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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z36
管理番号 1365120 
審判番号 取消2018-300623 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-08-08 
確定日 2020-07-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4256690号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4256690号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4256690号商標(以下「本件商標」という。)は、「S t a n d a r d」の欧文字を標準文字で表してなり、平成9年9月26日に登録出願、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として、同11年4月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成30年8月21日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成27年8月21日から同30年8月20日までを、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人による新工法「STANDARD SYSTEM」あるいは「スタンダードシステム」を紹介するパンフレットであるが、表紙に「STANDARD」が表示されており、本件商標が使用されていると認められる。
一方、当該パンフレットは、被請求人が開発した木造住宅の新工法である「STANDARD SYSTEM」あるいは「スタンダードシステム」による生産・供給システムについて、木造住宅建設を施工する住宅会社・工務店等向けに、工法の内容、工法を採用するメリット等について紹介するものであり、本件商標の指定役務中の「建物の管理」に関する記載は一切見いだせない。
また、このパンフレットは、いつ発行されたものか、いつ頒布されたものか等、日付に関する記載が一切見いだせない。
したがって、乙第1号証は、本件商標が、第36類の指定役務中「建物の管理」について、要証期間内に日本国内において使用されていたことを証明するものではない。
(2)乙第2号証ないし乙第7号証について
乙第2号証には、公益財団法人日本住宅・木材技術センター(以下「財団」という。)が、被請求人による軸組木造住宅の合理化した生産供給システムを、木造住宅合理化システムの基準性能タイプとして、認定番号「合理化S1304-10」、認定システム名「STANDARD SYSTEM」の下に認定し(乙3)、平成27年12月25日付けの木造住宅合理化システム認定更新申請書の提出により(乙6)、平成31年3月31日まで当該認定が有効であることが示されている。
また、乙第6号証に含まれる木造住宅合理化システム認定受注棟数報告書によれば、被請求人による木造住宅合理化システムである「STANDARD SYSTEM」を採用した木造住宅の建設が平成27年度まで行われていたことが認められる。
一方、乙第2号証ないし乙第4号証及び乙第7号証は、財団が発行又はウェブサイトに掲載したものであり、作成者は財団であって、これらに記載された「STANDARD SYSTEM」は、あくまで認定システムの名称として記載されたものである。また、乙第5号証は、被請求人のウェブサイトにおける会社沿革の記載中、「平成10年7月 NEXT:WIDE:STANDARDシステムによる合理化システム認定取得」を示すものであるが、この記載中「STANDARDシステム」は認定システムの名称を記載したものであり、同様に、乙第6号証の被請求人による木造住宅合理化システム認定更新申請書中に記載された「STANDARD SYSTEM」は、認定システムの名称を記載したものである。
したがって、被請求人が認定を受けた「STANDARD SYSTEM」が、少なくとも平成27年末まで木造住宅の建設に用いられていたことは認められるが、これらの証拠に記載された「STANDARD SYSTEM」又は「STANDARDシステム」は、認定システムの名称として記載されているにすぎず、本件商標が被請求人により役務の提供について使用されていたことは全く証明されていない。
