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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W16
審判 全部申立て  登録を維持 W16
審判 全部申立て  登録を維持 W16
審判 全部申立て  登録を維持 W16
管理番号 1360721 
異議申立番号 異議2019-900117 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-17 
確定日 2020-03-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6116323号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6116323号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6116323号商標(以下「本件商標」という。)は、「Maiyu」の欧文字を標準文字で表してなり、平成30年11月12日に登録出願、第16類「文房具類」を指定商品として、同31年1月9日に登録査定、同月25日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「Maiyu」の欧文字を表してなり、申立人が「ボールペン」に使用をしているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
(1)商標法第4条第1項第7号について
ア 経緯
(ア)申立人は、中華人民共和国山東省青島市において設立された文房具、雑貨等の製造、販売、輸出等を業とする法人である。
申立人が使用する引用商標は、申立人の名称中の「邁宇」の発音に由来する。
(イ)申立人は、遅くとも2017年12月4日までに、「Amazon.co.jp」のアカウントを取得し、同ウェブサイトに出品する手続を完了した(甲2)。
(ウ)申立人は、遅くとも2018年1月4日までに、引用商標の「天然花梨木製高級ボールペン」及び「高級ボールペンケース」などを「Amazon.co.jp」に出品した(甲4の1ないし甲4の6)。
(エ)申立人は、「Amazon.co.jp」に出品する商品の供給を「Amazon.co.jp」が提供する物流サービスを利用することで行っていた(甲6の1ないし甲6の7)。
(オ)申立人は、これらの商品の我が国への輸出に当たっては、中国政府の許可を得た上で(甲7の1及び甲7の2)、日本国政府の輸入許可を得て(甲7の3及び甲7の4)行っている。
(カ)申立人は、2018年11月8日に「Amazon.co.jp」に対して模倣品対策を取るように要請した(甲8の1ないし甲8の3)。この模倣者の中には、本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)も含まれる(甲8の2ないし甲8の4)。
(キ)申立人及び「Amazon.co.jp」から警告を受けた商標権者は、引用商標が未登録であることを奇貨として、申立人より早く本件商標の登録を得るべく、申立人に告げることなく、直ちに出願準備に入り、申立人が「Amazon.co.jp」に模倣対応を依頼した僅か4日後の2018年11月12日には、本件商標を出願し(甲9の1)、同日付けで早期審査に関する事情説明書を提出し(甲9の1ないし甲9の5)、2019年1月10日に登録査定を得た(甲9の1)。
(ク)商標権者は、「Amazon.co.jp」に対して、申立人の出品停止などの措置を求めたため、「Amazon.co.jp」は、2019年2月15日付けで、商標権侵害の有無の確認を求めるメールを申立人に対して発信した(甲10の1及び甲10の2)。
(ケ)申立人は、2019年2月15日付けで「Amazon.co.jp」に対し、商標権者による悪意の本件商標の使用につき、2018年11月8日に「Amazon.co.jp」に対し報告したことなどを返信した(甲11の1ないし甲11の3)。
(コ)申立人は、商標権者に連絡を取ったところ、商標権者は2019年2月19日付けのメールで、日本国内で商標権侵害をすると法人の場合は3億円以下の罰金が科されること、商標権者から本件商標を購入する譲渡価格は1,000万円であることなどを示した(甲12)。
イ 商標権者の他の商標出願
商標権者の商標出願を検索すると20件ヒットし(甲13)、そのほぼ全ての商標が、引用商標と同様に、「Amazon.co.jp」において既に使用されているが、我が国における商標登録が未登録のものである。
商標権者は、これらの商標を本件商標と同様に早期審査に関する事情説明書を提出して、早期に権利を取得しており、当該商標の使用者に先行して商標権を取得することで、商標出願を自己に有利な交渉材料として利用して不当な利益を得ようとするものと解される。
ウ 申立人の「Amazon.co.jp」における売上げの一例(甲16)及び中国における商標出願に係る資料(甲17)を提出する。
エ 前記アに掲げる事実及び前記イの事情等を踏まえると、本件商標の出願の目的及び経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、本件商標の登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものであることから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、「Amazon.co.jp」に出品する商品に使用することにより、遅くとも本件商標の出願時には多数の類似品が出回るなど周知になっており、本件商標の査定時においても周知である。
また、商標権者は、本件商標を高値で買い取らせること、正当に経営する他人の業務を妨害することを主たる目的として本件商標を取得しており、本件商標の出願時及び査定時に不正の目的をもって本件商標を使用している。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、「Amazon.co.jp」に出品する商品に使用することにより、遅くとも本件商標の出頻時には多数の類似品が出回るなど周知になっており、本件商標の査定時においても周知である。
また、引用商標と本件商標とは、本件商標の出願時及び査定時において類似し、その使用される商品も類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、「Amazon.co.jp」に出品する商品に使用することにより、遅くとも本件商標の出願時には多数の類似品が出回るなど周知になっており、本件商標の査定時においても周知である。
また、引用商標と本件商標とは類似し、その使用される商品も類似する。
このため、本件商標は、本件商標の出願時及び査定時において申立人の業務に係る商品と混同を生じている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 引用商標について
(ア)申立人の提出に係る証拠(以下、単に「証拠」という。)及び同人の主張によれば、申立人は、2018年(平成30年)1月4日から我が国において電子商取引サイト「Amazon.co.jp」にて引用商標を使用した「ボールペン」(以下「申立人商品」という。)を販売し(甲4の1ないし甲4の6)、その商品を中国から日本へ輸出し(甲6の1ないし甲6の7及び甲7の1ないし甲7の4並びに申立人の主張)、ある程度の売上げがあったこと(甲16)がうかがわれる。
しかしながら、申立人商品についての広告宣伝に関する主張、立証はなく、また、申立人商品の売上額もさほど高いものとはいえない。
