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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 112
管理番号 1362544 
審判番号 取消2017-300935 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-12-26 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2546878号の1商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2546878号の1商標(以下「本件商標」という。)は,「Bonneville」の文字をやや斜めに横書きしてなり,昭和62年11月4日に登録出願,第12類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成5年6月30日に設定登録され,その後,同6年2月7日に,その指定商品中,第12類「自動車のタイヤ,チユーブ」について,一部放棄による本権の登録の一部抹消の登録及び同6年10月24日に,その指定商品中,第12類「自動車,その部品及び附属品(タイヤ,チューブを除く)」について,分割譲渡の登録がされ,さらに,同16年10月20日に指定商品を第12類「船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く),鉄道車両並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く)」とする指定商品の書換登録がされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成30年1月18日である。
また,本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成27年1月18日から同30年1月17日までの期間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定商品中,「航空機並びにその部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く),鉄道車両並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く)」についての登録を取消す,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,「航空機並びにその部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く),鉄道車両並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く)」(以下「取消請求商品」という。)について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用しているとの事実も見いだせないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(1)駆け込み使用について
ア 被請求人が提出している証拠の中には,要証期間内の証拠と認められないものや,商標権者が商標法第50条の審判の請求がされることを知った後の登録商標の使用(いわゆる「駆け込み使用」)と認められる証拠がある。
本件商標権者のウェブページ(乙1)は,2017年(平成29年)12月4日という日付が表示されている。当該使用は,駆け込み使用の要件である,審判の請求前3月から予告登録日までの間の使用であって,本件審判の請求がされることを知った後の使用である。具体的には,上記日付は,本件審判の請求前3月から予告登録日である2018年(平成30年)1月16日での間の日付にあてはまる。そして,請求人は,2017年(平成29年)11月1日付けの内容証明郵便により,被請求人に対して本件商標の譲渡交渉を打診する書面を送っているため(甲3),同年12月4日付けの登録商標の使用は,本件審判の請求がされることを知った後であるというべきである。
よって,本件商標権者のウェブページ(乙1)は駆け込み使用と認められる期間内の証拠であり,本件審判において,登録商標の使用を証明する証拠として採用すべきではない。
イ 「PROKAN4」の売上一覧(乙5)及びオートバイ用のアルミ製ガソリンタンク「トルネードボンネビルアルミタンク/24Lレーシング」(以下「ボンネビルアルミタンク」という。)の写真(乙6の3)についても,2017年(平成29年)12月5日及び同月11日付けの証拠であり,上記同年11月1日付けの内容証明郵便が届いた後であるため,本件審判の請求がされることを知った後の日付であり,駆け込み使用と認められる期間内の証拠であり,本件審判において,登録商標の使用を証明する証拠として採用すべきではない。
ウ 注文書(乙4)についても,2017年(平成29年)12月6日という日付が表示されており,当該日付も本件審判の請求がされることを知った後であり,駆け込み使用と認められるものであり,注文書(乙4)と対応する納品書(乙21)についても,本件審判において求められる商標の使用証拠とは認められない。
エ 「その審判の請求がされることを知った」の該当性の判断基準
本件においては,請求人から被請求人に対して送られた平成29年11月1日付の内容証明郵便(甲3)において,「貴社は標記登録商標を付した商品の製造販売等を現在行っていらっしゃらないと理解しております。」と述べた上で,同年11月7日には被請求人に対して電話をかけ,被請求人に所属する担当者に対し,「不使用取消審判を請求する可能性がある」旨伝えている。
これを示す証拠として,その旨記載された経過報告のメールが,請求人代理人より請求人の本国(英国)代理人に対して送られている(甲5,甲6)。
このような証拠をひもづけると,本件においては,同年11月1日付けの内容証明郵便にて不使用取消審判の可能性を示唆している上,その後の電話にてその意図を明確に伝えていることは明らかである。
したがって,本件駆け込み使用時期における使用は,被請求人がその審判の請求がされることを知った後の使用であるというべきである。
(2)要証期間の使用について
ア ボンネビルアルミタンクの写真(乙6)の撮影日を明らかにしているものの,ここに記載された平成30年3月20日という撮影は,本件審判請求の予告登録がされた平成30年1月16日より後の日付であり,これにより,当該写真は,要証期間内の使用を示す証拠と認められない。