被請求人は、答弁書において、これらに記載された「STANDARD SYSTEM」において、識別標識として機能する部分は「STANDARD」であるから、被請求人が役務について使用している商標は「STANDARD」であると述べているが、そもそもこれらの証拠において記載されている「STANDARD SYSTEM」は認定を受けた工法の名称として記載されているものであり、商標の使用とは何の関係もない。
また、被請求人は、乙第4号証に記載されている木造住宅合理化システム認定制度の認定基準において、「完成後の長期の維持管理補修サービス等ができること」を根拠として、被請求人が認定された「STANDARD SYSTEM」の工法により建築された建物の維持管理補修サービスを提供していると主張しているようである。
しかしながら、この認定基準に記載されている「建物の管理」は、類37類の類似群コード「37A03」に含まれる役務に該当することは、特許情報プラットフォームの商品・役務名検索で表示されている役務名の例示(甲3)から明らかである。すなわち、第37類に属する役務「建物の管理」は、建設分野を専門とする企業が提供するサービスであり、本件においても、被請求人が提供する工法を用いて建設した建物について、被請求人が提供しているサービスに該当する。
一方、第36類に属する役務「建物の管理」は、不動産業務を行う企業が、建築物の所有者・住人あるいは管理組合の委託を受けて、建築物を使用し、維持・管理するために、清掃・点検・修繕などの各種サービスを提供するものである。これは、特許庁商標課が「類似役務審査基準」を作成したときに、省令別表に役務を例示するために参考にした日本標準産業分類の「不動産管理業」についての解説(甲4)からも明らかである。
したがって、乙第1号証と乙第2号証ないし乙第7号証とを組み合わせたとしても、本件商標が、第36類の指定役務中「建物の管理」について、要証期間内に日本国内において使用されていたことを証明するものではない。
(3)乙第8号証ないし乙第10号証について
乙第8号証は、被請求人が定める建物の管理の手続のフローを記載した書面であるが、この建物の管理は、第37類に属する「建物の管理」に該当する。
乙第9号証は、被請求人が管理する顧客情報の抜粋であるが、この顧客は、被請求人による「STANDARD SYSTEM」の工法を用いて建設された複数のアパートの所有者のようであり、乙第10号証は、顧客の依頼により、これらのアパートの内部設備について点検・交換等を行った記録のようである。すなわち、被請求人は、これらのアパートの建設に関わった企業として、クレームの受付・点検・交換等を行っているのであるから、これは第37類に属する「建物の管理」に該当する。
また、これらの証拠では、本件商標が使用されて役務が提供されていることは全く示されていない。乙第9号証において、工事内容の工法の欄に「Standard」が記載されているが、これは工法の名称を表示しているのみであり、本件商標が使用されて本件商標の指定役務中の「建物の管理」が提供されていることを証明するものではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標は、その指定役務中の「建物の管理」について、要証期間内に日本国内において使用されている。
2 本件商標の使用
乙第1号証のパンフレットには、本件商標が表示されており、この商標は、本件商標を若干デザイン化したものであるが、本件商標と社会通念上同一である。また、本件商標は、被請求人が提供する木造住宅合理化システム(以下「使用役務」という。)の名称であり、このシステムは、指定役務中の「建物の管理」を含む役務である。
乙第2号証に示す、財団が発行した認定書には、認定の対象であるシステムの名称として「STANDARD SYSTEM」が表示されている。この使用態様のうち、「SYSTEM」は「システムの名称」欄に記載するために必要な記載であって、識別標識として機能する部分は「STANDARD」である。事実、財団が認定したシステム一覧(乙3)に掲載されるシステム名称は、「工法」又は「システム(SYSTEM)」が結合された名称がほとんどである。すなわち、記載されている「STANDARD SYSTEM」のうち、「SYSTEM」はその役務を表すために便宜的に記載されている部分にすぎず、被請求人が使用役務について使用している商標は「STANDARD」であり、これは本件商標と同一の商標である。
