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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W05
管理番号 1365100 
審判番号 取消2018-300210 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-04-10 
確定日 2020-07-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5755260号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5755260号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5755260号商標(以下「本件商標」という。)は、「リグロウ」の文字を標準文字により表してなり、平成26年12月4日に登録出願、第5類「薬剤,医療用試験紙,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」を指定商品して、同27年4月3日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成30年4月23日である。
また、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成27年4月23日から同30年4月22日までの期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者のいずれも使用した事実が存在しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標権者である被請求人(以下「被請求人」という。)は、本件商標の使用事実を証明する証拠資料として、乙第1号証ないし乙第2号証の4を提出しているが、被請求人が本件商標を使用しているとした「REGROW」商品は、いずれも「第○類 医薬品」の記載は皆無で、「薬用」並びに「医薬部外品」が記載されているにすぎず、被請求人が主張する第5類「薬剤」の使用に該当するものではない。
そして、被請求人が販売する「薬用」並びに「医薬部外品」と記載した「REGROW」商品は、「脱毛抑制・発毛促進・頭皮保護」を効能効果にするもので、治療を目的とする「医薬品」に該当せず、商品分類上、第3類「化粧品」に該当するものであるから、第5類「薬剤」について使用しているとの主張は失当である。
(2)「薬用」並びに「医薬部外品」と記載された被請求人が販売する「REGROW」商品が「医薬品」に該当しないことは以下のとおりである。
ア 「医薬部外品」は「医薬品」ではなく、「育毛剤」は「医薬部外品」である(甲1)。
イ 薬事法により「医薬品」、「医薬部外品」は、それぞれ効果・効能が明確に分かれており、「薬用=医薬部外品」である(甲2)。
ウ 「医薬品」、「医薬部外品」は、有効成分の効果と目的が大きく違う。「育毛剤」は効果・効能の認められた有効成分が含まれているが、人の体に対する作用が穏やかなもので、日常的な不快感の緩和を目的とする「育毛剤」は「医薬部外品」に該当する(甲3)。
エ 「医薬品」、「医薬部外品」の法律や購入方法他から見て違いがあり、「育毛」は「医薬部外品」に該当する(甲4)。
オ 「医薬品」、「医薬部外品」は異なるものであり、「脱毛の防止、育毛又は除毛」は「医薬部外品」に該当する(甲5)。
カ 「医薬品」、「医薬部外品」は異なるものであり、髪の毛を積極的に生やすことを目的とするものは「医薬品」で、髪の毛が育つ環境を整え、促すものは「医薬部外品」に該当する。「薬用○○」と表示されているものは「医薬部外品」である。
キ 取消2001-30928審決において、「第5類『薬剤』中の外皮用薬剤の概念のもとに例示されている『毛髪用剤』は、例えば、壮年脱毛症における治療薬のような、具体的な疾病に対する医薬品として取引されるものをいうのであって」と判断されている(甲7)。
ク 薬事法(昭和35年法律第145号)は、(医薬品等の製造販売の承認)が定められているが、本件商標が「医薬品」についての使用に該当すると主張するならば、被請求人は、厚生労働大臣が承認した「医薬品」の製造販売承認書を受理していなければならないが、その写しの提示はない(甲8)。
ケ したがって、被請求人は、提出した使用証拠をもって、「薬剤」である「育毛剤」について使用していると主張しているが、被請求人が販売する「REGROW」商品は、薬事法上の分類並びにその効能効果から、第3類「化粧品」について使用するものであって、第5類「薬剤」についての使用に該当しないものである。