したがって,本件審判における登録商標の使用を証明する証拠として採用できない。
イ 納品書(乙21)には,「トルネードボンネビルアルミタンク24L」と記載されているものの,当該記載からは,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されたことは明らかとならない。また,当該記載が商品の識別標識とは認識されず,かつ,同書,同大,等間隔の文字により記載されており,この記載から本件商標を片仮名で書した部分「ボンネビル」のみが抽出されるべき事情は見当たらないからである。
したがって,本件審判における登録商標の使用を証明する証拠として採用すべきではない。
ウ トルネード1200ボンネビルの写真(乙7)については,被請求人は1987年(昭和62年)から現在までの本件商標の使用について述べ,写真の撮影日を明らかにしているものの,ここに記載された平成30年2月23日という撮影は,本件審判請求の予告登録がされた平成30年1月16日より後の日付であり,これにより,当該の写真は,要証期間内の使用を示す証拠と認められないことが明らかとなり,本件審判における登録商標の使用を証明する証拠として採用すべきではない。
エ 雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)については,要証期間内である2017年(平成29年)5月発行の雑誌の記事を紹介しているものの,当該記事によると,「YOSHIMURA TORNADO 1200 BONNEVILLE」との表示がされている対象製品は,1987年(昭和62年)にわずか3台の台数で製作された製品とのことである。
そして,被請求人の商品の販売のための宣伝という要素は見当たらない。雑誌における広告掲載欄には,商品購入を促す記載が記載されるとともに,少なくとも広告主の名称,住所,電話番号,URL等の商品を購入するための最低限の情報が掲載されていることが通常であるところ,雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)の記事はこのような情報がないため広告とはいえない。
したがって,記事への掲載が本件審判の要証期間内であったとしても,対象となる商品は3台のみ製作され,要証期間内に販売されたとの記載もない。よって,本件審判における登録商標の使用を証明する証拠として採用すべきではない。
オ その他
被請求人は,一般のオートバイユーザーによるフェイスブックの投稿記事(乙12)を証拠として提出している。しかし,提出された画像からは,トルネード1200ボンネビルの写真(乙7)と同一の二輪自動車が写っていることが確認できない。
したがって,上記オートバイユーザーによる投稿記事(乙12)によって,平成29年4月1日以降,現在まで,被請求人の本社にてトルネード1200ボンネビルが展示されていたことは明らかとはならない。
また,トルネード1200ボンネビルの写真(乙7)及びオートバイユーザーによる投稿記事(乙12)の写真に写っている場所が,被請求人の会社のエントランスだとしても,ショールーム等であると理解することはできない。
したがって,平成29年4月1日以降,現在まで,被請求人の本社にあるショールーム等において,トルネード1200ボンネビルが展示されていたとはいうべきでない。
カ 以上のことから,本件商標権者のウェブページ(乙1),注文書(乙4),「PROKAN4」の売上げ一覧(乙5),アルミタンクの写真(乙6の3),トルネード1200ボンネビルの写真(乙7),雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)及びオートバイユーザーによる投稿記事(乙12)は,本件審判における時期的要件を満たしていない。
(3)社会通念上同一の商標の使用について
ア 本件商標権者のウェブページについて
被請求人は,本件商標権者のウェブページ(甲13)は,本件商標権者のウェブページ(乙1)において,本件不使用取消審判の駆け込み使用期間以前の要証期間内の表示を含むものであり,当該ウェブページ(甲13)における表示を確認すると,「24L-Bonnebillタイプ」となっており,本件商標権者のウェブページ(乙1)における表示「24L-Bonnevilleタイプ」とは,欧文字のつづりが異なるものとなっている。
よって,当該ウェブページ(甲13)における表示は,本件商標と社会通念上同一の商標を表示したものとは認められない。
イ 雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)について
雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)の「YOSHIMURA TORNADO 1200 BONNEVILLE」の文字の表示態様は同書,同大,等間隔であるため,本件商標と社会通念上同一の商標を表示しているものとは認められない。
ウ また,被請求人は,被請求人の本件商標「BONNEVILLE」と社会通念上同一の商標が要証期間内に使用されていた旨述べているが,欧文字で書された本件商標「Bonneville」を我が国で一般的に親しまれているローマ字読みで読む場合,「ボンネヴィレ」となる。また,欧文字「n」や「l」が二つ連続で書されていることから,フランス語の読み方もでき,「ボンヌヴィーユ」との読み方もできる。
したがって,本件商標からは複数の片仮名の読み方が発生するため,片仮名の「ボンネビル」は社会通念上同一の商標ということはできない。よって,片仮名の「ボンネビル」のみを表示している証拠(乙2?乙5,乙21?乙23)からは,実際に本件商標と社会通念上同一の商標が使用されたことは証明されていない。
(4)証拠の信ぴょう性について
被請求人が提出している証拠の中には,本件商標を使用した証拠として疑わしい証拠が複数あり,そのような証拠は採用すべきではない。
ア 納品書(乙2)について,被請求人は,取引書類に「ボンネビル」と記載している旨述べているものの,品番・品名の欄には「トルネードアルミタンク」と記載されており,「ボンネビル」との文字は「摘要」欄における「ボンネビル用未組立材料」との記載があるのみである。これからは,「トルネードアルミタンク」との商品が納品され,それが「ボンネビル」という物の組立材料として使われるとの内容が推測される。すると,納品された商品は「トルネードアルミタンク」であり「ボンネビル用未組立材料」の表示は「トルネードアルミタンク」の用途を示すものにすぎないため,やはり本件商標の使用を証明することにはならない。
