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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 |
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管理番号 | 1365189 |
異議申立番号 | 異議2019-900362 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-12 |
確定日 | 2020-08-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6182953号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6182953号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6182953号商標(以下「本件商標」という。)は,「RUBICONIC」の欧文字を標準文字で表してなり,平成31年2月7日に登録出願,第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として,令和元年9月3日に登録査定され,同年9月20日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4774247号商標(以下「引用商標」という。)は,「RUBICON」の欧文字を標準文字で表してなり,平成15年5月8日に登録出願,第12類「自動車並びにその部品及び附属品,乗物用盗難警報器,鉄道車両並びにその部品及び附属品」を指定商品として,同16年5月28日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 指定商品の類否について 本件商標の指定商品第12類「自動車並びにその部品及び附属品」は,引用商標の指定商品中の第12類「自動車並びにその部品及び附属品」と同一又は類似である。 イ 商標の類否について (ア)観念について 本件商標は,欧文字を標準文字にしてなる「RUBICONIC」を同書,同大,同間隔にして横書きした全9文字からなり,全体として「ルビコニック」の全6音の称呼を生じる。 そして,「RUBICONIC」の語尾の2文字「IC」は,英和辞典に「・・・の」「・・・のような」「の性質の」などと記載されている(甲4?甲6)。したがって,「RUBICONIC」には「RUBICONの」「RUBICONの様な」「RUBICONの性質の」などの基本的な観念が生じる。 本件商標の語尾「IC」を除いた,語頭7文字「RUBICON」の部分の観念は,辞書によれば「ルビコン川(イタリア中部の川)」(甲7)という程の意味合いがある。また,「RUBICON」から自然に生じる称呼「ルビコン」については,辞書類には「イタリアにある川」(甲8),「イタリア中部,アペニン山脈に発源し,アドリア海に注ぐ川。」(甲9)と記載されている。 したがって,「RUBICONIC」の文字からは,「ルビコン川の」「ルビコン川の様な」などの観念が生じる。 また,引用商標「RUBICON」からは,上述したように「ルビコン川」などの観念が生じる。 次に,「RUBICON」は,後述するように申立人の周知,著名な商標である「JEEP(Jeep)」のシリーズの最上位車種の一つを表す商標として使用され,知られており,自動車の車種としての「RUBICONの」「RUBICONの様な」という観念も生じる。 以上のように,「RUBICON」と「RUBICONIC」とは,名詞とその形容詞との関係に有ることから,「ルビコン川」と「ルビコン川の様な」という関係だけでなく,自動車の車種としての標章に対して「・・・の」「・・・の様な」という観念を生ぜしめるので,両者は観念的な関連性が強く,観念として類似する。 (イ)外観について 本件商標は標準文字で「RUBICONIC」の全9文字を同書,同大,同間隔に表わされてなり,引用商標は標準文字で「RUBICON」の全7文字を同書,同大,同間隔に表されてなるものである。 すなわち,両者は9文字中7文字が一致し,かつ語頭の7文字が文字順も完全に一致しており,需要者,取引者(自動車等の分野)に対して強く近似した印象を与える。 (ウ)称呼について 本件商標は,欧文字「RUBICONIC」から「ルビコニック」の全6音の称呼が生じる。 また,接尾辞「ic」が付く場合,語幹の最後の母音に発音上のストレスがつくことから(甲5),第3音の「コ」が強く発音され,次の「ニック」の部分は弱く聴取されやすく,総じて「ルビコ」の部分に強い印象を与える。 一方,引用商標においては,欧文字「RUBICON」から「ルビコン」の称呼が生じ,語尾の「ン」は響きの弱い鼻音であり,比較的聴取され難い語尾に位置するものであり,また「ル」の部分に第一アクセントがつくとともに,「コ」の部分にもアクセントが存する(甲7,甲10)。 したがって,本件商標及び引用商標の両称呼においては称呼前半部分の「ルビコ」の部分が印象に残りやすい音である。 実際の取引過程,例えば,同じ場所(自動車販売店など)において,本件商標「RUBICONIC」が付された車体カバーと,引用商標「RUBICON」が付された車体カバーが販売されている場合,取引者は本件商標が付された商品に「ルビコニック」の称呼を用いると考えられるが,上述のとおり「ルビコ」の部分の音が印象的に聴取されるため,販売者(店員)は引用商標の称呼であるとの混同を生じる。 