(3)使用に係る商標について
本件商標は「リグロウ」であって、「REGROW」ではない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、「薬剤」について使用の事実が認められず、「医療用試験紙,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」についても使用の事実が認められないものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁書における主張
被請求人は、自ら、要証期間内に、日本国内において、本件商標及びこれと社会通念上同一の商標の下、指定商品中、「薬剤」である「育毛剤」を販売している。
(1)被請求人は、2015年4月3日から本件商標及び社会通念上同一の商標である「薬用『リグロウ』」、「REGROW」を付した「育毛剤」(以下「使用商品」という。)の販売を開始している。使用商品は、男性型脱毛症の原因物質を抑制する、β-グリチルレチン酸を最大の特徴成分とすることで、脱毛を防ぎ、育毛を促す効果が期待できる薬用の育毛剤である(乙1)。
また、被請求人は、2015年の販売開始から、使用商品を継続的に販売しており、その事実を示すものとして被請求人が毎月定期的に会員向けに発行している、広告宣伝及び通信販売用の注文番号が記載された冊子のうち、2015年5月号、2016年3月号、2017年3月号、2018年3月号の各一冊を提出する(乙2)。
以上のとおり、被請求人は、使用商品の販売を開始してから、現在に至るまで、継続的に本件商標及び社会通念上同一の商標を使用している。
(2)使用商品の容器に縦書きに示された「REGROW」の表示も、「薬用 リグロウ」の文字と併せて使用されていることから、これに接する需要者、取引者において、当該表示をもって、被請求人の製造販売に係る「リグロウ」という名称(称呼)の商品であると認識し、そのような認識の下、実際の取引に資されることから、使用商品の容器に示された「REGROW」の表示も、本件商標と社会通念上同一の商標に当たるといい得るものである。
(3)以上を総合すると、乙第1号証及び乙第2号証に示されるとおり、被請求人は、要証期間内に我が国において、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件審判の請求に係る指定商品中、「薬剤」である「育毛剤」について使用していることが明らかである。
2 答弁書(2)における主張
請求人は、被請求人が販売する使用商品は第3類に属する「化粧品」に該当する商品であり、第5類に属する「薬剤」についての使用ではない旨主張し、合議体は第5類に属する「薬剤」の範ちゅうの商品と認めることはできないと判断しているが、使用商品は、第5類「薬剤」の範ちゅうに属するものである。
ア 請求人が、証拠として提出した「薬事法(昭和第35年法律第145号)」(甲8)(現在は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」という。))(乙3)によれば、「化粧品」は、同法第2条第3項において、「この法律で『化粧品』とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。」と規定されている。
そして、本件商標を付して使用している商品は、被請求人が既に提出した証拠(乙1、乙2)からも「医薬部外品」であることは明白である。
したがって、「医薬部外品」である使用商品は、薬機法上、「化粧品」でないことは明らかである。
イ 以下の理由から、使用商品が、商標法上の「薬用育毛剤」であって、第5類の「薬剤」の範ちゅうに属するものとして、認めるべきである。
(ア)使用商品に含まれる成分について
使用商品には、(i)ヘアサイクルの休止期への移行を阻止し、成長期をより長くすることで、発毛を促進する「βーグリチルレチン酸」(乙1)、(ii)毛根部の血流を促進し、毛母細胞の働きを高め、育毛・養毛に効果を発揮する「センブリエキス」、(iii)毛母細胞、毛乳頭細胞を活性化させ毛髪のコシ強化と育毛を促進。頭皮環境を整える「パンテノール(Dーパントテニルアルコール)」、(iv)毛根部の血流を促進し、かゆみを防止する「1-メントール」、(v)抗酸化作用に優れ、頭皮の紫外線ダメージやフケにおいを抑制する「ビタミンEC結合体(d1-αートコフェロール 2-Lーアスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩)が含まれており、各々、有効成分として認められることから、本件「薬用育毛剤」は、「化粧品」というよりは、むしろ「薬剤」と解すべきものである(乙4)。
