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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W20
管理番号 1361760 
異議申立番号 異議2018-900294 
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-11 
確定日 2020-04-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第6063479号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6063479号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6063479号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成29年10月17日に登録出願、第20類「貯蔵・輸送用コンテナ(金属製のものを除く。),プラスチック製包装容器,大おけ(金属製のものを除く。),たる(金属製のものを除く。),液体燃料用容器(金属製のものを除く。),工具箱(金属製のものを除く。)(空のもの),整理用トレイ(金属製のものを除く。),木製又はプラスチック製の箱,瓶用キャップ(金属製のものを除く。),プラスチック製バルブ」を指定商品として、同30年6月14日に登録査定、同年7月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は、「KEYKEG」又は「KeyKeg」の欧文字からなる商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)である。

第3 登録異議の申立ての理由
1 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨次の2のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第42号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠については、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
2 本件商標の出願時及び登録査定時において、引用商標が欧州及び米国における「使い捨てタイプの業務用プラスチック製飲料用容器(ワンウェイケグ)」の分野で周知であり、本件商標と引用商標が極めて近似していることから、本件商標は、引用商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願する、引用商標に化体した顧客吸引力等にフリーライドすることで不正な利益を得る、又は申立人の日本における事業の妨害などの不正の目的をもって使用されるものである。