3 使用に係る役務
被請求人は、本件商標を被請求人が提供する木造住宅合理化システムの名称として使用しているところ、当該システムは、本件商標に係る指定役務中「建物の管理」を含むものである。詳述すると、乙第4号証に記載されるとおり、財団は、「良質な木造住宅の供給を促進し、もって国民の居住水準の向上に寄与することを目的として」、国土交通省が定める特定の基準を満たす住宅の生産・供給システムを認定する事業を行っており、当該認定を受けるための基準として、「完成後の長期の維持管理補修サービス等ができること」がある。すなわち、供給した住宅(建物)を維持管理することが行われない限り、本件認定を受けることができない。
したがって、本件認定を受けている使用役務は、建物の維持管理を含む役務であることは明らかである。
被請求人は、使用役務について、平成10年8月に「STANDARD SYSTEM」の名称で上記認定を受け、その後も更新を行い、現在に至っている(乙2、乙3、乙5、乙6)。
乙第2号証は、平成27年12月25日付けで被請求人が提出した木造住宅合理化システム更新申請書に対して、財団が、更新を認めた認定書である。認定日は、要証期間内の平成28年4月1日であり、有効期限は、平成31年3月31日までである。
乙第3号証は、財団が木造住宅合理化システムとして認定したシステムと認定取得者の一覧である。要証期間である平成30年7月1日の時点で、使用役務は、認定一覧に掲載されている。
乙第6号証は、乙第2号証に係る認定を受けるための認定更新申請書(平成27年12月25日付け)及びその添付書類である。添付書類の受注棟数報告書から、被請求人が本件商標を使用役務について継続して使用していることが証明される。
乙第7号証は、被請求人が認定を受けた、使用役務に係るシステムの内容が記載された書面であり、乙第3号証の認定一覧からリンクで参照できる。このうち、第4章「保険及び維持管理体制」に記載されるとおり、使用役務には、被請求人が提供する建築サービスの一部として、建築物の修繕を含む維持補修に加え、建物に関するあらゆる苦情を受け付け、フォローを行うことまで含めた管理を行っている。
建物の管理とは、電気設備の点検、修繕計画などのハード面の管理に加え、不動産管理業務に含まれる建設設備管理やクレーム対応などの入居者に対するソフト面の管理についても含む幅広い役務である。このような役務は、近年、建築業者、不動産業者などが提供することが多くなっている。上述したとおり、財団により木造住宅合理化システムとして認められるための要件として、維持管理業務を行うことが必要であることから、被請求人の使用役務には、そのような建物の管理が当然含まれている。
乙第8号証は、被請求人が定める、建物の管理の手続のフローを記載した書面であり、ISO9001の要求事項に従い、被請求人が管理しているものである。
乙第9号証は、被請求人が管理する顧客情報の一部抜粋である。この中に、建築された建物の名称として「ラ・ポルト」、「ラポルト」及び「ヴァンベール」の記載があり、工法部分に「Standard」と記載されている。
乙第10号証は、「ヴァンベール」、「ラ・ポルト」及び「ラポルト」の住居者からの連絡に対して被請求人が対応した記録である。これらには、住居者からの設備トラブルへの対応依頼等があったことが記載されており、これらの日付は、それぞれ、平成30年2月16日、平成30年3月2日、平成30年3月8日であり、要証期間内である。
4 以上のとおり、本件商標は、請求に係る指定役務「建物の管理」に含まれる役務について、要証期間内に日本国内において使用されている。

第4 当審における審尋
当審において、令和元年9月13日付けで、被請求人に対し、答弁書における主張及び提出された証拠によっては、要証期間内に本件商標を本件審判請求に係る指定役務のいずれかについて使用したことを把握できないことから、要証期間内における本件商標の使用事実を証明する新たな証拠の提出を求める旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する回答を求めた。

第5 被請求人の対応
被請求人は、上記第4の審尋に対し何らの応答もしていない。

第6 当審の判断