また,品番・品名の欄に「ボンネビル」との記載がないことから,商品名として「ボンネビル」が使用されたことの証明にはならず,非常に小さい備考のような欄における「ボンネビル用未組立材料」の表示は,書式中に定型的に表示された企業名,企業ロゴ,商品ブランド等ではない。
さらに,品番・品名の欄には「531-571-2401」及び「トルネードアルミタンク/24L レーシング素材」と記載されているにすぎず,当該納品された商品に本件商標が付されていたと推認できない。
イ 「ボンネビルアルミタンク」の一覧表(乙3)については,被請求人は「ボンネビルアルミタンク」の販売記録と述べており,納品書(乙2)とは異なる「トルネードボンネビルアルミタンク」との記載が見られる。しかし,当該書類は特段外部との取引等を示す書類ではなく,単なる社内記録程度の記載内容であり,このような書類はいつでも簡単に作成できてしまうため,その信ぴょう性について疑義がある。
したがって,本件商標の使用を示す客観的な証拠とは認めることはできない。
被請求人の内部資料(乙3)及び駆け込み使用期間の使用証拠(乙4,乙5)には,品名の欄に「トルネードボンネビルアルミタンク/24L レーシング」や「トルネードボンネビルアルミタンク用フランジ(レーザーマーキング入)」のように品名に「ボンネビル」が含まれている一方で,納品書(乙2)には品名に「ボンネビル」が含まれていない。
このような観点から,納品書(乙2),「ボンネビルアルミタンク」の一覧表(乙3),「PROKAN4」の売上げ一覧(乙5)及びボンネビルアルミタンクの写真(乙6)は証拠としての信ぴょう性に疑義がある。
上記のとおり,被請求人が提出した各証拠は,客観的に本件審判における商標の使用を証明するもとは認められず,補完的な証拠の紐づけにより商標の使用が証明されてもいないため,被請求人により,要証期間内における商標の使用があったとはいえない。
ウ ボンネビルアルミタンクの写真(乙6),ヨシムラジャパン専務取締役の陳述書(乙16)及び有限会社ビーター(以下「ビーター」という。)代表取締役の陳述書(乙20)のように駆け込み使用期間の証拠に関してのみ補充する資料が提出されている。これらの状況から,納品書(乙2)及び「ボンネビルアルミタンク」の一覧表(乙3)における商品の取引が仮にあったとしても,その商品名が「Bonneville」ではない又は「BONNEVILLE」の商標が商品等に付されていなかったことが推認できる。特に,「ボンネビルアルミタンク」の一覧表(乙3)における2行目の表示は,品番,得意先名,数量,上代及び日付から,納品書(乙2)における商品を示すものと理解できるにもかかわらず,両者の品名は一致していない。つまり,納品書(乙2)では品名が「トルネードアルミタンク/24L レーシング素材」となっているのに対して,「ボンネビルアルミタンク」の一覧表(乙3)では品名が「トルネードボンネビルアルミタンク/24L レーシング」となっており,「ボンネビルアルミタンク」の一覧表(乙3)は被請求人にとって都合よく作成されたものであることがうかがえる。なお,被請求人は,ヨシムラジャパン専務取締役の陳述書(乙16)において,本件商標が著名である旨述べているが,そのような事実を示す証拠は提出されていない。ビーターの陳述書(乙20)及びビーターの納品書(乙21)について,被請求人は平成29年12月6日に注文を受け,平成30年3月13日に納品があった旨述べている。
しかし,既に述べたとおり,請求人は平成29年11月1日付け内容証明郵便及び同年11月7日の電話にて,請求人に不使用取消審判請求の意図を示している。
したがって,それより後の出来事について記載されたビーターの陳述書(乙20)及びビーターの納品書(乙21)は,駆け込み使用の時期に該当する。
また,ビーターの陳述書(乙20)において述べられているとおり,平成12年頃から継続的に年に数個ずつの依頼があった場合,それを示す証拠は他にも存在するはずである。
そのような証拠が提出されていない以上は,被請求人の主張は客観性に欠け,失当であるといわざるを得ない。
2 結語
以上のとおり,被請求人の主張にはいずれも理由がなく,本件商標の登録は取り消されるべきであることは明らかである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第30号証(枝番を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)指定商品「二輪自動車の部品又は附属品」に関する使用について
ア ウェブページによる使用について
被請求人は,遅くとも平成13年から現在まで,ガソリンタンク「ボンネビルアルミタンク」を継続して販売している。この「ボンネビルアルミタンク」 は,スズキ株式会社が市販した二輪自動車「GSX-R1100」又は「GSX-R750」に標準で装備(附属)されているガソリンタンクと交換して用いられる部品である。被請求人は,同部品を自社のウェブページに掲載するようになって以降,現在まで,継続的に「ボンネビルアルミタンク」の製品情報を掲載し続けてきたが,そこにおいては「Bonneville」と明記してきた(乙1)。係るウェブページの記載は,商品に関する広告を内容とする情報に登録商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的方法により提供する行為である(商標法第2条第3項第8号)。
また,販売の事実は,ビーターの陳述書(乙20)のほか,実際にユーザーが平成19年頃と平成27年頃に「ボンネビルタンク」と呼んでいる証拠のとおりである(乙9,乙10)。
イ 納品書による使用について
被請求人は,平成27年4月,二輪自動車の専門店であるアサカワスピードから,ボンネビルアルミタンクの注文を受け,同年11月5日,アサカワスピードヘ,「ボンネビルアルミタンク」を納品した。これは,電話で受注したことから,納品書(乙2)に対応する注文書は存在しない。納品の際,被請求人は,納品書(乙2)をアサカワスピードに対し交付した。その納品書において「ボンネビル」と記載している。係る納品書への記載は,商品に関する取引書類に登録商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布する行為である(商標法第2条第3項第8号)。
なお,被請求人の「ボンネビルアルミタンク」は,平成27年10月から同29年5月までの間に9個が販売されている(乙3)。
ウ フランジへのレーザー刻印による使用について