したがって,本件商標から生じる全6音のうち語頭の3音「ルビコ」が引用商標と共通し,両商標において相異する音「ニック」と「ン」はいずれも語尾であり,全体として称呼した際に,弱く聴取し難い部分であり,両商標をそれぞれ一連として称呼した場合には,全体としての語調,語感が近似し,互いに聞き誤るおそれがある。 (エ)取引の実情について 申立人の前身であるフィアットは,1899年,イタリアのトリノで設立され,1900年から乗用車の生産を開始して以降,商用車やトラクター,船舶や航空用エンジンの生産,冶金事業,航空事業など,多角的な事業展開を推進している。そして,申立人は,2018年に約14兆3,640億円を売り上げ,販売台数においては484.2万台と世界第9位の自動車メーカーである(甲11,甲12)。 引用商標「RUBICON」を付した自動車を販売する,申立人の「Jeep」正規販売ネットワークは2018年末の時点で78拠点にも上る(甲13)。また近年,「RUBICON」を有するブランド「Jeep」は,若者を中心に顧客層を広げている(甲14)。 このように,自動車業界においては申立人のブランド「Jeep」は一般にも極めて有名なブランドであり,申立人が2007年より販売を開始した「RUBICON」は,自動車の車種を表す商標として自動車業界において周性知が高いものである。その周知性については後述する。 一般に自動車会社は,自動車本体を売るだけではなく,自動車の部品や附属品も同じ販売場所で販売していることが多く見受けられる。申立人の正規販売ネットワークにおいても,自動車の修理や,必要な附属品などのアフターフォローも同一の場で提供している。 例えば,「RUBICON」という商標が付された自動車に関して,そのスペアタイヤカバーを新たに買い足そうと考えたときに,「RUBICONIC」という商標が付されたカバーが販売されていれば,当然にその関連性が想起されると考えるのが自然である。 また,本件商標についてインターネット上で調べたところ,本件商標を付した商品のページには「RUBICONIC(ルビコニック)の名のとおり人気のUS RUBICONバンパーのイメージに変えるフォグランプベゼルです。」という説明がなされ,申立人の商標「RUBICON」についての記載がされている(甲15,甲16)。すなわち,本件商標は,引用商標「RUBICON」の存在を認識した上で,かつ需要者に関連性を想起させる可能性の有る状況で商標を使用している実情も有り,取引者・需要者において出所の混同の生じる可能性は高い。 ウ 本号のまとめ 本件商標と引用商標とは,時と場所を異にする取引場面において,観念,外観及び称呼の共通性,類似性から商品の出所を混同するおそれがあり,類似する関係にある。また,本件商標と引用商標とは,取引の実情を鑑みた場合,全体として相紛れるおそれがあり,出所混同を生ぜしめるおそれが高い。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第19号について 下記(3)アで詳しく述べるが,「RUBICON」は日本国において,全輪駆動小型車の一つを表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されている。 さらに,「RUBICON」の本場である米国においても当然,周知,著名性は高いものであり,以下に米国における周知,著名性について述べる。 ア 米国での「RUBICON」の周知,著名性 申立人の所有する米国登録商標「RUBICON」(甲3)は,カルフォルニア州に存在する世界で最も過酷なオフロードコースといわれる「ルビコントレイル」をその由来としている(甲17)。 ルビコンは2003年に「Jeep」で誕生した車種であり,また,この「ルビコントレイル」は,申立人の有するJeepのホームページでも紹介されており,Jeepの車の性能試験を「ルビコントレイル」で行っていることは自動車愛好家の間では良く知られている(甲18)。 イ 両商標の類似性 本件商標「RUBICONIC」の語頭の7文字は,米国において全輪駆動車の一つを表示する商標として著名な商標「RUBICON」を内包し,形容詞を作る英語の接尾辞「IC」をその語尾に付しているにすぎず,そこから生じる全6音の称呼においては,聴取しやすい語頭の「ルビコ」の部分を共通としていることから,称呼及び外観の共通性と相まって観念の類似性を高め,よって両商標は出所の混同を生ぜしめるおそれが極めて高い。 ウ 不正の目的について 本件商標は,米国で周知,著名な申立人の商標「RUBICON」と類似の商標であり,出所の混同を生ぜしめ,あるいは,申立人の周知,著名な商標についての出所表示機能を希釈化させる可能性がある。さらに,申立人の商標は永年にわたって世界で使用されている。このような状況から,本件商標は不正の目的をもって出願されたことが推認される。 エ 本号のまとめ 以上の次第につき,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号について ア 引用商標の周知,著名性について 申立人は日本において,自動車「RUBICON」を2007年から導入し,様々な広告宣伝を行ってきた。以下,種々の媒体への宣伝等の掲載状況について提示する。 (ア)カタログによる紹介 2007年から2019年6月にかけて発行された自社(申立人)発行の日本向け「カタログ」(抜粋)にも「RUBICON」という商標を付した車が大きく記載されている(甲19?甲22)。 (イ)HPによる紹介 申立人によるJeepのホームページにも,「RUBICON」はTOP画面に紹介され(甲23),また,ジープの歴史を紹介するページにおいても写真と共に「Rubiconは,Wlangler史上最高の走破性を備えるモデルです。」などと紹介されている(甲24)。 (ウ)インターネットのニュース記事による紹介 2014年12月26日ないし2019年6月13日付けのニュース記事に「ルビコン」が紹介されている(甲25?甲28)。 (エ)イベント情報 東京ビッグサイトにて開催された「東京モーターショー2015」に,ジャパンプレミアとして「RUBICON」が展示された(甲29)。 イ 日本及び世界での商標登録の状況 「RUBICON」は,日本のみならず世界各国において,申立人によって商標登録が行われている(甲30)。 ウ 周知,著名性についてのまとめ 以上の事実からも,商標「RUBICON」は,本件商標の登録出願時前及び登録査定時において,既に米国その他の国はもとより,日本国内においても四輪駆動車(全輪駆動小型車)の車種の一つを表す商標として,一般に広く知られ,現在に至るまで周知,著名なものとなっている。 エ 出所の混同について (ア)出所混同のおそれについて 本件商標と引用商標とは,上記(1)イで述べたように基本的に類似する商標である。 また,上記(1)イ(エ)で述べたように,「RUBICONIC」という商標が付された自動車の附属品を,「RUBICON」と何らかの関連性のある商品と判断し,購入してしまう場合も想像に難くない。 (イ)引用商標の独創性及び周知性,著名性 上記(2)アで述べたように,申立人の商標「RUBICON」は,カルフォルニア州に存在するオフロードコース「ルビコントレイル」をその由来としている。 ルビコンは2003年に「Jeep」で誕生した車種であり,日本国内においては2007年より導入されている。また,「ルビコントレイル」は,申立人の有するJeepのホームページでも紹介されており,Jeepの性能試験を「ルビコントレイル」で行っていることは自動車愛好家の間ではよく知られている(甲18)。 (ウ)商品の関連性 本件商標と引用商標は,(1)アで述べたとおり第12類の指定商品「自動車並びにその部品及び附属品」を同一とし,出所の混同を考慮すべき関連性がある。 (エ)具体的な出所の混同について 本件商標が全体として観察した場合に,仮に類似しない関係にあったとしても,本件商標には,明らかに引用商標をそのままの語順で,しかも語頭に含んでいる。したがって,本件商標が共通する指定商品に使用された場合,これに接する取引者・需要者はその商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者若しくは申立人の承諾を受けた者の業務に係る商品であるように感受することは明らかである。 具体的な出所の混同については,上記(1)イ(エ)述べたとおりである。 オ 本号のまとめ 以上のように,本件商標「RUBICONIC」は,全輪駆動小型車の一つとして著名な商標「RUBICON」(引用商標)を構成する全7文字をそのまま語頭に含み,形容詞を作る接尾辞「IC」をその語尾に配置しただけのものであり,これがその指定商品に使用された場合,これに接する需要者及び取引者は,その商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者若しくは申立人の承諾を受けた者の業務に係る商品であるかのように感受する。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第7号について 上述のとおり 引用商標「RUBICON」は,米国のみならず日本国及び他の自動車文化が長期的に存在する地域では周知,著名な商標である。また,自動車について知識を有する需要者,取引者にとって馴染みの深い商標でもある。 そして,このような周知又は著名性のある「RUBICON」の標章を含んだ商標が,仮に出所の混同が生じないような使用状況であったとしても,使用者は当該商標「RUBICON」の名声に便乗することになる。 この「RUBICON」の商標が有する名声によって,取引者,需要者に対する注意喚起がなされ,さらには顧客吸引力が発揮される。これは,引用商標の所有者である申立人の長年に亘る使用努力の結果,当該商標に化体した価値をその意に沿わない形で無断利用するものに他ならない。このような周知,著名な商標を一部に含めて使用する行為は,いわゆる引用商標の顧客吸引力にただ乗りする商標使用行為であり,この行為を合法的に行うための本件商標登録は,公の秩序,善良な風俗に反するものである。 さらに,本件商標「RUBICONIC」は,申立人が製造販売する自動車「RUBICON」に用いる部品への標章として使われ,商標権者によってその部品が販売されている(甲15,甲16)。これは,まさに引用商標に化体した価値を前提として,意図的に「RUBICONIC」という商標出願をしたものである。また,当然ながらこれは商業的な利益を伴う行為である。これが継続される場合,上述のように出所の混同が生じるか否かに拘わらず,引用商標の商標としての価値は着実に希釈化されていく。 