以上のことから、使用商品は、合議体が示したように、「脱毛症における治療薬のような」働きをする商品であるといえる。
(イ)特許庁における指定商品「薬用育毛剤」の商品区分について
本件商標を使用している商品が「薬用育毛剤」であることは、乙第1号証で明らかであるが、本件商標を付した商品外箱に「薬用育毛剤」が記載された物件を乙第5号証として提出する。当該「薬用育毛剤」は、特許庁の審査において、10回以上採択された商品・役務表示として、第5類の「薬剤」(類似群コードは「01B01」)に属するものとして掲載されている(乙6)。
使用商品が「薬用育毛剤」である以上、特許庁で公表している資料に従って、指定商品を検討し、当該商品が、第5類「薬剤」の範ちゅうに属するものと出願人が判断するのは、極めて自然なことである。また、特許庁において、平成28年12月に発表された「類似商品・役務審査基準『11-2017版対応』」によれば、「『薬用』の文字は、11-2017版(平成29年1月1日)から、せっけん類、化粧品、歯磨き関連に使用することはできません。」と明記されており(乙7)、これを反映して、発表された「採用できない商品・役務名(2019年6月20日更新済み)」における、第3類及び第5類の「薬用」の文字を含む商品・役務名を確認したところ、対象となった商品・役務名の中に、「薬用育毛剤」は存在していなかった(乙8)。
よって、商標法上、現在も有効に「薬用育毛剤」は、第5類のカテゴリー属する商品として存在するものと、認識理解するのが自然である。
(ウ)「商品・役務区分解説」の記載について
合議体は、「商品及び役務の区分解説[国際分類第10版対応]」を基礎として、使用商品を「第3類に属する『化粧品』の範ちゅうの商品とみるべき」との見解であるが、当該「区分解説」は、今から約7年前の平成24年に、改訂6版として発行されたものであり、現行の「商品表示」について、丁寧に反映されていない点があることも否めないものであり、平成29年1月より適用されている、上記「類似商品・役務審査基準『11-2017版対応』」(乙7)においては、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変える等の化粧品的用途に使用される商品は第3類に、『治療や予防等の医薬品的用途に使用される商品は』、第5類にそれぞれ指定してください。」の記載がある。
上記のとおり、使用商品「薬用育毛剤」は、様々な有効成分を含み、特定の疾病である「AGA(男性型脱毛症)」の予防等の医薬品的用途に使用される商品であり、また、薬機法によれば、化粧品と医薬部外品は、明確に区別されるものであるから、現行の取り扱いにおいては、本件使用商品を、第3類の範ちゅうに属する商品とするべき理由はない。
(エ)ニース国際分類における、第5類「薬剤(01B01)」に属する指定商品について
知的財産権の国際的ハーモナイゼーションの一環として、1990年2月より、我が国において、ニース協定の加入の効力が生じており、当該ニース協定において採用されている「商品・サービス国際分類表」には、使用商品「薬用育毛剤」と同じ類似群コードが付された第5類の商品として認められている、「薬用泥(medicinal mud)」が存在し、当該商品について、使用例を確認したところ、需要者間で「医薬品」として使用している例は確認できなかった。また、「身体用性的潤滑剤」も、同じく薬剤(01B01)に属している(乙9)が、「潤滑剤」は、広辞苑(第6版)によると、「相接する固体の間の摩擦を減らし、摩擦熱・摩耗などを防止するのに用いる物質」の意味合いであり、「治療」を目的にする「医薬品」であるとは、到底考えられない。
このように、薬機法で認められる「医薬品」でなくとも、何等かの薬効成分を有し、予防等の「医薬品的用途」に使用される商品は、第5類に分類される指定商品としてニース国際分類においても認められている現状がある。
使用商品「薬用育毛剤」は、合議体の見解のとおり、薬機法でいうところの完全なる「医薬品」ではないが、一般的な「化粧品」とは一線を画す成分を含んだ「薬用育毛剤」として、2015年4月より販売を継続している。
したがって、上記「薬用泥」や「身体用性的潤滑剤」等と別異に取り扱う合理的理由はなく、第5類「薬剤」の範ちゅうに属されるものとしても、なんら問題はないものである。
特許庁において、現時点においても「薬用育毛剤」の表示が第5類に分類され、採用されているにもかかわらず、当該表記の使用商品が、第3類に分類されるのであれば、ユーザーフレンドリーを基調とする昨今の特許庁の姿勢と矛盾が生じる、忌々しき事態であるといわざるを得ず、また、上記ニース国際分類における商品表示との兼ね合いから、国際的なハーモナイゼーションを崩す事態をも招きかねない。
