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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W282930
審判 全部申立て  登録を維持 W282930
審判 全部申立て  登録を維持 W282930
審判 全部申立て  登録を維持 W282930
管理番号 1364220 
異議申立番号 異議2019-900333 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-15 
確定日 2020-07-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第6174161号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6174161号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6174161号商標(以下「本件商標」という。)は,「Three Squirrels」の欧文字を標準文字で表してなり,平成30年9月21日に登録出願,第28類,第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,令和元年8月6日に登録査定され,同月23日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は,「Three Squirrels」の欧文字からなり,同人が「ナッツ,ジャーキー,ドライフルーツなどスナック菓子」(以下「申立人商品」という。)について使用し,取引者,需要者の間に広く認識されているとするものである。
なお,申立人は,「Three Squirrels」の欧文字と「三只松鼠」の漢字を結合してなる商標,及びそれらと図案化した三匹のリスと思われる図形を結合してなる商標についても引用商標と述べるところがあるが,申立人主張の全趣旨から,上記のとおり「Three Squirrels」の欧文字からなる商標を引用商標と認めた。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
(1)申立人及び引用商標について
申立人は,2012年(平成24年)2月に中国の安徽省蕪湖市で設立された中国法人である。主にナッツ,ジャーキー,ドライフルーツ,ポン菓子など,全種類のスナックを生産し,中国全土の実店舗やインターネットにて販売がされている。具体的には,中国国内において70店舗以上が展開され,中国最大級のインターネット通販モールであるTmall(天猫)等で事業展開をしている(甲3の3頁?6頁)。
特に,インターネット販売においては,2014年以来,5年連続でTmallの「スナック菓子/ナッツ/名物」での売上高が第1位にランクされているなど,引用商標が付された商品の流通量は膨大である。中国で「独身の日」といわれる「双十一」における売り上げは全世界で注目され,我が国においてもその売上高は毎年広く新聞,テレビなどにおいて取り上げられるものであるが,2018年においては11月11日の一日だけで,すべての販売チャネルにおいて6億8,200万元の売上を達成している(甲3の5頁)。
申立人は,2019年7月12日に深セン証券取引所に上場し,メディアから「全国スナックの初株」と称賛されている(甲3の6頁)。
申立人は,2018年9月に新しい小売形態の松鼠アライアンスストアを立ち上げ,店主の個人IPと松鼠ブランドIPの提携により,異なる特性を持つスナックコンビニエンスストアを展開している(甲3の5頁)。
2018年4月頃に,申立人が作成した「三只松鼠の物語」という動画が,中国で有名な動画サイト「iQIYI」において公開された(甲3の9頁)。
2019年1月頃に,申立人が作成した「三只松鼠之松鼠小鎮」というアニメが,中国で有名な動画サイト「blibli」において公開された。43.7万のクリック数が獲得されている(甲3の10頁)。
申立人は,2015年及び2016年時点で,中国全土において,三只松鼠,及び,その英語表現「Three Squirrels」を用いて幅広く積極的に事業展開をしている(甲3の23頁?37頁)。
申立人は,自社ブランド価値の向上や,知名度向上を図るため膨大な広告宣伝費を費やしている。例えば,中国高速鉄道(新幹線)や地下鉄での大々的なプロモーション,テレビ広告,インターネット広告などの実績が多数ある(甲3の38頁,39頁,48頁?54頁)。
(2)本件商標における不正の目的について
ア 本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標は「Three Squirrels」のつづりにおいて一致するものである。
なお,引用商標においては,中国語簡体字「三只松鼠」とともに「Three Squirrels」が併記されるようにして表示されている。中国語簡体字「三只」は「Three=3匹」を意味し,中国語簡体宇「松鼠」は「Squirrels=ネズミ」を意味するものであって,中国語簡体字と,それに対応する英語表記が表示されるものである。
以上のとおりであるから,本件商標と引用商標とは,英語の部分において同一のつづりを有するものであり,称呼・観念が一致するものであり,互いに類似する商標であることは明らかである。
また,中国語の「三只松鼠」は,英語「Three Squirrels」に対応するものであり,引用商標の「三只松鼠」の部分だけにおいても,観念が同一であって,本件商標と類似するともいえるものである。
本件商標の指定商品と申立人商品とは,その用途,需要者の範囲が一致することから,同一又は類似する商品である。特に,「加工済みナッツ」において同一である。
以上を総合して考察すると,本件商標と引用商標とは類似の商標であり,かつ,本件商標の指定商品と申立人商品は同一又は類似するものである。
イ 商標権者について
商標権者は,ポータルサイトの「YAHOO! JAPAN」による検索では,具体的な情報が得られず,日本国内において具体的な営業活動を行っていない可能性が極めて高いものである。また,社名からして中国に関係性のある企業であることは明らかであるが,中国のポータルサイトの「百度」による検索においても,具体的な情報が得られない。
このことからすると,日本及び中国において営業実績のない会社である可能性が極めて高い。
また,後述する悪意の可能性を考慮すると,中国で著名な商標を先取り的に日本で登録し,他人への譲渡あるいはライセンスにより利益を得ようとする,いわゆるトロールである可能性が極めて高いといえる。