以上のように,商標としての使用を前提とする本件商標の登録は,商標法第4条第第1項第7号に違反する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次のとおりである。 申立人(その関連会社等を含む。)は,我が国において,引用商標「RUBICON」を2007年(平成19年)頃から現在まで継続して四輪駆動車「JEEP」の一車種を表すものとして使用し,引用商標を使用した自動車(以下「使用商品」という。)を販売していること(甲17,甲19?甲29),使用商品は2015年1月から100台,2019年6月(本件商標の登録出願の日後である。)から257台の販売が開始されたこと(甲25,甲28),使用商品は2015年11月に「東京モーターショー2015」に出展されたこと(甲29),及び商標「RUBICON」は米国など世界各国で商標登録されていること(甲3,甲30)などがうかがえるものの,使用商品の我が国における販売台数,シェアなど販売実績を示す主張はなく,かつ,それを裏付ける証左は見いだせない。 また,商標「RUBICON」を使用した商品(自動車)の米国をはじめとする外国における販売台数,シェアなど販売実績を示す主張,証左も見いだせない。 イ 上記アのとおり,使用商品は,我が国において平成19年から現在まで継続して販売されていることがうかがえることなどから,四輪駆動車に興味を有する我が国の需要者の間である程度知られているといい得るとしても,我が国における販売実績を裏付ける証左は見いだせないから,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 また,商標「RUBICON」を使用した商品の米国をはじめとする外国における販売実績を示す証左も見いだせないから,同商品は,米国をはじめとする外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 そうすると,使用商品に使用されている引用商標及び商標「RUBICON」は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,いずれも申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び米国をはじめとする外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標 (ア)本件商標は,上記1のとおり「RUBICONIC」の欧文字を標準文字で表してなり,該文字に相応し「ルビコニック」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 (イ)なお,申立人は,本件商標は語尾の「IC」が「・・・の,・・・のような」などの意味を,語頭の「RUBICON」が「ルビコン川」の意味を有するから,「ルビコン川の,ルビコン川の様な」などの観念を生じる,及び語頭の「RUBICON」は自動車の車種として知られているから「(自動車の車種としての)RUBICONの」などの観念を生じる旨主張している。 しかしながら,本件商標の構成文字は同書,同大,同間隔で一体に表されているものであり,また,「RUBICON」は「ルビコン川」の意味を有するものとして我が国で親しまれた語ではなく,さらに,上記(1)のとおり「RUBICON」は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。 そうすると,本件商標は,これに接する需要者をして構成文字全体が一体不可分であって,特定の観念を生じないものと理解,認識させるものと判断するのが相当である。 したがって,申立人のかかる主張は採用できない。 イ 引用商標 (ア)引用商標は,上記2のとおり「RUBICON」の欧文字を標準文字で表してなり,該文字に相応し「ルビコン」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 (イ)なお,申立人は,引用商標は「ルビコン川」「(自動車の車種としての)RUBICON」の観念を生じる旨主張しているが,上記ア(イ)と同様に「RUBICON」は「ルビコン川」の意味を有するものとして我が国で親しまれた語ではなく,「RUBICON」は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから,その主張は採用できない。 ウ 本件商標と引用商標の類否 (ア)本件商標と引用商標の類否を検討すると,外観においては,本件商標の構成文字「RUBICONIC」と引用商標の構成文字「RUBICON」の比較において,両者は後半部に「IC」の文字の有無という差異を有し,この差異が9文字と7文字からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 次に,本件商標から生じる「ルビコニック」と引用商標から生じる「ルビコン」の称呼を比較すると,両者は語尾において「ニック」と「ン」の音の差異を有し,この差異が,6音と4音という比較的短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく,両者をそれぞれ一連に称呼しても,かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。 