被請求人は,上記「ボンネビルアルミタンク」の製造についてはビーターへ委託している。製造委託は平成12年ころから継続的に行われてきた。ビーターの代表取締役が,その陳述書(乙20)において,かかる取引の経緯について述べているとおりである。
そして,委託の際には,被請求人からビーターへ,給油口として用いるアルミ製の部品「フランジ」を支給しているところ,被請求人は当該フランジに「BONNEVILLE」というレーザー刻印を施している。平成29年12月6日,被請求人は,ビーターへ,ボンネビルアルミタンク1個の製造を委託し,同月11日,「BONNEVILLE」と刻印を施した状態で「フランジ」を支給した(乙5の1・2,乙6の3)。その後,ビーターから被請求人へ,フランジを取り付けた状態のボンネビルアルミタンクが納品されている(乙6の1?3)。係るフランジへのレーザー刻印は,商品に登録商標を付する行為である(商標法第2条第3項第1号)。
エ 注文書による使用について
平成29年12月6日,被請求人が,ビーターへ,ボンネビルアルミタンク1個の製造を委託した際,その注文書において「ボンネビル」と記載した(乙4)。係る注文書への記載は,商品に関する取引書類に登録商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布する行為である(商標法第2条第3項第8号)。
また,被請求人は,注文書(乙4)に対応する取引を行った相手方であるビーターの納品書(乙21)及び陳述書(乙20)を提出する。
オ 以上のとおり,被請求人は,要証期間に,日本国内において,取消請求商品である「二輪自動車の部品又は附属品」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している。
(2)指定商品「二輪自動車」に関する使用について
ア 展示による使用について
被請求人は,昭和62年から現在まで,二輪自動車「トルネード1200ボンネビル」を継続して製造,販売している。この「トルネード1200ボンネビル」は,日常的に被請求人の本社にあるショールームにおいて展示されている(乙7の1・2)。当該車両のフレーム左側には,「Bonneville」と明記されたプレートが取り付けられている(乙7の3)。係る本社ショールームにおける車両の展示は,商品に登録商標を付したものを譲渡のために展示する行為である(商標法第2項第3項第2号)。
トルネード1200ボンネビルの写真(乙7)の撮影日は,平成30年2月23日であり,不使用取消審判の請求の登録日より後であるが,当該写真に写っている二輪自動車トルネード1200ボンネビルは,審判の請求の登録日前より,被請求人の本社にあるショールームに展示されていた。被請求人は,審判の請求の登録日前より,被請求人の本社にあるショールームにかかる二輪自動車が展示されていたことを立証するために一般のオートバイユーザーによるフェイスブック(ブログ)の投稿記事(乙12)を提出する。この証拠にはトルネード1200ボンネビルの写真(乙7)と同一の二輪自動車が写っている。つまり少なくとも平成29年4月1日以降,現在まで,被請求人の本社にあるショールームにおいて,トルネード1200ボンネビルが展示されていることがこの証拠から明らかである。
被請求人は,少なくとも平成29年4月1日以降,現在まで,本社にあるショールームにおいて,トルネード1200ボンネビルを継続して展示していることは明らかである(乙11,乙12)。
したがって,被請求人は,要証期間に,日本国内において,取消請求商品である「二輪自動車」について,本件商標を使用している。
イ 雑誌による使用について
平成29年5月,車両「トルネード1200ボンネビル」の記事が,雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)に掲載されている。同雑誌の15頁及び16頁においては, 濃いピンク色で「TORNADO 1200 BONNEVILLE」との文字が記載されている。
同雑誌の記事は,「広告」に該当するものといえ,請求人が主張する同雑誌に掲載された二輪自動車が1987年(昭和62年)に販売が開始されたことや,同証拠に要証期間内における販売実績の記載がないことは,当該雑誌(乙8)の広告該当性を否定する理由とはならない。
したがって,被請求人は,要証期間に,日本国内において,取消請求商品である「二輪自動車」について,本件商標を使用するとともにこれと社会通念上同一の商標を使用している。
(3)本件商標権者の過去のウェブページ(甲13)に関する新たな主張について
ア 請求人は,本件商標権者のウェブページ(乙1)における本件商標の使用が,名目的使用であるなどと主張している。被請求人がそのウェブページで,本件商標権者の過去のウェブページ(甲13)のような表記をしていたことはある。しかし,見れば容易に分かるとおり,スペルに単純な誤記があったことから,現在のウェブページでは訂正されている。商品のウェブページにおいて,英単語のスペルの誤記があることに気づいた場合にその時点で自ら訂正することは通常のことである。
したがって,本件商標権者のウェブページ(乙1)における本件商標の使用が名目的使用であるとの請求人の主張は失当である。
イ 当該ウェブページ(甲13)は,被請求人が,本件商標と社会通念上同一の商標を,要証期間内に使用していたことの証拠となりうる。請求人は,本件商標「Bonneville」と,当該ウェブページ(甲13)に使用された「Bonnebill」は社会通念上同一の商標ということはできないと主張するが,本件商標「Bonneville」と,当該ウェブページ(甲13)に使用された「Bonnebill」を対比すると,10文字中2文字の違いにとどまっている。しかも本件商標においては前半の「Bonne」や「ll」が見る者に強い印象を与えるのに対し,「v」と「b」の違いや,末尾の「e」の有無は目立つものではなく,外観は類似している。また,「ボンネビル」という称呼は同一であり,需要者は,被請求人の著名な二輪自動車「トルネード1200ボンネビル」を知っているから,「Bonnebill」との表記が,英単語「Bonneville」の単純な誤記であることを容易に理解できる。
2 請求人の主張に対する反論
(1)駆け込み使用であるとの主張について
ア 請求人は,被請求人が提出している本件商標権者のウェブページ(乙1),「ボンネビルアルミタンク」の一覧表(乙3),「PROKAN4」の売上一覧(乙5)等については,いわゆる駆け込み使用と認められる期間内の証拠であると主張するが,請求人が挙げる全ての甲各号証は,いわゆる駆け込み使用に該当するものではない。
イ 本件では「その審判の請求がされることを知った」の要件を充足しないこと