1 被請求人提出の証拠について
(1)乙第1号証は、表紙の左上部にデザイン化された「STANDARD」の文字が表示され、「STANDARD」の文字の下には、やや小さく「新工法スタンダードシステムの御案内」の表示があり、右下には、デザイン化された「Shelter」の文字が表示されている。
そして、その記載内容をみるに、例えば、1葉目に、「接合金物工法のパイオニアだからできた新工法です。」の見出しの下、「阪神大震災を契機に、工法の合理化という新しい木造住宅の潮流のなかで、接合金物を用いた工法は急速に伸長してきました。・・・スタンダードシステムは、これら全ての接合金物に関わる問題を独自のノウハウで解消し、接合金物工法の業界標準として誕生したオープン供給接合金物(特許取得済金物)を用いた新工法です。」、2葉目に、「木造住宅の最高峰 STANDARD SYSTEM」の表示があり、「エコロジーにも配慮したスタンダードシステム」の見出しの下、「スタンダードシステムは、あらかじめプレカットされている部材を使用していることで無駄な木材を出さないだけでなく、住宅の耐久性が抜群に高いため補修等が他の工法に比べ非常に少なく、結果的に木材使用を押さえるエコロジー住宅の側面も持っています。」、5葉目に、「優れた断熱性の低コスト住宅」の見出しの下、「断熱性の高いグラスウールをふんだんに使った多層構造壁を用いたスタンダードシステム。・・・そのため断熱性に優れた省エネルギー住宅としてスタンダードシステムは最高水準です。」のように、「スタンダードシステム」についての説明がなされている。
そうすると、表紙における「STANDARD」及び「新工法スタンダードシステムの御案内」の表示と上述の記載内容からすれば、乙第1号証は、木造住宅の「新工法」である「スタンダードシステム」に係るパンフレットであると認められる。
なお、当該パンフレットの発行日、作成部数等の作成事実、頒布日、頒布先等の頒布事実を裏付ける資料は提出されていない。
(2)乙第2号証は、被請求人が、財団が発行した平成28年4月1日付けの認定書と主張するものであり、右上には、「認定番号:合理化S1304-10」及び「認定日:平成28年4月1日」の表示があり、「株式会社シェルター」に対し、「木造住宅合理化システム認定規程第4条第1項の規定に基づき下記のシステムは木造住宅合理化システム基準性能タイプとして認定する。」旨の記載、財団の理事長の記名、押印があり、「システムの名称:STANDARD SYSTEM」及び「認定の有効期限:平成31年3月31日」の記載がある。
(3)乙第3号証は、「木造住宅合理化システム認定一覧(平成30年7月1日現在)」が掲載された財団のウェブページの写しであり、「1.基準性能タイプ」の一覧表中に、「認定番号」として「S1304-10」、「認定システム名」として「STANDARD SYSTEM」、「認定取得者名」として「(株)シェルター」の表示がある。
(4)乙第4号証は、「木造住宅合理化システム認定制度」の概要の説明が掲載された財団のウェブページの写しであり、「2.目的」として「木造軸組工法による合理的な生産・供給システムを認定することにより、木造住宅の供給を促進し、もって国民の居住水準の向上に寄与することを目的とします。」の記載、「4.認定の基準」中に「完成後の長期の維持管理補修サービス等ができること。」の記載がある。
(5)乙第5号証は、「会社沿革」が掲載された被請求人のウェブページの写しであり、「平成10年7月 NEXT:WIDE:STANDARDシステムによる合理化システム認定取得」の記載がある。
(6)乙第6号証は、被請求人が、乙第2号証に係る認定を受けるための認定更新申請書(平成27年12月25日付け)及びその添付書類であると主張するものであり、「木造住宅合理化システム認定更新申請書」の表題の下、平成27年12月25日の日付がある。そして、申請者として、被請求人の記名、押印があり、「木造住宅合理化システム認定規程第11条に基づき、下記システムについて引き続き認定を受けたいので、関係書類を添えて申請します。」と記載され、「認定システムの番号及びシステムの名称」の項目には、「認定番号」として「S1304-10」、「システムの名称」として「STANDARD SYSTEM」の記載がある。
