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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W10 審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W10 審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W10 審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W10 |
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管理番号 | 1361761 |
異議申立番号 | 異議2018-900200 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-07-31 |
確定日 | 2020-02-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6042621号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6042621号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6042621号商標(以下「本件商標」という。)は,「Azure」の欧文字を標準文字で表してなり,平成29年2月3日に登録出願,第10類「心臓ペースメーカー並びにその部品及び附属品」を指定商品として,同30年4月25日に登録査定,同年5月11日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 (1)登録第5501728号商標(以下「引用商標1」という。)は,「アズール」の片仮名を標準文字で表してなり,平成22年10月21日に登録出願,第10類「血管塞栓用コイルシステム」を指定商品として,同年6月22日に設定登録されたものである。 (2)登録第5509557号商標(以下「引用商標2」という。)は,「AZUR」の欧文字を標準文字で表してなり,平成22年10月21日に登録出願,第10類「血管塞栓用コイルシステム」を指定商品として,同24年7月27日に設定登録されたものである。 上記の引用商標1及び引用商標2はいずれも現に有効に存続中であり,以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから,その登録は取り消されるべきであると申し立て,証拠方法として甲第1号証ないし甲第53号証を提出した。 第4 当審における取消理由の通知 当審において,本件商標権者に対して,「本件商標と引用商標とは,類似する商標であって,かつ,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似する商品であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨の取消理由を平成30年12月21日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。 第5 本件商標権者の意見 本件商標権者は,上記第4の取消理由に対して意見を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第45号証を提出した。 1 本件商標と引用商標の類否 (1)本件商標の称呼認定について 本件商標は「心臓ペースメーカー並びにその部品及び附属品」について使用されており,本件商標について「アジュール」という称呼が取引者,需要者間で既に定着している(乙4?7)。 本件商標の使用者である本件商標権者及びその日本法人である日本メドトロニック株式会社は本件商標の「アジュール」との読み方を徹底させるべく,パンフレットやウェブサイト等で「Azure」とその称呼である「アジュール」とを読み仮名的に併記している(乙4)。 本件指定商品中の「心臓ペースメーカー」は,主に不整脈等の心疾患患者に外科手術によって埋め込まれる高度医療機器である(乙8)。上記商品は,取り扱いを一歩誤ると人間の生死にかかわる商品であり,このような商品の特殊性に鑑み,本件商標権者は,医療事故や患者死亡防止の観点から本件商標が「アジュール」以外の誤った称呼で取引されることを予め徹底的に防止している。その結果,取引業界及び需要者間において既に本件商標は「アジュール」という短い一連の称呼でもって,業務上の信用がすでに化体されている。 よって,本件商標の称呼は,取引上「アジュール」で恒常的に固定されてきており,この状態が今後変わることはあり得ない。 以上のように,本件商標は,取引において本件商標の使用者及び需要者の双方に「アジュール」と一気一連に称呼されて使用されていることから,この称呼が類否判断における本件商標の称呼として画一的に認定されるべきである。 (2)本件商標と引用商標の対比 ア 称呼の対比 本件商標は,上述のとおり「アジュール」とのみ称呼される。 引用商標1は,「アズール」の片仮名を標準文字で書してなるところ,その構成文字に相応して「アズール」の称呼を生じる。 