(ア)請求人が,被請求人が「その審判の請求がされることを知った」と主張する唯一の根拠は,請求人が被請求人に対し送付した平成29年11月1日付「商標登録に関するお願い」と題する内容証明郵便(甲3)である。当該内容証明郵便には,商標権の譲渡及びその条件等に関する協議の申出がされるとともに,一定の期間内に回答することを希望する内容にすぎず,不使用取消審判を請求する旨の記載がないことはもちろんのこと,一定の期間内に回答がない場合や交渉が不成立の場合に関する記載も一切ない。このように,当該内容証明郵便には,「審判の請求がされることを知った」に該当するために必要である「不使用取消審判を請求する」旨の意思表示は一切示されていない。
したがって,被請求人は,当該内容証明郵便を受領しても,単に請求人が商標権の譲渡を希望する意思を有していることを知るにとどまり,請求人が審判請求する意思を有していることを知ることはできない。
(イ)被請求人は,内容証明郵便を平成29年11月2日に受領した後,代理人を通じて,本件商標の使用許諾をする準備がある旨を伝えたところ,請求人の代理人は,依頼者にそのように伝える旨を述べた。以後,被請求人は,使用許諾等に関する具体的な協議を開始しようとしていたにもかかわらず,請求人からは,その後,何も連絡はないまま,同年12月26日に,突如,不使用取消審判が請求された(乙16)。このような交渉の経緯を踏まえると,被請求人は,当該内容証明郵便を受領後,本件商標の使用許諾に関する協議を請求人と継続していると認識しており,かかる状況から客観的にみて請求人が審判請求をする蓋然性が高いということはできない。
(ウ)請求人は平成29年11月7日に,被請求人に対して電話をかけ,被請求人に対し,「不使用取消審判を請求する可能性がある」旨伝えていると主張するが,請求人が被請求人に対し,「不使用取消審判を請求する可能性がある」旨を伝えたことはない。
また,被請求人との電話における会話の報告書(甲5),及びその電話の内容を報告した電子メール(甲6)は,請求人の作成にかかる証拠であることから,請求人代理人から被請求人への通話の内容を正確に記載しているかについて大きく疑問が残るものであり,これらの証拠から,上記事実を認定することも不可能である。
(エ)したがって,本件では,被請求人による本件商標の各使用は「その審判の請求がされることを知った」後ではないし,また,そのことを請求人が証明したときにも該当しない。
(オ)小括
以上から,本件では,被請求人の使用が「その審判の請求がされることを知った」後であることを請求人が証明したとの要件を充足しないことから,商標法第50条第3項駆け込み使用に該当しない。
よって,請求人が,いわゆる駆け込み使用であると主張するウェブページによる使用(乙1),フランジへのレーザー刻印による使用(乙5,乙6)及び注文書による使用(乙4)は,いずれも駆け込み使用に該当しない。
(2)「使用」の該当性に関する主張について
ア 展示による使用について
請求人は,トルネード1200ボンネビルの写真(乙7)については,ショールームに展示された二輪自動車とともに,販売価格等の表示がないことから,商品を譲渡するための展示か否かは明らかではないと主張するが,同二輪自動車「トルネード1200ボンネビル」は,顧客の希望する仕様に応じて製造する完全受注生産で販売される商品であり,価格も個別に変わりうることから(乙16),そもそもショールームにおいて具体的な販売価格を表示することはできない。また,仕様も顧客によって個別に変わりうる。
そうすると,販売価格等を表示していないことが,展示による使用が譲渡のための展示に該当しないことの根拠とはならない。また,同二輪自動車が,譲渡のために展示されていることは,同二輪自動車が被請求人のエントランスにおけるショールームに設置されていること,被請求人は要証期間中に,現に完全受注生産により販売をしていた(現在もしている)ことがら明らかである(乙7,乙12,乙16)。
したがって,展示による使用は,譲渡のための展示に該当するから,商標法第2条第3項第2号に規定する「使用」に該当する。
イ 雑誌による使用について
請求人は,雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)の記載は,現在行っている事業について本件商標に係る商品の販売を促す内容ではないとして,商標法第2条第3項第8号の使用に該当しない旨を主張するが,同雑誌に掲載された二輪自動車「トルネード1200ボンネビル」は,被請求人が完全受注生産の方式により,長期的に販売をしているものであり,同二輪自動車を雑誌で熱烈なファンに向けて紹介することにより,同二輪自動車の注文を受けられる可能性が十分にあることから,雑誌による使用は,商標法第2条第3項第8号に規定する「使用」に該当する。
(3)社会通念上同一とはいえないとの主張について
ア 請求人は,雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)の「TORNADO 1200 BONNEVILLE」は,二行目と三行目とが一体として把握されやすいため,「TORNADO 1200」部分が捨象される可能性が低く,登録商標と社会通念上同一の商標に該当しない旨を主張するが,「TORNADO 1200 BONNEVILLE」は,二輪自動車の需要者,取引者からすれば,ひとまとまりの表示として認識することなく,「TORNADO 1200」と「BONNEVILLE」を分離して観察するものである。
なぜなら,二輪自動車の車名において,「排気量を含めた名称」にペットネーム」を付加するという車名の付け方は頻繁に行われる。例えば株式会社スズキの「GSX400」名称の二輪自動車は,車名に,「KATANA」や「インパルス」といったペットネームが付加されている(乙18)。
このように同じ「GSX400」の名称の二輪自動車であっても,ペットネームが付加されることにより,全く異なる二輪自動車となることから,ペットネームは独立して自他商品等識別力を発揮していることが分かる。
したがって,需要者,取引者は「GSX400S KATANA」の商標に接した場合,「GSX400S」と「KATANA」を分離して観察する。
同様に,需要者,取引者は,「TORNADO 1200 BONNEVILLE」についても,「TORNADO 1200」(排気量を含めた名称)と「BONNEVILLE」(ペットネーム)を分離して観察することから,一体として把握されやすいとはいえず,「TORNADO 1200」の部分が捨象される可能性は低いとはいえない。