上述の「類似商品・役務審査基準『11-2017版対応』」が、実行されてから、既に2年が経過した今もなお、「薬用育毛剤」は、「医療用」の併記が強制されることなく、「第5類」に属する指定商品として特許庁において採用され、表記されているのであるから、その表記どおり、第5類に分類しておけば、無用の争いを生じることはなく、また、その使用商品も、薬機法において扱われている「医薬部外品」と異なる扱いをする必要性は見出せない。
(オ)使用商品がシャンプー等とともに掲載されていることについて
使用商品が、シャンプー等とともに掲載されていることは、「化粧品」の範ちゅうに属することの理由の一つにはならない。確かに、使用商品は、「男の美学」シリーズの一つではあるが、これに付されている商標「リグロウ」は、当該商品のみに限られている。また、育毛剤等とシャンプー等を「発毛促進関連」商品として並べて掲載することは、取引業界内の広告・宣伝時によく見受けられる態様であり、このことをもって、掲載された全ての商品をひとまとめに第3類の「化粧品」の範ちゅうの商品と判断するのは、早計にすぎるといわざるを得ない(乙10)。
「薬用育毛剤」は、「化粧品」のみならず、「医薬品」とともに掲載されることもあるが、これを理由に、逆に「医薬品」として取り扱うという考えができないことと同意であるから、この理由については、合理性がなく、理由として納得できないものである。
(カ)以上を総合すれば、乙第1号証ないし乙第10号証に示されるとおり、被請求人は、要証期間内に、我が国において、継続的に、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件審判の請求に係る指定商品中、「薬剤」属する「薬用育毛剤」について使用していることが明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人発行の「News Release」(乙1)によれば、被請求人は、2015年4月3日から、商品名を「リグロウ」及び「REGROW」とする、商品「薬用育毛剤」(使用商品)の販売を開始した。
また、当該News Releaseには、その2葉目の商品特徴に、「男性型脱毛症(AGA)の発症率は約30%・・・男性特有のヘアサイクルに着目し、・・・有効成分βグリチルレチン酸を新たに選定し、配合しました。」「5つの有効成分で発毛をサポート」及び3葉目の商品概要において「効果効能:育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」「こんな方に:◎抜け毛が増えた気がする ◎最近、髪のセットがきまらない ◎髪の毛が細くなってきた ◎ボリュームがでない ◎髪の毛にハリ・コシがなくなった ◎分け目が目立つようになってきた」の記載がある。
(2)被請求人が会員向けに発行している冊子、2015年5月号(乙2の1)、2016年2・3合併号(乙2の2)、2017年3月号(乙2の3)及び2018年3月号(乙2の4)は、いずれも要証期間に発行されたものであり、これには、使用商品が掲載され、いずれにおいても、「医薬部外品」と記載されている。
(3)使用商品の包装箱の写真(乙5)には、その表面に「薬用育毛剤」の記載があり、裏面には「薬用育毛剤」、「医薬部外品」の記載並びに「効能・効果」には「育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進,発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」の記載があり、配合成分が記載されている。
2 判断
(1)使用商品
被請求人は、使用商品に、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)を使用していたと主張するところ、上記1の認定事実によれば、使用商品は、「医薬部外品」に含まれる「薬用育毛剤」と認められる。
(2)使用商品が本件商標の指定商品の範ちゅうに含まれるか
ア 商標登録出願は、商標の使用をする商品又は役務を商標法施行令別表で定める商品及び役務の区分に従って指定する必要があり、当該区分に属する商品又は役務の詳細については、国際的な商品及び役務の区分を定めるニース協定1条に規定される国際分類に即して、商標法施行規則別表において定められているところ、本件商標の登録出願時に適用される国際分類は第10版である。