引用商標2は,「AZUR」の欧文字を標準文字で表してなるところ,これに接した一般の需要者,取引者は意味のない一種の造語と認識するから,その構成文字のローマ字読みに倣って「アズール」と称呼すると考えるのが自然である。実際,引用商標2は,現実の取引においても「アズール」と称呼されている(乙9)ため,この称呼のみに基づいて類否判断を行うことは理にかなうものである。 そうすると,本件商標と引用商標は,いずれも長音を含む4音構成からなるところ,第3音目が長音である結果,その直前の第2音目の相違音「ジュ」と「ズ」にアクセントがおかれ,長音と結合し一体となって「ジュー」及び「ズー」と強く発音される。共に4音という短い音構成である両商標においては,強調される音が相違するから,その音が全体称呼に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず,それぞれを一連に称呼するときは,全体の語調,語感が相違したものとなり,互いに聞き誤るおそれはなく,称呼上,十分に聴別し得るものである(乙10)。 現に「ジュ」音と「ズ」音の1音相違を含む総音数4音構成からなる以下の各商標の併存登録が認められている(乙11?乙22)。 イ 外観の対比 本件商標は,外観上,欧文字からなるところ,片仮名からなる引用商標1とは明らかに別異のものである。また,本件商標は,欧文字5文字中「A」は大文字で書され,それに続く「zure」が小文字で書された結果,文字の大きさもバランスも異なる構成からなるところ,引用商標2は「AZUR」と欧文字4文字のみが全て同じ大きさの大文字でバランス良く書されているばかりか,末尾に「e」もなく,総文字数も異なることから,両者は一目で容易に識別可能である。 したがって,本件商標と引用商標は,外観上も明らかに識別可能である。 ウ 観念の対比 本件商標は,通常の英語水準にある需要者,取引者にとっては特定の観念を有しない商標である。 一方,引用商標もいずれも一般的な辞書には掲載されていない語であるから,これに接した需要者,取引者は意味を有しない造語であると認識する。 そうすると,本件商標と引用商標は観念上比較のしようがないから,相紛れる理由もそれを裏付ける客観的情勢もない。 エ 小括 したがって,本件商標は,引用商標とは称呼,外観,観念上,いずれも非類似のものである。そして,後述する現実の取引実情や需要者,取引者の高い注意力を考慮に入れると,両商標は相紛れようがない。 2 取引の実情について 本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)である「心臓ペースメーカー並びにその部品及び附属品」についての一般的かつ恒常的な取引実情について以下に述べる。 本件指定商品は,最終的には心臓病患者によって購入されるものであるが,これを患者に埋め込むのは,高度専門的な医学知識及び豊富な経験を有する医師である。したがって,本件指定商品は,独立系心臓外科病院や大学病院等の心臓外科等の医師の意向を反映して購入される場合が多い(乙25)。しかし,医師が日々進化し複雑化する医療機器について常に最新情報や知識を保つことは難しいことから,医療機器について専門的知識をもった医療機器メーカーの社員等から,当該医療機器の説明を受けた上で,又は,当該社員等との信頼関係を基盤として購入商品を選択していくことが実際の取引上は多い(乙26,乙27)。 本件指定商品の取り扱いや選択によっては人命にかかわる商品であるという高度専門性,特殊性から,これの主たる需要者である医師等は,心臓疾患に関する深い専門的知識を持った上で,極めて高い注意力をもって本件商標に接することになる。さらに,本件指定商品の特殊性に基づく直接取引やオンデマンド取引を原則とする一般的,恒常的な取引実情を考慮すれば,本件商標が付された本件指定商品と引用商標の指定商品との間で出所の混同は生じておらず,今後も生じ得ない。 第6 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は,「Azure」の欧文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は「空色」の意味を有する英単語であるが,我が国で親しまれている語とはいえないことから,特定の意味合いを有しない造語と理解されるものである。 そして,以下のとおり,同じつづりからなる語を「アズール」と発音している事例が認められる。 ア az・ur(e)アズール(血球および結合織細胞の染色に用いられる塩基性サイアジン methyl thiazine 染料).(医学英和大辞典 改訂12版 南山堂) イ az・ure アズール(一群の異染性塩基青色メチルチオニン,またはフェノチアジン色素を示す用語で,特に核や血球の生物学的染料として用いる).(ステッドマン医学大事典 改訂6版 メジカルビュー社) ウ 株式会社新潮社の提供する「ENGNE Online」のウェブサイトにおける「試乗記 ベントレー」の項目において,「ベントレーのフラッグシップ,新型アズールに,カタロニアで乗る。」の見出しの下に,「BENTLEY AZURE/ベントレー・アズール」の記載がある。 