構成からなり,引用商標2及び3は,上記(2)イのとおり,引用図形と,その下にEBEL文字を横書きした構成からなるものである。
そして,本件商標の本件図形部分と引用商標2及び3の引用図形部分とは,上記アと同様に,外観上,十分に区別し得るものである。
また,本件商標の「EBOHR」の欧文字と,引用商標2及び3のEBEL文字とを比較しても,語頭の「EB」の文字を共通にするものの,それに続く「OHR」の文字と「EL」の文字とが明らかに異なり,その構成文字の態様も異なるものであるから,本件商標と引用商標2及び3とは,外観上,相紛れるおそれはない。
次に,本件商標から生じる「エボール」及び「エボーア」の称呼と,引用商標2及び3から生じる「エベル」の称呼とは,語頭の「エ」に続く「ボール」及び「ボーア」の音と,「ベル」の音の差異を有するものであるから,その語調,語感が異なり,両商標は,称呼上,明瞭に聴別できるものである。
さらに,本件商標と引用商標2及び3は,いずれも特定の観念を生じるものではないから,観念において比較することができない。
してみれば,本件商標と引用商標2及び3とは,外観において相紛れるおそれはなく,称呼において明瞭に聴別できるものであり,観念において比較することができないものであって,これらを総合すれば,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ 小括
以上のとおり,本件商標と引用商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるから,本件商標の指定商品と,引用商標の指定商品とが同一又は類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
エ 申立人の主張について
申立人は,本件商標の本件図形部分と,引用商標の引用図形からは,「『E』の文字を背中合わせに組み合わせた図形としていずれも『イーイー』の称呼が生じ,同一の意味合いを有するものである」旨,主張する。
しかしながら,申立人が提出した証拠からは,本件商標の本件図形部分と引用商標の引用図形から,「イーイー」の称呼が生じ,同一の意味合いを有するものとすべき特段の事情はなく,両図形部分の類否については,上記アに記載したとおりであるから,申立人の主張は採用できない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性について
ア 申立人は,1911年にスイスで創設された時計メーカーであり,1990年(平成2年)当時,年間生産額は約520億円であり,スイス時計産業のなかで第3位の規模を有していた(甲14)。
イ 申立人のブランドネームである「EBEL」は,申立人の創業者夫妻の名前に由来して創案された造語である(甲14,甲21)。
ウ 日本においては,1993年(平成5年)及び1996年(平成8年)に,EBEL文字(書体や色彩の異なるものを含む。)を表示した腕時計のカタログが作成された(甲17,甲18)。
エ 1993年(平成5年)11月20日発行の「世界の腕時計 No.16」(株式会社ワールドフォトプレス)において,EBEL文字が表示された時計の写真とともに,申立人が,安定した高品質を維持しており,国際的な高級時計市場において,独自の商品テイストと経営方針をもったブランドである旨の紹介記事が掲載された(甲14)。
オ 2000年(平成12年)1月15日発行の「世界の腕時計年鑑2000年度版」(株式会社ワールドフォトプレス)において,「EBEL」の見出しのもと,EBEL文字を付した申立人の腕時計が紹介された(甲19)。
カ 2012年6月には,株式会社ムラキが,申立人の日本における正規総代理店となり,2016年3月現在,全国に34店舗を有している(甲20)。また,申立人の主張によれば,同社による申立人の商品の仕入金額は,2012年(半年間)で約8970万円,2013年で約1億1000万円である。
キ 2012年ないし2014年に,時計専門誌のほか,女性ファッション雑誌,男性ファッション雑誌,自動車専門誌,飛行機の機内誌やホテルの館内誌等,幅広い分野の雑誌,及び新聞において,EBEL文字を付した申立人の腕時計が,他の高級腕時計などとともに紹介され,あるいは広告が掲載された(甲21?甲23)。
ク 上記キの紹介記事においては,特に,2011年に申立人が創業100周年を迎えた際に,創業当時のロゴを付した記念限定モデルの腕時計が製造された旨(甲21の2,4,11,13,28,30,甲23の24,25,29),また,2012年には,女性フリーキャスターを申立人の商品のイメージキャラクターに起用し,EBEL文字を使用して申立人の商品の宣伝を行った旨が,多数の新聞記事や雑誌において取り上げられた(甲21の7,10,16,19?21,23,27,32,甲22の22)。なお,申立人の主張によれば,広告宣伝費は,2012年(半年間)で約1626万円,2013年度で約2296万円,2014年度で約1462万円である。
(2)上記(1)によれば,EBEL文字(引用商標2及び3の文字部分)は,我が国において,遅くとも1993年(平成5年)以降,申立人が腕時計に継続して使用した結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人が製造販売する高級腕時計を表示するものとして,少なくとも我が国の高級腕時計の取引者・需要者の間においては,相当程度知られていたものと認められる。
他方,申立人は,欧文字「E」を背中合わせに組み合わせた「EEロゴ」が,申立人の商品やカタログ,広告宣伝等に長年にわたり使用された結果,需要者等に広く知られている旨主張するが,当該「EEロゴ」については,「EBEL」の欧文字とともに使用されている証拠は見受けられるものの,単独で使用されている証拠はほとんど見いだせず,また,当該欧文字とともに使用されている証拠にしても,申立人の腕時計のうち,いくつかのモデルの文字盤に使用されているものであって,その数も多いものとはいえない。
加えて,引用図形と,申立人の腕時計の文字盤に使用されている,当該「EEロゴ」(甲16,甲17,甲21の20及び24等)とは,円弧の長さや形状等が相違し,互いに異なる印象を与えるものというべきであるから,これらが,同一の図形であるとはいい難い。