(7)乙第7号証は、財団のウェブページにおける認定一覧(乙3)からリンクで参照できる、被請求人が認定を受けた、使用役務に係るシステムの概要が説明されたものであり、「認定番号 合理化S1304-10 (株)シェルター」、「システムの名称:STANDARD SYSTEM」の表題の下、「第4章 保険及び維持管理について」の項には、「維持管理については定期巡回サービスで35年、計13回行う。」の記載がある。
(8)乙第8号証は、「是正処置管理規定」と題された書面であり、右上に「Shelter 株式会社シェルター」の表示があり、手続のフロー図とおぼしき図が表示されている。
(9)乙第9号証は、被請求人が管理する顧客情報の一部抜粋と主張するものであり、「顧客情報」の欄には、「契約日」として「20020228」、「引渡日」として「20021108」の表示、さらに、「ラ・ポルトA棟」、「ラポルトB棟」及び「ヴァンベール」の表示がある。また、「工事内容」の欄には、「工事種別」として「新築工事」、「用途」として「アパート」、「工法」として「Standard」、「階数」として「3階建」の表示がある。
(10)乙第10号証は、被請求人が、建築物「ヴァンベール」、「ラ・ポルト」及び「ラポルト」の住居者からの連絡に対して被請求人が対応した記録と主張するものである。
乙第10号証の1には、「小工事兼アフターサービス受付記録」の表題の下、「受付年月日:30年2月16日」、「お施主様名 ヴァンベール205様」の記載があり、「依頼内容」の項には、「鏡台 内部コンセント付近の劣化による穴あき」等の記載がある。
乙第10号証の2には、「小工事兼アフターサービス受付記録」の表題の下、「受付年月日:30年3月2日」、「お施主様名 ラ・ポルトB101号室様」の記載があり、「依頼内容」の項には、「ボイラーエラー」等の記載がある。
乙第10号証の3には、「小工事兼アフターサービス受付記録」の表題の下、「受付年月日:30年3月8日」の記載があり、「依頼内容」の項には、「キッチン吊戸棚傾き」等の記載がある。
2 判断
(1)乙第1号証について
乙第1号証のパンフレットは、表紙の右下部に「Shelter」の表示があり、これは、被請求人の名称の一部を英語表記したものといえるから、被請求人の作成に係るパンフレットとみることができ、表紙におけるデザイン化された「STANDARD」の文字は、本件商標「S t a n d a r d」の構成文字を全て大文字で、文字間のスペースを設けることなく、表したものといえる。
しかしながら、本件商標の指定役務中の「建物の管理」とは、不動産業務を行う企業が、建築物の所有者・住人あるいは管理組合の委託を受けて、建築物を使用し、維持・管理するために、清掃・点検・修繕などの各種サービスを提供するものと解されるところ、パンフレットの表紙における「新工法スタンダードシステムの御案内」の表示や前記1(1)のとおりの記載内容に照らせば、当該パンフレットは、「STANDARD SYSTEM(スタンダードシステム)」という名称の建築工法に係る生産・供給システムについて、工法の内容、工法を採用するメリット等について紹介するための、工法に関するパンフレットといわざるを得ず、本件商標の指定役務中の「建物の管理」に関するパンフレットとみることはできない。
また、当該パンフレットの発行日、作成部数、頒布日、頒布先等を裏付ける証拠は提出されていないことから、その作成事実及び頒布事実も明らかでない。
そうすると、当該パンフレットにおいて、「STANDARD」の表示があるとしても、上記のとおり、当該パンフレットは工法に関するパンフレットであって、本件商標の指定役務中の「建物の管理」の役務の提供の用に供されるもの又は広告物であるとはいい難い上、その作成事実及び頒布事実も明らかでないことから、当該パンフレットからは、要証期間内に、被請求人が、第三者に対して、本件商標の指定役務中の「建物の管理」の役務を提供していたものとみることはできない。
(2)乙第2号証ないし乙第7号証について
乙第2号証ないし乙第7号証の記載内容をみるに、被請求人は、財団に対し、平成27年12月25日付けで、木造住宅合理化システム認定の更新申請を行い、財団が、同28年4月1日付けで、有効期限を同31年3月31日までとする更新を認めたことがうかがえるものであり、「STANDARD SYSTEM」は、当該木造住宅合理化システムの名称として用いられていることが認められる。
しかしながら、木造住宅合理化システム認定制度は、本件商標の指定役務中の「建物の管理」を対象としているものではなく、「木造軸組工法による住宅を生産・供給することができる合理化されたシステム」を対象とした認定制度(乙4)である。