ウ 商標権者の一貫的な悪意性について
申立人が調べるところでは,商標権者は,常習的に申立人以外の他人のブランドを先駆けて出願しており,かかる行為からも不正の目的が明白である(甲2)。
しかるに,本件商標は,商標権者において全く使用されていない。
中国で登録された商標と完全に一致する商標を登録し,また,指定商品も共通することからみると,商標権者においてこれらの商標を偶然の一致をもって採択し,創作したものであることはあり得えず,商標権者のかかる行為からは,申立人の著名商標を日本国において先取り,あるいは,商品を市場から排除する等の何らかの不正な意図をもっていたことが容易に推認でき,本件商標が商標権者によって剽窃的に出願登録されたものであることは明らかである。
エ 商標権者の商標権について
商標権者によって登録された登録商標と中国において正当な権利者及びライセンシーによって登録及び使用されている商標は次のとおりである(甲2)。
(ア)日本登録第6182806号と中国登録第16764960号など
(イ)日本登録第6182881号と中国登録第27816884号
(ウ)日本登録第6182882号と中国登録第10532074号など
(エ)日本登録第6182883号と中国登録第18821938号など
(オ)日本登録第6182884号と中国登録第32948577号など
(カ)日本登録第6182885号と中国登録第11856455号
(キ)日本登録第6185937号と中国登録第3543254号など
(ク)日本商願2018-114045と中国登録第33858040号
(ケ)日本商願2018-119991と中国登録第707351号など
(コ)日本商願2018-142184と中国登録第4041153号など
(サ)日本商願2018-142186と中国登録第3424524号など
(シ)日本商願2018-142187と中国登録第1046758号
(ス)日本商願2018-143613と中国登録第10955265号など
(セ)日本登録第6210433号と中国登録第28413122号
(ソ)日本商願2019-23306と中国登録第9119300号
(タ)日本商願2019-27783と中国登録第12367733号
(チ)日本商願2019-055802と中国登録第27180218号
(ツ)日本登録第6187906号と中国登録第5154872号
(テ)日本登録第6183420号と中国登録第34683226号
(ト)日本登録第6185938号と中国登録第17324071号
(ナ)日本登録第6185939号と中国登録第23219771号
(ニ)日本登録第6205329号と中国登録第26328004号
(ヌ)日本登録第6174161号と中国登録第25519443号など
(3)引用商標とその周知性・著名性について
申立人の著名性を証明するための資料(甲3)を提出する。これらの資料によって,上記(1)の主張などが証明され,引用商標が本件商標の登録出願前の時点で中国において相当の著名性を獲得していたことは明らかである。
(4)商標法第4条第1項各号の該当性について
ア 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,申立人が引用商標の使用を開始して既に中国で相当の著名性が存在していた後に,我が国に登録出願したものであることは明らかである。
そして,本件商標と引用商標は辞書等に掲載されていない造語であり,その独創性は高いものといえることから,商標権者が偶然に引用商標と同じつづりからなる商標を採択したとは想定できず,むしろ,本件商標の出願は,申立人の引用商標の存在を認識し,引用商標が日本において登録していないことを知った上で,申立人の事業の阻害等を目的に剽窃して採択したものと推認できる。
また,商標権者は,他にも先に存在する外国における他人の登録商標と,その構成文字のつづりを同じくする商標を,我が国に複数登録出願し登録している(甲2)ことからも,先の推認の蓋然性は高いものといえる。
してみれば,本件商標の登録出願の経緯には,申立人の引用商標を剽窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして,社会的妥当性を欠くものがあり,その登録を認めることは,健全な商取引の遂行を阻害し,公正な競業秩序を害するものであるから,公序良俗に反するものである。
したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認められるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。
イ 商標法第4条第1項第10号について
本件商標と引用商標とは,上記のとおり,英語の部分において同一のつづりを有するものであり,称呼・観念が一致するものであり,互いに類似する商標である。また,中国語の「三只松鼠」は,英語「Three Squirrels」に対応するものであり,「三只松鼠」の部分だけにおいても,観念が同一であって,本件商標と類似するともいえる。
次に,本件商標の指定商品と申立人商品とは,少なくとも加工済みナッツなどの食品において用途,需要者の範囲が一致する。したがって,本件商標の指定商品は,申立人商品と同一又は類似するものである。
よって,本件商標は,周知の引用商標と同一又は類似する商標であって,その指定商品も申立人商品と同一又は類似するものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。
ウ 商標法第4条第1項第15号について
引用商標は,申立人商品について高い著名性を獲得しているのであって,申立人商品の分野の取引者,需要者において広く知られるに至っている。
本件商標の指定商品のうち,とりわけ第29類や第30類の食品類は,申立人に係る加工済みナッツなどの主要商品とは,同じオンライン通販サイトで販売されることが一般的に行われることが想定され,需要者の範囲が一致し得るものであり,非常に関連性が高いものである。
そうすると,引用商標の周知性や本件商標と引用商標との類似性は高く,商標権者によって本件商標が使用された場合には,その商品に接する需要者が,その商品が申立人の商品であるとか,申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され,需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