http://engine-online.jp/car_driven/foreign/CD0609_AZURE.html エ ウェブリオ株式会社の提供するオンライン辞書「IT用語辞典BINARY」のウェブサイトにおける「Windous Azure」の項目において,「読み方:ウィンドウズ アズール,ウィンドウズ アジュア」の記載がある。 https://www.sophia-it.com/content/Windows+Azure オ 以上よりすれば,「Azure」の文字は,「アズール」と称呼される場合も決して不自然ではなく,また,少なくないというのが相当であるから,本件商標からは,「アズール」の称呼をも生じるものであって,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 ア 引用商標1は,「アズール」の片仮名を標準文字で表してなるものであるところ,当該文字は辞書等に載録のない語であって,特定の意味合いを有しない造語と認められるものであるから,その構成文字に相応して「アズール」の称呼を生じるものであって,特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標2は,「AZUR」の欧文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は「空色」の意を有するフランス語の単語であるが,我が国で親しまれている語とはいえないことから,特定の意味合いを有しない造語と理解されるものである。 そして,以下のとおり,同じつづりからなる語を「アズール」と発音している事例が認められる。 (ア)引用商標2は,商品「血管塞栓用コイル」について,申立人により使用され,その称呼として「アズール」と表記されていることが認められる。 申立人の提供するウェブサイトにおける「医療関係の皆様向け情報」中の「医療機器製品情報」において,「血管造影・治療用カテーテル/膨潤型血管内塞栓用コイル/AZUR」の項目に,「AZUR(アズール)はテルモ末梢血管塞栓用コイルシステムのペットネームです。」との記載がある。 https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me345.html (イ)株式会社イエローハットが提供する「イエローハットWEB Store」のウェブサイトにおける「azur ANX-Z1」の項目に,「azur アズール AV一体型フルセグTV内蔵10.1インチメモリーナビゲーションANX-Z1」の記載がある。 https://store.shopping.yahoo.co.jp/yellowhat/361281.html (ウ)以上よりすれば,引用商標2は,「AZUR」の欧文字が「アズール」と称呼される場合も決して不自然ではなく,また,少なくないというのが相当であるから,「アズール」の称呼をも生じるものであって,特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について ア 本件商標と引用商標1とを比較すると,両者は,共に平易な書体の欧文字又は片仮名からなるものであり,文字の種類が相違することから,外観において相違するものの,我が国において,欧文字を片仮名で表記することが一般に行われていることを考慮すると,本件指定商品及び引用商標1の指定商品の需要者にとって,外観上,文字種が異なることが両者を別異のものであることを認識させるほど,強い印象を与えるものではないといえる。 次に,称呼においては,両者は,「アズール」の称呼を共通にするものである。 そして,観念においては,両者は特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較することができないものである。 してみれば,本件商標と引用商標1とは,観念において比較することができないとしても,称呼を共通にするものであり,そして,外観上,文字種が異なることが両者を別異のものであることを認識させるほど,強い印象を与えるものではないことを総合的に考察すれば,両者は類似の商標と判断するのが相当である。 イ 本件商標と引用商標2とを比較すると,外観については,上記(1)及び(2)イのとおり,前者は欧文字の大文字と小文字,後者は欧文字の大文字のみで表わされ,また,第5文字目における「e」の有無に差異を有するものであるところ,両者は,大文字と小文字,また,第5文字目における「e」の有無の差異はあるものの,それ以外の文字のつづりを共通にするものであるから,外観上,やや近似するものである。 次に,称呼においては,両者は,「アズール」の称呼を共通にするものである。 そして,観念においては,両者は特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較することができないものである。 そうすると,本件商標と引用商標2とは,観念において比較できないとしても,外観上,やや近似するものであって,「アズール」の称呼を共通にするものであるから,これらを総合的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。 ウ 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,類似する商標であるといえる。 (4)本件指定商品と引用商標の指定商品との類否について 本件指定商品である「心臓ペースメーカー並びにその部品及び附属品」と,引用商標の指定商品「血管塞栓用コイルシステム」とは,いずれも心臓や血管といった循環器の疾患の治療のために用いられる医療用機械器具であり,その取扱部門,需要者を共通にすることから,同一又は類似する商品と認められるものである。 (5)小括 以上によれば,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,かつ,本件指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 本件商標権者の意見について (1)本件商標権者は,本件商標はわが国における現実の取引において本件指定商品である「心臓ペースメーカー並びにその部品及び附属品」について使用されており,本件商標の使用者である本件商標権者及びその日本法人である日本メドトロニック株式会社は,本件商標の「アジュール」との読み方を徹底させるべく,パンフレットやウェブサイト等で「Azure」とその称呼である「アジュール」とを読み仮名的に併記しているから,取引者,需要者間では本件商標「Azure」について「アジュール」という称呼がすでに定着しているといえ,本件商標は「アジュール」とのみ称呼されると認定されるべきであり,本件商標は引用商標のいずれとも本来的に称呼,外観,観念上,いずれも非類似のものである旨を主張している。 しかしながら,本件商標からは本件商標権者の主張する「アジュール」の称呼のほかに「アズール」の称呼をも生じることは,上記1(1)で述べたとおりである。 なお,本件商標権者は,パンフレットやウェブサイト等で「Azure」とその称呼である「アジュール」とを読み仮名的に併記している(乙4)としても,例えば本件商標権者に係る他のウェブサイト記事(乙5)や商品に添付される書類(乙6,乙7)には,「Azure」の文字のみが表示されているなど,一貫しているものではないことや,本件指定商品の取引者,需要者をして,本件商標を「アジュール」とのみ称呼している事実は不明であるから,このことをもって,本件指定商品の取引者,需要者間で,本件商標「Azure」について「アジュール」という称呼が定着しているとは認めることができない。 そうすると,欧文字で表記された,造語と理解されてその称呼が特定されない商標は,需要者が自然に認識する読み方をもって称呼されるものであるから,一つの商標から二つ以上の称呼が生じることはあり得るのであり,その場合,一つの称呼が他人の商標の称呼と同一又は類似であるといえないとしても,他の称呼が他人の商標のそれと類似するときは,両商標は,称呼において類似するものと解するのが相当である。そして,本件商標と引用商標とは,両商標の外観,称呼,観念等を総合的に判断した場合,上記1(3)のとおり類似の商標といえるものである。 (2)本件商標権者は,本件指定商品である「心臓ペースメーカー並びにその部品及び附属品」の取引は,商品の特殊性に基づく直接取引やオンデマンド取引を原則とする取引実情を考慮すれば,本件商標が付された本件指定商品と引用商標の指定商品との間で出所の混同は生じておらず,今後も生じ得ない旨主張する。 しかしながら,本件指定商品に係る取引において,医療用機械器具の製造販売者は,広く医療用機械器具を製造販売する場合もあり(甲12?甲25),特定の診療分野のみを対象とする者に限られるということはできない。また,本件指定商品と引用商標の指定商品とが同一企業により,製造,販売されている実情があり(甲16?甲25),同一又は類似の商標が,その指定商品に使用された場合には,同一の営業主に係るものであるかのごとく取引者,需要者に商品の出所について誤認,混同を生じさせるおそれがあるというのが相当である。そして,商標権者が上記方法を通じて本件商標を使用し,出所の混同を生じていないとしても,これが商品の類否の判断において参酌される一般的,恒常的な取引の実情に該当するということはできない。 (3)したがって,商標権者の上記主張は,いずれも採用できない。 3 まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2019-10-10 |
出願番号 | 商願2017-11345(T2017-11345) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Z
(W10)
T 1 651・ 262- Z (W10) T 1 651・ 264- Z (W10) T 1 651・ 263- Z (W10) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 内藤 順子、齋藤 健太、浦崎 直之 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
大森 友子 薩摩 純一 |
登録日 | 2018-05-11 |
登録番号 | 商標登録第6042621号(T6042621) |
権利者 | メドトロニック,インコーポレイテッド |
商標の称呼 | アジュール、アジュア、アズール |
代理人 | 小川 雅也 |
代理人 | 田島 壽 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 外川 奈美 |