そして、国際分類第10版の商品及び役務の区分について、「商品及び役務区分解説[国際分類第10版対応]特許庁商標課編」では、「医薬部外品」について、第5類の「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」には「薬事法に規定する『医薬部外品』のうち、治療を目的とする等の商品・・・ただし、『医薬部外品』であっても、その使用目的において身体を清潔にし、美化し、魅力を増す等の用途に使用されるもの、例えば、『薬用化粧品』は、この商品に含まれず、第3類『化粧品』に含まれます。」と記載されており、さらに、第5類の「薬剤」中の「外皮用薬剤」には「『毛髪用剤』は、医薬品として取引されるものだけで、頭髪用化粧品としてのヘアトニック等は含まれません。」と記載されている。また、第3類の「化粧品」には「・・・『医薬部外品』のうち『人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つことを目的として、身体に塗擦、散布等の方法で使用するもの』が含まれる。」と記載されている。
イ そこで、使用商品についてみるに、使用商品は、前記(1)のとおり、「医薬部外品」と認められるものであるところ、「News Release」(乙1)の商品概要及び使用商品の包装箱(乙5)に「効能・効果」として、「育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進,発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」の記載があり、「News Release」(乙1)の商品特徴において「男性型脱毛症(AGA)の発症率は約30%・・・男性特有のヘアサイクルに着目し、・・・有効成分βグリチルレチン酸を新たに選定し、配合しました。」「5つの有効成分で発毛をサポート」の記載があり、商品概要において「効果効能:育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」「こんな方に:◎抜け毛が増えた気がする ◎最近、髪のセットがきまらない ◎髪の毛が細くなってきた ◎ボリュームがでない ◎髪の毛にハリ・コシがなくなった ◎分け目が目立つようになってきた」の記載があることからすれば、使用商品は、発毛の効果が期待できる商品であるといえるとしても、疾病の治療を目的とする商品とまではいえないものであって、乙第2号証の2によれば、「“男の美学”は、シャンプー、石けん、ローション、育毛剤の4品で全身を清潔に、魅力的に整える男性用化粧品シリーズ。」の記載があり、上記、シャンプー、石けん、ローションとともに使用商品が掲載されていることからすれば、使用商品は、「男の美学」という「男性用化粧品シリーズ」の商品というべきものであり、第5類の「薬剤」に属する商品というよりは、むしろ、第3類に属する「化粧品」の概念に属する商品とみるべきものである。
また、第5類「薬剤」中の外皮用薬剤の概念のもとに例示されている「毛髪用剤」は、例えば、円形脱毛症、壮年脱毛症における治療薬のような、具体的な疾病に対する医薬品として取引されるものをいうところ、使用商品は、上記のような疾病の治療用に用いられる商品ということはできないものであり、かつ、使用商品が「医薬品」として取引されている実情も見いだすことができない。
してみれば、被請求人が、本件商標を使用していると主張する使用商品は、商標法で規定する第3類「化粧品」の概念に属する商品といわざるを得ず、第5類「薬剤」の範ちゅうに属する商品と認めることはできないと判断するのが相当である。
(3)被請求人の主張
ア 被請求人は、使用商品には、発毛促進、育毛・養毛効果などの有効成分と認められる物質が含まれていることから、使用商品は、「脱毛症における治療薬のような」働きをする商品であって、「化粧品」というよりは、むしろ「薬剤」と解すべきものである旨主張している。
しかしながら、使用商品が、疾病の治療用ではなく、かつ、「医薬品」として取引されている実情も見いだせないことから、第5類「薬剤」の範ちゅうに属さない商品であることは、上記2(2)のとおりであるから、使用商品に薬用的効能を有する成分が含まれいるとしても、上記判断に影響を及ぼすものではない。
イ 被請求人は、「薬用育毛剤」が、特許庁において10回以上採択された商品表示として、第5類「薬剤」(類似群コード「01B01」)に属するものとして掲載されており、使用商品が「薬用育毛剤」である以上、第5類「薬剤」の範ちゅうに属するものと出願人が判断するのは自然なことである旨、また、特許庁において、平成28年12月に発表された「類似商品・役務審査基準『11-2017版対応』」によれば、「『薬用』」の文字は、11-2017版(平成29年1月1日)から、せっけん類、化粧品、歯磨き関連に使用することはできません。」