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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W0305 |
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管理番号 | 1363309 |
異議申立番号 | 異議2019-900309 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-10-21 |
確定日 | 2020-06-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6166044号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6166044号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6166044号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成30年7月30日に登録出願,第3類「美容液,パック用化粧料,ヘアトリートメント,化粧品,せっけん類,シャンプー,入浴剤(医療用のものを除く。),歯磨き,アロマオイル,香料,口臭用消臭剤」及び第5類「サプリメント,栄養補助食品,乳幼児用食品,乳幼児用飲料,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,滋養強壮剤及びその他の薬剤」を指定商品として,令和元年7月11日に登録査定,同月26日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立てに引用する登録第4342629号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおり「CREME DE LA MER」の欧文字を横書きしてなり,平成7年9月13日に登録出願,第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として,同11年12月10日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第65号証を提出した。 (1)申立人及び引用商標の使用について 申立人は,化粧品「CREME DE LA MER」をはじめとした,ラグジュアリースキンケアブランドを運営する会社であり,合計29のブランドの商品を米国をはじめ世界150か国以上の有名百貨店,高級専門店を通じて販売している(甲3?甲5)。 ア 申立人による引用商標が使用されている化粧品の販売期間・販売方法・場所について 申立人は,引用商標が使用されている化粧品を,アメリカをはじめとし,オーストラリア,ブラジル等,世界各国において,製造・販売している。特に日本国内においては,日本法人であるELCジャパン株式会社(以下「ELCジャパン」という。甲5)を通じ,「DE LA MER」というラグジュアリースキンケアブランド名の下,1999年(平成11年)以降約20年以上にわたり継続的に製造・販売している(甲6,甲7)。具体的な販売方法・場所については,ELCジャパンを通じ,公式オンラインショップにて商品を販売するほか,有名百貨店を中心とした日本全国の商業施設内に有する店舗等において商品の販売を行っている(甲9)。 イ 申立人の保有する引用商標が使用されている化粧品について 引用商標を使用した化粧品は,約6000回の実験を経て完成させた独自の保湿成分「ミラクル ブロス」を配合し,肌に必要な5つの要素,「うるおい・ハリ・整肌・キメ・つや」に働きかけ,美しい肌へと導く化粧品である(甲8)。「ミラクル・ブロス」は,近年最先端の美容成分として注目を集める「海藻シーケルプファーメント」のように,ジャイアントシーケルプ(海藻)などから構成されている独自の成分であって,その炎症効果は,科学的にも裏付けられた商品であることから,品質面においても,需要者・取引者の支持を集めている(甲7,甲10,甲11)。 引用商標を使用したモイスチャライザーは,1999年(平成11年)の日本上陸当時から,注目を集め,現在においても,「高級クリームの代名詞」とうたわれており(甲7),美容業界においては,広く認知された著名なモイスチャライザーである。現時点では,リッチなクリームから,軽やかなローションタイプまで,取引者・需要者の需要・要望にあわせ,4種類のテクスチャーでの商品展開を行っており,取引者・需要者が,好みや季節によっては,選択することができる(甲6,甲12?甲14)。 ウ 引用商標が使用されている化粧品に係る宣伝広告活動等について 申立人は,引用商標を使用したモイスチャライザー及び上記化粧品ラインアップの普及を図るため,日本国内において,1999年(平成11年)以降,約20年以上にわたり,積極的に宣伝広告・製造販売に努めてきている(甲21?甲45)。加えて,申立人の製品が,取引者・需要者の投票等に基づくコスメアワードを多数,受賞している(甲46?甲60)。 (2)他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるか否かについて ア 本件商標と引用商標の類似性について 本件商標は,引用商標との関係において,「濃い灰色の波形状の図形の有無」,「両商標のつづりの違い」,及び「つづりの違いから生じる観念の違い」において異なる。しかしながら,本件商標を構成する「BIJOU DE MER」の後半の「DE MER」の部分において,引用商標を構成する「CREME DE LA MER」の後半の「DE LA MER」の部分と「DE」と「MER」の文字を含む点で共通する。また,引用商標のうち,「LA」の部分については,引用商標全体の中で,比較的弱く称呼される部分であるから,本件商標の後半部分「DE MER」と引用商標の「DE LA MER」の部分は,称呼において,近似した印象を与える。また,本件商標及び引用商標をそれぞれ一連に称呼するときには,その語調・語感に近似したものとなる。 イ 本件商標と引用商標の指定商品の関連性の程度 本件商標の指定商品と引用商標の第3類の指定商品とは同一又は類似であり,これらの商品の関連性は極めて高いといえる。 加えて,本件商標の指定商品のうち,第3類の「口臭用消臭剤」及び第5類「サプリメント,栄養補助食品,乳幼児用食品,乳幼児用飲料,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,滋養強壮剤及びその他の薬剤」は,引用商標の指定商品「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」と同様に,今日,美容目的で取引者・需要者が使用することも多く,特にサプリメントなどは,化粧品の代わりに,肌荒れ防止の目的で使用されていることから,その需要者・取引者は,引用商標の指定商品に係る需要者・取引者と共通すると考える。加えて,化粧品メーカーであっても,実際に美容目的のサプリメントや栄養補助食品を製造・販売している会社も存在する(甲61,甲62)。また,実際,本件商標は,先進の海洋性微生物原料を高濃度に配合した化粧品・せっけん類及びサプリメントに用いられており,その原料についてはフランスBiotechMarine社(海藻と海浜植物のエキスパート)とスペインのLIPOTRUE社(海洋性微生物研究のエキスパート)からダイレクトに技術原料供給を受け,製造されているとのことである。したがって,上述のような取引の実情を考慮すると,引用商標の第3類の指定商品,特に「化粧品」との関係において,本件商標の指定商品は,関連性が非常に高いといえる(甲63,甲64)。 ウ まとめ 上述の事情及び引用商標の著名性を総合的に勘案すれば,需要者・取引者に対し,引用商標が与える印象は非常に強い。よって,そのために生じる連想作用等により,本件商標が,申立人の業務に商品であると誤認し,その商品の需要者・取引者が商品の出所について混同を生ずるおそれがあるのみならず,商品の出所に関し,申立人又は申立人と経済的・組織的に関連する者により提供される商品であるかような誤認を生じさせ,混同を生じさせるおそれがあることは明白である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について (ア)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 a 申立人は,化粧品「CREME DE LA MER」をはじめとした,ラグジュアリースキンケアブランドを運営する会社であり,日本国内においては,ELCジャパン(甲5)を通じ,「DE LA MER」というラグジュアリースキンケアを販売している(甲3?甲5)。 b クレームドゥ・ラ・メール/ドゥ・ラ・メール公式オンラインショップにおいて,引用商標を付したクリームをはじめとする各種化粧品が販売されている(甲6?甲20)。 c 雑誌,インターネット上で引用商標を付したクリームが2016年(平成28年)に4回,2017年(同29年)に2回,2018年(同30年)に7回,2016(平成31年/令和元年)に8回広告宣伝されている(甲21?甲41)。 d 美容関係のインターネット上において,「ドゥ・ラ・メール」の化粧品が紹介され,その中で引用商標を付したクリームも紹介されている(甲42?甲46,甲49?甲60,甲65)。 e しかしながら,引用商標を付した化粧品(以下「申立人商品」という。)の売上高,販売数,市場シェアなど販売実績を示す具体的な証左は見いだせない。 (イ)上記(ア)によれば,引用商標は,申立人商品に使用する商標であり,申立人商品は,我が国において百貨店及びウェブサイトを通じて販売されていたことはうかがい知れるところである。 しかしながら,申立人が行ったとする雑誌,ネット上の広告宣伝は,2016年(平成28年)から2019年(令和元年)のわずか3年程度の期間で回数も年間10回にも満たないものであり,申立人が主張する1999年(平成11年)以降の引用商標の使用の事実も明らかでなく,申立人商品の販売実績を示す証左は見いだせないから,申立人商品は,需要者の間で広く認識されているものとは認めることはできない。 そうすると,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国の需要者に広く認識されている商標であるとは認めることはできない。 