そうすると,引用図形については,本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,広く知られていたものと認めることはできない。
(3)出所の混同のおそれについて
上記(2)によれば,EBEL文字(引用商標2及び3の文字部分)は,申立人の業務に係る商品「腕時計」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,少なくとも我が国の高級腕時計の需要者の間においては,相当程度知られていたものと認められる。
しかしながら,上記1のとおり,本件商標とEBEL文字を含む引用商標2及び3とは,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標は,本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標2及び3を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはなかったものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記2のとおり,EBEL文字(引用商標2及び3の文字部分)は,申立人の業務に係る商品「腕時計」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,少なくとも高級腕時計の需要者の間に相当程度知られていたものといえる。
しかしながら,上記1のとおり,本件商標とEBEL文字を含む引用商標2及び3とは,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
また,申立人が提出した証拠をみても,本件商標権者が,引用商標の著名性を利用し,引用商標と混同を生じさせることで,不正の利益を得る等の不正の目的をもって,本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 申立人の主張について
(1)申立人は,「本件商標の指定商品である『時計』や『身飾品』等においては,『商標を商品に刻印することがしばしば行われ・・・刻印は小さく,彫りが浅いため,極めて判読しにくいものが多い。そのような場合に・・・細かいニュアンスは十分には表現されず,大まかな構成の類似性が大きく影響する』取引の実情があるから,本件商標と引用商標1が相違点を有しているとしても,細部の差異にとどまり,両者の類似性を否定するものではない。」旨主張する。
しかしながら,本件商標と引用商標1とは,上記1(3)アのとおり,「EBOHR」の欧文字の有無において顕著に相違し,両者の図形部分においても明らかに異なるものである。また,本件商標と引用商標2及び3とを比較しても,上記1(3)イのとおり,両者の図形部分及び文字部分は,それぞれ相違するものであるから,たとえ,両商標が,それらの指定商品に刻印されたとしても,十分に見て取ることができ,互いに判別も可能なものというべきである。
したがって,申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件商標と引用商標との類似性について,申立人は,「2014年にスイス,バーゼルで行われた宝飾及び時計の展示会『バーゼルワールド』において認められている」旨主張する。
上記展示会における委員会の決定(甲9,訳)によれば,係争対象のロゴ(本件図形の四角形の内側部分)と,申立人のスイス登録商標により保護される引用図形(決定注:引用商標1と同一)について,共通点については,「ミラー状(背中合わせ)に配置された2つの『E』の文字により構成され,これら『E』の文字は,中央の横線によって接合されている」ことを特徴とする旨,他方,差異点については,「係争対象ロゴは『E』の文字の先端がフォーク(鋤)状になっている一方,申立人のロゴがそのようになっていないこと,申立人ロゴの『E』の文字は,係争対象ロゴのそれに比してより丸みを帯びている。」とし,かつ,「EBOHR」の文字と結合した場合においても申立人のスイス登録商標(決定注:引用商標2及び3と同一)と類似する旨,記載されている。
しかしながら,上記の決定においては,係争対象ロゴ(本件図形の四角形の内側部分)と申立人の引用図形の類否について言及されているものであって,本件図形と引用図形についての類否ではなく,また,本件商標の構成中の「EBOHR」の欧文字と,申立人のスイス登録商標(引用商標2及び3)の構成中の「EBEL」の欧文字とは,上記1(3)イに記載のとおり,相紛れるおそれのないものである。
そして,上記展示会における委員会の決定は,海外の展示会における一事例であって,本件商標と,引用商標の類否については,我が国の商標法に基づいて判断されるべきものであるところ,両商標は,上記1(3)に記載のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものであるから,申立人の上記主張は,採用できない。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 【別記】



異議決定日 2017-12-19 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W14)
T 1 651・ 261- Y (W14)
T 1 651・ 262- Y (W14)
T 1 651・ 222- Y (W14)
T 1 651・ 263- Y (W14)
最終処分 維持 
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 田中 亨子
特許庁審判官 平澤 芳行
小林 裕子
登録日 2014-12-30 
権利者 EBOHR LUXURIES INTERNATIONAL LTD.
商標の称呼 エボール、エボーア 
代理人 秋山 朋子 
代理人 和田 信博 
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