そうすると、引用商標は、申立人の業務に係る「ボールペン」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものではない。
(イ)証拠によれば、申立人は、2019年(令和元年)7月29日に中国において引用商標を商標登録出願したことが認められる(甲17)。
しかしながら、当該商標登録出願は、本件商標の登録査定後にされたものであり、本件商標の登録出願時に引用商標が中国において商標登録又は商標登録出願されていた事実は認められない。
また、引用商標が中国において使用をされていた事実も認められない。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、引用商標は、我が国の需要者の間に広く認識されていたものではなく、また、中国においては使用をされていた事実もない。
そうすると、引用商標には、我が国及び外国(中国)において、申立人の出所識別標識としての信用、名声、顧客吸引力等は何ら化体していなかったといえる。
加えて、引用商標は、本件商標の登録出願時前に中国において商標登録又は商標登録出願されていた事実もないことからすると、引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、他人に先取り的に出願をされたといったような事情をうかがうこともできない。
イ 本件商標の出願及び登録の経緯について
(ア)証拠によれば、申立人が、「Amazon.co.jp」に対して、商標権者を含む者に対する模倣品対策を取るように要請(甲8の1ないし甲8の4)した4日後に、商標権者は、本件商標の商標登録出願を行った(甲9の1)ことが認められる。
そして、本件商標の設定登録後に、商標権者は、「Amazon.co.jp」に対して、申立人の出品停止などの措置を求めたことが認められる(甲10の1及び甲10の2)。
また、商標権者は、申立人からの連絡に対し、日本国内で商標権侵害をすると法人の場合は3億円以下の罰金が科されること、商標権者から本件商標を購入する譲渡価格は1,000万円であることなどを示したことが認められる(甲12)。
(イ)前記(ア)によれば、商標権者は、本件商標を高額で買い取らせるために登録出願したのではないかと疑わせるところが一部にはあるものの、商標権者の行った行為は、自ら使用をしている商標を商標登録出願したり、自身の商標権に基づいて権利行使したりするといった当然の行為の範ちゅうとみることもできる。
したがって、本件商標の出願及び登録の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとまではいえない。
ウ 商標権者による他の商標登録出願について
申立人は、商標権者は、我が国における未登録の商標を、その使用者に先行して商標権を取得することで、商標出願を自己に有利な交渉材料として利用して不当な利益を得ようとしている旨主張している。
証拠によれば、商標権者は、商標登録されているものも含め、20件の商標登録出願を行っており(甲13の1ないし甲13の3)、そのうちの1件について商標登録の取消しの審判が請求されていること(甲14の1ないし甲14の4)、別の1件は登録商標に係る商品が「Amazon.co.jp」には出品されていないこと(甲15の1ないし甲15の3)が認められる。
しかしながら、これらの事実によって、本件商標が、自己に有利な交渉材料として利用して不当な利益を得ようとするために商標登録出願されたものと認めることはできない。
エ 前記ア(ア)のとおり、申立人は、2018年(平成30年)1月4日から我が国において「Amazon.co.jp」にて引用商標を使用した「ボールペン」を販売していた。
その後、本件商標が商標登録出願されたのは、前記1のとおり平成30年11月12日であるから、この間約10か月、申立人は、自ら速やかに引用商標を商標登録出願することが可能であったにもかかわらず、その出願を怠っていたものと認められる。
そして、前記アないしウの事情を踏まえれば、申立人による本件商標に係る登録異議の申立ての理由は、商標権者と申立人との間の当事者同士の私的な問題として解決すべきものというのが相当である。
そうすると、本件商標の出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとは認められず、また、本件商標の登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものであるとも認められない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
前記(1)ア(ア)のとおり、引用商標は、申立人(他人)の業務に係る「ボールペン」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものではない。
そうすると、たとえ本件商標が引用商標と同一又は類似の商標であって、申立人の業務に係る商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
前記(1)ア(ア)のとおり、引用商標は、申立人(他人)の業務に係る「ボールペン」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものではない。
そうすると、たとえ本件商標と引用商標との類似性の程度が高く、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性が高く、その需要者を共通にするとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはないというべきである。
してみると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、その取引者、需要者をして、当該商品が申立人の商品に係るものであると誤信させるおそれがある商標ではなく、当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるものともいえず、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
前記(1)ア(ア)及び(イ)のとおり、引用商標は、申立人(他人)の業務に係る「ボールペン」を表示するものとして我が国又は中国(外国)の需要者の間に広く認識されていたものではない。
また、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものであるというべき事情は認められない
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当せず、その登録は、同項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
異議決定日 2020-03-03 
出願番号 商願2018-140487(T2018-140487) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W16)
T 1 651・ 222- Y (W16)
T 1 651・ 22- Y (W16)
T 1 651・ 255- Y (W16)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤平 良二大岩 優士 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 山田 啓之
板谷 玲子
登録日 2019-01-25 
登録番号 商標登録第6116323号(T6116323) 
権利者 塚▲崎▼ 隆一
商標の称呼 マイユ 
代理人 丸山 修 
代理人 尾崎 隆弘 

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