イ 本件商標と引用商標について (ア)本件商標 本件商標は,別掲1のとおり,大きさの異なる3つの黒色の波形図形(以下「本件図形」という。)を表し,その中央の波形図形内に白抜きで「BIJOU DE MER」の文字を配した構成よりなるところ,本件図形と文字部分とは,文字部分が顕著に表されているため,視覚上分離して看取されるうえに,本件図形と文字部分との間に称呼及び観念上のつながりがあるとはいえないことから,本件図形と文字部分は,それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。 そこで,本件商標の構成中,文字部分は同書,同大でまとまりよく一体的に表され,これから生じ得る「ビジョードゥメール」の称呼も,よどみなく一連に称呼し得るものである。 そうすると,本件商標は,その構成文字全体に相応して,「ビジョードゥメール」の称呼を生じるものである。 また,「BIJOU」が仏語で「宝石」の意味を有し,「MER」の文字が同じく仏語で「海」の意味を有するとしても,我が国において親しまれた語とはいえない語であるから,「BIJOU DE MER」の文字は,一種の造語としてみるのが相当であって,特定の観念を生じないものというべきである。 (イ)引用商標 引用商標は,別掲2のとおり「CREME DE LA MER」の欧文字よりなり,その構成文字に相応して,「クレームドゥラメール」の称呼を生じるとみるのが相当であるものの,我が国において親しまれた語とはいえないものであるから,一種の造語としてみるのが相当であって,特定の観念を生じないものというべきである。 (ウ)本件商標と引用商標との類似性 本件商標と引用商標を比較するに,両商標は上記(ア)及び(イ)のとおりの構成よりなるところ,外観においては,構成文字の相違及び本件図形の有無を異にすることから,外観上,相紛れるおそれはない。 次に,本件商標から生じる「ビジョードゥメール」の称呼と引用商標から生じる「クレームドゥラメール」の称呼とは,その構成音数,構成音の差異により,明瞭に聴別し得るものである。 また,観念においては,共に特定の観念を生じないものであるから,比較することができないものである。 そうすると,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから,両商標が需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であって,別異の商標というべきである。 ウ 出所の混同のおそれについて 引用商標は,上記アのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。 そして,上記イのとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であって,別異の商標というべきである。 そうすると,本件商標権者が,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者が,引用商標を想起又は連想するようなことはないというべきであり,当該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない (2)申立人の主張について 申立人は,本件商標と引用商標とは,「DE」と「MER」の文字を含む点で共通し,「LA」の部分は,比較的弱く称呼される部分であるから,本件商標の後半部分「DE MER」と引用商標の「DE LA MER」の部分は,称呼において,近似した印象を与え,それぞれ一連に称呼するときには,その語調・語感に近似したものとなる旨主張する。 しかしながら,「DE」と「MER」の文字を含む点で共通するとしても,「LA」の文字が弱く発音されるとする証拠の提出もなく,かつ,本件商標の文字部分と引用商標とは,それぞれ不可分一体のものとみるのが相当であり,両者から生じる称呼は,前半部分において,「ビジュー」と「クレーム」の音に明らかな差異を有していることにより,それぞれを一連に称呼した場合においても,その語調語感が著しく異なり,明瞭に聴別し得るものである。 したがって,申立人の主張は採用することができない。 (3)まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 別掲2 引用商標 |
異議決定日 | 2020-06-09 |
出願番号 | 商願2018-97323(T2018-97323) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W0305)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 緋呂子 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
大森 友子 平澤 芳行 |
登録日 | 2019-07-26 |
登録番号 | 商標登録第6166044号(T6166044) |
権利者 | 株式会社RECORESERUM |
商標の称呼 | ビジュードゥメール、ビジュー、メール |
代理人 | 稲垣 朋子 |
代理人 | 竹中 陽輔 |
代理人 | 中山 真理子 |
代理人 | 達野 大輔 |