イ 雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)には,「TORNADO 1200 BONNEVILLE」の商標の他,14頁の右上に掲載された写真等においては登録商標「Bonneville」と同一の商標が車体フレームに取り付けられたプレートに刻印されていることから,登録商標と同一の商標が使用されている。
(4)「社会通念上同一」に関する請求人の新たな主張について
ア 請求人は,新たな主張として,欧文字で書された本件商標からは複数の片仮名の読み方が発生するため,片仮名の「ボンネビル」のみを表示している証拠からは,実際に本件商標と社会通念上同一の商標が使用されたことは証明されていない旨を主張している。
しかし,本件商標「Bonneville」と片仮名の「ボンネビル」とは称呼が同一であるから,商標法第50条第1項括弧書きにおける社会通念上同一と認められる。
イ 請求人は,本件商標から「ボンネヴィレ」や「ボンヌヴィーユ」という読み方が発生すると主張している。
しかしながら,本件商標から片仮名「ボンネヴィレ」や「ボンヌヴィーユ」という読み方は発生することはない。
ウ 以上からすれば,本件商標「Bonneville」と片仮名「ボンネビル」は,いずれも「ボンネビル」という称呼を生じるから,本件商標「Bonneville」と片仮名「ボンネビル」は,社会通念上同一と認められる商標である。
(5)証拠の信ぴょう性について
ア 「PROKAN4」の売上一覧(乙5)及びボンネビルアルミタンクの写真(乙6)
請求人の主張は,(a)日付が表示されていないこと,(b)客観性がないため信ぴょう性に疑義があるというものであるが,(a)の主張については,ボンネビルアルミタンクの写真(乙6)の撮影日等は,被請求人の代理人弁護士が報告書(乙11)に記載したとおりであり,信ぴょう性は何ら問題がない。また,(b)の主張については,被請求人は,現にビーター(乙19)にボンネビルアルミタンクを発注し,同社から納品を受けており(乙21),納品書の原本(乙20)もある。そして,「PROKAN4」の売上一覧(乙5)は,生産管理システム「PROKAN4」の画面である。被請求人は,同システムを使って商品の発送管理を行っているが,その記録を確認したところ,売上日を「17/12/11」,品名を「トルネードボンネビルアルミタンク用フランジ(レーザーマーキング入り)」,納入先を「ビーター」とする記録が残っている。この記録からは,平成29年12月11日に,刻印を施したフランジを被請求人からビーターへ支給したことが分かり,外部との取引を示す証拠である。この取引については,ビーターの代表取締役が,平成29年12月11日に,被請求人から「Bonneville」のレーザーマーキングによる刻印が施された状態のフランジが支給されたことを陳述書に記載しており,「PROKAN4」の売上一覧(乙5)の記載を裏付けている(乙20)。
したがって,「PROKAN4」の売上一覧(乙5),ボンネビルアルミタンクの写真(乙6)に関する請求人の主張に理由はない。
イ 注文書(乙24:ビーターのFAX)
注文書(乙24)は,平成29年12月6日,被請求人が,ビーターへ,ボンネビルアルミタンク1個の製造を委託した際,注文書をFAXで送信したところ,ビーターにおいて出力されたFAX用紙の原本である。注文書(乙4)はFAX送信の際に送信側で使われた書類であり,注文書(乙24)は受信側で出力された書類である。これにより,当該注文書がビーターとの取引に実際に使われた書類であることが証明されることになる。
なお,注文書(乙24)には「3/13」と手書きの文字が記載されているが,これはFAXの受信後にビーターがボールペンで記載したものである。
ウ 注文書(乙25)
注文書(乙25)は,注文書(乙4)の原本である。
3 結論
以上のとおり,被請求人は,本件商標を使用しており,請求人の主張には,いずれも理由がないことから,不使用取消審判の請求は,直ちに棄却されるべきである。

第5 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及びその主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者について
本件商標権者は,1954年(昭和29年)から,オートバイのマフラー,エンジンパーツ(カムシャフト,ピストン等)などオートバイ用のアフターパーツ(後付け部品)を製作,販売する会社である(乙16)。
(2)本件商標権者の本件商標の使用(主にオートバイ)について
ア 2017年(平成29年)5月16日発売(2017年7月号)の雑誌「CUSTOM PEOPLE」(乙8)には,「高度な技術と発想を活かした80年代ハイグレードカスタム集」の特集記事があり,14頁から15頁にかけて「Part.1 レーシングマシン&コンプリートマシン」の見出しの下,「YOSHIMURA/TORNADO 1200/BONNEVILLE」の文字とともにオートバイの写真が掲載されている。
そして,「80年代の極」の項に「80年代の印象深いレーサーやコンプリートマシンのうち,カスタムの参考例にされることが多い車両の一例を紹介する。最初はヨシムラが87年に製作したコンプリートマシン,トルネード1200ボンネビルを解説する。製作台数わずか3台。そのうちの1台を撮影した」と記載,及びオートバイのタンクの脇のフレーム上に「Bonneville」の文字が記載された金色のプレートが付された写真が掲載され,その写真の解説として「プレートに鎮座するエンブレム。写真が小さくてわかりにくいが,右下に001のシリアルナンバーが刻まれており,この車両が最初に製作されたモノということを示している」の記載がある。
イ 写真(乙7の1?3)には,タンクの脇のフレーム上に上段に「ヨシムラ Bonneville」,下段に「YOSHIMURA TORNADO 1200 Bonneville 001」の文字が記載された金色のプレートが付されたオートバイが写されている。
上記の写真は,平成30年2月23日に本件商標権者の本社2階エントランスにおいて撮影された(乙11)。
(3)本件商標権者による商品「オートバイ用のアルミ製ガソリンタンク」の販売について
ア 2007年(平成19年)1月15日付けの「エンジン工房・翼ツバサ(認証工場名称・ペガサス)」(乙9)のブログには,「ヨシムラボンネビル・アルミタンク」の見出しの下,「ヨシムラパーツ オートバイ」の文字とともに,左側に「ヨシムラ」と浮き彫りになっているオートバイ用のタンクの写真が掲載されている。