さらに,観念においては,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると,本件商標と引用商標は,外観,称呼において相紛れるおそれがなく,観念において比較できないものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 その他,両商標が類似するというべき事情も見いだせない。 (イ)なお,申立人は,本件商標と引用商標は,観念,外観及び称呼の共通性,類似性から商品の出所を混同するおそれがあり,類似する関係にある旨主張しているが,両商標は上記(ア)のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであるから,かかる主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおり,本件商標と引用商標は非類似の商標であるから,両商標の指定商品が類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。 (3)商標法第4条第1項第15号について 上記(1)のとおり引用商標及び商標「RUBICON」(以下,それらを併せて「引用商標等」という。)は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記(2)のとおり本件商標と引用商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標である。また,本件商標と引用商標と同一の綴りからなる商標「RUBICON」は,上記(2)と同様の理由により,相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。 そうすると,本件商標は,これに接する取引者,需要者が引用商標等を連想又は想起するものということはできない。 してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。 (4)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について ア 上記(1)のとおり,引用商標等は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記(2)及び(3)のとおり本件商標と引用商標等は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,更に上記(3)のとおり本件商標は,引用商標等を連想又は想起させるものではない。 そうすると,本件商標は,引用商標等の名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 さらに,本件商標が,その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど,公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 イ なお,申立人は,本件商標は周知,著名な引用商標等と類似の商標であり出所混同を生ぜしめる,あるいは引用商標の出所表示機能を希釈化させる,周知,著名な引用商標等を一部に含めて使用する行為は引用商標等の顧客吸引力にただ乗りする行為である,本件商標は申立人の自動車「RUBICON」に用いる部品の標章として使われ,商標権者によってその部品が販売され,引用商標に化体した価値を前提として意図的に商標出願されたものであるなどとして,本件商標は不正の目的をもって出願されたものであり,また,公序良俗に反するものである旨主張している。 しかしながら,上記のとおり,引用商標等は需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,本件商標と引用商標等は非類似の商標であり,本件商標は引用商標等を連想又は想起させるものではない。 さらに,申立人提出の証拠によっては,本件商標が不正の目的をもって使用をするもの又は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものと認め得る事情は見いだせない。 よって,申立人のかかる主張は採用できない。 ウ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものといえない。 (5)むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2020-07-22 |
出願番号 | 商願2019-22346(T2019-22346) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W12)
T 1 651・ 263- Y (W12) T 1 651・ 262- Y (W12) T 1 651・ 222- Y (W12) T 1 651・ 271- Y (W12) T 1 651・ 22- Y (W12) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 浦崎 直之 |
特許庁審判長 |
齋藤 貴博 |
特許庁審判官 |
小松 里美 山根 まり子 |
登録日 | 2019-09-20 |
登録番号 | 商標登録第6182953号(T6182953) |
権利者 | TUS JAPAN株式会社 |
商標の称呼 | ルビコニック |
代理人 | 岩崎 博孝 |
代理人 | 江藤 聡明 |