第4 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和1年7月26日付けで通知した。

第5 商標権者の意見
前記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
1 引用商標が外国における需要者の間に広く認識されていることについて
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア オランダの企業であるLightweight Containers B.V.(以下「LC社」という。)は、申立人が株式を100%所有する申立人の子会社である(甲2)。
イ LC社は、引用商標を「使い捨てタイプの業務用プラスチック製飲料用容器並びにその部品及び付属品(バルブ等)」(以下「使い捨てケグ」といい、引用商標が使用された使い捨てケグを「申立人商品」という。)に使用している(甲4、甲5及び甲11等)。
ウ LC社は、2007年(平成19年)にドイツにおいて、2012年(平成24年)にオランダにおいて、2015年(平成27年)に米国において、それぞれ申立人商品の製造を開始し、2017年(平成29年)にイタリアとオーストラリアに支店及び倉庫を設立した(甲10)。
エ 申立人商品の全世界における売上高及び販売数は、2015年(平成27年)が17,485,420ユーロ、1,411,635固、2016年(平成28年)が22,694,785ユーロ、1,859,182個、2017年(平成29年)が27,033,973ユーロ、2,302,798個である(商標登録異議申立書の手続補正書(以下「申立書」という。)7頁)。
オ 申立人商品の主要国における2015年(平成27年)から2017年(平成29年)までの各年の販売数は、イギリスが約26万個から約49万個、フランスが約19万個から約30万個、イタリアが約18万個から約19万個、ベルギーが約14万個から約18万個、ノルウェーが約11万個から約17万個、スペインが約6万個から約16万個、ドイツが約9万個から約11万個及びオランダが約8万個から約10万個である(甲12、甲13-1及び甲13-2)。
カ 申立人商品は、2017年(平成29年)1月から11月にかけて、オランダ、米国、イギリス、スペイン、ドイツ、オーストラリア、カナダ及びチリにおいて開催された各種の展示会に出品された(甲16ないし甲18)。
キ 申立人商品は、Beverage Innovation Award 2009(世界)、Ameristar 2010(米国)、Horeca award 2010(ベルギー)、Worldstar award 2010(世界)、Beverage Innovation Award 2013(世界)、iF Design award 2014(ドイツ)、Worldstar award 2014(世界)、German Packaging Award 2014(ドイツ)、German Design Award 2015(ドイツ)及びGreen Awards 2016(世界)といった世界、米国、ベルギー又はドイツを対象とした飲料業界・パッケージ業界における各種の賞を受賞した(甲27及び申立書10頁)。
ク インターネット上のウェブサイトにおいて、申立人商品が以下のとおり、紹介されている。
(ア)「IWSR / drinks market analysis」のウェブサイトにおいて、2012年(平成24年)11月20日付けの記事に、「新世代のワンウェイPETケグ(New generation of one-way PET kegs)」の見出しの下、「LC社はワンウェイの20?30リットルサイズのKeyKegでよく知られている。同社はKeyKegを2006年に製造間始したKeyKegグループの一員であり、同グループはパッケージ業界における6つのリーディングカンパニーからなる。」(原文は英語。以下(イ)ないし(オ)も同様。)旨の記載がある(甲29及び申立書11頁)。
(イ)「CRAFT BREWING BUSINESS」のウェブサイトにおいて、2013年(平成25年)5月23日付けの記事に、「KeyKeg:ヨーロッパで急増するワンウェイケグの需要(KeyKeg: Demand for one-way distribution heats up in Europe)」の見出しの下、「昨年、バドワイザー社のKeyKegというリターナブルタイプでないケグを使用したビールの輸出が著しく拡大し・・・14か国における輸出量は前年比で127%増加した。KeyKegは2012年における史上最大の輸出量を達成する一因となった。」旨の記載がある(甲30並びに申立書11頁及び12頁)。
(ウ)「CRAFT BREWING BUSINESS」のウェブサイトにおいて、2013年(平成25年)6月20日付けの記事に、「KeyKegが北米で最も有名なパッケージに関する品評会の一つであるAmeristar packaging awardを受賞した」旨の記載がある(甲31及び申立書12頁)。
(エ)「CRAFT BREWING BUSINESS」のウェブサイトにおいて、2015年(平成27年)1月13日付けの記事に、「KeyKegがパッケージのイノベーションに対する欧州で最高の栄誉の一つであるGerman Packaging Awardを受賞した」旨の記載がある(甲32及び申立書12頁)。
(オ)「PACKAGING EUROPE」のウェブサイトにおいて、2017年(平成29年)9月13日付けの記事に、「LC社が使用済みKEYKEGの回収を開始(LIGHTWEIGHT CONTAINERS STARTS COLLECTING USED KEYKEGS)」の見出しの下、「LC社はワンウェイケグのKeyKeg及びUniKegでよく知られている。家族所有の会社であり高品質のワンウェイケグのマーケットリーダーがKeyKegを開発・製造・販売し、KeyKegコンセプトの継続性と品質を保証している。(中略)KeyKegは現在、70以上の国の顧客に販売され、180以上の国で使用されている。KeyKegはドイツ、オランダ、米国で製造されている。LC社は2017年に新たな製造ラインを建設し、数年以内にさらに増やすことを計画している。」旨の記載がある(甲33並びに申立書12頁及び13頁)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、申立人商品は、2007年(平成19年)から製造が開始され、70以上の国の顧客に対して販売され、特にイギリス、フランス及びイタリアを始めとする欧州では相当程度の販売数があることが認められる。
また、申立人商品は、平成29年1月から11月にかけて、オランダ、米国、イギリス、スペイン、ドイツ、オーストラリア、カナダ及びチリにおいて開催された各種の展示会に出品され、平成21年から平成28年にかけて、世界、米国、ベルギー及びドイツをそれぞれ対象とした飲料業界・パッケージ業界における各種の賞を受賞し、さらに、インターネット上の各種ウェブサイトにおいて紹介されていることが認められる。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及びその子会社(以下「申立人等」という。)の業務に係る「使い捨てケグ」を表示するものとして、少なくともイギリス、フランス及びイタリアを始めとする欧州における需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。
2 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、別掲のとおり、内部に、上端の一部が欠けるものの「KEY」及び「KEG」と視認しうる欧文字を白抜きで二段に表した黒塗りの三角形を配し、その直下に、「KEY KEG」の欧文字を配した構成からなるものである。
そして、本件商標は、その構成文字に相応して「キーケグ」の称呼を生じるものであり、また、「KEY KEG」の文字(語)は、一般に親しまれた意味を認識させるものとはいえず、造語といえるものであるから、特定の観念を生じないものである。
他方、引用商標は、「KEYKEG」又は「KeyKeg」の欧文字からなるものであり、これより「キーケグ」の称呼を生じるものであり、また、「KEYKEG」又は「KeyKeg」の文字(語)は、一般に親しまれた意味を認識させるものとはいえず、造語といえるものであるから、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、全体としては相違するものの、欧文字部分の比較においては、二段書きか否か、中間にスペースがあるか否か、大文字か小文字か等の違いはあるものの、「KEYKEG」のつづりを共通にするものであるから、近似した印象を与えるものである。
また、称呼においては、「キーケグ」の称呼を共通にし、観念においては、両者はいずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、たとえ観念において比較できないとしても、外観において近似した印象を与え、「キーケグ」の称呼を共通にすることから、両者は、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似する商標というべきである。
3 不正の目的について
前記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る「使い捨てケグ」を表示するものとして、欧州における需要者の間に広く認識されていたものである。
また、引用商標は、特定の観念を生じない造語からなるものである。
さらに、本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、貯蔵、輸送又は包装用のコンテナや容器等であり、引用商標が使用されている「使い捨てケグ」とは、その目的、用途において密接に関連する商品といえる。
そして、本件商標の構成中の欧文字部分と引用商標とは、二段書きか否か、中間にスペースがあるか否か、大文字か小文字か等の違いはあるものの、「KEYKEG」のつづりを共通にするものである。
そうすると、欧州における需要者の間に広く認識され、かつ、造語からなる引用商標と欧文字のつづりを共通にする本件商標が、引用商標が使用されている「使い捨てケグ」と密接に関連する商品を指定商品として、我が国において偶然に出願されたとは到底認めがたく、むしろ、引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、商標権者が本件商標を先取り的に出願し、不正の利益を得る目的をもって登録を得たものと推認せざるを得ない。
してみると、本件商標は、不正の利益を得る目的、すなわち不正の目的をもって使用をするものといわなければならない。
4 以上のとおり、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る「使い捨てケグ」を表示するものとして欧州における需要者の間に広く認識されていた引用商標と類似する商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
5 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから、その登録は、同項の規定に違反してされたものであり、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲 本件商標





異議決定日 2019-11-25 
出願番号 商願2017-136648(T2017-136648) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W20)
最終処分 取消  
前審関与審査官 豊田 純一 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 山田 啓之
木村 一弘
登録日 2018-07-20 
登録番号 商標登録第6063479号(T6063479) 
権利者 浙江恩杰先声品牌咨詢有限公司
商標の称呼 キーケグ、キーケッグ、ケグ、ケッグ、ケイイイジイ 
代理人 黒川 朋也 
代理人 竹内 充春 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 魚路 将央 
代理人 工藤 莞司 

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