イ 本件商標権者の商品販売に関する一覧表(乙3)には,品番「531-571-2401」,品名「トルネードボンネビル アルミタンク/24L レーシング」とする商品を2015年(平成27年)10月29日から2017年(平成29年)10月12日までに,合計9個の商品が得意先に出荷されたとする記載がある。
ウ 平成30年10月16日付けビーターの代表取締役による陳述書(乙20)には,「1 弊社は,御殿場市において,オートバイ用のアルミ製ガソリンタンクを製造しています。・・・2 そのフランジの給油口の周囲には,レーザーマーキングにより,『Bonneville』との刻印が施されていました。・・・3 弊社がヨシムラジャパン(審決注:本件商標権者)から,ボンネビルアルミタンクの製作の依頼を受けたのは,今回が初めてではなく,年に数個ずつ継続的に依頼を受けています。初めて依頼を受けたのが平成12年ころですので,18年ほどにわたり継続的に依頼を受けて納品しています。」との記載がある。
(4)本件商権者に係るウェブサイトについて
ア 2014年(平成26年)4月19日,同年8月23日,2015年(平成27年)4月5日及び2016年(平成28年)7月7日にウェイバックマシン(ウェイバックマシン(Wayback Machine)とは,アメリカの非営利団体インターネット・アーカイブが運用する,ある一時点でのウェブページの内容を保存するサービス)により保存された本件商標権者に係るウェブサイトにおいて,「GSX-R1100(86-88),GSX-R750(85-87)」,「アルミタンク」の見出しの下,「商品情報」の項に「24L-Bonnebillタイプ/ヨシムラロゴ入り」,「パーツNo.531-571-2401」,「納期:受注生産」及び「※本品は受注生産品のため,ご注文状況により納期が変動いたしますのでご注文の際は一度お問い合わせ下さい。」の記載がある(甲13)。
イ 本件商標権者のウェブサイト(2017年(平成29年)12月4日)において,「GSX-R1100(86-88),GSX-R750(85-87)アルミタンク」の見出しの下,「商品情報」の項に「24L-Bonnevilleタイプ/ヨシムラロゴ入り」,「パーツNo.531-571-2401」,「納期:受注生産」及び「※本品は受注生産品のため,ご注文状況により納期が変動いたしますのでご注文の際は一度お問い合わせ下さい。」の記載がある(乙1)。
(5)以上よりすると,本件商標権者はオートバイ用後付け部品を製作,販売する会社であって,1987年(昭和62年)に「YOSHIMURA/TORNADO 1200/BONNEVILLE」と称するオートバイを製作し,その車体には「Bonneville」の文字が記載された金色のプレートが付されていたこと,製作された3台の当該オートバイのうち1台は,本件商標権者の本社2階エントランスにおいて展示されていたことが認められるとともに,2017年(平成29年)5月16日発売の雑誌において,当該オートバイが紹介されたことが認められる。
そして,(ア)平成19年1月15日付けのブログにおいて,品名「ヨシムラボンネビル・アルミタンク」とする本件商標権者に係る商品「オートバイ用のアルミタンク」が紹介されていること,(イ)品番「531-571-2401」,品名「トルネードボンネビル アルミタンク/24L レーシング」とする商品を平成27年10月29日から同29年10月12日までに,合計9個の商品が得意先に出荷されたことの記載があること,(ウ)ビーターの代表取締役が本件商標権者からボンネビルアルミタンクの製造依頼を平成12年頃から年に数件程度受注し継続的に納品していたと陳述していること,(エ)平成26年4月19日から平成29年12月4日まで,本件商標権者のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)に品番「531-571-2401」の品名「24L-Bonnevilleタイプ」(以下「本件使用商標」という。なお,平成28年7月7日までは「24L-Bonnebillタイプ」と記載されていた。),商品「アルミタンク」に関する記載があることからすると,本件商標権者は,商品「オートバイ用のアルミ製ガソリンタンク」(以下「本件使用商品」という。)について,遅くとも平成19年1月頃から販売を開始し,少なくとも平成26年4月頃から平成29年12月頃まで,本件ウェブサイト上に本件使用商標を付して本件使用商品を販売することを目的とした広告を掲載していたと認められる。
2 上記1からすれば,次のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は上記第1のとおり「Bonneville」の文字をやや斜めに横書きしてなるところ,本件使用商標は,「24L-Bonnevilleタイプ」の文字からなるものであり,その構成中の「24L」の文字部分は本件使用商品「オートバイ用のアルミ製ガソリンタンク」のガソリンが入る容量を表示すものというのが相当であり,「タイプ」の文字部分は「型,類型又は典型」等を意味する語であるから,両文字部分は,本件使用商品との関係では,出所識別標識としての機能がない又は非常に弱い部分であって,需要者をして,本件使用商標の要部が「Bonneville」の文字部分にあるといえる。
そうすると,本件使用商標は,本件商標を書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標といえるから,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(2)本件使用商品について
本件使用商品は,「オートバイ用のアルミ製ガソリンタンク」であり,取消請求商品中の「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び付属品(タイヤ・チューブを除く。)」の範ちゅうに含まれる商品であることは明らかである。
(3)使用時期について
本件ウェブサイトは,少なくとも平成26年4月頃から平成29年12月頃まで,本件使用商標を付して広告を掲載していたと認められるのであるから,要証期間内に掲載されていたと認められる。
なお,請求人は,本件ウェブサイトにおける表示が平成28年7月7日までは「24L-Bonnebillタイプ」(甲13)となっており,当該表示は本件ウェブサイト(乙1)における表示「24L-Bonnevilleタイプ」とは,欧文字のつづりが異なるものであって,当該表示は,本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない旨主張する。
確かに,本件ウェブサイトにおける甲第13号証に係る表示と乙第1号証に係る表示は,異なる。