と明記されており、これを反映して、発表された「採用できない商品・役務名(2019年6月20日更新済み)」における、第3類及び第5類の「薬用」の文字を含む商品・役務名を確認したところ、対象となった商品・役務名の中に、「薬用育毛剤」は存在していなかったことから、商標法上、現在も有効に「薬用育毛剤」は、第5類のカテゴリー属する商品として存在するものと認識理解するのが自然である旨及び合議体は、「区分解説」を基礎として、使用商品を第3類に属する「化粧品」の範ちゅうの商品とみるべき、との見解であるが、当該「区分解説」は、今から約7年前の平成24年に、改訂6版として発行されたものであり、現行の「商品表示」について、丁寧に反映されていない点があることも否めないものであって、平成29年1月より適用されている、上記「類似商品・役務審査基準『11-2017版対応』において、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変える等の化粧品的用途に使用される商品は第3類に、『治療や予防等の医薬品的用途に使用される商品は』、第5類にそれぞれ指定してください。」と記載されており、使用商品「薬用育毛剤」は、様々な有効成分を含み、特定の疾病である「AGA(男性型脱毛症)」の予防等の医薬品的用途に使用される商品であり、薬機法によれば、化粧品と医薬部外品は、明確に区別されるものであるから、現行の取り扱いにおいては、使用商品を、第3類の範ちゅうに属する商品とするべき理由はない旨主張している。
しかしながら、商標法第50条第2項においては、取消に係る指定商品について、本件商標を使用しているか否かを提出された証拠に基づき判断するのであり、第5類において「薬用育毛剤」の表示が採択されていたことをもって、使用商品が第5類の商品であると直ちに認めることはできず、また、本件商標に係る指定商品の範囲は、上記のように、国際分類第10版が適用されるべきであって、現行法の取扱いを考慮しなければならない理由はないといわなければならない。
ウ 被請求人は、ニース国際分類の「商品・サービス国際分類表」には、使用商品「薬用育毛剤」と同じ類似群コードが付された第5類の商品として認められている、「薬用泥(medicinal mud)」及び「身体用性的潤滑剤」が存在し、いずれも薬剤(01B01)に属し、医薬品ではないことから、薬機法で認められる「医薬品」でなくとも、何等かの薬効成分を有し、予防等の「医薬品的用途」に使用される商品は、第5類に分類される指定商品としてニース国際分類においても認められている現状があり、使用商品「薬用育毛剤」は、薬機法でいうところの完全なる「医薬品」ではないが、一般的な「化粧品」とは一線を画す成分を含んだ「薬用育毛剤」として、2015年4月より販売を継続しており、上記「薬用泥」や「身体用性的潤滑剤」等と別異に取り扱う合理的理由はなく、第5類「薬剤」の範ちゅうに属されるものとしても、なんら問題はない旨主張する。
しかしながら、使用商品と、被請求人が例に挙げた商品とを同等の商品として取り扱わなければならい理由は見いだせないことからすれば、それら商品の存在が、上記判断に影響を及ぼすことはないというべきである。
したがって、被請求人の上記主張は、いずれも認めることができない。
(4)小括
そうとすると、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品中、「薬剤」について、本件審判の請求の登録前3年以内における商標権者、専用使用権者又は通常使用権者による本件商標の使用を証明していないから、商標法第50条第2項に係る要証事項を証明したものということはできない。
また、その他、本件商標が、要証期間に、本件審判の請求に係る指定商品について使用されていたことを証する証拠の提出はない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品について、登録商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したということはできない。
また、被請求人は、請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-05-11 
結審通知日 2020-05-14 
審決日 2020-06-09 
出願番号 商願2014-102194(T2014-102194) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 中束 としえ
半田 正人
登録日 2015-04-03 
登録番号 商標登録第5755260号(T5755260) 
商標の称呼 リグロウ、リグロー 
代理人 北村 周彦 

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