エ 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は,加工済みナッツなどの食品について,外国である中国において取引者,需要者の間で周知・著名であることは明らかである。
そして,商標権者に不正な目的があることは上記のとおりである。
以上によれば,商標権者は,外国(中国)における申立人商品の分野の製造事業者・取引者及び需要者の間において,広く認識されていた引用商標を知ったうえで,引用商標が日本において登録出願・登録されていないことを奇貨として,これを我が国で独占使用することで不当な利益を得るため,かつ,申立人の我が国への参人を阻止するために登録出願し,権利を得たというのが相当であり,本件商標は不正の目的をもって使用をするものというべきである。そして,商標権者によって本件商標が使用された場合には,引用商標が有する信用や名声,顧客吸引力を毀損するおそれがあることも明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,申立人は加工済みナッツなどいわゆるスナック菓子の製造販売を行う中国の法人であり,遅くとも2016年(平成28年)から引用商標を,「三只松鼠」の漢字と併記した態様,及び「三只松鼠」の漢字と図案化した三匹のリスと思われる図形を結合した態様で使用していること(甲3の4頁,5頁,22頁?25頁),申立人は中国国内において70以上の店舗及び「Tmall(天猫)」で事業展開をし,「Tmall」の「スナック菓子/ナッツ/名物」部門の売上高は2014年(平成26年)から5年連続で第1位にランクされたこと(甲3の4頁?6頁),中国で「独身の日」といわれる11月11日の一日における申立人の売上げは2016年(平成28年)5億800万元,2018年(平成30年)に6億8,200万元,2019年(令和元年)10億4,900万元超であったこと(甲3の3頁?6頁,27頁),及び申立人が作成したアニメ動画「三只松鼠の物語」が中国の動画サイト「iQIYI」で2018年(平成30年)4月頃に公開され,申立人が作成したアニメ「三只松鼠之松鼠小鎮」が中国の動画サイト「blibli」で2019年(平成31年)1月頃に公開されたこと(甲3の9頁,10頁)などがうかがえる。
しかしながら,引用商標を使用した申立人商品(以下「使用商品」という。)の中国における売上高,シェアなど販売実績を裏付ける証左は見いだせず,また,使用商品が我が国及び中国以外の外国において販売された事実は確認できない。
イ 上記アからすれば,申立人及び申立人商品は中国の需要者の間で相当程度知られていることがうかがえるものの,使用商品の中国における販売実績を裏付ける証左は見いだせないから,使用商品は,(本件商標の登録出願時及び登録査定時において,)中国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると,使用商品に使用される引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして中国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
さらに,使用商品が我が国及び中国以外の外国において販売された事実は確認できないから,引用商標は我が国又は中国以外の外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
上記(1)のとおり,引用商標を使用した申立人商品(使用商品)が我が国において販売されたことは確認できず,引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,本件商標と引用商標が類似し,本件商標の指定商品中第30類に属する商品の一部が申立人商品と同一又は類似するものであることを考慮しても,看者をして引用商標を連想又は想起させることのないものと判断するのが相当である。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
なお,本件商標は,商標「三只松鼠」との関係においても,後者は我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,両商標は非類似の商標であるから,商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について
申立人は,本件商標と引用商標が類似する,商標権者は複数の他人のブランドを我が国に商標登録出願している,及び引用商標は中国において周知・著名であるなどとして,本件商標は不正の目的をもって登録出願されたものである旨主張している。
しかしながら,本件商標と引用商標は同一又は類似するものであるが,上記(1)のとおり,申立人が引用商標を使用していることはうかがえるものの,引用商標は中国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,何より申立人が中国における商標権者であるなど引用商標に係る正当な権利を有する者であることが確認できないから,申立人のかかる主張は採用できない。
また,他に,申立人提出の証拠によっては,本件商標は,不正の目的をもって使用をするもの,その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものといえない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲
異議決定日 2020-06-22 
出願番号 商願2018-119993(T2018-119993) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W282930)
T 1 651・ 25- Y (W282930)
T 1 651・ 271- Y (W282930)
T 1 651・ 222- Y (W282930)
最終処分 維持  
前審関与審査官 駒井 芳子柿本 涼馬 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 榎本 政実
小俣 克巳
登録日 2019-08-23 
登録番号 商標登録第6174161号(T6174161) 
権利者 杭州言富貿易有限公司
商標の称呼 スリースクワーレルズ、スリースクワールズ、スクワーレルズ、スクワールズ 
代理人 大上 寛 
代理人 岩崎 吉男 

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