しかしながら,上記1のとおり,本件商標権者は,1987年(昭和62年)に「Bonneville」の文字が付されたオートバイを3台製作し,そのうち1台は,本件商標権者の本社において展示されていたこと,及び平成29年5月16日発売の雑誌において,当該オートバイが紹介れたことを踏まえると,平成28年7月7日まで表示されていた「Bonnebill」の文字は,「Bonneville」の誤記であることは明らかであり,その後,平成29年12月4日までに,その誤記が発見され修正されたものといえる。
そして,本件ウェブサイト(乙1)には,本件使用商標(Bonneville)の記載があり,その印刷日である2017年(平成29年)12月4日は要証期間内である。
そうすると,本件ウェブサイト(乙1)における表示が平成28年7月7日までは「24L-Bonnebillタイプ」の表示をもって,当該表示が,本件商標と社会通念上同一の商標ということはできないとまではいえないし,本件使用商標(Bonneville)の記載が要証期間内に使用されていたことは明らかである。
したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。
(4)使用者について
本件ウェブサイトは本件商標権者に係るものであるから,本件使用商標の使用者は,本件商標権者である。
(5)まとめ
以上よりすると,本件商標権者は,要証期間内に,取消請求商品である第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び付属品(タイヤ・チューブを除く。)」に含まれる本件使用商品「オートバイ用のアルミ製ガソリンタンク」に関する広告を内容とする情報に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して本件ウェブサイトに表示したとものと認められる。
これは,商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,本件ウェブサイト(乙1)は2017年(平成29年)12月4日という日付が表示されているものであって,請求人は平成29年11月1日付けの内容証明郵便により,被請求人に対して本件商標の譲渡交渉を打診する書面を送っていることから(甲3),当該使用は,いわゆる駆け込み使用に該当するものである旨主張する。
しかしながら,「商標法第50条第3項は『その登録商標の使用がその審判請求がされたことを知った後であることを請求人が証明したとき』と規定しているのであって,請求人に対し,審判請求がされるであろうことを被請求人が知っていたことの証明を求めている。同条項このような文言に照らすと,『その審判の請求がされることを知った』とは,例えば,当該審判請求を行うことを交渉相手から書面等で通知されるなどの具体的な事実により,当該相手方が審判請求する意思を有していることを知ったか,あるいは,交渉の経緯その他諸々の状況から客観的にみて相手方が審判請求をする蓋然性が高く,かつ,被請求人がこれを認識していると認められる場合などをいうと解すべきであり,被請求人が単に審判請求を受ける一般的,抽象的な可能性を認識していたのみでは足りないというべきである。」(知財高裁平成18(行ケ)10183号同年11月8日判決参照)。
請求人に係る上記内容証明郵便は,商標権の譲渡及びその条件等に関する協議の申出がされるとともに,一定の期間内に回答を求める内容にすぎず,不使用取消審判を請求する旨の記載がないことから,上記の判決でいう,「当該審判請求を行うことを交渉相手から書面等で通知されるなどの具体的な事実」に該当しない。
しかも,本件ウェブサイトにおける表示が平成28年7月7日まで,本件商標とつづりを異にする表示がなされていたとしても,上記2(3)のとおり,当該表示は誤記といえるものであることからすると,本件商標権者は,いわゆる駆け込み使用の期間より前から,本件ウェブサイトに本件使用商標を付して広告を掲載していたといえる。
(2)請求人は,本件においては,請求人から被請求人に対する平成29年11月1日付の内容証明郵便(甲3)の送付後に,同月7日には被請求人に対して電話をかけ,被請求人に所属する担当者に対し,不使用取消審判を請求する可能性がある旨伝えた旨主張するとともに,その証拠として,その旨記載された経過報告のメールが,請求人代理人より請求人の本国(英国)代理人に対して送られている(甲5,甲6)旨主張する。
しかしながら,当該経過報告のメールは,請求人代理人が請求人の本国(英国)代理人に対して報告するものであって,請求人代理人と被請求人との間の電話によって,必ずしも被請求人が不使用取消審判を請求する可能性がある旨を理解したことを示すものとはいえない。
(3)以上よりすると,本件ウェブサイトによる本件使用商標の使用行為は,本件審判の請求がされることを知った後に,駆け込み的に使用したと認めることはできない。
したがって,上記請求人の主張はいずれも採用することができない。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,本件商標権者が取消請求商品中の「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品(タイヤ・チューブを除く)」の範ちゅうに含まれる商品「オートバイ用のアルミ製ガソリンタンク」について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したと認め得る。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定によりその指定商品中の取消請求商品について取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)




審理終結日 2019-08-29 
結審通知日 2019-09-02 
審決日 2019-12-20 
出願番号 商願昭62-124041 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (112)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 榎本 政実
平澤 芳行
登録日 1993-06-30 
登録番号 商標登録第2546878号の1(T2546878-1) 
商標の称呼 ボーヌビル、ボンネビル 
代理人 鮫島 正洋 
復代理人 杉尾 雄一 
代理人 行田 朋弘 
代理人 山口 建章 
代理人 岡村 太一 

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