この点に関し、被請求人は、木造住宅合理化システム認定制度の認定基準に「完成後の長期の維持管理サービス等ができること」の記載があることを根拠として、本件商標の指定役務中の「建物の管理」を行っている旨主張しているが、「完成後の長期の維持管理サービス等ができること」とあるのは、当該サービスを提供できる体制を有していることを認定基準の要件としているにすぎず、実際に「建物の管理」の役務を提供した事実については何ら立証されていない
そして、乙第2号証ないし乙第7号証のいずれにおいても、「STANDARDシステム」又は「STANDARD SYSTEM」は、木造住宅合理化システムの名称として表示されているにすぎないものであって、本件商標の指定役務中の「建物の管理」について使用されているとみることはできない上、被請求人の作成に係るものは、乙第5号証及び乙第6号証のみであって、その他は、財団の発行した認定書及び財団のウェブページに掲載されているものである。
そうすると、被請求人が提出した証拠に表示された「STANDARDシステム」又は「STANDARD SYSTEM」の文字が、本件商標と社会通念上同一の商標といい得るとしても、乙第2号証ないし乙第7号証からは、要証期間内に、被請求人が、本件商標(社会通念上同一のものを含む。以下同じ。)を使用して、第三者に対して、本件商標の指定役務中の「建物の管理」の役務を提供していたものとみることはできない。
(3)乙第9号証及び乙第10号証について
乙第9号証は、被請求人が管理する顧客情報の一部抜粋と主張するものであるが、「顧客情報」の欄の「契約日」として「20020228」、「引渡日」として「20021108」の表示は、それぞれ、2002年2月28日及び2002年11月8日の日付を表したものとみることができ、これらは要証期間外の日付である。また、「工事内容」の欄における、「工事種別」として「新築工事」、「用途」として「アパート」、「工法」として「Standard」の記載に照らせば、ここに表示された「Standard」の文字は、新築アパートの工法を表したものと解さざるを得ない。
そうすると、乙第9号証からは、要証期間内に、被請求人が、本件商標を使用して、第三者に対して、本件商標の指定役務中の「建物の管理」の役務を提供していたものとみることはできない。
乙第10号証は、被請求人が、建築物「ヴァンベール」、「ラ・ポルト」及び「ラポルト」の住居者からの連絡に対して被請求人が対応した記録と主張するものであり、これらの記載からは、被請求人が当該住居者からの連絡に対し、修理・補修の対応を行っていることがうかがえ、その受付年月日が要証期間であるとしても、乙第10号証において、本件商標の表示はない。
そうすると、乙第10号証からは、要証期間内に、被請求人が、本件商標を使用して、第三者に対して、本件商標の指定役務中の「建物の管理」の役務を提供していたものとみることはできない。
(4)小括
以上からすれば、被請求人が、要証期間内に、日本国内において、本件商標を使用して、本件商標の指定役務中の「建物の管理」の役務を提供したと認めることはできない。
その他、要証期間において、本件商標の指定役務のいずれかについて、本件商標に係る商標権者又は使用権者が本件商標の使用をしたことを認めるに足りる証拠の提出はない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の指定役務について本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
審理終結日 2020-04-30 
結審通知日 2020-05-07 
審決日 2020-06-08 
出願番号 商願平9-161368 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z36)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 1999-04-02 
登録番号 商標登録第4256690号(T4256690) 
商標の称呼 スタンダード 
代理人 高橋 菜穂恵 
代理人 小川 護晃 
代理人 奥山 尚一 
代理人 佐藤 明子 

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